心原性脳梗塞とは、心臓や頸動脈の太い血管の中でできた血の塊(血栓)が、脳に運ばれて、脳の動脈を詰まらせる病気で、「脳血管障害」の1つです。心原性脳塞栓(症)ともいいます。
血栓がだんだん大きくなって血管を塞ぐのではなく、いきなり、大きな血栓が血管に詰まってしまうので、症状が大きく、重篤になります。生命の危険も大きくなります。回復しても、後遺症に苦しみます。
血栓は、健康で正常な心臓にできることはありません。心筋梗塞や心房細動など心臓疾患があると、血栓ができやすいようです。
心原性脳梗塞の原因と症状、治療と予防法について、お伝えします。
心原性脳梗塞とは?
心原性脳梗塞は、「脳血管障害」の1つです。心原性脳塞栓(症)ともいいます。
脳血管障害は、突発的に発症するので、一般的には「脳卒中」と呼ばれます。卒は「突然」、中は「当たって倒れる」の意味です。脳血管障害には、出血性脳血管障害と虚血性脳血管障害があります。
出血性脳血管障害とは、「脳出血(脳内出血)」と「クモ膜下出血」のことで、血管の出血により、脳の血流が滞り、脳組織に障害が生じることです。虚血性脳血管障害とは、脳梗塞(のうこうそく)のことです。血管が閉塞して血流が滞り、脳組織が損傷されます。
脳梗塞には、アテローム血栓性梗塞・ラクナ梗塞・心原性脳梗塞があります。
[脳梗塞]
日本人が発症する脳血管障害の約4分の3が脳梗塞です。
脳梗塞とは、脳の血管が何かの原因で詰まったり、狭くなったりして、血流が滞り、そのため、脳組織に酸素や養分が運ばれなくなり、脳組織が壊死(梗塞)する疾患です。脳組織が壊死するため、治療が遅れれば、死に至ることが少なくありません。また、回復しても、深刻な後遺症に悩むことが多くなります。
脳梗塞は、脳血栓症と脳塞栓症に分けられます。「脳血栓症」は、血管が動脈硬化により、だんだん細くなり詰まってしまいます。脳塞栓症とは、脳以外の場所でできた血栓(血の塊)が剥がれて、脳に流れて来て、脳の血管を塞いでしまいます。
現在は、脳梗塞を、➀アテローム血栓性梗塞 ②ラクナ梗塞 ③心原性脳梗塞 に分けることが多くなっています。
アテローム血栓性脳梗塞
脳や頸部の太い血管が動脈硬化を起こし、血管が細くなったり、詰まったりして、血流が悪くなります。また、そこにできた血栓が剝がれ落ち、流れて行って、その先の脳の血管を塞いでしまいます。
これが「アテローム血栓性脳梗塞」です。詳しくは、アテローム血栓性脳梗塞の後遺症や予後を知ろう!リハビリや治療法を紹介!症状・原因は?を参考にしてください!
ラクナ梗塞
脳の深部にある直径1mm以下の細い血管が、高血圧で傷められて、だんだん詰まって来て、直径15mm以下の小さな梗塞ができている状態です。
日本人の脳梗塞の約半数がラクナ梗塞でしたが、最近では、アテローム血栓性脳梗塞や心原性脳梗塞が増えてきています。
詳しくは、ラクナ梗塞とは?症状・原因・治療法を知ろう!認知症との関係や予後も紹介!を読んでおきましょう。
動脈硬化
動脈は、心臓から送り出される血液の通り道です。身体の各組織が必要とする酸素や栄養分は、血液とともに動脈を通って全身に運ばれます。この動脈が、加齢によって弾力を失って硬くなったり、動脈内にさまざまな物質が付着して狭くなったりして、血流が悪くなる状態のことです。
動脈硬化は、太い動脈にも、抹消の細い動脈にも起こります。
太い動脈に起こるのは「粥状(じゅくじょう)硬化」といいます。動脈の内側に、コレステロールなどの脂肪でできているアテローム(粥腫=じゅくしゅ)ができ、だんだん肥厚して、動脈内を狭くします。アテロームが破れると、血栓ができて、動脈内が塞がれてしまいます。
