最近、胸焼けがしたり、お腹がキリキリする…そういった症状で悩んではいないでしょうか。一方で暴飲暴食をしていたり、ストレスが多かったり、体に負担がかかるようなことが多ければ、体を悪くしているかもしれません。
逆流性食道炎は胸焼けやお腹の不調などを初期症状として起こる病気です。一見して、ただの体調不良にも思えますが、体の中では大変なことが起きています。では、逆流性食道炎とはどういう病気なのか。詳しくみていくことにしましょう。
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎はその名の通り、胃酸や胃の内容物がなんらかの原因で逆流してしまうことで、食道に炎症や潰瘍ができる病気です。初期症状としては胸部や腹部の違和感などを感じます。
胃の粘膜には自身の胃酸から身を守るための防御機能があります。しかし、食道にはこれがないため、胃酸が逆流してしまうと、そのまま炎症や潰瘍ができてしまうのです。
通常、胃酸や消化酵素は下部食道括約筋という筋肉によって、食道へ流れ込まないようになっています。立っている状態でも、横になっている状態でも胃から胃酸が漏れ出さないのはこの括約筋のおかげです。
しかし、この括約筋の機能がなんらかの原因で低下してしまうと、逆流性食道炎を発症してしまうことがあります。その原因の多くは生活習慣に起因していることがあり、注意が必要です。
逆流性食道炎の症状
冒頭でも述べたように逆流性食道炎では、胸やけや胃もたれといった、消化器に関する症状を発症します。それ以外にも以下の症状を発症することがあります。
呑酸(どんさん)
食べ物を食べたあとげっぷをすると、口の中になんとも言えない酸っぱい匂いが広がることがありますよね。これを呑酸といいます。逆流性食道炎ではよくみられる症状の1つです。
症状が進行すると、酸っぱい匂いが口臭として、いつも感じられるようになります。普段、自分の口臭はなかなか自覚できないものですが、逆流性食道炎を発症していると、強い匂いを感じるのです。
声が枯れる
胃酸が食道を上ってくると、喉に炎症を発症することがあります。それに伴って風邪を引いているときのように声がかれることがあります。風邪でもないのに声が枯れているようであれば、注意が必要でしょう。
咳
胃酸によって喉に炎症ができると、それが刺激となって咳症状がみられるようになります。かなり咳き込むこともあるため、症状が継続的に出ているときは要注意です。
生活上の症状
症状が悪化し、体に負担が多くなると生活の中に悪影響を及ぼすことがあります。例えば、胸やけや胃痛がひどくなると食欲が減少し、体重が減るなどの症状が起こり始めます。食事そのものがつまらなくなってしまうこともあるでしょう。
また、症状は継続的にでるので、精神的な負担も大きなものになります。気分の落ち込みやストレスの蓄積。それが元となって仕事に影響を与えることもあるでしょう。
逆流性食道炎の原因
先に述べたように逆流性食道炎の原因は生活習慣にあります。それは食べ物の種類や食べ方。また、姿勢そのものが病気の原因になることもあるのです。
では、具体的にどういった原因があるのでしょうか。
食事の仕方や食べ物に原因があるケース
体は食べ物や食べ方によって、生理反応が異なります。例えばたくさんの食べ物が体内に入ってくれば、それに対応するために胃酸をそうでない時より過剰分泌されることがあります。
これが病気のきっかけになってしまうことがあるのですね。病気のきっかけとなる食事の仕方には具体的に以下のケースがあります。
早食い・大食いである
先に述べたように大量に食べ物が入ってくると、体はそれに対応するために胃酸を分泌しようとします。食べ物が少量であるときと比べて、胃を刺激し、胃酸が多く分泌されてしまうのです。このようなことが習慣化されていれば、注意が必要でしょう
また、早食いであるほど食べ物を多く食べることができます。食物をよく噛まずに、早く食べてしまう。特に麺類やご飯類などは比較的早く食べられる食べ物なので、よく噛む必要があるでしょう。
高タンパク、高脂質のものをよく食べる
もともと、逆流性食道炎は日本でそれほど多くない病気でした。しかし、食の欧米化に伴い、消化に時間がかかる食べ物を食べるようになりました。
具体的には動物性のタンパク質や脂質があります。体に必要なものなのですが、消化に時間がかかります。そのため、こういったものを食べると胃酸が多く分泌されることがあります。
普段からお肉ばかり食べるという人は、胃酸過多の傾向があるかもしれませんね。それにプラスしてアルコールなどを飲めば、より胃を刺激してしまうでしょう。これら食べ物の食事量には気をつけたいものです。
ストレスを過度に受けているケース
ストレスが体に与える影響は誰しも身をもって感じているかもしれません。心身ともに状態が悪くなることってありますよね。逆流性食道炎にもストレスが大きく関わっています。
