バルトリン腺炎とは?症状や原因、治療方法を知ろう!予防するにはどうすればいい?

デリケートゾーンに赤い腫れがあって、痛みがある。それは、バルトリン腺炎という疾患かもしれません。

このバルトリン腺炎という疾患は、女性特有の病気です。場合によっては、デリケートゾーンにピンポン球くらいの腫れが発生したり、強い痛みを伴うこともあります。そして、大きな腫れや強い痛みがあると、デリケートゾーンに発症しているために、歩行することが難しくなる場合もあります。

そんなデリケートゾーンに関する疾患は、なかなか周囲の人に相談できませんよね。そこで、今回はバルトリン腺炎についての概要をまとめてみましたので、参考にしていただければ幸いです。

バルトリン腺炎とは?

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そもそも、バルトリン腺炎は、どのような疾患なのでしょうか?

バルトリン腺とは?

バルトリン腺は、小陰唇の内側下方にある一対の粘液を分泌する器官のことです。

小陰唇に囲まれた内側部分を膣前庭と言いますが、この膣前庭を時計に見立てて膣口を中心に肛門側を6時方向とすると、5時と7時の位置にバルトリン腺は存在します。

ただし、通常の状態では、その存在を覚知することは困難です。ちなみに、バルトリン腺という名称は、デンマークの解剖学者キャスパー・バルトリンによって発見されたことに由来しています。

バルトリン腺の機能

バルトリン腺は、性的刺激を受けるとバルトリン腺液という乳白色の粘液を分泌します。そして、そのバルトリン腺液がバルトリン腺から約2㎝の排泄管を通じて分泌口から排出されます。

排出されたバルトリン腺液が、膣分泌液とともに膣口の周辺を濡らして、性交時の潤滑液として機能します。

バルトリン腺炎とは?

バルトリン腺炎は、このようなバルトリン腺の分泌口から、何らかの細菌が侵入し、細菌に感染することによって、バルトリン腺が炎症を起こした女性特有の疾患です。

バルトリン腺炎は、バルトリン腺の機能から性交渉との関連が指摘されており、性成熟期の女性(20代~40代の女性)に多く発症します。

バルトリン腺膿瘍(のうよう)との関係

バルトリン腺炎は、上記のように細菌に感染してバルトリン腺が炎症を起こした疾患です。

そして、炎症が進行して、バルトリン腺の分泌口が閉塞してしまうと、膿(うみ)が溜まってしまう場合があります。この膿が溜まった状態の疾患をバルトリン腺膿瘍と言います。

このバルトリン腺膿瘍も含めて、広義のバルトリン腺炎として捉える場合もあります。したがって、狭義のバルトリン腺炎はバルトリン腺に炎症が生じた疾患を指し、広義のバルトリン腺炎は、狭義のバルトリン腺炎とバルトリン腺膿瘍を含む疾患と言えます。

急性バルトリン腺炎と慢性バルトリン腺炎

狭義のバルトリン腺炎とバルトリン腺膿瘍を併せた広義のバルトリン腺炎は、急性バルトリン腺炎として分類することができます。いずれも、細菌に感染すると疾患が急に発生して、症状が炎症から膿瘍にまで進行するからです。

これに対して、バルトリン腺嚢胞という疾患が慢性バルトリン腺炎として分類されます。

バルトリン腺嚢胞(のうほう)との関係

バルトリン腺嚢胞とは、バルトリン腺の分泌口が閉鎖してしまうことによって、バルトリン腺液が排出されずに溜まってしまう疾患で、バルトリン腺が袋状に大きく拡大し嚢胞を形成します。バルトリン腺嚢胞は、細菌感染していない状態ですので、痛みはありません。

バルトリン腺嚢胞は、バルトリン腺液が分泌口や分泌口に通じる排泄管に詰まってしまうことによって発症します。

そして、バルトリン腺嚢胞は、バルトリン腺炎が治癒した後やバルトリン腺炎が繰り返された後など急性バルトリン腺炎から移行して発症することが多いとされています。

さらに、バルトリン腺嚢胞は、細菌に感染しやすい状態なので、バルトリン腺炎やバルトリン腺膿瘍の再発可能性が高くなります。そのため、バルトリン腺嚢胞は、慢性バルトリン腺炎と呼ばれるのです。

ただし、バルトリン腺嚢胞は、急性バルトリン腺炎を経ずに最初から嚢胞を形成する場合もあるので注意が必要です。

バルトリン腺炎の症状

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では、バルトリン腺炎には、どのような症状が現われるのでしょうか?

