陰部の痛みはなかなか人には言いずらい話題ですが、普通に生活していても症状が出てしまう事が多いものです。
デリケートな部分ですので、しっかり治療して治すことが望まれますが、どうしても恥ずかしさから病院にも行きづらかったり、人には相談しづらい問題でもあります。
陰部の痛みの原因には性感染症や生理による月経によって発生している生理痛の症状と言った一般的なものから、外陰炎や外陰がんなど危険度の高い病気や炎症の可能性もあります。
陰部に痛みを発生させている症状や、原因となる要因と、病気の代表的症例を取り上げましたので参考にしていただければと思います。
陰部の痛みの原因
陰部とは女性においては膣の入り口である、恥骨より下に存在する外陰部と膣内部のことを指します。女性の性器には尿道、バルトリン腺、陰核(クリトリス)、膣口があり、これらの場所に何らかの炎症や問題が発生していると、痛みが発生します。
では、まずは陰部の痛みの原因について紹介します、
下着やズボンでの陰部の締め付けによるもの
おしゃれをするためや、体のスタイルを良くみせるために、通常サイズよりきつい下着やズボンを着用する方が若者を中心に増えています。
しかし、彼らの多くは体の不調を訴えており、悪影響をもたらしていることが分かってきています。お風呂に入る際に下着を脱いだ時、ゴムの部分に沿って黒ずんでいるのを見たことがある方も多いと思います。
あれは肌がメラニンを造成したもので、防衛反応として起こる事です。下着の締め付けによる皮膚のストレスを軽減するためにメラニンを蓄えるので、結果的に肌のサイクルを止めてしまいます。
また、筋肉にもゴム部分の圧迫に抵抗するため、ストレスがかかり、冷え性、頭痛、むくみなどの症状につながります。皮膚表面をうっ血させ、血流も悪くなってしまうのです。
性交痛によるもの
膣の乾燥や生殖器の病気により起こる痛みです。入り口付近のものと深部のものがあり、状況により対応も変わってきます。
入り口付近の痛みについては、膣が乾燥しているために起こります。膣が十分な体液を分泌しなかったり、加齢によりエストロゲン値が減少し内膜が薄くなったりすることによるものです。授乳中や抗ヒスタミン薬を服用中も、膣が乾燥しやすくなります。
他、陰部が炎症や感染症を起こしていたり、コンドームによるアレルギー反応を起こしたり、膣の筋肉が不随意収縮を起こしたりすることにより痛みが発生することもあります。
激しい性行為や自慰行為などが原因で膣内が傷ついてしまい痛みが発生する場合もあります。
子宮内で発生しているトラブルが原因
深部の痛みについては、骨盤内に出来た腫瘍・増殖物や、子宮内膜症などが原因となります。これにより子宮の位置が変化し、痛みを生ずる事も多々あります。子宮の位置が変化する症状には、子宮が後ろに傾く子宮後屈や、子宮が膣の方に下がってくる子宮脱などがあります。
また、痛みは感情によるものが多く、過去のトラウマや妊娠に対する恐れ、痛みは消えないという思い込みにより、痛みが増幅することもあります。
いずれの症状にせよ、どの部分がどのように痛いのかをはっきりさせ、炎症・感染症などの原因がないかを診察し、適切な処置をすることが大切となってきます。
子宮内膜症などについては長期間発生しているばあい、不妊症などの問題に繋がる危険性もある症状になります。
状態が慢性化したり、悪化しない内に早めに治療を開始できるよう対処しましょう。
皮膚の刺激による炎症や湿疹
下着・生理用品による摩擦や、クリームなどが皮膚に合わない事が原因となり、炎症・湿疹として出来てしまう事があります。汗やムレによるものも夏場は多く見られます。
軽い症状から、病気のサインとなる症状までさまざまですが、患部を洗い清潔に保つことが基本となってきます。陰部を洗う際には、ゴシゴシと洗うのではなく、低刺激の石鹸をよく泡立てて優しく洗うのが良いです。アルカリ性の石鹸は、使いすぎると陰部本来の弱酸性が失われてしまうため避けた方が良く、酸性の低刺激のものの使用をおすすめします。
着用する下着も締め付けの少ない清潔なものを使用し、市販のクリームなどを使用している場合は、自分に本当に合うものなのかを確認しましょう。
陰部の痛みによる病気の一例
陰部の痛みの原因が病気だった場合、どのような症例が多いのかを以下に記載しました。御自身に似たような症状がないか、の確認に役立ててほしいですが、しっかりと病院を受診し、適切な対応をされることをおすすめします。
PMS(月経前症候群)
