座り仕事が多かったりスマホやパソコンの作業が非常に多くなっている現代では、肩や首に大きな負担を掛けてしまいがちです。
肩や首周りにはたくさんの骨や神経があり、これがこのまま腕までつながっているので、腕のだるさを引き起こす事があります。一本3kgと意外と重い腕、だるさが出てしまうとつらく、ひどい場合は眠れなくなってしまう事もあります。
腕のだるさがなぜ起こっているのかという理由についてと、普段からできる対策についてまとめました。肩甲骨から腕にかけての部位に、だるさやしびれ、痛み、筋肉の凝りなどを抱えている人は是非参考にしてみてください。
腕について
人間の腕は、身体の全重量の6%程度の重さと言われています。体重が50kgの人なら片腕で3kg、両方で6kg、これを肩からぶらさげている事になります。
背中側に僧帽筋と呼ばれる筋肉があり、これが首〜背中をつないでいるためにしっかりと腕がくっついており、肩の関節の位置がコントロールされています。
肩関節を覆うように付いている大きな筋肉は三角筋と呼ばれ、これが収縮する事で腕が上下左右に動きます。
肩からひじまでにある上腕の筋肉が肘を曲げる動きを司り、肘から手首までにある前腕筋が手の開閉、手首の角度を調節しています。
一見腕とは関係なさそうなのが胸部分にある大胸筋ですが、実はこれが腕の骨にくっついています。大胸筋は腕を前方に振る・腕を突き出す動作を担っており、腕にある他の筋肉と協力して力を出しています。
身体の他の部分と比べると細い印象のある腕ですが、これらいろいろな筋肉が複雑に収まっており、複合的に働く事で細かい運動が可能になっています。
腕の怠さが発生している原因
腕に慢性的に怠さ、痛み、しびれなどを抱えているという時に考えられる原因について挙げていきたいと思います。
まずは原因を明らかにしないと、正しい有効な対策法を選択することが出来ません。ですので、まずは下記の原因の中から自分に当てはまる可能性の高い原因について診断してみてください。
疲労
最も単純で明快な原因です。疲労によって腕がだるくなる人はスポーツ選手や激しいトレーニングなどで腕を使っている人の場合です。
もしくは長時間労働などで緊張状態で腕を使用し続けている、重労働をしているなどの人に当てはまるでしょう。
筋肉を長時間使用して、腕に疲労が蓄積していると、筋肉が硬直してしまい、血行が悪くなったりリンパの流れが悪くなります。この結果腕が重くなってだるい感じがしてしまうのです。
よく疲労の原因は乳酸のせいであるという風に認識されていますが、近年の研究では乳酸は疲労した体を元気にさせるための物質ですので全く逆の働きをしていることがわかっています。
ですので、乳酸は増えている状態がいい状態となります。疲労している時に乳酸が増加しているのは、筋肉の疲労を回復している状態ですので当たり前のこととなりますので、疲労しているときはリンパの流れを良くすることを意識すると怠さが軽減するでしょう。
血行不良
上記の原因でも触れましたが、筋肉が固くなることで血行不良になったり、冷え性が原因で体の末端に血液が送られない事や、低血圧であることなどが影響して、四肢の末端である足先や腕の先などの部分は疲労が蓄積しやすくなります。
また、食事がしっかり摂取できて居なかったり、筋肉量が少ないことも大きな原因となります。筋肉は血管の周囲を囲ってポンプのような働きもしているので、一定の筋肉量は重要になります。
過度な運動が原因でも血行不良が発生することもありますが、運動不足でも血行不良が発生することもありますので、適度な運動などを心がけると良いでしょう。
ストレス
慢性的にストレスが蓄積している場合も、自律神経の乱れから体の機能が低下してしまい腕の怠さなどを感じるようになります。
腕の怠さの元となる肩や背中の筋肉の凝りや、内臓の機能の低下などがストレスによって間接的に影響して腕の怠さにじわじわとつながってくるので、なかなか根源であるストレスに焦点が合わずにあれこれ原因不明の腕の怠さに悩まされてしまう問題でもあります。
特に問題になるのが、ストレスによる血管への影響です。高ストレス状態になると、自律神経が乱れて軽い興奮状態が継続的に発生している状態になります。そうなると、どんどん交感神経が活発になり、血管は細くなり血圧は上昇します。
これによって血行不良が発生し、結果的に血がしっかり巡らなくなってしまい、腕の怠さなどが発生してしまうということになります。
リラックスすると、血管は拡張して血圧は穏やかになり、血のめぐる量は多くなります。適度な緊張状態であれば、血行は良くなるのですが、過剰にストレス過多となっている状態が続くことが問題となるので、小まめに休憩を入れながら働くようにして、効率よく働けるように工夫していきましょう。
姿勢の悪化
猫背や前かがみの姿勢は骨格を歪めてしまい、筋肉にも過度な負荷をかけてしまい、血行不良や体の歪みによる疾患や病気などの原因となります。
