手首を捻挫してしまう場面というは多々あると思います。どこかにぶつけてしまったり、転んでしまった時に地面に強打してしまったり。その後も痛みが続くと、生活に不便を感じることがあるかもしれません。
手首を捻挫してしまった時、具体的にはどのような状況になっているのでしょうか。また、症状を悪化させないための処置や治療法についてもみていくことにしましょう。
捻挫ってどんな状況?
骨と骨を繋ぐ関節は、稼働範囲があります。手首を捻ったり反らすことはできますが、どの角度でもできるわけではありません。捻挫はこの可動範囲を超えた時に起こる関節部の損傷です。
損傷してしまうのは靭帯や腱。また、骨そのものを傷つけてしまうことがあります。程度によって症状や痛みの出方は異なり、症状を詳しく診断する必要があるでしょう。
捻挫というと出血とは違い、どうしても状況がわかりにくく、軽視されがちです。しかし、痛みが継続的、もしくは激しい場合は早めに対処する必要があるでしょう。
手首の捻挫と症状の段階
手首を捻挫した瞬間は強い痛みを感じます。その後の症状は捻挫の状態によって変わります。具体的には以下の段階があり、症状によっては早めの治療を求められることがあります。
靭帯が少し伸びている状態
強い外力によって関節の可動域を超える運動があったものの、心配のない段階です。もちろん、患部を動かさないことが大切です。痛みが引くまでは安静にするようにしましょう。
靭帯に損傷がある状態
骨と骨と繋げる靭帯に強い損傷があるケースで、一部が切れてしまっています。かなり強い痛みを感じ、その場から動けなることもあるでしょう。早急な対処が必要です。
靭帯が切れてしまっている状態
靭帯の一部が切れるのではなく、完全に断絶してしまっている状態です。堪え難い痛みを感じ、治療にもかなりの時間を要します。また、周囲の骨にも影響を与えることがあり、剥離骨折を起こしていることもあります。
症状の判断のために
症状の段階は見た目ではどれも一緒なので、素人が判断するのは難しいかもしれません。ただ、異常かどうかの判断のポイントがあります。それは痛みと腫れです。
先に述べたように強い痛みがあるほど状況は良くありません。また、時間が経つにつれ、患部の腫れや充血が見られるようであれば、これも状況は良くないでしょう。
痛みが引くと思っていたけど、全く引かない…こういった状況であれば、きちんとした検査を病院で受ける必要があるでしょう。安易に判断しないことをおすすめします。
捻挫の処置方法
では、手首を捻挫してしまったとき、どういった対処法を実施すればいいのでしょうか。具体的にはRICE法という方法があります。
この後の怪我の状態を決めることもあるので、きちんと対処するようにしましょう。
RICE法とは
RICE法とは捻挫や打撲といった怪我に対して行う4つの応急処置の頭文字をとったものです。痛みを緩和し、状況の悪化を食い止めることができます。具体的には以下の方法となります。
R:Rest 安静にする
当たり前のことですが、患部を動かしてしまうと症状は悪化してしまいます。また、患者自身が動き回ると二次的な事故が起こることもあるでしょう。まずは安全な場所に移り、安静にする必要があります。
I:Ice 冷やす
捻挫をすると患部は熱を持つことがあります。炎症や内出血が起こっているためですね。このため、患部を冷やしてあげることをします。氷水などをタオルでくるみ、熱を持っている箇所を冷やすようにしましょう。
ちなみに、よくコールドスプレーだけで対処する話を聞きますが、この対処はあまりおすすめできません。冷やす効果が一瞬しかないからです。また、そのまま運動を継続してしまうと、症状が悪化してしまうこともあります。きちんと応急処置をするようにしてください。
C:Compression 圧迫
Iceと同様、患部の炎症や内出血による腫れを防ぐため、患部を圧迫します。圧迫しすぎてしまうと血が止まってしまうこともあるので、適度な力で圧迫するようにしてください。
E:Elevation 拳上
怪我をした直後は、なるべく患部に血液を循環させたくありません。内出血を悪化させる可能性があるからですね。このため、患部を心臓より高い位置にあげることで、症状の悪化を防ぎます。
初期対応が今後を決める
手首を捻挫してしまった時、たかが捻挫と思って対処をしない人がいます。しかし、見た目以上に患部が傷ついてしまっていることがあります。放置すれば当然、状態を悪くしてしまうことがあるでしょう。
もし、RICE法をしなければ患部は腫れ、内出血を起こし、関節包靭帯が傷ついたままということも起こるかもしれません。そうなれば、手首にずっと違和感を持ち続けることになるでしょう。たかが捻挫、されど捻挫。痛みの程度が小さくても、きちんとした対処をする必要があるでしょう。
捻挫を甘くみない
捻挫と聞くと、あまり重症であるというイメージがないかもしれませんよね。子供がよくなるような怪我ですから、その対処が甘くなったり、放置してしまうこともあるでしょう。しかし、ここに捻挫の落とし穴があるのです。