月経前症候群は月経前に様々な症状を引き起こす症候群になります。病気とは少し違いますが、多くの症状を発生させ女性を悩ませている問題になります。
月経前に大きくホルモンバランスが崩れてしまうことが原因となっており、膣の痛みの他にも頭痛や気分が悪くなったり、イライラするなどの症状が一般的によく発生している症状になります。
これらの症状の他にも200種類以上の症状が人それぞれで発生することが明らかになっていて、症状の重さは人により大きく異なります。
軽いときと重いときなどの症状のばらつきもあり、突発的に状態が悪くなる事もあります。
生理周期が不安定になっている時に発生しやすく、症状も重くなる傾向があります。
性器カンジダ症
特に女性に多く、元々体内の腔内・腸管などに持っている事も多いというカビ菌の一種です。健康な状態ですと、特に症状もなく気づかない事が多いですが、過度のストレスや免疫力低下により症状が出てくると言われています。
外陰部に痒みやただれが見られ、炎症を起こして痛みが伴う場合もあります。女性はヨーグルト上のおりものが増加し、男性は白いカスなどが亀頭に見られます。尿道炎や排尿障害を引き起こす可能性もあると報告されています。
症状が現れた場合は、約1週間から2週間、軟膏やクリームを塗布します。女性の場合は、連日膣洗浄を行い、かゆみやおりものなどの症状がなくなれば治った事になります。
カンジダについては、カンジダの自然治癒させる方法は?症状や原因についても!を参考にしてください。
性器ヘルペス
ヘルペスという病気は聞いたことがある方も多いかと思います。ヘルペスには口唇や顔面などの上半身に症状が出る口唇ヘルペスと、下半身に症状が出る性器ヘルペスがあります。
性器ヘルペスに感染しても約6割の人が症状として出ませんが、感染力はあるので注意が必要です。口唇ヘルペスに感染していると、性器ヘルペスを発症することもあります。
初めて性器ヘルペスに感染した時には激しい痛みを伴い、女性については排尿が出来ないくらいの痛みだとも言われます。その後、再発の危険も高いですが、再発を重ねるにつれて症状は軽症化していくと言われています。
ひりひり感、痒み、灼熱感、激しい痛みを感じるのが特徴です。赤い小さなブツブツが出来、水膨れのような状態になり、それが破れて潰瘍を作ります。
何度も繰り返さないために、ストレスや不安が少なくなるよう生活を工夫し、免疫低下に陥らないようにしっかりとした睡眠や食生活を心がけることが最も大切です。
性器クラミジア感染症
性器クラミジア感染症は性病の中では日本で最も発症者が多い性感染症になります。
若い年齢の女性に多く発生している病気でもあります。口と性器との接触による感染や、コンドームを使用しない性行為を介して、人から人に感染していきます。
近年では上記の性病を含む性感染症が増加傾向にあります。若い世代での性行為が盛んに行われる様になっていることから、10代での発生割合が全体の1割を占めています。
クラミジアは咽頭感染している可能性もあるので、稀に口と性器との接触で感染するので注意が必要です。女性の場合はおりものの増加が確認され、尿道付近に痛みを感じる場合があります。
女性でも男性でも、感染した場合、自然に治癒することは報告されていますが、基本的には増加を続ける菌ですので完治には数年近い時間を要します。
しかも、症状が悪化する可能性が高く、状態が悪化した場合女性では骨盤腹膜炎や卵巣炎、不妊症になってしまいます。
バルトリン腺炎
バルトリン腺とは、膣の入口付近に左右一対ついている腺であり、性行為などの際に分泌液を出す働きをしています。バルトリン腺の開口部が発赤して腫れ、痛みを引き起こします。腫れが酷く排泄口が閉鎖されると、膿が排泄管内に溜まり、圧痛を伴う膿瘍となります。これがバルトリン腺炎です。
排泄管の痛みなどがなく、最初から排泄管の閉鎖によって膿がたまり、大きな嚢胞になることもあります。この場合は軽い痛み程度で、圧痛などは少ないと言われています。
抗生物質の全身投与や局所の湿布などの処置で症状は治まります。膿瘍を形成している場合には切開して膿を出す必要があり、慢性化して嚢胞が出来た場合は、再発を防ぐために手術によって摘出することもあります。
尿道炎・膀胱炎
どちらも排尿時の痛みを生ずる病気であり、男性の場合に尿道炎、女性の場合は膀胱炎として呼ぶことが多いです。膀胱炎を起こしている時に同時に尿道炎を起こしている事もあります。
尿道炎はこれ以外に膿を伴う場合もあり、膀胱炎はこれ以外に頻尿・尿の濁り・血尿などを伴い排尿後にズキッとした痛みを感じます。
