胸の痛みを感じたとき、何か重大な病気では…と心配になりますね。左胸の場合は心臓の不調を疑いますが、右胸の場合はなじみが薄く、なんとなくよくわからない場合が多いですね。
しかしそのまま放置しておくと思わぬ病気が進行し、取り返しのつかないことになるかもしれません。胸にはいろいろな器官が集まっているため、原因によって相談する病院が全く異なってきます。痛みの原因と、それぞれの医療機関の担当科を紹介します。
原因を明らかにしてしっかり対策していきましょう。
右胸の中には何があるの?
胸には重要な臓器が詰まっており、それを骨が保護しています。上から順にみていきましょう。
まず、皮膚の下には胸筋、肋骨があります。胸筋や肋骨は外部の衝撃から柔らかい臓器を護る役目をしています。女性の場合は脂肪、乳腺、間質などからなる柔らかい乳房があり、その下に胸筋がついています。
肺は胸の左右に一つずつついています。肋骨のすぐ下にあり、呼吸に合わせて膨らんだり縮んだりします。
肺の下には胆のうがあります。胆のうは消化に関係する臓器の一つで、胆汁という、消化酵素を助ける働きのある物質を貯蓄しています。胆汁はタンパク質の分解を助けています。
その胆汁を作っているのは肝臓で、基本的には右側が大きくなってる三角形の形をしています。消化液を作ったり、ビタミンや栄養などを一時的に貯蓄したりアルコールや脂質などを分解する働きもあります。
それぞれの器官には神経が通っています。しかし直接これらの臓器が痛みを発しているのでなく、炎症が臓器に発生した時に周囲の胸郭膜などまで炎症が広がった場合に痛みが発生してきます。
どの様なトラブルで痛みが発生するのでしょうか詳しい原因を見ていきましょう。
男女共通の胸の痛みの原因
右胸の痛みは上記で紹介した器官のどれかに原因があると考えられます。ここでは男女どちらにも当てはまる病気を紹介します。
病気の特徴や具体的に発生する症状について紹介します。
肺気胸
肺に小さな穴が開き、空気が体内に漏れて肺が縮んでしまう病気を肺気胸と言います。穴の開く原因は運動や事故などによる外部からの衝撃や、喫煙による肺角膜の劣化、強いストレスなどですが、何もなくとも自然に空いてしまうこともあります。やせ形の男性に多い病気と言われています。
自然に穴が開いた場合、多くは自然に塞がってしまいますが、塞がらずに空気が漏れる状態が続くと胸郭内に空気が溜まっていってその圧力で心臓や肺が圧迫されて胸の痛みや動悸、息切れを感じ、ひどくなると呼吸困難を引き起こします。
治療によって症状が改善されたり、自然に塞がった場合でも、再発する可能性が高い病気です。治療をした場合の再発率は5%以下、自然治癒した場合の再発率は40%以上となります。
軽度の場合は自然治癒がほとんどで、治療期間中は極力肺に負担を掛けず、安静にしていることが求められます。痛みがひどい場合は漏れた空気をチューブなどで抜く治療法もあります。重度の場合は内視鏡手術を行います。
肺や胸の痛みというよりも、背中に近い位置での痛みが発生します。深呼吸をした時や、かがむ(胸部を圧迫する)姿勢になった時に痛みが強くなる傾向があります。
胆のう炎・胆石症
胆のうが原因の痛みには以下の2種類の病気の可能性があります。消化に関係する機関のため、どちらの病気も治療のほかに食事制限が課される場合があります。
胆のう炎・胆管炎
胆のう炎とは、胆のうや、胆汁を運ぶ胆管に炎症が発生する病気です。胆のうの出口や胆管が、胆汁の成分が固まってできる胆石や癌などで塞がり、炎症を起こします。脂っこい食事や不摂生が引き金となって発症します。胃もたれなど、別の臓器の痛みと混同しやすい病気です。
胆のう炎は悪化すると右胸の下に激痛が走ったり、発熱したりします。また、痛みが肩まで響くこともあります。吐き気や嘔吐など、胃腸炎と似通った症状が出る場合もあります。
胆石症
胆石症とは、胆汁の成分が固まりってできた胆石という固形物が、胆のう内に溜まってしまう病気です。胆石の出来る場所によって肝内結石、胆のう結石、胆管結石と名称が変わります。
胆石症は、胆汁内に含まれたコレステロールが過剰な場合、十分に分解されずに溜まり、それが核になって結石が出来てしまうことが原因です。
胆のう結石の場合、8割は症状に無自覚ですが、自覚症状がある場合は右の胸の下から腹部にかけて痛みを感じます。結石が原因で細菌に感染した場合は高熱が出ることもあります。
胆管結石の場合は尿の色が黒くなったり、黄疸(おうだん:皮膚が黄色く変色する症状)が現れたりします。重度の場合は発熱や意識障害を伴い、非常に危険な状態になるため、早期発見が大切です。
治療には結石を取り除く手術を行い、術後はコレステロールを減らした食事をとる食事療法などが課されます。
