摘便の方法を紹介!看護師が行う方法と自分でするやり方を知ろう!注意点やリスクは?

「摘便」とは、その名の通り「腸から便を摘出する」ことです。

れっきとした医療行為で、診療報酬点数は100点(1点10円計算なので1,000円換算)が付けられています。同じ点数として、眼科処置の結膜異物除去(簡単に言えば目に入ったゴミの除去)があります。どちらも医療行為なので、本来は医師免許がなければ患者に施術することはできません。

しかし、介護老人の増加に伴って、緊急対応として介護士が「摘便」をするケースも増えてきているようです。そんなに簡単にできるものなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

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「摘便」が必要になる症状とは?

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自力での排便が可能であればよいのですが、長期間寝たきりで筋力の衰えている高齢者や便秘薬や浣腸を行うことが難しい幼児など、様々な理由によって自力での排便が困難なケースがあります。

そうなってしまったとき、どのような症状では「摘便」が適用されて、どのような場合には禁忌(してはいけないこと)とされているのでしょう?

「摘便」が適用される病気や症状

  • 便秘薬や下剤を内服したり、浣腸を施しても排便が起こらなかった場合
  • 認知症や何らかの精神疾患により、自力での排便が困難な患者の場合
  • 何らかの疾患による全身状態悪化のため、排便時にいきむことが困難な場合
  • 副作用として便秘を生じる薬物を服用していて、(セルフケアしているにも関わらず)排便ができない場合
  • いきむことによる血圧や腹圧の上昇で、病状の悪化が心配される心疾患や腸疾患患者の場合
  • 直腸神経麻痺や炎症性腸疾患など、排便障害が起きる病気の診断を受けている場合
  • 幼児や高齢者など、便秘薬や浣腸による身体的負荷が大きい場合
  • バリウム検査後に便秘薬による排泄ができない場合

などの症状が適応症状となります。

「摘便」が禁忌とされる病気や症状

  • 痔(切れ痔・いぼ痔・痔ろう)疾患のある患者
  • 肛門やその周囲、または直腸内に何らかの病変や腫瘍を持つ患者
  • 血小板数が少なかったり、血液凝固因子の不足によって出血傾向にある患者

などの症状・病気を持つ患者に対しては禁忌とされます。

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「摘便」以外の方法はないの?

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一般的に「摘便」は、最終手段です。便秘薬の服用や浣腸を行っても排便が困難な場合にのみ適用となります。「摘便」であっても、便秘薬や浣腸の使用であっても、便秘を根本的に解決する治療ではありません。

強制的に排便させていることを理解しておかないと、何度も「摘便」が必要になったり、便秘薬に依存したりして大きな腸の病気を引き起こす危険性もあります。それでは「摘便」以外の治療法である、便秘薬と浣腸について見ていきましょう。

便秘薬の服用

便秘薬は、大きく分けて2種類あります。便秘の症状によって使い分けることで、より大きな効果を得ることができます。

逆に、症状や体質に合わない便秘薬を使用することで、症状が悪化することもありますので注意が必要です。いずれの便秘薬も、「便秘を改善する薬ではなく、一時的に排出させるための薬」であることを理解してください。

刺激性便秘薬

腸粘膜を刺激したり腸の蠕動運動(ぜんどううんどう、便を肛門まで運ぶ腸の収縮運動のこと)を促進することで排便を促します。

大腸を刺激するものと小腸を刺激するものがあります。ヒマシ油やオリーブオイルが小腸刺激性便秘薬となりますが、飲みにくいのと吐き気や腹痛などの副作用から、現在では使用されることは少なくなっています。

一般的に使用されるのは大腸刺激性便秘薬で、漢方由来の生薬成分が主流となります。効果は強力ですが、効き目が現れるまでに6~8時間程度かかるため、前日の就寝前に服用します。

