あごが長くて悩んでいる方は意外と多いですよね。
あごが長いのは、先天的な要因によるとされている遺伝性の顎変形症(がくへんけいしょう)のときもあれば、顎関節症(がくかんせつしょう)という後天的な病気のときもあります。
実は、顎変形症も顎関節症のどちらも、あごだけではなく、身体のいろいろな部位や心にまで悪影響を及ぼす可能性があります。
「最近、あごや歯が痛いなあ・・・」と感じている方のために、これからあごについてお話しします。
この記事の目次
あごが長いのは病気なの⁈
「あごが長いのは遺伝的なものであり、病気ではない!」と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
ですが、実際、先天性の遺伝によるものとされている「顎変形症(がくへんけいしょう)」という病気があります。
これに対して、「顎関節症(がくかんせつしょう)」という病気もあります。こちらは、幼少のときより、さまざまな要因が積み重なって、あごが徐々に長くなった病気なのです。
長いあごでお悩みのあなたのために、これから顎変形症と顎関節症についてお話しします。
顎変形症ってなに?
顎変形症は、上顎骨(じょうがくこつー上あご)や下顎骨(かがくこつー下あご)の形や大きさが変形する、あるいは、そのバランスが崩れてしまうことによる「咬合不正(こうごうふせいー噛み合わせが合わないこと)」や「顔の変形」などの症状を引き起こします。
咬合不正や顔の変形は、上顎骨または下顎骨の変形、あるいは上下顎骨両方の変形の場合があります。
このような症状は、成長期のときにあごが成長しすぎたり、あるいは成長が不足していたりしたことに起因することが多いようです。
顎変形症の原因と症状
顎変形症は、指しゃぶりや舌を突き出すくせなどが、その発症原因とされることもあるようですが、そのほとんどの症例が遺伝によるものとされており、はっきりとした原因は不明のようです。
顎変形症の代表的な症例として、下顎前突症や小下顎症、上顎前突症、開咬症、顔面非対称などの症状がありますが、それぞれ、咬合不正や顔面変形などの症状がみられます。
そのほかにも、上顎骨が下方に成長して顔が長くなる長顔症候群や、逆に、顔が成長せずに短くなる短顔症候群などもあります。
このような症状は、それぞれ特有の咬合不正や顔面変形が見られるのですが、単独で発症するよりも、いくつかの症状が組み合って発症する顎変形症が多いようです。
あごの変形する度合いによっては、口唇を思いどおりに開閉できなくなり、下顎部の先端にしわが見られることもあります。
また、下あごが小さいと、空気の通る道も狭くなって、睡眠時に大きないびきをかいたり、睡眠時無呼吸症候群の原因になることもあるようです。
下顎前突症の症状
日本では、顎変形症の中でも、下顎前突症が最も高い割合を占めていると言われており、症状は、上顎骨に対して下顎骨が前方に突出した状態になります。
下顎前突症は、12歳から15歳頃の成長期のときに、下顎骨の成長過剰に起因することが多く、そのころから、徐々に下あごの突出が目立つようになってきます。
ただ人の歯には、あごのずれを補う「歯の代償適応」作用が働くので、明らかに下顎前突症であっても、上下の前歯が合っているように見えることが多いようです。
ですが、下顎前突症の症状が重いとき、つまり、下顎骨の突出が顕著なとき、歯は奥歯の数本しか噛み合っていないので、食べるときに支障をきたすこともあります。
また、会話をするときに舌を使用するため、独特の話し方をするようになります。
前後だけではなく、左右のあごが均等に成長しないときは、あごが左、もしくは右にかたよってしまう下顎前突症になってしまうこともあります。
顎変形症の治療
顎変形症の診断と治療は、レントゲンやCTで変形している部分を特定したうえで、形成外科医や矯正歯科医、聴覚言語療法士、耳鼻科医と相談して決めます。
下顎前突症の治療は、比較的軽症の場合、矯正歯科治療による咬合(噛み合わせ)を矯正するのですが、骨格性下顎前突症の場合は、一般的に、骨を切断する手術治療をすることが多いようです。
歯の噛み合わせを矯正しながら、適正な顔つきにするために、形成外科医と矯正歯科医とあごを移動する位置を決めていくのです。
通常、術前に、矯正歯科で1年から2年ほどかけて、歯を矯正することが多く、そののち、手術で下顎骨を切断、人工的に骨折して下顎骨を正しい位置に移動することになるようです。
手術では、口の中から骨を切断して、適正な位置に移動し、チタンなどの金属やプレート、スクリューなどで固定します。また、口の中から行われる手術なので、顔面に傷は残りませんが、噛み合わせを維持するために、術後療法が必要となります。
移動後に固定されたあごは、切断部を安静にするため、2週間程度の入院が必要となりますが、口から食事を摂ることはできるようです。
ときには、上顎部(上あご)の切断も同時に行うこともあります。
また、顎変形症の歯科矯正と手術には、保険が適用されます。さらに、高額医療給付の対象にもなりますが、制限があるようなので、必ず主治医や歯科医に相談しましょう。
顎関節症ってなに⁈
顎変形症が、一般的に先天的とされているのに対して、顎関節症は、あごに悪いくせや生活習慣などに起因して後天的に発症することが多いようです。
それでは、顎関節症には、いったいどのような症状があるのでしょうか?