ストレスを受けると、食道は過敏状態になります。すると、少量の胃酸が逆流しても、影響を受けてしまうことがあります。炎症を起こしやすくなってしまうのですね。
消化官はストレスの影響を受けやすいといわれていますが、強いストレスが継続的に心身にかかっているのであれば、それをうまく解消するよう務める必要があります。
姿勢・体勢が悪いケース
胃の内圧、腹圧が上がることも、胃酸が逆流する原因といわれています。そして、その内圧が上がる原因は普段の姿勢に関係しています。姿勢が悪いと胃を圧迫してしまうことがあるのですね。
例えば猫背の人は、背骨が曲がり前傾姿勢ですよね。そうすると胃をはじめとする内臓が圧迫されます。胃に関して言えば、内圧が上がり、胃酸の逆流を招きやすい状態となります。
姿勢だけではなく、腹部の肥満も胃を圧迫する原因になります。いつもきつめにベルトを締めていたり、合わない洋服を着ていると知らず知らずのうちに内臓に力が加わり圧迫していることがあるのです。
加齢によるもの
これまでご紹介した原因は比較的若い人にみられるものです。早ければ20代で病気を発症することがありますから、発症には十分注意したいものです。一方、病気が高齢者に起こることもあります。この原因は加齢です。
歳を重ねていくと、下部食道括約筋の働きが低下します。胃の入り口の閉まりが悪くなるのですね。それがきっかけとして病気を発症してしまうのです。年齢とともに胸やお腹の違和感を感じたら、一度検査をしてみるといいかもしれませんよ。
逆流性食道炎の検査
当たり前ですが、食道は外からどんな状態になっているかわからないので検査をする必要があります。一般的には内視鏡検査(胃カメラ、上部消化管内視鏡、胃内視鏡検査)を行なっていきます。直接、内視鏡で観察することで、炎症のほか、食道がどんな状態になっているかの情報、癌などの深刻な病気の発見につながることもあります。
一方、病気の診断は問診でわかることもあります。それは典型的な病気の症状を普段から自覚しているかどうかでわかり、以下のセルフチェック項目があります。
- 胸やけの有無
- お腹の張りの有無
- げっぷがよく出るかどうか
- 喉や腹部・胸部の違和感の有無
- 食後の気持ち悪さ
こういった自覚症状が継続的・習慣的にあるようであれば、注意が必要です。内視鏡所見と合わせて、病気の診断をしていきます。
逆流性食道炎の治療
逆流性食道炎の治療方法は薬物療法を中心とした内科的治療が一般的です。薬の成分が生理的に作用することで、病気の症状を抑える効果があります。
具体的には以下の薬が挙げられます。
プロトンポンプ阻害薬(胃酸分泌抑制剤)
胃酸分泌を抑制するお薬です。酸の量を減らすことができれば、食道炎そのものを予防することができますよね。
継続的に服用することで、症状を抑えられるでしょう。
粘膜保護剤
炎症によって傷ついた食道の粘膜を保護する役割があります。
服用を続けることで、胸焼け症状を解消する効果が期待できます。これも継続的な服用が大切です。
ヒスタミンH2受容体拮抗薬
プロトンポンプ阻害薬と同様に胃酸の分泌を抑制する効果があります。阻害薬ほど胃酸の分泌量を抑える効果はなく、病気が比較的軽度の時、処方されるようです。
その他、胃の機能を向上させ、腸への食べ物の送り出しをサポートする機能改善薬という薬もあります。
逆流性食道炎の治療の注意点
逆流性食道炎の治療は基本的に薬を用いて行なっていきます。
治療法にはいつくかの注意点があり、ポイントを抑えなければ治療が長引くことがあります。具体的には以下のことがあります。
医師の指導の元、薬を飲み続ける
逆流性食道炎の薬を飲み始めると、胸焼けや胃のもたれは解消されます。症状が緩和されるのを感じるでしょう。しかし、病気が根本的に治ったわけではありません。
目に見えない部分では炎症が残っていることがあり、それが完治するまできちんと薬を飲み続ける必要があります。安易な自己判断で薬の服用を中断してしまうと、再発してしまう可能性があるでしょう。消化器科・消化器内科の病院・医療機関にきちんと通い、治療を続けていくようにしてください。
薬物治療でも回復しない場合は…
薬を服用し続けても、再発を繰り返したり、治療効果が薄い、症状が快方に向かわないなどの時は手術をすることがあります。症状が長く続いていたり、パレット食道と呼ばれる食道の胃の粘膜化という症状が起きているようであれば、外科的手術が必要でしょう。がんへ移行するリスクもあり、早急な対応が必要です。特別な内視鏡装置を用いて検査をすることがあります。
体に負担が少ない手術療法として、内視鏡治療があります。喉から内視鏡を挿入し、食道・胃の病変を直接治療するという方法です。術式の内容は胃酸の逆流防止のための弁形成術、胃の噴門の再形成術などがあります。