狭義のバルトリン腺炎の症状

狭義のバルトリン腺炎の症状は、片側のバルトリン腺にのみ現れることが多いとされています。稀に、両方のバルトリン腺に症状が現われることもあります。

そして、バルトリン腺炎の症状は、次のような症状が現われます。

  • バルトリン腺の分泌口の発赤や腫れ
  • 小陰唇の外側の発赤や腫れ
  • 場合によっては、発赤や腫れが大陰唇まで及ぶこともあります
  • 発赤や腫れに伴って痛みも生じます

バルトリン腺膿瘍の症状

バルトリン腺炎の炎症が悪化して、バルトリン腺の分泌口が閉塞してしまうとバルトリン腺膿瘍に至る場合があります。このバルトリン腺膿瘍の症状は、次のような症状が現われます。

  • バルトリン腺炎の症状よりも、発赤や腫れが明確に大きくなります
  • バルトリン腺炎の症状よりも、痛みも大きくなります
  • 場合によっては、大陰唇が膨張して腫瘤(しゅりゅう)を形成します
  • 腫瘤部分から膿性の分泌物が現れることがあります
  • 痛みや腫れによる性交障害
  • 座る時や歩行時に強い痛みが生じます

バルトリン腺炎の原因

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このようなバルトリン腺炎の原因は、なんでしょうか?

バルトリン腺炎の直接的原因

バルトリン腺炎は、何らかの細菌に感染して炎症が生じる疾患でした。したがって、バルトリン腺炎の直接的な原因は、細菌感染です。

そして、炎症を生じる原因菌となる細菌は、次のようなものが挙げられます。

  • 大腸菌
  • ブドウ球菌
  • 連鎖球菌

また、性感染症の原因菌がバルトリン腺炎の原因になる場合もあります。

  • 淋病の原因菌である淋菌
  • 性器クラミジア感染症の原因菌であるクラミジア

バルトリン腺炎の原因菌のほとんどは化膿菌

現在のバルトリン腺炎の原因菌の大部分は、化膿菌とされています。

化膿菌とは、化膿の原因となる細菌のことで、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などのことです。これらの化膿菌は、陰部に常在している菌でもあります。

性感染症の原因菌について

以前は、バルトリン腺炎の原因菌として考えられていたのは、淋菌やクラミジアでした。現在でも、稀に淋菌やクラミジアによるバルトリン腺炎が発症します。ただし、淋菌が原因の場合は、両方のバルトリン腺が腫れることが多いとされています。

ですから、化膿菌によるバルトリン腺炎の多くが片側に発症するのに対して、両側に発症した場合はバルトリン腺炎とともに淋病の感染の有無にも注意を払う必要があります。

バルトリン腺炎の間接的原因

バルトリン腺炎の直接的原因は、細菌感染で、特に陰部に常在している化膿菌への感染でした。

そして、陰部に常在している菌に感染するということは、バルトリン腺炎の間接的な原因として免疫力の低下が考えられます。というのも、常在菌には免疫力が低下していなければ感染しないからです。