機械性(膨張性)便秘薬

腸や便に水分を与えて柔らかくし、膨張させることによって腸を刺激して排便を促します。

食事量が少なかったり、偏食によって便量が少ない場合に使用されます。刺激性便秘薬と似ていますが、効果がマイルドで個人差が大きいのが特徴です。

浣腸

浣腸は、肛門から直腸へ薬液を入れることで腸を刺激し、潤滑剤によって腸の壁面をすべりやすくることで便をスムーズに排出するための医薬品及びその行為のことです。

薬局等で販売されているものは、内容量や挿入部分の長さが制限されています。一方で医療行為用の浣腸は容量が多かったり、挿入部分の長さが長くなっています。浣腸による事故は、挿入した部分による直腸穿孔(腸に穴を開けてしまうこと)が最も多く、そのほとんどが立位での処置で発生しています。浣腸は、最も処置しやすい左側臥位(左側を下にした横向き)での処置が推奨されています。

即効性が高いのも浣腸の特徴です。腸に直接薬液を注入するため、10~30分程度で便意があるとされています。一時的に排便させるための処置としては非常に有効なため、出産前の妊婦や内臓の手術前の患者などが処置室や手術室に入る前に施術されます。

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「摘便」の方法について

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一見簡単そうにも思える「摘便」ですが、大きな血管を傷つけたりすると「大出血」に、腸内組織を傷つけると「腹膜炎」にもなりかねないリスクを抱えています。

今一度「医療行為」であることを理解したうえで、「摘便」の方法を見ていきましょう。

必要な物品の準備

基本的に全てディスポーザルであることが望ましいですが、不可能な場合には清潔な物を使用してください。施術者は爪が短く切られているかを確認してください。長い爪によって直腸を傷つけてしまったり、手袋の破損による汚染などが発生する危険性があります。

  • グローブ(ポリエチレンやシリコンなど、肌への刺激の少ないものを選択)
  • 潤滑剤(ワセリンやキシロカインゼリーなど)
  • 防水シーツ(便の飛散防止用)
  • ポリ袋(摘出した便を入れる)
  • タオルやシーツなど(陰部保護用)
  • 滅菌ガーゼや紙ナプキン等(ふき取り用)

環境を整える

  • 患者に病状説明を行い、「摘便」の処置について同意を得ます
  • 施設によって異なりますが、カーテンなどで患者のプライバシーを確保します
  • 換気の状態と空調を確認して、肌を露出しても寒くない室温に保ちます
  • お尻の下を起点として防水シーツを敷き、他の部分に便がかからないようにします
  • 処置の前後でバイタルサイン(意識・呼吸・血圧・脈拍など)を確認し、処置中もこまめに声掛けを実施して異変がないことを確認しながら処置を行います

実際の処置

  1. グローブを2重に重ねて装着します。摘便処置後に1枚外すことで清潔を保つことができるので、指の動きに支障がないなら2重にすることが望ましいです。(手袋の破損による感染予防の意味合いもあります)
  2. 患者に、肛門括約筋の緊張をほぐすためにリラックスしてもらいます。このとき通常とは異なり、腹式呼吸ではなく口呼吸をしてもらいます。腹式呼吸では腹圧が上がってしまい、肛門括約筋の緊張が取れないからです。
  3. 第2指(人差し指)の根元までしっかりと潤滑剤を付けて、直腸壁に沿ってゆっくりと挿入します。挿入後、直腸内の便の固さを確認し、直腸壁に沿って指をゆっくりと回しながら、肛門部に近い便から丁寧にぬぐい取るように少しづつ掻き出していきます。このとき、一気に掻き出そうとすると、固まった便によって粘膜や肛門が損傷してしまう事がありますので注意が必要です。少しづつ掻き出していくと、ふたをしていた固い便が取り除かれたことにより、自然に便が出てくることもあります。
  4. 摘便後、患者の状態に異常がないかどうかを確認します。肛門周囲を清潔にして、片付け等の環境整備を行って終了です。

