グキッっと関節をひねってしまった経験はありませんか。捻挫という言葉は分かるけれど、具体的にどういうケガなのかは知らない方も多いことでしょう。
実は捻挫は、後の人生に大きな影響を及ぼすかもしれないのです。くれぐれも「ひねったちゃった」という認識だけで済ませてはいけません。
スポーツ選手なら選手生命が絶たれてしまうかもしれません。放置しておくと関節が不安定になり、再発やパフォーマンスの低下も懸念されます。
身近に潜みつつも意外と怖い捻挫について、応急処置や治療、リハビリまで知っておくべき知識をお届けします。
捻挫とは何か?
まずは捻挫について知りましょう。
靭帯の役割
まず、靭帯について説明しなければなりません。靭帯とは、コラーゲンを主成分とした組織です。
その主な役割は、
- 骨と骨を結んで関節を形成する
- 関節が異常な方向に曲がらないように支える
の2つです。
靭帯は想像以上に多くあり、体を支えています。例えば膝関節一つをとっても、なんと5個以上の靭帯が含まれているのです。
捻挫の仕組み
簡単に言うと、捻挫とは「外力によって靭帯が伸びすぎて損傷すること」です。場合によってはなんと靭帯が切断してしまうこともあります。
捻挫をしてしまうと、痛みとともに皮下出血が起き、ひどいときは骨折も併発します。また、関節を支える靭帯が伸びてしまうため、治癒した後もずっと関節が不安定になることがあります。
靭帯の損傷は、ドアのちょうつがいの破損に例えることができます。もしちょうつがいが壊れてしまったら、ドアが開かなくなったり、ぐらぐらしたりしてしまいますよね。これこそが捻挫の症状なのです。
捻挫の応急処置
応急処置の考え方
応急処置については、他のケガと変わりません。基本的なRICE処置をしてから、我慢せずにすぐ病院へいきましょう。
応急処置の目的は、悪化と内出血、痛みを防ぐことです。治癒を目的とした治療とは異なります。
まずは基本となるRICE処置についてお教えします。 基本的なことですが、応用が利く知識なのでよく覚えておきましょう。
例えば骨折や打撲、裂傷などの応急処置にも応用することができます。素早い応急処置は、ケガの悪化を防いだり、復帰を早めたりすることにも繋がります。
RICE処置とは
R=安静(REST)
患部に体重がかかったり、もう一度ひねったりしてしまうと、悪化して治りが遅くなります。患者を一人にせず、歩く時も手助けしてあげてください。
I=冷却(ICE)
氷や保冷材などで、患部を冷やします。これによって血行を抑制し、内出血や痛みを防ぐことができます。ただし、凍傷にならないようにタオルなどをあてるとよいでしょう。
痛みが引いたら一度外し、痛みが戻ったらもう一度冷却するのがコツです。
C=圧迫(COMPRESSION)
内出血を防ぐため、包帯やテーピング等で圧迫します。注意する点は、痺れが起きたら一度緩めることです。強く圧迫しすぎると組織にダメージを与えてしまうからです。
E=挙上(ELEVATION)
患部を心臓より高くすることで、内出血を防ぎます。適当な台を用意し、患部を乗せることで簡単に行うことができます。
病院・整骨院での治療
まずは整形外科病院に行きましょう。ストレステストなどの触診のあと、画像検査が行われます。
画像検査では、必要に応じてレントゲンやMRI、エコー検査を行います。骨折がみられるかどうかでその後の治療は変わってきます。
画像診断を受けられるというのが、整形外科の大きな特徴です。つまり、捻挫の状態を正確に分析してもらうには医師にかかる必要があるということです。
これに加え、靭帯の損傷の具合も見てもらいます。どのようなスポーツで、どちらの方向にねじってしまったのか、きちんと医師に報告しましょう。
捻挫のレベル
捻挫は、靭帯の損傷の程度に応じてレベル分けがされています。
- レベル1:靭帯が伸びてしまったが、損傷はない状態
- レベル2:靭帯が部分的に損傷している状態
- レベル3:靭帯が完全に断裂してしまった状態
程度によって損傷の深さはことなるため、完治に必要な期間は、数週間~数か月とかなり幅広くなっています。
損傷がレベル3の場合
多くの場合、靭帯を再建する手術が必要になります。他の靭帯の一部を切除し、移植することになります。
捻挫に手術が必要だなんて、驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、関節の手術と聞くと驚くし、怖いのもわかります。しかし、日常生活やスポーツに早く復帰するためには仕方のないことなのです。手術を断った結果治りが遅くなったり、悪化したりした例は多数報告されています。
先ほど例えを考えますと、ドアのちょうつがいが完全に折れてしまったような状態です。もちろん人間には自然治癒力がありますが、断裂したのを自力で治すのは困難です。