したがって、バルトリン腺炎の間接的原因は、生活習慣の乱れやストレスによる免疫力低下と言えるでしょう。

分娩が原因になる場合も

出産時の分娩の際に、膣口を切開する会陰切開(えいんせっかい)を行ったり、自然に膣口が裂ける会陰裂傷が生じたりします。

この会陰切開や会陰裂傷の傷口を縫合する時に、バルトリン腺の分泌口・排泄管が縫合糸で縛られてしまうことがあります。

また、バルトリン腺を避けて上手に縫合したとしても、傷口が修復・癒合する過程でバルトリン腺の分泌口を塞いでしまう場合もあります。

このような形で、バルトリン腺の分泌口が閉塞すると、バルトリン腺炎を経ずにバルトリン腺嚢胞の原因となります。そして、バルトリン腺嚢胞から、バルトリン腺炎やバルトリン腺膿瘍に移行することも考えられるのです。

バルトリン腺炎の検査と診断

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では、バルトリン腺炎は、どのように診断されるのでしょうか?

バルトリン腺炎の診断

バルトリン腺炎は、バルトリン腺の周囲に発赤や腫れが発症し、その発症の多くは片側にのみ発症するので、症状の視診と触診によって容易に診断できるとされています。

視診

視診では、発赤や腫れの有無、分泌物の性状などを確認します。

触診

触診では、腫れ(腫瘤)の性状、痛みの現われ方などの炎症症状を確認します。

バルトリン腺炎の検査

このように診断自体は容易ですが、バルトリン腺炎の原因菌の特定のために、穿刺吸引(せんしきゅういん)を行います。

穿刺吸引とは、バルトリン腺の腫れの部分に針を刺して内容液を採取することです。そして、穿刺吸引によって採取した内容液から細菌培養検査を行って、原因菌を特定します。

ちなみに、穿刺吸引は治療を兼ねていることがほとんどです。つまり、バルトリン腺膿瘍のように膿が溜まった状態を解消するために、針で刺して内容液を吸引するのです。

バルトリン腺炎の治療方法

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このようにバルトリン腺炎と診断され、バルトリン腺炎の原因菌も特定された後は、どのように治療されるのでしょうか?

狭義のバルトリン腺炎の治療方法

狭義のバルトリン腺炎の治療は、原因菌に応じた抗生剤の投与が行われます。

ただし、原因菌の特定に時間がかかる場合は、広域スペクトラムの抗生剤が用いられます。

広域スペクトラムとは、薬効効果の対象とする細菌の範囲が広い、つまり多くの細菌に対して効果を発揮するということです。たとえば、ペニシリン系やセフェム系の抗生剤が広域スペクトラムとされています。

狭義のバルトリン腺炎では、抗生剤の投与で症状がおさまることがほとんどです。

バルトリン腺膿瘍に至った場合

狭義のバルトリン腺炎からバルトリン腺膿瘍に至った場合には、抗生剤の投与で細菌を退治することと同時に、次のような治療が行われます。

  • 穿刺吸引による膿汁の排液
  • 切開による膿汁の排液

穿刺吸引による膿汁の排液

穿刺吸引は、原因菌の特定のために行う検査方法でもありますが、膿瘍が比較的小さい場合は、検査と治療を兼ねます。

膿を取り除くだけで、痛みは大きく減少します。ただし、針の穴は自然と塞がり、バルトリン腺の分泌口が閉塞したままであることに変わりないので、再発可能性が依然として残ります。

切開による膿汁の排液

バルトリン腺膿瘍が大きかったり、痛みが強い場合は、局所麻酔をした上で切開による膿の排出が必要になります。

こちらも、膿を取り除くことで、痛みは大きく減少します。この場合も、切開による傷口や傷口周辺部は時間の経過とともに修復・癒合していくので、バルトリン腺の分泌口や排泄管が再度閉塞して、再発する可能性が残ります。

バルトリン腺炎やバルトリン腺膿瘍が再発を繰り返す場合

バルトリン腺炎やバルトリン腺膿瘍の再発が繰り返される場合、次のような治療方法が選択されます。

  • 造袋術(ぞうたいじゅつ)
  • バルトリン腺の摘出手術

造袋術

造袋術は、小陰唇の内側を切開して膿を排出した後に、その切開部分の開口を残したまま縫合することで、持続的に膿汁を排液できるようにする小手術です。この造袋術は、局所麻酔で対応するため、外来でも簡単に行える外科的治療方法です。