 もし処置中に患者が痛みを訴えたり、出血が確認された場合には直ちに処置を中止して医師の指示を待ちます。

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病院以外での摘便

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何度も繰り返しているとおり、「摘便」は医療行為です。素人が安易に行うのは避け、可能な限り医師の診察を受けるようにしてください。

どうしても「摘便」を行う際には、以下の点に注意してください。

子どもへは絶対に行わない

成長途中にある子どもの腸は柔らかく、傷つきやすくなっています。処置には経験が必要になりますので、小児科か便秘外来のある病院での受診をお勧めします。

腸壁に孔を開けてしまうと、最悪の場合「死」に至る危険性もあります。絶対にやめましょう。

セルフ「摘便」は自己責任で行うこと

何の知識もない方が、便秘だからといってセルフ「摘便」をいきなり行うのは危険です。少なくとも1度は専門医に診察を受けるか、訪問看護士などに相談してからにしてください。

血圧の急降下による失神や、腸を傷つけてしまい出血が止まらなくなったりなど、一人では対処できない事態になる恐れもあります。

介護施設などにおいては、緊急時以外には行わないこと

「摘便」は医療行為のため有資格者以外は本来行えない処置です。緊急性がない「摘便」は、リスクが高いだけでなく違法行為に問われる可能性もあります。

ただ最近では介護職員が研修を受け、行政と相談しながら緊急性の高い場合のみ行うことを認めるケースも増えているようです。ただし、あくまでも緊急避難時な措置であることを理解しておいてください。

緊急性の高いのはどういった時?

ではどういった症状がある場合には緊急性が高いのでしょうか?その前に理解して欲しいのは「便秘は1日にしてならず」ということです。数日前から排便がなかったり、お腹が張って苦しかったり、すでに症状が現れているはずです。生命に関わるような危機的状況になる前に、診察を受けるようにしてください。

  • お腹がパンパンに張って、激しい痛みがある
  • 吐き気やおう吐を伴っていて、呼気から便臭がある
  • 顔色が悪くなり、血圧も下がってきている

排便ができないことにより、最悪の場合、便の圧力で腸壁が破れて腹腔内に便があふれてしまう「腸穿孔」を起こす危険性があります。それを防ぐためには、「摘便」の実施が必要になります。

また、便秘以外で上記の症状がある場合には、虫垂炎や腸閉塞などの外科的処置が必要な病気の可能性もあります。かかりつけ医や119番に連絡をして、緊急搬送することを基本対応としてください。

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便秘になる理由

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便秘になるのには、大きく2つの理由があります。

腸の蠕動運動が弱くなる

便は、腸の蠕動運動によって排出されます。この蠕動運動が様々な理由によって弱まることで便秘になります。代表的な理由を以下に示します。

腸の器質的な傷害

大腸腫瘍、大腸潰瘍、子宮筋腫、腹膜炎など、腸の働きを阻害する病気によって腸がダメージを受けているケース

腸の筋力低下

加齢や長期間の寝たきりなどによるものや、運動不足による全身の筋力低下の影響など

薬剤の副作用

消化管の動きを抑制する作用のある薬剤は、思っているよりも数多くあります。代表的なものとして、抗うつ剤・抗てんかん剤など脳神経系に作用する薬、痛み止め・咳止めなどの抑制系の薬、降圧剤などがあげられます。ただし、薬を飲んで便秘になった場合でも、自己判断で薬剤の使用を中止するのやめてください。本来の疾患に大きな影響を与える危険性がありますので、必ずかかりつけの医師と相談の上で薬剤の中止・変更を行ってください。

日常生活のストレス

大腸の蠕動運動は、副交感神経によって制御されています。ところがストレスを受けると人体は交感神経優位の状態になり、大腸の蠕動運動に影響がでます。蠕動運動が過度に抑制されて重度の便秘になったり、過度に活発になることで痙攣が起きたりします。大腸の蠕動運動が過度に活発になると、消化・吸収のスピードとのずれが生じ、便秘や下痢を繰り返す状態になります。この繰り返す便秘と下痢がストレス性の便秘の特徴です。

