他者とのコミニュケーションの際に、パチパチと瞬きをしたり、肩をすくめたり、咳払いや鼻すすりをするなど、相手が「どうかした?」と感じるような癖がある方がいらっしゃいます。
これらの動作の多くは、本人の意思とは別に、無意識に行われていることが多いのです。このような動作は「チック」と言われる病気です。
無意識のうちに起こる現象は、癖のようなものではありますが、他者に伝わるほどの癖ともなると本人も気になるものですね。
ここでは、チックの原因や症状、好発年齢、発症割合、診断方法、対処法などをご紹介します。
病気だと思うと、重く捉えがちですが、多くは時間の経過とともに解消していくものです。あまり神経質にならず、症状と向き合いましょう。
「チック」ってどんな病気なの?
一種の癖であると思うと、あまり気になりませんが、病気と言われるとやはり、少し敏感になるものですね。特にお子さんの場合だと、ご両親はとても心配になりますね。
気になり出すと、色々な動作がそれにあてはまって見えることもあるでしょう。ですが、あまり意識せずに、普段の様子をじっくり観察することが大切です。
「チック」とは自分の意思ではなく、不随意的にからだのある一部や筋肉が突発的に動いたり、発声が起きる症状で、そのような症状が18歳未満で4週間以上持続するとされています。
定義としては18歳未満ですが、18歳以上の大人でも症状が出ることがあります。
「チック」に見られる症状はどんな動作?
「チック」での代表的な動作は、瞬きの多さです。人が1分間にする瞬きの平均的回数は15~20回程度です。女性よりは男性の方が瞬きの数が若干多いそうです。
通常の瞬きとは、瞬きして涙を使い、目に入った異物を排出したり、目の乾燥を防ぐための自然な目の動きです。
しかし、「チック」の場合、特に目の乾燥や痛みもないのに、無意識のうちにパチパチ、パチパチ瞬きをしたり,目をギュッと閉じるような瞬きをしてしまいます。
この他にも、首を振る・顔をしかめる・肩をすくめる・口を舐めるなどの「運動チック」や、咳払い・鼻すすり・鼻ならし・うなり声・短い言葉の発声・奇声・舌打ち・汚い言葉の乱用などの「音声チック」などがあります。
症状だけで見ると、幼いこどもに、よく見られがちな動作も多いため、「もしかしたら、うちの子はチック症なのかしら・・・」と心配になる親御さんもいらっしゃるかもしれませんが、色々なことに興味を持ち始め、素直に表現できる幼いこどもたちは、色々な動作や発言をします。ですが、これらは、親の言い聞かせや、成長とともに改善していくでしょう。
「チック」の場合、気になる症状が、自分の意思ではないところで行われ、かつ1ヶ月以上続いたり、だんだんひどくなったりすることです。
「チック」はこどもの病気なの?なりやすい年齢は?
「チック」の多くは、日常の中で普段一緒に過ごす時間の長い母親が気づくことの多い、こどもの病気と思われがちですが、実は、大人でも発症、再発する病気なのです。
この病気は小児期の4才から11才に発症することが多く、一般的な好発年齢は、6,7才と言われています。症状のピークを迎えるのは10才から15才で大人なるにしたがい、症状が軽減、消失していきます。
発症のほとんどは、小児期のこどもですが、大人でも同様の症状がでることがあります。大人になってから始めて発症する方もいれば、小児期のチックが慢性化して残っている方、小児期に罹患した方が再発する可能性もあります。
映画監督でタレントの北野武さんの首をかしげる動作や、元東京都知事の石原慎太郎さんが何度も瞬きを仕草はチックの症状です。
「チック」の発症率は?
病気とはいっても、一種の癖のようなものである「チック」はあまり神経質になる必要もなく、成長や時間とともに軽減、消失していくものです。
また、幼いこどもが、行う動作が症状の中に多いため、「もしかしてうちの子も?」と心配なさるご両親も多いかと思います。
「チック」の発症率は、好発年齢のこどものうち10人中2人程度と割合が多く、女の子よりも男の子の方が発症しやすいと言われています。
「チック」になる原因はなに?