アテロームの原因は、悪玉コレステロール(LDL)です。善玉コレステロール(HDL)は、動脈硬化を抑制します。糖分やアルコール摂取で増加する中性脂肪も、動脈硬化を促進します。
抹消の細動脈硬化を起こすのは、高血圧です。ある疾患を起こしたり、促進したりする原因を「危険因子」といいます。動脈硬化の危険因子は、高血圧症・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病・高尿酸血症(痛風)・喫煙・肥満・運動不足・ストレス・遺伝素因などです。
[心原性脳梗塞]
「心原性脳梗塞」は、心臓で生じた血栓(血の塊)が、首の左右にある頸動脈を通り、脳の動脈に流れて行き、脳動脈を塞いでしまう脳梗塞のことです。
比較的大きな栓子が詰まるので、血管を完全に塞いでしまうことが多くなります。血流が滞り、酸素不足となり、脳組織が壊死します。そのため、症状は重篤で、心に至る危険性が高くなります。
また、心臓で発生した血栓が、ちぎれながら脳に達することがあります。脳の大小の血管に同時に多発的に梗塞が起きることが少なくありません。そのため、症状が深刻化重症化します。
血栓は、健康で正常な心臓には生じません。心臓の機能が衰えたり、リズムが乱れて血流が滞ったりすると、血栓ができやすくなります。
心原性脳梗塞の原因となる心臓疾患には、心房細動・心筋梗塞・洞不全症候群・リウマチ性心臓弁膜症などがあります。
心原性脳梗塞の原因と症状
心原性脳梗塞は、心臓に疾患がある場合に発症しやすくなります。心臓でできる血栓は大きいので、太い脳動脈を塞いでしまうことが多くなります。そのため、梗塞(壊死)を起こす範囲が広くなり、深刻な影響が生じます。
心臓で発生した血栓が、ちぎれながら脳に移動し、脳の大小の血管に同時に多発的に詰まることが少なくありません。同時的多発的発症なので、症状が重篤化しやすくなります。
突然に発作が起こり、症状も強く現れます。二次症状として「出血性脳梗塞」が発症することがあります。出血性脳梗塞は、最悪の事態になることが少なくありません。
[心原性脳梗塞の原因]
心房細動
心房細動は不整脈の1種です。心房細動が起きると、血液が一気に送り出すことができず、血流が悪くなります。心臓内に血液が溜まり、血栓ができやすくなります。
動悸や息切れが起きますが、自覚症状がないこともあります。詳しくは、心房細動とは?原因・症状・治療方法を理解しておこう!を参考にしてください!
心筋梗塞
心臓を養っているのが冠動脈です。冠動脈が動脈硬化を起こすと、内部に粥腫ができて狭窄を起こしたり、粥腫が崩れて血栓ができて詰まったりして、血流が悪くなります。冠動脈が閉塞すると、40分後には心筋が壊死してポンプの機能を果たせなくなります。これが「心筋梗塞」です。
「狭心症」は心筋梗塞の前駆症状で、冠状動脈の血流が滞りますが、心筋は壊死していません。冠状動脈の動脈硬化により、血栓が生じやすくなります。心筋梗塞が起きると、激しい胸の痛み(胃痛・腹痛と感じることがあります)、冷汗、吐き気が生じます。
詳しくは、心筋梗塞の前兆は?症状を知って適切な処置を!を参考にしてください!
洞不全症候群
心臓の上部、右心房の近くにある洞結節は、心臓を規則正しく動かす働きをしています。洞結節の働きが悪くなると、不整脈を生じるようになります。心臓が規則正しく動かないと、血流が悪くなり、血栓ができやすくなります。
動悸・めまい・疲労感・倦怠感・胸の痛みを生じます。時には失神発作を起こします。詳しくは、洞不全症候群とは?症状や原因、ペースメーカーによる治療方法などを知ろう!を参考にしてください!
