動脈硬化という言葉を聞いたことがあるという人は多いかと思います。生活習慣の乱れで引き起こされる血管の病気ですが、時として生活を脅かすことがあります。
閉塞性動脈硬化症は、足の動脈に異常が起こる病気です。様々な症状を合併すると、1人で歩くことが困難になってしまうなんてこともある病気です。
では、この閉塞性動脈硬化症の症状や原因。そして予防法についてみていきましょう。
閉塞性動脈硬化症とは?
冒頭でも述べたように、この病気は足の動脈に異常がみられます。動脈硬化とは血管の柔軟性が失われたり、狭窄してしまうことで、血液の流れが悪くなる状態です。
血管はもちろん、全身に張り巡らされていて、毎秒毎秒血液が流れています。しかし、動脈硬化を引き起こすと、血液循環が悪くなり、様々な症状を発症します。
閉塞性動脈硬化症の症状とは?
この病気の代表的な症状として以下のことがあげられます。
間歇性跛行(かんけつせいはこう)
間歇性跛行とは時間を開けながら足に関して様々な歩行障害が起こる症状です。症状が出るのだけどもちょっと歩くと改善される。しかし、また少しすると症状が出る。そのようなことを繰り返します。間歇性跛行では主に次の症状が繰り返されます。
- しびれ
- こむらがえり
- 足の痛み
- ふくらはぎの疲労
これら症状が改善されたり、治ったりを繰り返します。歩行中に起こるものですから、歩くことがなかなか億劫になるという人もいます。
足先の冷え
血液が循環しにくくなっていますから、足先の強い冷えを感じることがあります。また、足先の色が青白いなど血液のめぐりが悪いことを目で見てわかることもあります。
疼痛
針で刺されるような痛みを疼痛といいますが、このような痛みが安静時にみられます。寝ているとき、座っているとき。場所や時間を選ぶことなく症状を発症します。
壊死
閉塞性動脈硬化で最も症状が進行した状態。それが壊死です。よく指先を輪ゴムで縛ると血液が止まり、壊死するという話がありますが、その状態がまさに足先で起こっている状態といえます。
血管が完全に狭窄してしまい、血液が細胞まで届かず、壊死してしまいます。壊死部は黒ずみ、症状の深刻さを目で見ることになるでしょう。
患部の壊死がみられる場合、最悪切断手術をすることがあります。その段階まで至るまで、時間はありますが放置することのないようにしたいものです。
閉塞性動脈硬化症の原因とは?
閉塞性動脈硬化症に限ったことではありませんが、血管が狭窄したり、しなやかさを失ってしまう原因はいくつかあります。具体的には以下のことがあげられます。
高血圧症
血圧が高いとはよく言いますが、これはどういう意味なのでしょうか。血圧とは血液が血管の壁を押す圧力のこと。高血圧はつまり、血管の壁にかかる圧力が高いことを意味しています。
常に高い圧力がかかるわけですから、血管は柔軟性を失っていきます。このような原因で血液が流れにくくなり、閉塞性動脈硬化症を発症することとなってしまうのです。
高脂血症
血液中のコレステロールや中性脂肪の値が高い状態を高脂血症といいます。このような脂肪は血液中の壁にへばりつき、蓄積していきます。その結果、血液の流れを阻害してしまうことがあるのです。
健康診断で中性脂肪の値が高いなんていわれている人は、血液の流れが悪くなっている可能性があります。また、足先はそもそも血液が届きにくいですから、より注意する必要があるでしょう。
喫煙
タバコに含まれる有害物質は血管の収縮作用があります。つまり、喫煙をするだけで、血管が細くなってしまうのですね。血液がうまくながれにくくなり、閉塞性動脈硬化症のリスクを高めます。
先に述べた間歇性跛行。実は喫煙者の場合、そうでない人と比べて症状の発症率が3倍高まるといわれています。喫煙をしているだけで、歩行に問題がでるようになる。喫煙には注意したいものです。
糖尿病
血液中の糖の濃度が高くなってしまう病気を糖尿病といいます。聞いたことがあるという人も非常に多いのではないでしょうか。この状態の血液は非常にどろどろとしていて、水飴のようになっています。
このような、そもそも血液状態が悪く、流れにくい状態が閉塞性動脈硬化を発症させる原因です。血糖値が高いと医師から指摘されている人は要注意です。
肥満
肥満はこれまでご紹介した原因を総合的に含む原因です。太っている、ということは食生活に問題があり、それと同時に血液に関して何かしらの異常をきたしている可能性があります。
肥満は生活習慣病の1つに数えられています。男性でウエストが85cm以上、女性で90cm以上であれば、腹部肥満と診断されます。この数値を超えるようであれば注意が必要でしょう。
もっと怖い病気の合併