可動域を超えて伸びてしまった腱や筋肉は一時的な炎症を発症しています。この症状はきちんと対処しなければ癖になってしまうことがあります。また、症状も延々と続いてしまうこともあるでしょう。
捻挫だからといって、対処をしない理由にはならないですし、その後の後遺症も残したくないのであれば、きちんとした対処をしなければなりません。体の状態を最善に保つためにも、捻挫を甘く見ないで対処するようにしましょう。
手首の捻挫の治療
手首の捻挫をして、RICE法を行なった後はきちんとした治療を行う必要があります。RICE法はあくまで一時的な対処方法なので、怪我の状態が良くなるとも限らないでしょう。では、具体的にどのような治療をしていくのでしょうか。
基本的には安静にする
手首の状態を治す最善の方法は安静にすることです。患部に刺激を与えないようにし、なるべく動かない。忘れられがちですが、安静にするというのは怪我の治療の最も基本的なことです。
捻挫の程度が小さいと自己判断をして、その後も手首を動かす運動をしてしまう。これは状態を悪くする例です。最もやってはいけないことでしょう。状態をきちんと見極め、安静にしてくださいね。
テーピングやサポーターを着用する
患部を動かさないためにテーピングやスポーツ用のサポーターを着用するのもいいでしょう。日常生活をしていても、余分な負荷を分散してくれますし、なにより患部を固定してくれます。
もちろん、これらの力に頼り、そのままスポーツ等をしてしまうというのは避けるべきでしょう。症状の悪化を招く可能性があります。痛みが引くまで着用してみてください。
患部を温めていく
手首を捻挫したとき、腫れを発症することがあります。これは先に述べたように内出血が起こっているためです。こういったときは冷やすことが対処法の1つでした。
一方で痛みが引いた段階では患部を温めてあげます。これは患部に血液を送り、回復を早める効果があります。お風呂、湿布、温タオル、薬など患部を適度な温度で温めてあげるようにしましょう。
無理のない範囲でストレッチを
損傷した患部を動かさないままだと、関節が固まってしまうことがあります。そのため、無理のない範囲で関節や筋肉を動かすストレッチを行なっていく必要があります。
もちろん、負荷が大きかったり、痛みが残っているようであれば、やらないほうがいいでしょう。症状が悪化してしまっては本末転倒です。状態を見極めながら行なっていくようにしてください。
時間がかかることを理解する
捻挫の治療は自分が思っている以上に時間がかかります。早ければ2週間程度、長くて数ヶ月かかることもあるでしょう。個人差はありますが、それほどの時間がかかるということを情報としてまず理解する必要があります。
そんな中、気持ちが焦ってしまうと、かえって治療期間が延びるということもあるでしょう。それはできるだけ避けたいものです。また、怪我が癖になってしまうこともあります。落ち着いて、ゆっくりと治していくことを心がけてくださいね。
子供の捻挫には注意が必要
子供は遊んでいて、手首を捻挫してしまうことは多いでしょう。しかし、大人とは違い、その痛みを理解していても、ついついはしゃいでしまうというのが子供でしょう。早く治すためには安静が必要です。家できちんと言い聞かせるようにしてくださいね。
また、子供の骨は成長過程であり、捻挫が癖になってしまうと、その後も損傷しやすいことがあります。この骨を成長軟骨といい、骨端線という骨の境目で骨折していることもあります。きちんと治るまでやはり安静にしておく必要があるでしょう。
整形外科と整骨院の違い
捻挫をしてしまった時、整形外科と整骨院、どちらにいけば迷うことってありますよね。骨格のことですから、整骨院でもいいように思えますが、まずは整形外科をおすすめしたいと思います。
というのも、整骨院では詳しい状況を知るためのレントゲン撮影ができないからです。仕事でできる範囲が違うのですね。骨折をしていたとしても、骨折部分がどういう状況なのか。その判断ためにはレントゲンで写真を撮る必要があるのです。整形外科であれば、レントゲン撮影ができ、診断も早いでしょう。
一方で整骨院はリハビリといったことであれば通ってもいいと思います。捻挫の場所が手首ではなく、足首などの部分であれば、ある程度リハビリが求められるでしょうから、相談してみてください。
そのほかの手首の痛みを招く怪我
手首の痛みを招くのは捻挫だけではありません。捻挫だと思ったら実は骨折をしていた…そういったこともあるのです。痛みが長引いているようであれば注意が必要でしょう。では、具体的な怪我についてみていきましょう。
TFCC損傷
TFCCとは三角線維軟骨複合体といいます。難しい言葉ですが、小指側の手首の軟骨で起こる怪我です。この軟骨部位には手首の安定性向上のために、複数の靭帯が集合しています。
