足の付け根、股関節のあたりにしこりがある。あるいは、そのしこりに痛みがあってお悩みの方はいらっしゃいますか。
股関節というのは歩く時、座っている時とあらゆる動作において動かさなくてはならない部位ですから、そこにしこりや痛みがあるということは生活に支障が出てしまっている場合もあるかと思います。
しこりのみで痛みが無い場合には放置してしまっている方も少なくないかと思いますが、そこには怖い病気が隠れている可能性もあります。
そこで今回は、股関節にしこりができてしまった際に考えられる病気、その症状や原因について詳しくご紹介していきたいと思います。
思い当たることがあればすぐに病院を受診し、一日でも早く治療を受けて早期回復を目指しましょう。
股関節にしこりが出来る病気
股関節にしこりが生じる病気には、どんなものがあるのでしょうか。原因となる病気や症状などについて見ていきましょう。それぞれの病気の症状や原因、治療法についても紹介していきますので合わせて参考にしていきましょう。
リンパ節炎
ご存知の方も多いかと思いますが、股関節は多数のリンパ腺が集まったリンパ節のある場所です。
リンパ液には、体内の老廃物を運び排泄する機能と、細菌やウイルスから体を守る免疫機能というとても大切な機能が備わっています。
リンパ液は体中に張り巡らされたリンパ腺を通っているのですが、そのリンパ腺が合流している場所がリンパ節です。
リンパ節は股関節の他に、主に首、脇の下にもあります。
”風邪をひいてリンパが腫れた”という経験はありませんか?風邪の場合は恐らく首のリンパ節が腫れることが多いかと思いますが、その状態が股関節にも起こるのです。
■症状
股関節に1~2cm程度のしこり、腫れ、痛みがあります。しこりは弾力性があり、触るとグリグリと動くような感じがします。
時に発熱や悪寒といった風邪のような症状も現れます。ひどくなってくると腫れの中に膿が溜まってきて腫れが熱を帯びてくる場合もあります。触ったり押したりすると痛みを感じる場合は、良性であると言う特徴もあります。
感染症などになっている場合に発生しやすい症状で、数日で腫れは引くという特徴があります。3日〜1週間以上腫れが引かない場合には病院での検査をしたほうが良いでしょう。
■原因
足にケガをしている時や風邪を引いた時に侵入した菌の感染により発症します。リンパ節が腫れるのは、リンパが原因となっている菌と戦っている免疫反応です。
女性の場合は生理の時にしこりが現れることがあるようです。
特に季節の変わり目や、寒い時期、疲れが溜まっている時期に感染症などにかかって腫れが発生しやすい傾向があります。
■治療
通常は時間と共にしこりは小さくなっていき、自然と消えていく為問題はありません。
しかし、段々としこりが大きくなっていったり、しこりが硬く動かない場合は他の原因である可能性があります。その中には癌等の大きな病気も含まれますので、早急に病院で検査を受けることをお勧めします。
感染症の場合に発生した腫れの場合は、水分をしっかり取って休息をしっかり摂る、食事からしっかりと栄養を摂取するなどの対策が有効でしょう。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫とは、いわゆる”血液の癌”です。
■症状
悪性リンパ腫には特徴的な初期症状が無く、風邪や体調不良のような症状が続く為、病院に行くのが遅れ早期発見が難しくなるケースが少なくありません。
そんな中で唯一おかしいと気付けるのはリンパ節のしこりです。股関節に限らず、首や脇の下に発生する場合もあります。
上記で挙げたようにリンパ節炎との違いとして、
- 段々大きくなる
- 硬く動かない
- 痛みがない場合が多い(痛い場合もあります。)
という特徴があります。その他に、
- 38度前後の発熱
- 寝汗
- 貧血
- 体重減少
- 全身の倦怠感
といった症状もあわせて現れている場合があります。
■原因
まだはっきりと解明されていないようですが、ヘリコバクター・ピロリ菌や、EBウイルスといった菌やウイルスの感染、あるいは遺伝子変異、染色体異常といった遺伝性によるものではないかと言われています。
リンパにがんが発生している場合、リンパ管を伝って他の臓器や部位にがんが転移してしまう可能性が高いので早めに病院へ行きましょう。
■治療
血液の癌というと恐ろしいですが、近年では高い確率で治すことが出来る癌として実績が出ているようですので、前向きに治療に取り組みましょう。
治療方法としては、
- 放射線療法
- 抗がん剤(化学療法)
- 造血幹細胞移植
といった治療が代表的なものとなります。
多くの場合は放射線療法と化学療法で寛解しますが、効果が出ない場合や再発の場合は造血幹細胞移植が行われるようです。
自分で行える対処法はありません。早く病院へ行くことが先決になります。
しこり粉瘤(アテローム)