足に動脈硬化が起こるだけでしたら、まだ命の危険はありません。生活は不自由になるものの、命だけは助かります。しかし、症状を放置するとさらなる病気を引き寄せることがあります。
脳血管障害
動脈硬化症が起こる原因は血液に何かしらの異常があることでした。それは高脂血症、高血圧。そして糖尿病をはじめとする高血糖症。そして、その影響は脳まで及ぶことがあります。
脳血管障害は脳の血管に何かしらの異常が起こり、脳の血流がストップしてしまう病気です。脳梗塞や脳出血などがあります。このような病気にも動脈硬化は関わっています。
例えば脳へ送られる血液の血糖値が高ければ、それだけ脳の血管にも影響を与えるでしょう。脂質が高かったり、高血圧の場合も同様のことがいえるでしょう。足の病気が実は脳の病気とつながっている。そんなこともあるのです。
心臓疾患
重要な器官は脳だけではありません。心臓もまた病気を抱えれば命の危険がある器官です。血液に異常があることで起こる心臓の病気は心筋梗塞があります。
心筋梗塞とは心臓に血液を送る冠状動脈という血管が詰まってしまうことで起こります。心臓を動かす筋肉に血液が行かなくなり、早急に治療をしなければ命の危険があるでしょう。
これも脳血管障害と同様に血液の状態が悪いために起こります。血管にコレステロールが詰まって、狭窄することがありますから、なかなか侮れないでしょう。
合併症の恐怖
閉塞性動脈硬化症を発症している人の実に5人に1人が上記のような、重要な器官の血管障害を発症するといわれています。さらにその発症者のうち15%は命を落とすこともあります。
これは決して低い数値ではないと思います。病気を予防することができるにもかかわらず、予防策をしないまま過ごしてしまうと、命の危険がある。それもある日突然起こることもあるのです。
閉塞性動脈硬化症は間歇性跛行というわかりやすい症状を発症します。その時点できちんと対応することができれば、重篤な症状を招くことはないでしょう。
どんな病気もそうですが、病気が悪化する前に対策を取ることが治療も症状を最小限に抑えるポイントといえるでしょう。自覚症状があるときは体の健康に気を使う必要があるのだと思いますよ。
閉塞性動脈硬化症の治療とは?
では、実際に閉塞性動脈硬化症になってしまったとき、どのような治療が行われるのでしょうか?
禁煙
喫煙者の方はまず禁煙することから始まります。先に述べたように、タバコに含まれる有害物質は血管を収縮させる作用があります。少しでも症状を改善するためには禁煙が必要でしょう。
薬物療法
足の血液循環を良くするために血管を広げる作用のある薬や、抗血小板薬を投与することがあります。これは心臓や脳の血流も良くし、合併症を予防する効果があるといわれています。
運動療法
体を動かすことは自然な形で血液の流れを回復することができます。病気を発病するとついつい引きこもりがちになってしまうこともありますが、治療では運動習慣を身につけることがポイントになります。
運動療法では週に3回程度の機械を使ったウォーキングをします。症状がでたら休憩をし、治まったら再開。これを繰り返し、30分程度の運動をします。
炭酸泉療法
炭酸が含まれた温水に足をつける治療法です。炭酸が皮膚から浸透し、直接血管を拡張する作用があります。これにより閉塞した血管を広げ、病気を改善する効果が期待できるでしょう。
血行再建術
血行を回復させるために手術を行います。主に「バイパス手術」と「カテーテル術」があります。パイパス術は詰まった血管を他の血管で代用して、それより先の細胞に血液を届くようにする手術法です。
カテーテル術は細いカテーテルという医療器具を血管に挿入。血管の詰まりを除去し、血液の流れを良くする治療法です。負担が少なく、短時間で終わるというメリットがあります。
生活習慣の改善が大事
閉塞性動脈硬化症になるのには必ず原因があります。それは先に述べたような原因が考えられるでしょう。いくら上記のような治療を行なったとしても、それら原因が改善されなければ再発のリスクがあります。
例えばいつまでも喫煙をするようであれば、病気はまた発病するかもしれませんよね。糖尿病も食習慣を元にした病気ですから、これを改善しなければ治る病気も治らないでしょう。
治療はそのときだけで終わるわけではありません。日々の生活習慣を改善し、健康を今一度考え直すこともまた、立派な治療の1つなのだと思います。
閉塞性動脈硬化症の予防
病気の予防は原因を知ることでわかります。喫煙、高血圧、高脂血症などがありますが、これらを改善していくことが、ゆくゆくは閉塞性動脈硬化症の予防につながるです。では、具体的にどのように予防していけばいいのでしょうか?