帯状疱疹
帯状疱疹は、急に仕事が忙しくなった、しっかり休息が取れていない、免疫力が低下しているなどの問題がある場合に発生しやすい皮膚の病気です。
皮膚表面にピリピリとした痛み、かゆみに近い違和感や皮膚表面の麻痺などを感じる事が特徴です。
これは体内に存在していたウイルスによって神経節に影響を与えて発生するもので、身体の左右に非対称に発生する症状になります。
特に発生しやすい場所は顔、脇腹、首など皮膚の薄い場所になりますが、胸付近にも発生することがあります。皮膚には湿疹が発生することもありますが、必ずしも肌が荒れるわけではありません。出来るだけ掻かないようにして、病院へ行って検査をするようにしてください。
慢性化した場合は神経痛だけが残って感覚が鈍くなるなどの後遺症が長期に渡り残ってしまう可能性もある厄介な病気です。
肋間神経痛
肋間神経痛とは、肋骨部分の神経が痛む神経痛の総称です。突如肋骨に電流が走るような激しい痛みや、呼吸時に心臓に肋骨が刺さるような痛みを感じる症状が出ます。深呼吸や発声、胸部を捩じる運動などをした際に痛みがひどくなります。症状は左右どちらかに現れ、痛みが肩や背中まで届くこともあります。
肋間神経痛の原因には以下のものが考えられます。
1)肋骨の骨折や、別の病気を患った際に併発する
2)運動不足や同じ姿勢を続けたため、胸筋が固まり神経が圧迫される
3)帯状発疹の後遺症
4)ストレス
また、このほかに原因不明の場合もあります。
治療方法は原因によって様々ですが、痛みがひどい場合はステロイド剤などの痛み止めが処方されます。神経痛は神経が過敏になっている状態で起こりやすいため、リラックスできる状態をつくり、ストレスを緩和させることも有効な対策の一つです。
筋肉痛
胸の痛みの思わぬ原因として挙げられるのが、筋肉痛です。胸には胸筋がありますので、重いものを持ち上げる動作を繰り返したり、ボクシングや筋トレなどの腕を前後に動かす動作を繰り返した場合、筋肉痛になることがあります。
筋肉痛は運動直後以外に、2,3日おいて痛みが洗わられることもあるので、胸に痛みを感じた場合は激しい運動をしたことがないか振り返ってみてください。
心臓神経症
心臓神経症はその仰々しい名前から非常に危険な病気なのかと想像してしまいますが、主にストレスが原因の胸痛発作を発生させる病気で、心臓や循環器系の問題が原因で発生している疾患ではありません。
心電図やレントゲンでも特に心臓にこれと言った異常が見つけられるわけでもなく、精神的な治療が必要となる病気です。
僅かな心臓や胸部への違和感から、心臓の病気かも・・・と過剰に不安に思うことが更に症状を慢性化させたり、悪化させる原因とも言われています。
内科などでの検査をしても特に問題ないよと言われた場合にはこの病気の可能性もあります。
逆流性食道炎・胃の病気
胃は通常左側に存在しますが、食べ過ぎや食道炎、胃炎などを発生させてし合った場合は広範囲に痛みが広がり右側の胸の方にも痛みを発生させる場合もあります。
また、すべての内臓が逆に位置している内臓逆位の症状も7000人に1人の確率で産まれていますので、それが関係して胃の痛みが右側や胸部付近に関している可能性もあります。
逆流性食道炎は胃の中の内容物や、胃酸などが腹圧や下部食道括約筋(胃と食道の逆流を防いでいる筋肉)が緩むことなどが原因で逆流してしまい食道が炎症してしまう症状になります。
横になると吐き気がする、口の中が酸っぱい味がする、口臭が気になるなどの症状を感じている人は胃酸の逆流が原因かもしれません。
痛みが発生している場合は、炎症がかなり進行して潰瘍したり粘膜がただれてしまっている可能性もありますので、胃カメラなどで検査をするか、しっかり休んで自律神経を整えて食道と胃の働きを通常に戻しましょう。
女性のみに起こる胸の痛みの原因
女性の胸には乳房がありますので、乳房に関する病気を発症することがあります。ここでは女性特有の病気を紹介します。
乳腺症
乳腺症とは、乳房部分に鈍痛やしこりを感じる病気です。30代後半から閉経までの女性に見られる症状で、卵巣ホルモンの影響によって乳腺が部分的に痛みを感じます。原因は明らかになっていませんが、乳腺は卵巣ホルモンの影響で伸縮を何度も繰り返すため、高齢になるにつれて乳腺が卵巣ホルモンの変化に耐えられなくなると考えられています。
乳腺症は良性ですが、似たような症状として乳がんがあります。乳房の痛みやしこりを発見した場合は早めに病院で診察してもらいましょう。乳腺症の診断は難しく、乳がんに近い症状が現れる場合は精密検査を行います。
むくみ
