がん・心筋梗塞・脳卒中は国民の三大疾病と言われ、日本人の死亡原因の上位3位を占めています。
脳卒中とは、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳に障害を与える疾患の総称で、発症後、治療し一命をとりとめても、麻痺や障害が残り、生活に不自由したり、リハビリを必要としたりするケースもあります。
これらの病気は、遺伝の影響もありますが、過度なストレスや過労、食事などの生活習慣から引き起こされるとみられています。m普段から、このような病気にかかりにくい生活習慣を心がけ、病気のリスクの少ない生活を送りたいものです。
ここでは、その中の「脳梗塞」にクローズアップし、脳梗塞はどのような病気か知り、脳梗塞にかかりにくい生活習慣や、万が一、脳梗塞になった場合のサインを見逃さない初期症状、治療法、脳梗塞になった場合の予後などをご紹介したいと思います。
脳梗塞とはどんな病気なの?
先にご紹介した通り、脳梗塞は日本人の中でも死亡率の多い疾患です。その数は近年、増加の傾向にあります。
脳梗塞とは、脳の血管がなんらかの原因で詰まり、脳の血流が滞った結果、脳組織に酸素や栄養が行き届かなくなり、壊死してしまう病気です。
血管が詰まり、脳細胞が壊死した場所により症状の出方や程度に違いがあります。
血管が詰まってから、脳細胞が壊死する時間は脳梗塞の中心部だとおよそ1時間程度、その周辺であれば数時間と言われていて、早期発見、早期治療がその予後に大きな変化をもたらすと言われています。そのうような観点から、脳梗塞では症状が出てから3時間以内に治療開始することが望ましいです。
脳梗塞の分類
脳梗塞は早急に的確な治療が必要なため、その種類を細分化しています。発症原因をきちんと見極めることでより有効的な治療ができるからです。
アテローム血栓性脳梗塞
脳血管に通ずる首や脳の大きな動脈が動脈硬化を起こし、進行することで脳血管が詰まり、狭くなるなることにより、脳内の血流量が減少し引き起こされる脳梗塞です。
高血圧や加齢、高脂血症、糖尿病などが危険因子として挙げられます。
心原性脳塞栓
なんらかの原因で心臓にできた血栓が、血流にのり脳血管にたどり着き、その血栓が脳血管を詰まらせることにより引き起こされる脳梗塞です。この脳梗塞は、日中の活動時間に突然起こることが多く、脳の広範囲に短時間で大きな脳梗塞を起こしやすいと言われています。
心臓病、高血圧、高脂血症が危険因子として挙げられます。
クラナ梗塞
脳血管の中でも、大きな動脈などでなく。抹消の細く小さい血管(直径1.5ミリ以下)の脳梗塞です。
高血圧や加齢などが危険因子に挙げられます。
脳梗塞を誘発する危険因子
脳梗塞は外傷などの明らかな原因などでなく、日頃の生活習慣などの蓄積などで起こりうる病気です。脳梗塞を引き起こしやすい危険因子を抱えている方は、普段から気をつけることで脳梗塞の発症を予防したり、早期発見に繋げることができます。
高血圧
高血圧は脳梗塞を発症する最大の危険因子とも言われています。
血圧とは心臓から全身に血液が送り出される時に血管にかかる圧のことで、血圧が高いということは、血管にかかる負担やダメージが大きいということになります。長期にわたり、高血圧で血管のへの負担やダメージを与えていると、血管は動脈硬化を起こします。
動脈硬化が進行すると、血管の壁が厚くなったり、コブができ、それにより血管が細くなったり、血栓ができたりして血流が悪くなります。
脳に酸素や栄養分が行き渡らない時間が続くと、脳細胞が壊死してしまいます。
高血圧は心臓にも脳血管にも負担が大きく、それが引き金となりさまざまな病気を発症する原因になりうるのですが、血圧が高めであっても、困った症状が出ないことから特に日常生活や食生活を見直すことなく日々を過ごしてしまう方もたくさんいらっしゃいます。
普段から自分の血圧を図り、知っておくことは大切なことです。基本の数値は140/90mmHgです。
糖尿病
糖尿病の4大合併症として、網膜症、腎症、神経障害、脳梗塞が挙げられています。糖尿病になると、血管のダメージが大きく動脈硬化を起こしやすいことが分かっています。
厚生労働省の調べによると、糖尿病は全てのタイプの脳梗塞を引き起こしやすいそうです。
糖尿病はきちんと治療をしていれば、命に関わるようなことはありませんが、そのままにしておくとさまざまな合併症引き起こしてしまいます。
健康な人に比べると、脳梗塞は2倍の確率で発症するそうです。詳しくは、糖尿病は完治する?症状や治療方法について!を参考にしてください。
喫煙
タバコに含まれるニコチンは人間の体にとっては有害物質です。
ニコチンは血管を収縮させ、心拍数や血圧を高める作用があります。そのため、収縮した血管に高い圧が加わることになるので、脳梗塞の発症率を高めることになります。
また、長期に及ぶニコチン摂取は高血圧の原因にもなります。
また、ニコチンは血小板を固まりやすくさせることで血液をドロドロにさせることも分かっています。血液がドロドロになると、血管が詰まりやすく血栓ができやすくなり脳梗塞を起こすリスクが高まるのです。