また、蠕動運動が過剰になっている状態なので、蠕動運動を促進させるタイプの便秘薬は効果がありません。それどころか症状を悪化させてしまう恐れもあります。

運動不足

運動不足による腹筋の筋力低下が、最も便秘に影響するといわれています。腹圧を高めて「いきむ」動作による蠕動運動の促進や、近接する筋肉群へ刺激を与えて動きを活発化する効果があります。

運動にはストレス解消効果や、自律神経系の働きを正常に保つ効果もあります。ただし、激しい運動をすると交感神経が興奮しすぎて、副交感神経の働きが低下してしまう逆効果になります。早足や軽い筋トレなどの軽度な運動を毎日行うことで最大の効果を得られます。

便として排出する成分が足りない

便の成分の80%は水分です。残り20%の固形成分のうち、およそ1/3を占めるのが消化しきれなかった食品のカスなど。そして、古くなったり変性したりしてしまった腸の粘膜細胞が剥離したものが1/3。そして最後の1/3は腸内細菌及びその死骸となります。

消化しきれなかった食品のカスの多くは食物繊維と考えられます。そうすると、水分・食物繊維・腸内細菌の3つが不足すると便の量が減少し、便として排出されにくくなると言えます。

水分不足

人体は水分の摂取量が少ないと、尿・汗・便など体外に排出する水分量を減らそうとします。そのため便秘の状態になると、便の水分が足りずに固くなります。固くなった便は腸内に滞留する時間が長くなるため、腸に水分を吸収されてしまい、さらに固くなり排出が困難になります。

食物繊維不足

食物繊維を含む食品(野菜・果物・きのこ・豆など)の摂取量不足や、ダイエットによる食事量そのものの不足によって、便の量が減ってしまいスムーズな排出ができなくなります。また、食物繊維には腸内細菌のエサになったり蠕動運動を促進する効果もあるため、不足によって便秘になりやすくなります。

腸内細菌の不足

アルコール摂取やストレスなどによって腸内環境が悪化することで、善玉菌が減り悪玉菌が増えることで腸内バランスが崩れます。そうすると善玉菌が合成しているビタミンが不足したり、腸の動きが阻害されます。また、100種類・100兆個以上といわれている細菌の量そのもが減少することで、便として排出される菌や死骸の量も減ってしまいます。

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便秘にならないためのセルフケア

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これまでは便秘になる理由を見てきましたので、その逆をすれば便秘を予防することができます。結局、当たり前のことを継続することが便秘にも有効なんですね。

適切な水分の摂取

自分自身でも気が付かないうちに脱水になっていることもあります。意識した水分の摂取を心がけてください。食事を制限している場合には、食品から摂取している水分の量を飲料から摂取する必要がありますので注意してください。

ストレスをためない

ストレスが健康に悪影響を与えます。難しいとは思いますが、ストレスをためない生活を心がけてください。

適度な運動

ストレスの解消、自律神経を整える、心肺機能の強化など多くのメリットが得られます。

バランスのよい食事

食物繊維が豊富に含まれる野菜類を中心とした、ヘルシーな食事が健康を促進します。ただし、野菜のみで生活するベジタリアンは健康によくないことがわかっています。糖質やタンパク質などもバランスよく摂取することが必要です。

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まとめ

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便秘は便がでないという単一の症状ですが、そこに至るまでには様々な原因が考えられます。病気であればしかたがありませんが、セルフケアで予防できれば、それが最も健康的で副作用もなく安全な方法です。

「摘便」が必要になるような事態を起こさないようにセルフケアすることも重要ですが、必要な場合には躊躇せずに「摘便」を受ける心構えを持つようにしてください。

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