- 顎の症状と原因
- 全身の症状と原因
顎関節症は、大まかに、あご自体の症状と全身などの症状の二つに分けることができます。まずは、あごの症状からお話ししましょう。
あごの症状と原因
- あごの筋肉の痛みとしこり
- 顎関節炎などの痛み
- 顎関節の動きの異常や脱臼、ずれ
- 歯の噛み合わせ
- あごや顔のゆがみと変形
あごの筋肉の痛みとしこり
顎関節症では、あごの筋肉の咀嚼筋(そしゃくきん)が痛むようになります。
たとえば、口を開けたり、閉めたりするときに痛みを感じるようになり、肩こりにも似た「しこり」のようなものができる場合があります。これは、歯ぎしりや歯をくいしばることに起因しているようです。
このようなしこりは、頬骨の下や口の下にできやすく、あごの筋肉が「こっている」状態となり、痛みを誘発します。
顎関節炎などの痛み
顎関節炎などの痛みの場合、顎関節の軟骨が変形したり、関節円板がずれたりする場合が多く、関節の靭帯が損傷して炎症を起こすために発症するようです。
疼痛(とうつう)を感じたりすることもあれば、口を開けにくくなったり、閉じにくくなったりします。
ときに、口を動かすだけで痛みを感じ、食べ物をうまく噛むことができなくなるなど、あごの機能が低下して悪化してしまうこともあります。
顎関節の動きの異常や脱臼、ずれ
顎関節にある関節円板がずれると、あごの開閉に支障をきたします。
これは、繊維性の軟骨である関節円板が、顎関節の緩衝機能(クッションのような働き)をしているためです。この関節円板がずれてしまうと、顎関節のクッションが失われて、あごがうまく開かなくなってしまうのです。
また、顎を開けたり、閉めたりするときに、音を発することもあり、クリック音と呼ばれています。また、顎関節の凹凸がこすれる際に音が生じることもあり、この音はクレピタス音と呼ばれています。
このように、クリック音やクレピタス音が生じると、顎関節症の可能性がありますので、すぐに病院へ行きましょう。
歯の噛み合わせ
歯の噛み合わせが悪くなってしまうのは、歯並びやあごのずれなどの原因が考えられます。
- 歯並び(歯の噛み合わせ)は正常でもあごがずれている
- 顎は正常でも歯並びが悪い
- 歯並びも悪く、あごもずれている
あごがずれているときは、あごの治療をする必要があります。また、歯並びが悪いときには、歯を治さなければなりません。
歯並びも悪く、あごもずれている場合は、歯もあごも治療する必要があります。
あごや顔のゆがみと変形
顎関節症が悪化すると、あごや顔にゆがみが生じたり、変形したりすることがあります。この症状は、主に歯の噛み合わせが悪いことによって生じます。
顎関節症の状態が長く続くと、顔全体が少しずつ歪んできます。特に、爪を噛んだり、歯をくいしばる癖のある方は注意が必要です。
また、食事のときに、片方の歯だけで食べるくせがある方も要注意です。
このままの状態が続くと、あごの骨まで変形が及んでいき、ゆがんだままの状態で食べ物を噛み続けることになってしまい、さらに顔やあごのゆがみが悪化してしまうのです。
自分の顔を鏡に映して「あごがゆがんでいる」または「歯の噛み合わせが合わない」といった症状を自覚したら、すぐに医師に相談しましょう。
全身の症状と原因
「あごの病気がなぜ全身に関係あるの?」と、疑問に思われる方も多いかもしれませんが、実は、さまざまな症状と原因があります。
- 顎関節症の身体的症状と原因
- 顎関節症の精神的症状と原因
顎関節症の身体的症状と原因
顎関節症がおよぼす身体的症状と原因には、おもに以下のような症状があります。
- 肩こりや首のこり
- 頭痛・偏頭痛
- めまいや耳鳴り
- しびれ・まぶしい・口が渇く・喉の違和感など
・肩こりや首のこり