むくみとは体内の水分が滞り一か所に溜まってしまう症状をいいますが、むくみが乳腺の間にある間質に溜まった場合、痛みを感じる場合があります。
授乳中の女性に多く見られる症状で、片方の乳房ばかりで赤ちゃんに母乳を与えていると、使わない方の乳房がむくみ、痛みます。
定期的にマッサージや搾乳をすることで予防になります。また、痛みのある部分を濡れタオルなどで冷やすことで痛みが緩和されます。痛みが激しくなった場合は産婦人科などでマッサージをしてもらうと改善されます。
胸郭出口症候群
胸郭出口症候群は鎖骨にある神経の束が圧迫され、腕や指先、胸部などにしびれを感じる病気です。20代で、なで肩の女性に多く発症すると言われています。
鎖骨の周辺には神経が密集していますが、骨や筋肉、血管などによりその神経が圧迫されると、神経がつながった先に影響が出ます。胸郭出口症候群では痺れのほかに脱力感を感じたり、腕を肩より上に上げる動作をした際に胸部にだるさや痛みを感じます。放置しておくと皮膚の色が変色したり、痛みのある部分が動かなくなったりするため、早めに病院で診察を受けることが大切です。
軽度の場合は内服薬での治療が可能ですが、重度になると神経を圧迫する原因部分を手術で切除する必要があります。
乳がん
胸の痛みは乳がんの可能性も捨てることは出来ません。最も危険で、最も早期発見が望まれる病気になります。
特に乳がんが発生しやすいのは右胸であれば、右上、左胸であれば左胸になります。胸の乳房を4分割した時に外側の上部(脇の方角)に当たる部分に発生しやすいのが特徴です。
しこりが発生しているかどうかの確認を乳房をくまなく触って触診してみましょう。固くて動きの悪いしこりが存在している場合はがんの可能性が高くなります。
乳がん患者には、出産経験が無い(もしくは高齢出産である)場合や、肥満の傾向にある女性、授乳経験の無い女性に発生確率が上昇している事が明らかになっています。
早い段階で発見することが重要になりますので、定期的に自分の乳房を触診してしこりが無いかを確認してみましょう。
診察を受ける病院について
右胸の痛みの原因は、関連する臓器によって様々な種類があることがお分かりいただけたかと思います。では、それぞれの病気はどこで見てもらえばよいのでしょうか?ここでは各科で取り扱う病気を紹介します。
専門家となる先生を選んで、病気を発見、治療していきましょう。
内科
内科は主に臓器などの外から見えない部分を診療する科です。病気になった際に最も頻繁に利用するのはこの科と言えます。診察は触診のほか、心電図やレントゲンなどの機械を使用します。内科では治療においては手術を行わず、薬によるものがほとんどです。
上記の病気の中では、胆のう炎、胆石症を取り扱います。また、神経内科では肋間神経痛を取り扱っています。
呼吸器科
呼吸器科とは、呼吸に関係する臓器である肺、気管支、横隔膜などの病気を扱う科です。咳や息切れ、呼吸困難など呼吸に関する疾患のほか、レントゲン撮影の際に胸部に影があった場合なども呼吸器科にかかることになります。
上記の病気の中では、肺気胸がこの科の担当になります。
整形外科
整形外科とは、外的要因による体の損傷や、骨、筋肉、筋、血管などの組織の疾患を取り扱う科です。該当する疾患の治療のほか、治療後のリハビリテーションなどもこの科で担当します。スポーツを行う人々が良くお世話になる科です。
上記の病気の中では、肋間神経痛・胸郭出口症候群がこの科の担当になります。
産婦人科
産婦人科とは、女性の妊娠・出産や女性器に関するものを取り扱う科の総称で正しくは産科と婦人科に分かれています。産科は妊娠・出産に関する事柄を中心に診療します。婦人科は妊娠・出産に関係なく、女性器に関する病気やトラブルを中心に診療します。産科と婦人科は同じ病院にあることが多いです。
産科・婦人科共に乳腺症や乳房のむくみによる痛みを取り扱っています。
まとめ
胸には様々な臓器が詰まっています。痛みの深さである程度どの部分が痛むのかは分かるかもしれませんが、素人が原因を特定するのは極めて困難です。さらに、痛む場所に確信が持てない場合はどの病院に行けばいいかも判断しづらくなります。
しかし、痛みや違和感を放っておいてよいことはありません。行き先に迷ったときは、まずは総合病院か、内科のある病院で、レントゲンを撮ってもらうとよいでしょう。レントゲンの結果によってしかるべき診療科を紹介してもらえます。また、胸部は担当する科が全く異なるため、医者はそれぞれの担当科の知見で判断します。診断結果に疑問がある場合は、セカンドオピニオンを受けることも大切です。
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