本来なら排出される体の老廃物が皮下に溜まってしこりができることを粉瘤(アテローム)と言います。
体のどこにでもできる可能性があり、頭や顔、背中等に出来ることが多いのですが、股関節に出来ることもあります。良性の腫瘍で症状が進行して悪性になることはありませんが、大きくなると、手術が困難になってしまうことがあります。
■症状
初期段階では色が無く、白色か肌色の丸く小さなしこりが出来ます。時間と共に黄色や黒色等の色に変化することがあります。
しこりが菌に感染して炎症が起こった場合は痛みが生じます。突然しこりが大きくなることはありませんが、数年かけて徐々に大きくなっていきます。
内容物から、老廃物や肌の代謝物などが入っているのですが、これが漏れることでパンツなどを汚してし合うこともあります。内容物が酸化し臭いを発することもあります。
■原因
原因ははっきりと分かっていませんが、ケガ等の外傷が原因となる場合もあります。
しかし多くの場合は何等かの原因で老廃物(角質、垢)が皮下に溜まってしまい、しこりが発生します。皮膚の細胞が皮下の部分で袋状になてしまうことで、その袋の中に垢などが溜まることでどんどん大きさを増し膨らんでいきます。
■治療
炎症が起こっておらず、痛みや赤みが出ていない場合は経過観察となりますが、この段階では気にならないことが多いので放置する方も多いかと思います。
粉瘤の中央には”へそ”と呼ばれる小さな穴が開いているのですが、ここから菌が侵入し感染してしまうと炎症が起こりしこりが大きくなっていき、痛みや発赤が生じて目立ってきます。
良性腫瘍なので健康上問題になることはありませんが、基本的に粉瘤は自然排出されない為、手術での切除が必要となります。
大きくなると数十センチになることもあり、そこまで放置すると手術範囲が広がってしまいます。できるだけ小さなうちに病院を受診し切除するこをお勧めします。
手術といっても簡易的なものですのであまり心配の必要はありません。また、稀に皮膚癌を合併することがある為、気にならなくても皮膚科あるいは形成外科を受診しましょう。
体の他の部位に発生してしまう粉瘤についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
鼠径(そけい)ヘルニア
太もも、足の付け根部分のことを鼠径(そけい)と言います。
鼠径ヘルニアとは、本来腹部内にあるはずの腹膜や腸の一部が鼠径部から皮下に出てきてしまう病気で、”脱腸”とも呼ばれています。
■症状
初期段階は立ち上がった時、腹部に力を入れた時等に腹膜や腸が出て足の付け根が腫れます。触ると柔らかく、押さえると引っ込むことが特徴です。
内臓が出てくる訳ですから、
- 何か出てくる不快感
- お腹が突っ張る
- 長時間立っていると痛い
といった症状を伴います。
悪化すると脱腸が戻らず嵌頓(かんとん)状態と呼ばれる状態になります。
しこりのように硬くなり、押さえても引っ込まなくなります。痛みも強くなり、腸閉塞を起こしたり腸の組織が壊死してしまう等の命の危険に繋がることもある為、緊急に手術を行うことが必要となります。
■原因
鼠径部には鼠径管と呼ばれる管があり、性器を繋いでいます。
しかし加齢と共に鼠径管の入り口が緩んでくる為、腹圧がかかった時等に腹膜や腸が鼠径管を通って出てきてしまうことが原因です。
鼠径管の大きさから男性に発症する傾向が高く、特に40代以降の男性に多いと言われています。女性でも妊婦の方や出産後の方は発症しやすい為注意が必要です。
■治療
治療方法は手術となります。薬物療法や経過観察で完治することは出来ません。
しかし技術の進歩により現在では日帰り手術も可能な病院も多い為、早く施術を受けることをお勧めします。
手術後も数日から一週間程の安静期間は必要となりますが、一か月もしないうちに運動も可能となり早い段階で日常生活に戻ることが出来ます。
脂肪腫
脂肪組織で出来た良性腫瘍を脂肪腫と言います。40代以降の女性に多く、珍しい病気ではありません。粉瘤と混同されやすい症状ですが、アテロームの様に臭い匂いを発したり内容物が出てきてパンツを汚してしまう様な問題は引き起こりません。
■症状
股関節だけではなく、背中や肩、太もも、おしり等のあらゆる皮下組織に発生する可能性があります。
コリコリとしたしこりで、ほとんどの場合痛みはなく大きさにも変化は見られません。
稀に大きくなる場合もあるようですが、痛みを伴いながら大きくなっている場合は悪性腫瘍となっている場合がある為注意が必要です。
皮膚の表面には異常は認められず、皮膚の脂肪層に発生しているしこりで1〜2センチ程の大きさであることが多いです。
まれに10センチを超えサイズの腫瘍になってしまう場合もあり手術に全身麻酔が必要になる事もあります。
■原因
加齢や染色体の異常が考えられますが、原因ははっきりとしていないようです。
突然痛みのないしこりが発生してしまい、特に問題を引き起こさないので長期間放置する人が多い症状になります。