最近では内視鏡を利用した小切開の手術も増えてきています。その後、骨折の同じようにギプスで患部を固定することになります。松葉杖での移動を覚悟する必要があるでしょう。個人差はありますが、完治には数か月かかります。
損傷がレベル1~2の場合
症状に応じて処置は異なります。レベル2でも靭帯の損傷が大きければ手術となることがある一方、レベル1の場合は湿布とテーピングやサポーターで終わることもあります。
共通して言えるのは、患部を固定して動かさないことです。靭帯は関節の動きに大きくかかわっているのを忘れてはいけません。
もし程度が軽いならば、整骨院の利用を考えてみてもよいでしょう。整骨院では、柔道整復師の有資格者が施術を施します。中には患部保護のためのテーピングや、関節の不安定さを解消するリハビリなどにとても詳しい方もいらっしゃいます。
なお、整骨院や接骨院では画像検査を受けることはできません。整骨院や接骨院を利用する場合は、病院のあとに行くようにしましょう。ここで気を付けることは、スポーツに関するケガの治療を得意としているところを選ぶことです。
整骨院や接骨院ではそれぞれの強みを生かした施術をしておられます。お年寄りの患者が多いところでは、捻挫などのケガに慣れていないこともあるようです。
自己診断はしないこと
捻挫治療の過程は、痛みの強い急性期と痛みの弱い慢性期に分かれます。つまり、痛みが引いても完治しているわけではないのです。
また、捻挫の特徴として再発しやすいことが挙げられます。理由としては、患部が不安定になりやすいことや、慢性期に再び動かしてしまうことなどがあります。
捻挫は再発が怖いケガです。安易な自己判断は禁物です。重度でなくても油断はいけません。自己判断が復帰の遅れにつながるかもしれませんから、必ず専門家の意見を聞くようにしましょう。
捻挫の予防・リハビリ
リハビリの注意点
勘違いしているかたも多いのですが、捻挫した部位が痛いのに、無理やり伸ばしてはいけません。
手術を除けば、患部を固定し自然治癒力によって治すのが鉄則です。痛い時期に動かすのは逆効果になります。
もしストレッチをするなら、捻挫した部位から離れた部位が良いでしょう。捻挫をすると患部をかばって他の部位に負担がかかるの軽減できますし、血行の改善にもつながるからです。
もし整骨院・接骨院の利用を考えているのでしたら、リハビリのために通うのも手です。多くの場合、病院より安く済むうえ、丁寧な傾向があります。
予防法を考える
捻挫は外力によるケガですから、意識だけではどうにもならない点もあります。ですから、ある程度は起きてしまう前提で過ごす必要があります。
ここからは、少しでも可能性を減らす方法を考えます。一番多いのは足首の捻挫です。足首が外力によって内向し、外側の靭帯が損傷することが多いのです。
もちろんスポーツによって、負荷がかかる関節は様々です。各スポーツにおける注意すべき部位を見ていきましょう。
例えば、サッカー、バレー、登山など足を使うのが重要なスポーツでは足首の捻挫が多いのに加えて、膝の捻挫も多くなります。その一方、ドッジボールや体操、スノーボード(転倒時)では、手首の捻挫が起きる傾向にあります。
そのほか、野球では肘を捻挫したり(野球肘)、ボクシングなどの格闘技では肘や肩を捻挫したりすることがあります。あなたがどのスポーツをしているかによって、対策が必要な部位は様々なのです。
捻挫は頻繁に起こるケガというわけではありません。もしどこを捻挫しやすいかわからなければ先輩や先生に聞いてみましょう。
予防器具を用いる
捻挫の予防として有名なのはテーピングとサポーターです。手足の関節に巻くことで、動きを制限する効果があります。これにより、プレーに支障をきたさずにケガや障害を予防することができるのです。
さらに、一度捻挫をして不安定になった部位の再発を防ぐこともできます。サポーターは様々な部位のためのものが販売されていますし、テーピングの巻き方もたくさんの種類があります。どちらも多種多様なため、ここでは全て紹介することはできません。
ある程度の予防になるとはいえ、捻挫の可能性はありますので、油断は禁物です。あくまで予防であることを忘れないようにしましょう。
まとめ
身近なようで意外と恐ろしい捻挫について、少しでもお分かりいただけたでしょうか。
以下は今回の記事のまとめです。
- 捻挫をしやすい部位を知る
- テーピングやサポーターで予防する
- 捻挫してしまったら、まずは整形外科に行く
- 重度なら手術を受ける
- 痛みが治まってもすぐには動かさない
- 関節が不安定になることがあるので注意する
何よりも大切なのは、安易な自己判断に頼らず、専門家の意見に耳を傾けることです。
また、捻挫をしても焦らないようにあらかじめ予防をしておきましょう。それが結果的に復帰を早めることにもつながります。