むしろ病気などから姿勢の悪化が発生している可能性もあります。
姿勢が悪化している状態は頚椎の圧迫や首を痛めたり、肩や肩甲骨や背中と言った部分の状態を悪くし、その他の健康被害の症状から腕をだるくする問題が発生します。
なるべく、姿勢を正すことを意識して骨格を正しい位置に戻せるよう改善したほうが良いでしょう。特に頚椎椎間板ヘルニアや変形性頚椎症などの問題が発生しやすいので注意しましょう。
病気が原因
その他に考えられる原因としては病気が影響して腕の怠さが発生している可能性が考えられます。上記でも紹介した頚椎椎間板ヘルニアや骨格の問題から怠さにつながっている事や、閉塞性動脈硬化症などの血管の病気、胸郭出口症候群など、様々な病気が関係して怠さにつながっている可能性が考えられます。
腕の怠さに繋がってしまう可能性のある病気について以下にまとめましたので、参考にしてみてください。もし病気が原因の怠さである場合には、しっかり整形外科や循環器科、血液内科などの専門家の元での治療を開始していきましょう。
腕のだるさを生む病気
腕のだるさを感じる症状のある病気について紹介します。それぞれの病気の症状やそれらの症状が発生してしまう原因から、どの病気の可能性が高いかを診断して治療を開始していきましょう。
腕の怠さだからと言って油断してはいけません。放置していると、重大な病気に繋がってしまう可能性があります。
神経の病気
神経に関連する病気について紹介していきます。
・胸郭出口症候群
胸郭出口症候群という病気は、神経障害と血流障害の病気です。鎖骨の周りには鎖骨下静脈と言われる血管があります。首から来てまず首の筋肉の間を通り、鎖骨の下、小胸筋と呼ばれる肩〜肋骨をつなぐ筋肉の下を進みます。このどこかの部位で締め付けられたり圧迫されたりする事で神経が圧迫されて痛みやしびれが起こります。
主な症状は手指、腕のしびれ・脱力感、首や肩甲間、胸部のうずくような痛みで、しめつけの起こっている場所によっては手と腕が蒼白になる場合があります。
首の長い人やなで肩の人に起こりやすく、腕を上に挙げる動作の際に痛みが出るのが特徴です。また、腕に力が入らないといった症状が発生することもあります。
症状が軽ければ、筋肉を強化する事が効果的です。薬で痛みを押さえながら僧坊筋や肩甲挙筋を鍛えます。
先天性の理由がある場合などは、鎖骨の上から手術を行います。
・肩甲上神経絞扼性障害
上記と同様の神経障害です。肩が前に出て内側にねじれてしまう、いわゆる巻き肩になることによって起こり、骨に腫瘤が出来ている、骨棘が形成されているなど、骨の異常が起こっている事が多く見られます。症状は腕のしびれやづつう、肩が上がらないなどのものが代表的です。
巻き肩は、猫背で頭が下を向いている事によっておこります。つまり、スマホやタブレットを熱心に見ている姿勢が最も良くないのです。頭の重さは体重の10%程度といわれ非常に重いものですが、これを支えようとして身体が前傾し、肩甲骨が開いて背中側に大きな負担が掛かります。
経過観察で改善する場合が多いようですが、安静と筋力回復のリハビリが主になります。腫瘤が出来ている場合で、これがなかなか小さくならない場合は除去手術が行われています。
・頸椎間板ヘルニア
頸椎間板ヘルニアは、腰と違って骨の変形が原因になっている事が多くみられます。骨の間にある椎間板が傷んで本来の場所から飛び出し、神経を圧迫するために様々な症状が見られます。
首、肩の凝りから始まる事が多く、やがて腕や指先のしびれやだるさが生じます。両手に同様の症状が出るのが特徴で、顔を上下に動かした時に痛みが強くなります。
痛み止めの薬で痛みを和らげながら、牽引、手術などの治療が行われます。
・変形性頚椎症
変形性頚椎症は椎間板ヘルニア同様、椎間板と頚椎に発生する病気になります。
老化とともに水分量が低下した椎間板やそれに伴う骨の変形などが影響して頚椎の関節同士がすり減って骨が削れてしまい、頚椎全体の形状が変化してしまい、周囲の神経などを圧迫したり傷つけるなどして肩こりや頸部の痛みなどを代表的な症状として発生させます。
その他にもその先立つ症状が派生して腕の怠さやしびれなども次第に現れてきます。
加齢によって発生している問題以外には激しい運動や栄養不足での椎間板の栄養不足などが関係してくる事もあります。
特に50〜60代を過ぎたあたりから増加する問題ですので、首への負担や姿勢の悪化などが影響しないように注意しましょう。
・手根管症候群
腕というより手がだるい、という場合はこの手根管症候群の病気が疑われます。原因は不明ですが、手の神経が慢性的な圧迫を受けてしびれを生じます。
妊娠している場合など、手がむくんでいるとこの症状がでる事があり、その他手の過度の使用、骨折、腫瘤などが原因となり得ます。
安静にしていれば良くなる事も多いですが、放置すると筋肉が痩せてしまうので、神経の圧迫を取り除く手術が行われる事があります。
血管の病気