造袋術は、再発可能性がゼロになるわけではありませんが、比較的効果のある治療方法とされています。

また、バルトリン腺の分泌機能を温存できるため、子供が欲しいといった性交渉を行う必要性のある患者さんに有効な治療方法とも言えます。

バルトリン腺の摘出手術

バルトリン腺の摘出手術は、バルトリン腺炎やバルトリン腺膿瘍の再発を繰り返す場合や造袋術が効果を発揮しない場合に行う最後の手段としての治療方法です。こちらは、通常の手術室で麻酔をした上で、バルトリン腺を摘出します。

バルトリン腺そのものを切り取ってしまうため、バルトリン腺炎やバルトリン腺膿瘍が再発する可能性は無くなります。

しかしながら、バルトリン腺の分泌機能が無くなりますので、性交渉の際の潤滑が無くなり性交障害が生じる場合があります。ただし、潤滑を補うことができれば性交渉は可能です。

バルトリン腺炎の予防

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このようなバルトリン腺炎ですが、予防できるに越したことはありません。どのような予防方法があるのでしょうか?

バルトリン腺炎の予防方法

バルトリン腺炎の原因の多くは、陰部に常在する化膿菌がバルトリン腺に侵入し感染することでした。

ですから、化膿菌のバルトリン腺への侵入を防ぐために、膣口や小陰唇の内側の膣前庭を常に清潔にしておく必要があります。

膣前庭を清潔に保つ

膣前庭の清潔を保つには、陰部を触る際に手を洗うようすることが予防の第一歩です。

また、排便や排尿後に陰部を拭く際は、前から後ろに向かって拭くようにすると良いかもしれません。というのも、化膿菌の一つである大腸菌は便に多く存在しているからです。さらに、性交渉の際に男性にも手や陰部を清潔にしてもらうといった協力をお願いしましょう。

陰部の蒸れを防ぐ

女性の陰部は、構造的にも性質的にも湿気がこもりやすく化膿菌が繁殖する環境になりやすいと言えます。

そこで、生理用ナプキンはこまめに交換したり、通気性の良い素材のショーツを身につけることも予防につながります。

免疫力低下を防ぐ

バルトリン腺炎の間接的原因は、生活習慣の乱れやストレスによる免疫力低下でした。

というのも、陰部に常在している化膿菌に感染するということは、免疫力が低下していなければ感染しないからです。そこで、免疫力が低下しないように規則正しい生活をおくるようにしたり、ストレスを溜めないようにしましょう。

バルトリン腺の閉塞を予防する方法

バルトリン腺の閉塞によって、バルトリン腺嚢胞やバルトリン腺膿瘍が生じます。ですから、バルトリン腺の閉塞が生じないようにすることもバルトリン腺炎の予防方法となりえます。

具体的には、温座浴という方法があります。温座浴とは、浴槽に半分弱のお湯を張って、半身浴のような形で下半身を15分程度温めることを3~4回繰り返す入浴法です。このような温座浴によって、バルトリン腺の詰まりが解消しやすくなります。

しかし、忙しい中ではなかなか実施できない場合もあるでしょう。ですから、通常の入浴の際に、なるべく毎日浴槽に浸かり身体を温めるようにすると良いでしょう。

まとめ

いかがでしたか?バルトリン腺炎についての概要をご理解いただけたでしょうか?

デリケートゾーンの疾患は、周囲の人にも相談しにくいものです。

しかし、バルトリン腺炎が悪化し、バルトリン腺膿瘍に至ってしまうと、最悪の場合はバルトリン腺の摘出となってしまいます。そうなると、将来の妊娠に影響を及ぼすことも考えられます。

ですから、デリケートゾーンに痛みや腫れといった違和感が現れた際は、早期の発見であればあるほど、治療内容も軽くなるのですから、速やかにに病院で受診するようにしてくださいね。

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