リウマチ性心臓弁膜症
「リウマチ熱」という溶血性連鎖球菌による感染症が原因となり、リウマチ性心臓弁膜症が発症します。心臓には、血液を効率よく循環させる働きをする4つの弁があります。僧帽弁・三尖弁・大動脈弁・肺動脈弁です。
心臓弁膜症とは、4つの弁が、十分に開かなくなったり(狭窄症)、きちんと閉まらなくなったり(閉鎖不全症・逆流症)する状態です。血液がうまく流れ出なくなったり、逆流したりして、効率よく循環することができなくなります。
血液の流れが滞るので、血栓ができやすくなります。心臓弁膜症があると、心不全症状が起きます。チアノーゼ・血圧低下・頻脈・動悸・呼吸困難・意識障害などです。
[心原性脳梗塞の症状]
心原性脳梗塞は、日中の活動時に突然起こることが多いようです。手足の麻痺・感覚障害・意識障害が、同時に起きます。
大きな血栓が脳の血管に詰まり、いきなり血管が閉塞されるので、発症時の症状が一番重くなります。
脳血管障害の場合、発症する脳の部位によって、現れる症状が違います。また、脳組織の損傷・壊死の程度や範囲によっても、症状が異なります。後遺症も、脳の損傷部位や程度により、大きく異なります。回復にも違いが生じます。
手足の麻痺
片側の手や足に麻痺が生じ、手や足が動かせなくなります。心原性脳梗塞では、両手・両足が麻痺して、動かなくなることもあります。
持っている茶碗やペンを落としたり、歩けなくなったりします。アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞のように前兆となる麻痺が生じて、だんだん悪化するということは少ないようです。
顔の片側にも麻痺が生じるので、顔が歪んで見えます。
感覚障害
身体の片側の感覚が鈍くなったり、しびれたりします。
温度感覚(熱さや冷たさの感覚)、触覚、位置覚・振動覚・痛覚が鈍くなります。
言語障害
(運動障害性構音障害)
相手の言うことは理解できるが、声が出ない。言葉を発しようとしても、はっきり発音できない。ろれつが廻らない・・・これを、「運動障害性構音障害」といいます。顔の部分の神経が麻痺するためで、よだれが止まらなくなることもあります。
(失語症)
声を出すことはできるが、相手が何を言っているのか、理解できない。話そうとしても、言葉が出てこない。書いたり、読んだりできない・・・これは、失語症です。大脳の言語領域が損傷されると、起こります。
意識障害
脳幹の覚醒領域や大脳皮質を広範囲に損傷されると、意識障害が起きます。また、脳梗塞が起きると、脳が腫れるので、意識が低下します。
意識が混濁して、外からの刺激や呼びかけに反応しなくなります。ぼんやりしている状態、昏睡状態、失神などが起きます。
意識が変質して、もうろう状態、錯乱、記憶障害などが起こります。
失行症
目的に合った動作や行動ができなくなります。目指した物を手に取るなどという、簡単な動作が難しくなります。
失認症
聴覚や視覚に異常はないのですが、対象を見たり、聞いたり、触れたりしても認知できない状態になります。
視覚障害
両眼が視野の半分しか見えなくなのが、「半盲」です。
物が二重に見えます(複視)。
「共同偏視」といって、両眼が、左右のどちらかに向いたままになります。
器質性健忘症
脳梗塞などによる脳組織の損傷により起こる健忘症を「器質性健忘症」といいます。物忘れがひどくなります。数時間前の記憶が曖昧(あいまい)になるなど、過去の記憶が抜け落ちてしまいます。時間の感覚が失われます。
脳血管性認知症の初期症状でもあります。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血など、脳の血管が詰まったり、出血したりして、脳組織に酸素が送られなくなり、神経細胞が壊死して起こる認知症です。アルツハイマー型認知症とは異なります。
アルツハイマー型認知症のように、じょじょに進行するのではなく、脳梗塞の発作とともに、突発的に発症します。
「まだらボケ」と言われるように、失われた能力と、しっかり働いている能力が混在します。記憶力は曖昧だが、判断力はしっかりしているという具合です。1日のうちでも、症状が変わります。感情の起伏が大きく、すぐに泣いたり起こったりします。
患者さん自身がが認知症であることを自覚している場合が多いので、周囲の配慮が必要です。
脳血管障害の治療とともに症状が改善することもありますが、脳梗塞が再発すると、急激に認知症が進行することもあります。
出血性脳梗塞
脳梗塞が起きると、疾患部の血管は損傷されて、弱くなります。自然に血栓が溶けたり、治療によって血栓が溶けたりすると、血流が再開します。損傷された血管は、血液の圧力に耐え切れずに破れて、出血を起こすことがあります。これが「出血性脳梗塞」です。