血管の疾患から腕の怠さが発生している場合があります。危険な病気が関係していることもありますので、以下の症状が現れている際は十分注意して救急車を呼ぶことも検討しましょう。
特に緊急的な正しい処置が必要になります。
・閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症は手足の血管が動脈硬化を起こしてしまう病気です。手の先まで十分な血液が流れなくなるため、手足が冷たくしびれてしまい、これをだるさと感じる事があるのです。
手足の動脈が硬化しているという事は他の部分の動脈も硬くなっている可能性があるため、糖尿病や高血圧の検査が必要となります。
まずはリハビリなどの運動療法や、薬での治療が行われますが、改善しないまま放っておくと最悪壊死してしまうので、血管を広げる手術やバイパスを作る治療が行われる事もあります。
・脳卒中・脳梗塞
神経や血管の病気でないにも関わらず腕のだるさが出る病気の一つが脳卒中です。脳の異常が起こり一過性の脳虚血発作が起こった場合、腕のだるさを感じる事があります。片側で症状が出る事が多く、顎や歯が痛くなる事もあります。
また、症状は30分程度で収まる傾向があるのでちょっとしただるさだったなと放置してしまいがちなのが怖い所です。
脳の病気は早期発見が治療の大きな鍵となります。一過性の発作の内に発見できれば回復が大きく異なります。
腕や四肢の怠さ、しびれなどの症状と合わせてろれつが回らない(言語障害)、足元がおぼつかないなどの症状が見られる場合は、家族の人に連絡を取って出来るだけ一人の状態を回避するようにしてください。
脳卒中などで、長時間脳への血液の循環が遮断されてしまうと意識を回復しても、重度の後遺症が発生してしまう事も多くあります。
その他
その他に考えられる病気についても
・乳がん
乳がんによって脇の下のリンパ節に異常が起こり、腕がだるくなる事があります。胸や脇の下のしこり、胸の皮膚の変色など他にも一般的な症状がありますが、腕のだるさ、疲れやすさ、よく物を落とすなどの症状が現れた場合には特に注意して下さい。
乳がんが発生しやすい人は、両親や叔母の中で乳がんを発症したことのある家庭(遺伝の影響)、もしくはホルモン剤を投与する治療などを受けている人、大豆イソフラボンを過剰摂取している人などが挙げられます。
乳がんは早いステージの段階で治療すれば、予後も良く完治が目指せる病気になります。ですので出来るだけ定期的な検査を怠らずに治療をはじめていきましょう。
腕のだるさ対策
腕がだるくなる原因は、多くが骨や筋肉に無理がかかっている事にあります。以下の方法で対策して症状を緩和していきましょう。
冷えを防ぐ
明らかな病気がある場合を除き、多くの場合は冷えが原因となっています。疲労している場合は余計に冷えが大敵となり、疲れた筋肉が冷えて硬くなる事で周りの血管を圧迫し、血の巡りが悪くなることでしびれるようなだるさを感じるのです。
冷えが原因である場合は、お風呂などで温める事や、マッサージ・テーピングなどをする事で改善されます。
一番簡単なのは、手をグーパーする事で、動かす事で血流をスムーズにして温める事ができます。また手袋、マフラーなども効果的です。
姿勢に気をつける
首が前に出ている姿勢や猫背は胸郭出口症候群の原因の一つとなります。無理な体勢は血流を阻害する事になるので、正しい姿勢を保つように心がけて下さい。
あごを引いて背筋を伸ばした時の姿勢が、頸椎が自然な状態となる姿勢です。
また、同じ姿勢を長時間続ける事も良くないので、一時間に一回程度身体を動かすようにするとよいでしょう。
ストレス
ストレスは、心のストレスにしろ身体のストレスにしろ筋肉をこわばらせてしまいます。緊張状態は凝りを招き、血流の悪化をもたらすので気をつけて下さい。
病院を受診する
もし腕の怠さが病気の場合には病院での検査を受けて原因を明らかにして、治療を開始していく必要があります。
それぞれの病気ごとに専門家が異なりますので、この科に行けばいいという病院はありませんが、整形外科、婦人科、循環器科などから選択して病院を受信するといいでしょう。
もし、それらの目処もつかない場合は総合病院などの設備が整っている病院の内科を受診して病気を明らかにし、治療を行うための専門家を紹介してもらうと良いでしょう。
まとめ
首、肩、腕はたくさんの骨でつながっており、その間をかきわけるように神経が走っています。そのため、無理な姿勢を続けているとどこかが変形し、神経を触ってしまう事が十分にあり得るのです。できるだけ正しい姿勢を心がけるようにしましょう。
また、首周りを無理に動かしたり引っ張ったりするのは非常に危険です。腕がだるいからといって自己判断でマッサージをしたり、ましてや骨を鳴らしたりするのは論外です。医療機関で適切な治療を受けるようにして下さい。
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