両者共に原因となる細菌をつきとめ、適切な抗生物質を投与することが大切です。軽い症状の場合は水分を多くとり、尿量を増やすことで膀胱の中の細菌を洗い流すだけで効果があります。軽症の場合は放っておいても治りますが、抗生物質を使用した方が早く確実に完治します。
対策としてはトイレを我慢しないようにして、陰部を清潔に保つ事です。特に、性交時は細菌に感染しやすくなるため、排尿し、尿で洗い流せるようにするのも効果的だそうです。
膀胱炎の治し方は、膀胱炎の治し方を紹介!自力で治すことは可能なの?を読んでおきましょう。
外陰潰瘍
外陰潰瘍は若い女性に多い疾患で、痛みを伴う潰瘍が外陰に数個出来る現象です。ヘルペスによる潰瘍もこれに含まれており、他にもベーチェット病という難病が原因で発症することもあります。
ベーチェット病の場合は目に炎症が起きる事もあり、進行すると失明の可能性もあるので注意が必要です。口内炎が口の中に出来、発熱などを伴う場合も少なくありません。再発を繰り返すのが特徴ですが、多くは更年期になると治るとされています。
外陰に出来る腫瘍は殆どのものが良性であると言われており、悪性の腫瘍は稀です。上記にも記載したバルトリン腺嚢胞も良性潰瘍の1つです。ただ、外陰にしこりが出来た場合には悪性の場合も考えられるため、早期の受診で検査をすることをおすすめします。陰部のしこりについては、陰部のしこりの原因を紹介!痛みやかゆみがある場合は病気?の記事を参考にしてください。
外陰がん
外陰がんは、性器の陰核(クリトリス)や小陰唇(ビラ)などの部分に発生する事があります。
外陰部として見えているこれらの位置に腫瘍が確認できる場合は癌かもしれません。症状としては、痛み、痒み、皮膚の赤らみ、出血、色素の黒ずみ、皮膚に白い斑点が現れるなどの症状が発生します。
症状が進行した場合、太ももの付け根に通っているリンパ管にがん細胞が転移してしまい、リンパ管から全身へとがんが転移していきます。
発生原因としては未だ詳しい情報は明らかになっていませんが、遺伝の可能性や子宮頸がんなどの原因ともなるヒトパピローマウイルスに感染している事が関係視されています。
しかしこのヒトパピローマウイルスは成人の80%ほどが保有しているウイルスでもあります。
現在科学的に基づいた予防法としては、生活習慣の改善、運動、食事、禁煙などが有効とされています。
外陰部痛症候群の可能性も…
病院で診察を受けても陰部の痛みの原因が分からないという場合が稀にあります。これは外陰部痛症候群と呼ばれ、原因が不明であるものを指します。
皮膚が過敏で外陰部にアレルギー反応を起こしやすい体質の方、ホルモンバランスが安定しない方、性的虐待によるトラウマなどがある方に起こりやすい症状と言われています。
これをすれば治る…といった改善方法が確立されておらず、少しでも痛みを軽減する治療法をいろいろ実践し、試していくしかないという状況です。外陰部だけでなく、アレルギーやホルモンを始めとする検査を行なったり、心理的背景も加味して治療していく必要性が求められます。
陰部の病気を予防するには…
原因や病気の部分でも記載しましたが、まずは陰部を清潔に保つ事が大切です。毎日低刺激の石鹸などを泡立てて優しく洗い、下着は締め付けの少ない清潔なものをつけましょう。夏場は特に、スポーツ後の汗によるムレや、ナプキンによるかぶれなど、清潔に洗い、こまめに新しいものに取り換える事が大切です。
陰部の異常は日常生活の疲れから来ることも多いため、しっかり睡眠をとり、ストレスをためないようにリフレッシュすることも大切です。
性行為の際はコンドームを付けることで感染を大幅に防ぐことが出来ます。感染していても症状が出ない症例も多いため、予防や安心感の意味でも、大切にしていきたいエチケットです。
仮に症状が出た場合、勝手な判断はせずに病院を受診することをおすすめします。長期間放置していると症状が進行して重症化することも多いため、違和感を感じた時点での早めの受診を推奨します。
まとめ
陰部の病気は性病だけだ、と思われていた方もいらっしゃったかもしれませんが、免疫力の低下などで、性行為をしなくてもかかってしまう病気もあります。デリケートな部分ですので、疲れが溜まると陰部に症状が出る方も少なくありません。
違和感を感じられたら早めに病院を受診し、適切な検査や処置を行なう事が大切です。そして、免疫力低下やストレスをため込まないよう、ご自分でも工夫して生活してください。
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