心原性脳梗塞では、脳を閉塞していた血栓が自然に溶けて、血流が再開することがあります。そのため、心原性脳梗塞が起きて、数分以内に血栓が溶けてしまうと、大きな梗塞にならず、自然に回復してしまいます。しかし、脳梗塞が完成してしまった後で、血栓が自然に溶けると、血流が再開して出血することが、多くなります。
心原性脳梗塞の二次症状としてよく起きます。出血が大きければ、神経障害が急激に悪化します。最悪、死に至る危険もあり、予後は、良くありません。
心原性脳梗塞の治療と予防
心原性脳梗塞の治療は、内科の薬物治療と外科的療法、そしてリハビリテーションの3つになります。
心原性脳梗塞の予防は、持病の心臓疾患の治療と生活習慣の改善です。
[発症後3時間が勝負]
心原性脳梗塞の治療は、時間との勝負です。血管に塞栓が詰まり、完全に閉塞させてしまうと、その先の脳組織は約1時間で壊死してしまいます。しかし、血管が詰まってから1~数時間は、周辺の脳組織(ペナンブラ)は生きています。その間に、適切な治療を行えば、機能を回復することもできます。深刻な後遺症に苦しむことも少なくなります。
心原性脳梗塞が発症して3~4時間経つと、薬剤を投与して血栓を溶かしても、梗塞が起きている部分の血管の損傷が進んでいるので、血流が再開されると、圧力に耐え切れずに破れてしまいます。出血性脳梗塞を起こしてしまうのです。
急に倒れたり、ろれつが廻らなくなったりしたら、すぐに専門医のいる病院へ運びます。発症して3時間以内に、適正な治療を始めることが大事です。
総合病院・大学病院であれば、内科・循環器内科を受診します。専門病院としては、東京の心臓血管研究所附属病院、大阪の国立循環器研究センターが有名です。
[急性期の治療]
発症後間もない急性期の治療は、内科的薬物療法が主体となります。小脳に大きな梗塞ができていたり、大脳全体が梗塞のために腫れ上がったりして、生命に危険がある場合は、外科的処置(手術)を行います。
発症から3時間以内
「血栓溶解療法」を行います。血栓溶解薬を投与して、血栓を溶かします。しかし、少しでも脳内に出血症状があれば、この療法は行いません。血栓を溶かすので、出血がひどくなります。
また、心原性脳梗塞を発症して3時間以上経過している場合は、出血性脳梗塞を起こす可能性があるので、最近は、「血管内治療」を行うことがあります。
「血管内治療」とは、カテーテルなど医療機器を血管に挿入して行う治療です。「血管内手術」ともいいます。心原性脳梗塞の場合は、脳血管の拡張療法「脳血管形成術」が行われることが多いようです。
発症して48時間以内
「抗血小板療法」を行います。心原性脳梗塞には、アスピリンの経口投与を行います。血液をサラサラにして、血液中の血小板の凝集を妨げ、新たに血栓ができないようにします。「抗凝固療法」ともいいます。
「抗血栓薬」を投与して、できた血栓が心臓側に伸びていくのを防ぎます。
「脳保護薬」を投与して、有害物質を除去し、脳を保護します。エダラボンをよく使います。エダラボンには、フリーラジカルと呼ばれる「脳の有害物質消去作用」があります。
脳の浮腫(むくみ)や腫れを抑制する「脳浮腫軽減薬」を投与して、脳の症状の悪化を防ぎます。
[再発防止]
発作的な危機を回避したところで、再発防止の治療を行います。心原性脳梗塞を含めて、脳梗塞は再発しやすく、再発する度に悪化します。再発防止が大事な治療です。
再発防止は、内科的薬物療法と外科的療法を併用することがあります。
内科的薬物療法
心原性脳梗塞の再発防止は「抗凝固療法」です。ワルファリンなどの抗凝固薬を投与して、血液が固まりにくくします。多量に服用すると、出血する危険があるので、医師は血液検査などを行いながら、慎重に投与します。
不整脈・洞不全症候群などがあると、血栓ができやすいので、これらの疾患の治療をしっかり行います。狭心症や心筋梗塞の病歴のある人には、それに適した治療を行います。血管拡張剤(血管を広げて血流を良くする)や降圧剤(血圧を低下させる)を投与します。
動脈硬化を改善するために、血液をサラサラにする薬や脂質改善剤を服用します。
外科的療法
動脈硬化で狭くなった血管を広げるには、外科的処置が適しています。
「頸動脈内剥離術」は、狭くなった頸動脈の内膜を剥離切除します。頸動脈に70%以上の狭窄がある場合に行います。全身麻酔で頚部動脈を切開します。
「頸動脈ステント留置術」は、ステントという細いコイルのような器具を動脈内に挿入して、血管内を広げます。足のつけ根の太い動脈からカテーテルという細い管を通して、ステントを挿入・留置します。切開しないので、全身麻酔の必要はありません。
「バイパス手術(血管吻合術)」は、閉塞または狭窄している血管の根元と、問題個所の先の血管をつないで、血液が滞りなく流れるようにします。全身麻酔で行います。
[リハビリテーション]