TFCCは安定性のほか、手首に伝わる衝撃の吸収、手首を支えるなどの役割があります。この部位が損傷してしまうと、様々な症状を発症してしまうことがあります。具体的には以下のことが起こります。
- ドアノブなど曲げる動作時の痛み
- 何かを持った時の痛み
TFCC損傷は特にテニスプレーヤーなどのラケット競技を行う選手に多いといいます。ボールの打ち返しの際、強い力がTFCCにかかりますから、それが原因となってしまうのですね。
TFCC損傷の治療は基本的に固定することです。患部をテーピングなり、サポーターで固定し、極力動かさないようにします。程度によって異なりますが、比較的長い時間、治療を要することになるでしょう。
詳しくは、TFCC損傷を詳しく知ろう!治療のための手術や原因、症状を細かく紹介!を参考にしてください。
腱鞘炎
腱鞘炎は身近な手首の痛みとしてとても有名でしょう。手首の使いすぎて痛くなる怪我です。腱鞘とはその名の通り、腱を収める鞘のような組織です。腱鞘の中を腱が通り、動きをスムーズにしています。
しかし、手首の使いすぎてしまうと、腱と腱鞘が摩擦を起こし、炎症を起こしてしまうのです。料理人や打楽器など音楽をしている人に好発しますが、普通に過ごしていても手首を使いすぎているようであれば注意が必要です。
腱鞘炎の治療も基本的には患部の固定と安静です。また、患部に栄養を届けるためにきちんとした食事を食べること。また、無理のない範囲でリハビリをする必要があるでしょう。
詳しくは、腱鞘炎に湿布は有効?それともテーピング?適切な処置とは!を参考にしてください。
手首の骨折
転倒の際、手首を思い切りついたとき、強い痛みが走った。このようなときは手首の骨が折れてしまっている可能性があります。患部の腫れがみられるようであれば、その可能性は高いでしょう。
手首骨折は放置してしまうと治りにくくなってしまいます。また、レントゲン等で検査しなければ状態がわかりません。痛みが激しく、患部も大きく腫れてきた。このようなことが見られるようであれば、治療を受けるようにしましょう。
詳しくは、手首の骨折は手術が必要?治療方法や原因についてを参考にしてください。
手首の捻挫を予防するために
手首の捻挫というのはふとした瞬間に起こるものです。若い人であれば回復も早く、それほど心配する症状ではありません。しかし、高齢者ともなると、些細な転倒で手首の捻挫を招いてしまうこともあるでしょう。
では、ふとした瞬間の転倒を防ぐためにはどういったことをすればいいのでしょうか。年齢を重ねるにつれ、思うように体が動かなくなってくることもありますが、予防をしていけば、いつまでも若々しく体を保つことができます。
習慣的な運動をする
体は車と同じように日々動かさなければサビついてしまいます。エンジンを動かしてあげなければ、動かなくなってしまいますよね。体も同じことが言えます。体を若々しく保つためには習慣的な運動がポイントです。
運動はランニングなどの激しいものではなく、ちょっと早歩き程度のウォーキングで十分効果があります。全く動かない、運動をしない。そういう生活習慣をしているのであれば、運動をするようにしましょう。
運動をすることで、体幹が鍛えられ、体がふらつかないようになります。急な転倒にも対応することができ、手首の捻挫をはじめとするあらゆる怪我を予防することができるでしょう。
筋肉を鍛えておく
筋肉の量は歳を重ねるにつれて減少していきます。それは同じく運動不足が原因で起こります。また、筋力の低下は免疫力を下げてしまい、病気のリスクを高めることがわかっています。寝たきりの原因にもなるでしょう。
いつの年齢になっても筋肉を鍛えておくことは、転倒や怪我、病気の予防につながるのです。ジムに行って筋トレをするというほど、トレーニングは必要ないですが、やはり習慣的な運動をしておくことが大切です。
人と接する
快活な体は健全な心から作られます。精神衛生が良い人は、活発的で体もよく動かします。これは生きて行く上でとても重要な要素でしょう。体が健康でいるためには、心の健康も考える必要があるのです。
人と接することは、精神衛生をよくしてくれる1つの方法です。他愛のない話でも、ストレス発散効果がありますし、なにより楽しいということが気分を高めてくれますよね。健康のためにも、人と接するようにしましょう。
まとめ
手首の捻挫はふとした瞬間に起こるものです。特に高齢者の方は些細なつまづきがきっかけで転倒し、手を怪我してしまうということもあるかもしれませんよね。
捻挫といえど、きちんとした対応・治療をしなければ、その後に影響を与えることもあります。治療の期間が長くなったり、症状が悪くなることもあるでしょう。
固定と安静が捻挫の基本となる治療になります。いつまでも痛みや違和感を残さないためにも、早めの対処、そして医療機関へ行くようにしましょう。
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