禁煙してみる
長期間喫煙をしている人にとって 、禁煙ほど辛いものはないのかもしれません。いらいらしたときや食後の一服は、精神を落ち着かせ、気分をすっきりとさせてくれるものです。
しかし、そこまでして体を病気にさらす必要があるのだろうか。そんなことをふと考えてみてください。最悪、歩けなくなる閉塞性動脈硬化症。この病気の発症は生活を一変させてしまうほど怖いものです。
禁煙には何かの動機や理由が必要かもしれません。将来、歩けなくなるのがいやだ。そう思ったのであれば、まずは1日に吸うタバコの量を減らしてみてくださいね。
食事の改善
病気の原因に高血圧、高脂血症がありました。これらは食習慣に問題があるために起こる生活習慣病です。病気の予防のためには、食習慣の改善が必要だといえるでしょう。
例えば高血圧は塩分の過剰摂取が原因といわれています。世界保健機関が定める1日の塩分摂取目安は5グラムですが、日本人はその倍近く摂取していることが研究からわかっています。
また、高脂血症も日常的にお肉を食べる習慣がつくようになったことが発症の原因といわれています。昔と比べてお肉を食べるようになった日本人。コレステロール値が上がり、肥満が増えてしまったのです。
病気予防のためにできることは、食事を改善すること。具体的には塩分や脂質を控えることです。塩の代わりに香辛料で食べる。お肉ではなく魚を食べる。ちょっとした変化を加えるだけでも、体への負担は変わってきますよ。
運動習慣を身につける
社会人になると運動をする機会はどんどん減りますよね。それこそ、1日中デスクワークをしていて、会社と家の帰路以外体を動かさない。そんな人もいるのではないでしょうか。このような慢性的な運動不足は体の血液循環を滞らせる原因です。
病気予防為に運動をする習慣を身につけてください。30分のウォーキングを週に数回行うだけで、病気を予防することができます。ハードな運動ではなく、簡単な運動を続けてみてくださいね。
閉塞性動脈硬化をどう捉える?
閉塞性動脈硬化症は、局所的に捉えれば足の病気です。足がしびれたり、冷えが強くなったり。はたまた歩くのが辛くなるなんてことを起こしてしまう病気でした。
しかし、その背景には動脈硬化を起こすような原因が数多く隠れていることがあります。そして、その原因は閉塞性動脈硬化症だけではなく、より大きな病気を招く可能性があります。
先に述べたような脳血管障害、心臓疾患は閉塞性動脈硬化症の延長線上にある病気といえるかもしれません。足の症状だけを治すこともできますが、治すところはそこだけはないのです。
大切なのは病気になってしまった原因を見つけ、改善すること。このことをしなければ、例え病気が治ったとしても、また別の病気を発病してしまうかもしれません。
血糖値が高い、血圧が高い、コレステロールが高い。これらのことは健康からかけ離れた体の状態です。この状態を放置することはとても危険なことです。
病気が治った、無事に歩けるようになった。このことはとても嬉しいことです。ですが、病気をきっかけにして健康を見直すこと。これが今後も健康でいるために必要なことなのだと思います。
小さなことからコツコツと
例えば糖尿病を発症する原因の多くは、日常的な糖質の取りすぎです。炭水化物や甘いものを大量に短時間で食べていると、肥満と合わせて糖尿病のリスクを高めます。
しかし、これを改善するのはそれほど難しいことではありません。食べ物をよく噛んで食べる、時間をかけてゆっくり食べる、野菜を先に食べる。これらのことをするだけで、血糖値の急激な上昇を抑えることができます。
高血圧も塩分の過剰摂取が原因ですが、これを回避するためにできることはジャンクな食べ物を控えたり、運動をするということがあげられます。どちらも血圧を安定させる効果をもたらしてくれます。
カップ麺やポテトチップス、もしくは外食で食べる塩辛いものには多量の塩分が入っていますから、摂取量に十分気をつける必要があります。
ちょっとした日常の癖が積もり積もって病気を招くことがあります。どうして自分が病気になったのか。その原因を他の人と比べてみると、わかることがあるのではないでしょうか。
まとめ
たかが足の病気。そう思ってしまうと生活全体を暗くしてしまいます。歩くという日常動作ができなくなることは、心身ともに大きな負担を課すことでしょう。とても辛いことですよね。
また、病気を放置する先には重篤な病気が待っていることもあります。時として命に関わる病気であるため、病気が治ったとしてもその後の生活習慣を見直すことが大切です。
閉塞性動脈硬化症はそんな体の状態に警報を鳴らしてくれています。この状態が続けば、体がどんどん悪くなる。そういう風に病気を捉えると、体が悪くなった原因を用意に見つけることができるかもしれません。
喫煙、肥満、高血圧…生活習慣と密接につながった病気はたくさんあります。しかし、反対に言えば、生活習慣を正すことで病気を予防したり、治療することは十分可能です。病気をきっかけとして、そんな生活習慣の改善をしてみてくださいね。