顎関節症は、肩こりや首のこりといった症状を伴うことがよくあります。
これは、あごの筋肉が緊張して、こり固まってしまい、その緊張が首や肩にまで広がることによって肩こりが生じる、あるいは、あごの痛みによって不自然な形で肩に力が入ってしまうために生じてしまいます。
また、姿勢の悪い方にも肩こりや首のこりなどの症状が現れやすいと言われています。
・頭痛・偏頭痛
「顎関節症なのに、なぜ頭痛なの?」と思われる方も多いかもしれません。ですが、実は、顎関節症が原因となって、頭痛の症状を引き起こしている場合が少なくありません。
これは、あごの筋肉が側頭筋を通じて頭まで達していることによるものです。あごの筋肉が緊張していると、その緊張感が頭にまで影響を及ぼし、頭痛を引き起こすこともあるのです。
また、ズキンズキンと血管を脈打つ偏頭痛を引き起こすこともあります。
この場合、極度の緊張感が長時間にわたって続き、その緊張感から解放されたときに起こることが多いとされており、「週末病」とも呼ばれています。
平日は仕事に追われ、週末にその緊張感から解き放たれると、この症状が現れることがあるようです。
・めまいや耳鳴り
顎関節症は、めまいや耳鳴りの誘因となることもあります。
実は、内耳と中耳のある側頭骨と下顎骨の関節が顎関節なので、耳のすぐそばにあるあごの異常が耳にまで達してしまうのです。
顎関節症の場合、ふらふらする「動揺性のめまい」や音がしていないのに聞こえる「自覚的耳鳴り」が多いと言われています。
・しびれ・まぶしい・口が渇く・喉の違和感など
ときに、顎や頬、肩、手、指などに、しびれを感じる場合があります。
「ものをかむ力」つまり、咀嚼筋の力が強いために、その緊張が首や腕の筋肉にまで伝わってしまい、しびれを生じてしまうのです。
このとき、筋肉の緊張によって、血のめぐりが悪くなることに起因しているようです。
神経や筋肉に十分な血液が行き届かないことによるものと、筋肉自体が神経を締めつけてしまうことによるものなどがあります。
また、光に過敏に反応したり、喉が渇いたりすることもあります。また、会話することに支障をきたしたり、食べ物を飲み込みづらくなってしまうこともあるようです。
顎関節症の精神的症状と原因
顎関節症は、以下のように、身体的症状だけではなく、精神的症状を引き起こす原因となることもあります。
- 不眠症・精神障害
- 自律神経失調症
- うつ病
・不眠症・睡眠障害
あごの緊張が、ときに首や肩、背中、腕といった全身にまで及ぶことにより、自律神経が乱れて不眠症となることがあります。
また、咀嚼筋の力は脳にまで達しているので、ゆがんだ顎の状態で食べ物を摂取し続けると、徐々に脳へ緊張が伝わり、不眠症を引き起こしてしまうこともあるのです。
・自律神経失調症
顎関節症により、自律神経失調症を誘発してしまうことがあります。
自律神経には、交感神経と副交感神経があり、交感神経は脳や神経を司る神経であり、副交感神経は脳や身体を回復させる役割を果たしています。
顎関節症では、この自律神経失調症により、交感神経が過剰に反応するので、副交感神経は脳や身体を休めて回復させることができなくなります。
その結果、不眠症や食欲不振といった症状が現れてくるようです。
・うつ病
さらに、顎関節症の方は、うつ病になりやすいという傾向もあるようです。
複雑な因果関係ですが、「精神的ストレスに起因して顎関節症になる」あるいは「顎関節症が原因となって精神疾患を患う」といった症状を誘発します。
咀嚼筋の力はそれほど強く、ゆがんだあごの状態で食べ物を食べ続けると、脳に多大なストレスをかけてしまうようです。
やがて、次第に意欲が薄れていって、倦怠感を感じるようになります。ときには、「集中力を失う」あるいは「思考が停止する」といった症状が現れてくることがあります。