腫瘍の中では2番めにできやすく筋肉層などにも発生することがあります。外傷をきっかけに発症したり、ストレスが関係していると言う説があります。
しかし具体的な原因が特定されていないので予防法も特に無いので早期に治療して、簡単な内に手術してしまうことが重要です。
■治療法
必ずしも治療が必要な訳ではなく、気にならない場合はそのままにしておいても問題はありません。
しかし見た目が気になったり大きくなってくる場合もありますので、その場合切除による治療は可能です。腫瘍の大きさによりますが、多くの場合は保険適用の簡単な手術で切除することが出来ます。
食事での改善や自己治療が行えるものではありませんので、病院でしっかり治療していきましょう。
梅毒
梅毒は性感染症の一つで、近年10代、20代の若者を中心に感染が増えてきていると言われています。
不特定多数のパートナーと性交を行うなうことで病気の感染を広げてしまうものになります。
■症状
梅毒は性器だけではなく、全身に症状が現れます。
初期症状として、痛みの伴わない赤みを帯びた出来物ができ、これは性器、口腔内、肛門、指等様々な場所に現れる可能性があります。小豆程の大きさで、触るとコリコリとしています。
また、股関節のリンパが腫れます。こちらも痛みはありません。
痛みがないことが特徴です。
大きさは2センチくらいの赤い隆起物で、時間経過とともに破れて潰瘍になります。この時点ではいつの間にかしこりがなくなっていて、触らないと気づかないと言う人も多く居ます。
梅毒は放置してしまうと第二期の症状に発展し、全身に症状は派生していきます。こうなると殆どの人が認識します。
■原因
梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌に感染することが原因です。
感染経路は性交渉やオーラルセックスで、妊娠している場合は赤ちゃんに感染し死産や先天性梅毒を患って生まれてしまいます。
妊娠を考えている方は、事前に検査を行っておくことをお勧めします。
性交を行ってから1週間以内に症状を発症することもあれば10週間を超えて症状が現れる場合もあります。もちろんこの潜伏期間中にも感染を広げてしまいますので、短期間での不特定多数との性交は危険性が高まります。
■治療
最も効果的な治療法は注射によるペニシリンの投与です。
感染期間によって投与の回数や期間は異なりますが、早期治療を行った場合は1度で治療が終わる場合も多いです。
人へ感染する為、治療が終了するまでは性的接触は避けなければいけません。
性器ヘルペス
梅毒と同様、性感染症の一つとなります。こちらも人への感染がある為、治療を受けるが必要があります。
これら性病は、自分だけでなくパートナーも一緒に治療を同時進行していくことが重要になります。自分だけ治療を行っても、パートナーがまだ病気に感染していれば、また同じ病気にあっています。
性病は一度かかったら二度かからないというものではないので、しっかり治療と感染の予防をしていきましょう。
■症状
数日の潜伏期間を過ぎた後、性器の痒みが生じます。進行と共に小さな水膨れがたくさんでき、ヒリヒリとしみるような痛みが生じたり、股関節のリンパ節が腫れて押さえると痛みを伴います。
女性の方が症状が重い傾向があり、痛みが強く歩行や排尿、排便困難となる場合もあります。
■原因
単純ヘルペスウイルス1型、2型の感染が原因となります。感染経路は性交渉、オーラルセックスです。
梅毒と同様、こちらも感染しながら妊娠してしまうと赤ちゃんにも感染し、死産や重いヘルペス感染症を患ってしまいます。その為感染リスクが高い場合は帝王切開が行われます。
■治療
初めての感染の場合、内服薬や外用薬で治療を行います。症状が重い場合は抗ウイルス薬の点滴を行ったり、排尿困難の場合は回復するまで入院が必要となる場合もあります。
また、再発を繰り返している方に対しては症状が出ていなくても抗ウイルス薬を飲み続けるといった治療が行われます。
また、性病の感染はコンドームの使用でも防ぐことが可能ですので、完全に予防できるわけではありませんが、正しくコンドームを使用することで性病への感染を予防していきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
股関節のしこりといっても、痛みがあるもの、無痛のもの、硬いもの、柔らかいもの等様々な状態があり、考えられる病気も多岐に渡ることが分かりました。
勿論、今回ご紹介したもの以外にも股関節にしこりが現れる病気は幾つもあります。
いずれも早期に治療を行えば簡易的な治療で完治させることができるケースが多い為、股関節に腫れや違和感等を感じたら早めに病院を受診しましょう。
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