このような点から、喫煙は身体によくないことが知られています。禁煙2年で脳梗塞の発症率が減り始め、5年もすると喫煙をしていない人と同じ発症率になります。
過剰なアルコール摂取
お酒は気分転換やお付き合い程度で少々嗜む程度であれば、健康に害を及ぼすようなことはありませんが、過剰に摂取すると脱水や睡眠時の無呼吸症候群や血小板を固まりやすくしてしまうことで、血液がドロドロになり脳梗塞を引き起こしやすくなります。
一日のアルコール摂取量は60g以下にとどめましょう。
500mlのビール1本のアルコール量が24gなのでビール500ml缶2本以上は飲まないようにしましょう。
高脂血症
高脂血症(別名:脂肪異常症)とは血液中のコレストロールなどの中性脂肪が高くなる病気です。高脂血症は動脈硬化を引き起こしやすいことから、脳梗塞のリスクが高まります。
見逃したくない脳梗塞の初期症状
脳梗塞は死亡率も高く、また命は取り止めたとしても、後遺症を残しやすく、リハビリや介護が必要になりうる可能性の高い疾患です。
発症から治療開始までの時間が短ければ、短いほど後に与える影響が違ってきます。脳梗塞の前触れや初期症状のサインを見逃さないようにしましょう。
一過性脳虚血発作
- ろれつが回らず、はっきり喋れなくなる。
- 口がきちんと閉まらない。
- 顔が左右非対称にゆがむ。
- 片方の手足がしびれたり、脱力したりする。
- 片方の目の視野が狭くなったり、見え方に異変がある。
- ふらつきがある。
- つまづきやすくなる。
- 言葉の理解ができなくなる。
上記のような症状が起こりますが通常は20~30分で治まります。短時間で症状が消失してしまうため、あまり気にせずやり過ごしてしまいますが、この後、12時間~48時間以内に脳梗塞を発症すると言われています。
特に全身の縦半分にしびれや脱力が起こるときは脳梗塞のサインであることが多いので要注意です。
脳梗塞の治療方法
脳梗塞は脳の壊死を最小限にするためにも、発症から治療までの時間との戦いです。
急性期の治療
発症からの経過時間により対応の仕方が変わります。
カテーテルや点滴で血栓を溶かすお薬を投与したり、状況に応じて頭蓋骨を外して血管の詰まりを除去したり、お薬の投与で血液が固まるの防いだりして、脳梗塞の範囲が拡がるのを食い止め、脳の壊死を最小限にとどめるよう治療します。
慢性期の治療
急性期を過ぎると、再び脳梗塞を起こさないように治療を始めます。危険因子のところでも、ご紹介した通り、脳梗塞をおこしうるさまざまな原因を排除していくことが再発防止の鍵になります。
- 内服薬の服用・・・血圧が上がらないようにしたり、血栓ができないように血液の循環を良くしたりするお薬を継続的に内服します。
- 血管療法・・・脳につながる血管が狭くなっていたり、血栓があるときはそこから脳梗塞を引き起こさないように血管内膜切除術を行い、動脈硬化を防ぎます。
脳梗塞のリスクを下げる生活習慣
脳梗塞に原因からわかるように、生活習慣を見直すだけでも予防につながります。
血圧の管理
普段から塩分を控えて、うす味の食事を心がけましょう。
また、家庭用の血圧計を準備し毎日、セルフチェックをしましょう。血圧のお薬を飲んでいる方は服用を忘れないようにしましょう。
ストレス
過度なストレスは自律神経の乱れを引き起こし、脈拍の乱れや血圧上昇を招きます。
それだけではなく、ストレスが血管の収縮を引き起こし動脈硬化を進行させたり、ストレスによるホルモンの作用から血糖値があがったりします。
また、食べることでストレスを発散すると食生活が乱れたり、タバコやアルコールの過剰摂取に引き金にもなりかねません。
上手くストレスコントロールをし、ストレスによる身体の不調を引き起こさないように心がけましょう。
水分補給
こまめな水分補給をし、脱水を起こさないようにしましょう。
水分が足りていないと、血液がドロドになります。夏場は特に汗をかいたり、喉が渇いたときだけでなく、こまめに水分補給をすることが大切です。
食生活の見直し
塩分控えめ、薄味の食事は基本です。醤油やソースは食べ物に直接かけるのではなく、取り皿に醤油やソースを出し、食べ物を付けて食べるようにしましょう。
魚に含まれるDHAなどの成分は動脈硬化を予防し、納豆に含まれるナットウキナーゼは血栓を溶かす、梅干やレモン、酢など酸っぱい食べ物のクエン酸には血液をサラサラにする作用があり、脳梗塞のリスクを下げます。
詳しくは、脳梗塞を予防するには?症状や原因を知っておこう!を読んでおきましょう。
まとめ
脳梗塞は命に関わる病気であり、後遺症も残りやすい疾患です。
普段から、自分の身体の調子を知っておくことや、脳梗塞のサイン、初期症状を知っておくことは大切です。
また、日常生活や食生活を規則正しく、身体に優しい過ごし方をすることは脳梗塞だけでなくさまざまな疾患の発症予防につながります。
生活習慣を見直し、病気のリスクの少ない毎日を過ごしましょう。