悪い習慣と治療法
あごに悪い影響を及ぼす習慣があります。
- 食生活と食べ方
- 歯の噛み合わせ
- 日常生活のストレス
食生活と食べ方
食生活、特に食べ方は、あごに大きな影響を与えます。
たとえば、子供の頃に「左側の歯に虫歯ができて、右側の歯だけで食べる習慣ついてしまう」と、大人になってから、ある程度の時間が経過すろと、顎関節症を発症してしまうことがあります。
また、横を向いて、テレビを観ながら食事を摂ることも、あごには良くないようです。
歯の噛み合わせ
長時間の頬づえや頻度の多い頰づえは、あごに負担をかけてしまいます。
頰づえは、手を介して上半身の力や重さをあごにのせます。その結果、あごにかかる負担が大きくなり、あごが徐々にずれていくのです。
「気づいたら、頰づえをしているなあ・・・」と心当たりのある方は、おそらく、そのときに腹筋から力が抜けて姿勢が悪くなっているのではないでしょうか。
そんなときは、姿勢や腹筋に気を配りまししょう。
日常生活のストレス
仕事のストレスや家族とのトラブルなどで、日中に歯を食いしばってしまうこともあるかもしれませんが、前述したとおり、咀嚼筋の力はとても強いので、あごに良い影響は与えません。
また、眠っているときに、無意識に歯ぎしりをしているときもあります。
そんなときは、早めに医師や歯医者に相談して、マウスピースを作ってもらうなどの処置をしてもらいましょう。
このような悪い習慣は、単独というよりも、それぞれが複雑に絡み合って、顎関節症の原因となります。自分の習慣やくせに心当たりのある方は、その悪い習慣を変えていくようにしましょう。
治療法は、顎関節症は何科に行けば良い ?治療方法についての記事を参考にしてください。
どうしたら防げる⁉︎顎関節症
顎関節症の予防方法を紹介します。
顎関節に良い体操
顎関節症では、下顎がなめらかに動かなくなり、可動域が狭くなってしまっています。
そんなときは、あごの関節をスムーズにして、下顎の可動域を広げる必要があります。
川崎整体健療院さんのホームページで、「顎関節体操」が紹介されていますので、ご興味のある方は、ぜひ一度下記URLにアクセスしてみてください。
川崎整体健療院さんホームページ
http://www.gakukansetu.com/sp_kaizen/
こちらのサイトでは、顎関節症に関する記述がありますので、顎関節症でお悩みの方は、ホームページをご覧いただくことをお勧めします。
下顎骨(つまり下あご)を一定の時間、前後左右に動かして、その位置を保つようにするようです。
例えるなら、スポーツをする前のストレッチのようなイメージですが、顎関節症はスポーツではないので、顎に痛みが出ているときの体操は厳禁のようです。
つまり、「顎に痛みが出る場合は、この体操はしないでください」と注意されていますので、顎関節体操を試してみる方は、くれぐれも痛みを伴う体操はしないでくださいね。
まとめ
このように、「私はあごが長い・・・」と悩んでいた方も、実は、顎変形症、もしくは顎関節症になっていたのかもしれないことがお分かりいただけましたでしょうか?
あごにまつわるこれらの病気は、日常生活に意外と密接に関連しており、メタボリックシンドロームや高脂血症などと同じように生活習慣病に近いときもあるのです。
「顎だからといって、侮るなかれ!」ですね。
でも、自分でできる改善法を参考にして実践していけば、きっと心身とも健康になるはずです。実際に、病院に行って相談してみるのも良し!です。
「塵も積もれば、山となる」
一歩ずつ、一歩ずつ歩いていきましょう!
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