「チック」は精神的な原因だと一般的に言われることが多く、子どもが発症することが多いため、よく母親のしつけの問題だとか、日常の中できびしくしすぎていることが原因なのではないかと思われがちです。
しかし、現時点では「チック」ははっきりとした原因が分かっていません。しかし、「チック」が重症化して起こる「トゥーレット症候群」の治療にドーパミン(脳の中枢神経系に存在する伝達物質)を抑制する薬が有効的なことから、脳の伝達物質のアンバランスにより「チック」になるのではないかと考えられています。
また、このようなの神経伝達物の影響を受けやすいのは、何かしらの原因があって起こるものではなく、生まれつきに持った素質と言われていることから、遺伝的でもあるといわれています。家族や兄弟に「チック」の方がいる場合には、発症率が高くなることも知られています。
過度のストレスにより、発症することもありますが、決して母親のしつけが厳しいとか、怒りすぎているというわけではありません。
大人の場合は、過度のストレスにより、脳の伝達物質の分泌がアンバランスになるためと言われています。
「チック」になりやすい性格や体質は?
「チック」は伝達物質からうける脳の影響であるとされていることから、色々な刺激や影響を受けやす人がなりやすいと考えられています。
例えば、周りの視線や考えが気になり、人とのコミュニーケーションが苦手な不器用なひとや、ものごとに不安をおぼえやすく、些細なことで緊張したりするデリケートなひと、自分のことより周りを優先させるような優しいひとなどがなりやすいという見解があります。
「チック」が重症化したらどうなるの?
時間が一番のお薬とは分かっていても、実際に症状が出ている本人は、周りが思っている以上に気にしている場合もあります。
「チック」の初期症状は、瞬きや首傾げです。しかし、これが重症化した場合、運動チックが多発化し、音声チックも同時に発症するようになる「トゥーレット症候群」と呼ばれるものになります。
「チック」が重症化すると、トゥーレット症候群になったり、チックが慢性化し一年以上症状が軽減しなかったり、長期に渡ってどんどんひどくなったりします。
病院での様々な治療方法があるので、気になる時は自己判断せず、必ずお医者さんに相談しましょう。
「チック」と診断されたらどうすればいいの?
症状が動作として発症することから、周りからの視線も気になる「チック」。気になる症状があり、病院で診断されたらどのように過ごせばいいのでしょう。
「チック」の治療方法は?
先にも述べたように、何かしらの体の機能的、生理的病変による発症原因でないため、これといった医療的治療は必要ではありません。
こどもの場合、成長とともに、また大人であっても、セルフストレスコントロールと、時間の経過で徐々に症状が軽減・消失されるといわれています。
「チック」は無意識のうちに、起きている動作なので症状の出ている本人を指摘したり、症状を出さないように声かけすることは、逆効果になる可能性もあります。
特に、大人の場合は、一度、自分の症状を認識していまうと、とても気になり、なかには他者と接触するのが億劫になることもあり、それにより精神的苦痛を招く怖れもあります。
あまり気にせず、症状を自分の癖であると捉え、日々をリラックスして過ごすことが一番大切なことです。
また、お子さんが「チック」の症状をからかわれたりすることもあるかもしれません。お子さんにとってはこれもひとつの個性であることを理解できるようお話し、周りの方の理解や配慮をもらいながら、成長を見守りましょう。
あまりにも、症状が気になる場合、またはひどくなる場合、生活に支障をきたす場合などは、小児科や診療内科などでお医者さんに相談し心理療法や行動療法などの治療をうけることもできます。
また、日常生活に支障をきたすほど症状が重症化した場合は、ドーパミンの分泌を抑制する薬物による治療を行うこともあります。
症状が気になる時は、お医者さんに相談することをおすすめします。
日常で出来るケアやセルフコントロール
「チック」の症状を、周りの人たちに理解してもらい、本人が気にすることのない環境を作ってあげることが改善への近道です。
保育園や幼稚園、学校へ通うこどもであれば、先生や周りの保護者にも理解、配慮してもらえるように協力してもらいましょう。また、周りの目を気にするあまり、症状のでているこどもさんに注意したりすることのないようにしましょう。
大人になると、自制心も働き、何かとストレスを抱えることが多くなり発症する方もいるので、日頃のストレスコントロールが重要になります。
普段から、自分の好きなことに取り組む時間や、リラックスして心を整える習慣をつけてストレスから解放される時間を作りましょう。一番大切なことは、症状を気にせず、日々を過ごすことです。
まとめ
「チック」の症状は一種の癖のようなもので、あまり神経質になる必要はありません。焦って治そうとしたり、周りにどう思われているかなど気にすると、逆効果で症状の軽減には繋がりません。
病気と言われると、とても重大に感じ、重く受け止めがちですが、気になる時はお医者さんに相談しながら、症状と上手に向き合いましょう。
成長や時間の経過が解決してくれる病気ですが、症状がストレスになり、精神的にダメージを受けてしまっては、違う疾患を引き起こす原因にもなります。
周りに理解してもらいながら、日々をリラックスして過ごせるように心がけましょう。
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