患者は開胸・開腹手術などの外科的治療を嫌うので、こういった内視鏡手術の存在は重要といえるでしょう。また、同様の手術内容として腹腔鏡手術が行われることもあります。腹腔鏡下の手術は内視鏡手術同様、体への負担が少ない治療として挙げられます。
逆流性食道炎の再発と予防
逆流性食道炎の特徴の1つに再発率の高さがあります。実は発病した患者の約9割が半年後に病気を再発しているのです。
これはどういった原因が考えられるのでしょうか。
薬物だけでは治すことができない
薬物治療は対症療法だけであって、生活習慣の改善に役立っていないということが考えられます。薬は胃酸の分泌や粘膜の保護をしてくれますが、そもそもの原因解決をしてくれないのです。
逆流性食道炎の原因は胃酸過多、そして括約筋の閉まりが弱いことでした。再発を防止し、根本的に病気を治すためには、このことを解決しなければなりません。
健康への意識改革も大切
薬だけを飲んでいれば治る。そう思っていると逆流性食道炎は治らないのかもしれません。病気の原因は生活習慣にあり、それを改善しなければ根治ができないからですね。
薬を飲めば治る。生活習慣は今まで通り。そういった意識そのものを病気をきっかけとして改善していく必要があるでしょう。再発しないためには、意識と行動を変えていくしかないのです。
再発予防のためにできること
では、逆流性食道炎の再発を予防するためには具体的にどのようなことができるのでしょうか。日常生活の中で意識して変えていきたいこととして、以下が挙げられます。
食事改善
まずは食べ物や食べ方に関して意識を払うようにしましょう。例えば食べ物の内容としては消化時間の長いもの、甘いもの、刺激物を避けることが望ましいとされています。こういったものを日常的に食べている人は注意が必要でしょう。
食べ方についてはよく噛んで、時間をかけて食べること。また、食べ物の量は腹八分で抑え、食べ過ぎないことが大切です。食事量が多ければ、それだけ胃酸過多になるので注意が必要です。とにかくゆっくりよく噛んで食べる、ということを意識してみてください。
油・脂に関してもなるべく注意するようにしましょう。お肉などの動物性脂肪をなるべく避け、オリーブオイルなどの植物性の油を摂取するようにしてください。便秘にも効果的です。もちろん、過剰摂取は要注意です。
肥満改善
お腹周りについた脂肪分は胃の内圧をあげる原因になります。そのため、太っているようであれば、脂肪の燃焼を意識した肥満改善に努めるようにしましょう。ダイエットは再発防止に効果的です。
シンプルなダイエット法としては、食事を腹八分で抑える、よく咀嚼して食べる、運動をするなどがあげられます。ちょっとした習慣ですが、きちんと続けることができれば、徐々にですが体重を減らすことができます。
食後の体勢に気をつける
逆流性食道炎を発症している時、下部食道括約筋は緩みやすくなっています。このため、食後の体勢には気をつけるようにしましょう。食後、すぐに横になってしまうと胃液が逆流しやすくなってしまうからです。
目安としては食後1~2時間程度は横にならないこと。また、横になりやすい夕食は食事量を減らすなどの工夫をして、胃酸の分泌を減らすようにしてみてください。
逆流性食道炎は生活習慣病ともいえる
日々の小さな悪い習慣の積み重ねが病気をつくってしまうことがあります。逆流性食道炎もまた、そういった悪い習慣の積み重ねが原因で起こる病気ともいえます。高血圧や腹部肥満を併せ持った状態を生活習慣病といいますが、逆流性食道炎はそういった意味では生活習慣病ともいえるかもしれませんね。
病気はある日突然発病するものではありません。必ずどこかに原因があり、それが表面化したものに過ぎないのです。例えばタバコを吸っている人が肺の病気になる。原因を考えれば、結果は当たり前ですよね。逆流性食道炎も同様に、原因が習慣の中にあるのです。
病気は薬で一応の治療をすることができます。しかし、根本的な治療は生活習慣の改善にあります。これの改善なくして、症状が治ることはないのかもしれませんね。日々の習慣を見直していき、少しずつ直していくことが病気再発を予防するために大事な意識といえるでしょう。
まとめ
逆流性食道炎は比較的若い世代でも起こることがあります。日々の食生活に問題があったり、ストレスが大きかったりすると、それだけ体には負担がかかり、病気を発病してしまうことがあるのです。
また、この病気の注意点は再発率が高いということ。薬だけ飲んで治ったと思っていて油断していると、病気が再発し、苦しんでしまうことがあります。
根本原因となっていることが生活の中で思い当たるようであれば、それをまず改善することが、治療では大切です。自分の体を大事にして、習慣、生活改善してみてください。
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