心原性脳梗塞は突発的・多発的に起きる上、脳血管を閉塞して血流を断つので、酸素不足により脳組織が壊死してしまいます。一度死んでしまった脳細胞・神経細胞は、二度と回復しません。そのため、危機を脱した後に、深刻な症状が残ります。リハビリテーションで多少回復できますが、完全に元に戻ることは極めて難しいと言えます。
しかし、これ以上の悪化を防ぎ、再発を予防するために、リハビリは必要です。できるだけ早いうちから行うと効果的です。
歩行障害・言語障害・手の麻痺などは、日常生活に支障を生じるので、理学療法・作業(運動)療法・言語療法などを行います。気長に忍耐強く取り組む必要があります。
[心原性脳梗塞の予防と再発防止]
心原性脳梗塞を含めて、脳梗塞は治療よりも予防が大事です。また、脳梗塞は、再発しやすい疾患です。発症した人は、再発防止に努めることが必要です。再発する度に、症状が悪化して、最悪、寝たきりになることもあります。
心原性脳梗塞は、他の脳梗塞や脳出血と同様、動脈硬化が大きな原因です。脳の血管が動脈硬化を起こして、狭くなっているところへ、心臓でできた血栓が飛んで塞いでしまうのです。動脈硬化を改善することが、脳梗塞の予防と再発防止になります。
動脈硬化と生活習慣病
動脈硬化は加齢によって起きますが、生活習慣病が原因となることが多いのです。「生活習慣病」とは、その名の通り、日常の生活習慣によって起きる病気です。
生活習慣病とは、「高血圧症」「脂質異常症(高脂血症)」「糖尿病」「肥満」です。この4つの疾患を「死の4重唱」といいます。心原性脳梗塞が、高齢者・男性・喫煙者に多く発症するのは、生活習慣病と大きく関係しているためです。もちろん、高齢の女性にも発症します。
生活習慣病は自分で改善できる
生活習慣病は、自分で注意することで改善できます。糖分や脂肪分の多い食事を避け、善玉コレステロールの多い食材、青魚やオリーブオイルや荏胡麻油、大豆製品などを摂るように心がけます。野菜を多く摂ると、コレステロールが減少します。
酸素を取り入れる有酸素運動、ウォーキングやスロージョギング、ストレッチなどをして、運動不足を解消します。ストレスも動脈硬化の大敵ですから、過労や睡眠不足に注意して、十分に休息し、ストレスを溜めないようにしてください。
生活習慣病は動脈硬化を促進し、また、生活習慣病が心原性脳梗塞など脳梗塞を招くのです。脳血管障害の中でも、クモ膜下出血は、脳動脈瘤や脳動静脈奇形などの先天性のものに高血圧が加わると発症しやすくなります。もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)なども遺伝性要素が強い先天性のものです。
こうした先天性の脳血管障害は別として、脳内出血や脳梗塞は、自分のちょっとした努力で予防したり、再発防止したりすることができます。
喫煙は最大の敵
喫煙は、脳血管障害にも心臓疾患にも悪影響を及ぼします。自分が吸わなくても、喫煙者と同席して間接喫煙になると、喫煙者自身よりも大きな害を受けます。
禁煙は、心原性脳梗塞の最大の予防法の1つです。心原性脳梗塞を発症した人は、再発防止のために、禁煙をオススメします。
まとめ 心原性脳梗塞は突発的・多発的に起きる
脳梗塞には、アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞・心原性脳梗塞(心原性脳塞栓症)の3種類があります。心原性脳梗塞は、心臓にできた血栓が頸動脈を通って、脳に達し、脳の血管を塞いでしまいます。
他の脳梗塞が少しずつ血管内を狭くして、血管を塞ぐようになるのと異なり、大きな血栓が、いきなり、突発的に脳の血管を塞いでしまいます。血栓がちぎれて脳に達し、あちこちの脳血管を塞いで、多発的に脳梗塞を起こすこともあります。
大きな血栓が血管を塞ぐので、血流が断たれて、酸素不足になり、脳組織が壊死(梗塞)してしまいます。同時に多発すると、壊死する範囲が広くなり、重篤な状態になります。二次症状として出血性脳梗塞が起きることがあります。
脳梗塞が起きた血管は損傷されて弱くなり、血栓が溶けて血流が再開すると、血液の圧力に耐え切れず、血管が破れて出血してしまうのです。心原性脳梗塞では、血栓が自然に溶けることがあり、出血性脳梗塞を引き起こしやすいのです。
突発的・多発的に発症するため、手足の麻痺や歩行障害・意識障害・感覚障害・言語障害が同時に、重い症状で現れます。死に至る危険性も低くありません。
心原性脳梗塞は、発症後3時間以内に治療すると、回復も良く、深刻な後遺症に苦しむことも少なくなります。他の脳梗塞のように、前兆となる症状がほとんどないので、少しでもおかしいと思ったら、すぐに専門医のいる病院に行くことが大事です。循環器内科を受診してください。
心原性脳梗塞の危険因子は、高血圧症・脂質異常(高脂血症)・糖尿病・肥満などの生活習慣病です。生活習慣を少し改善するだけで、心原性脳梗塞を防ぐことができます。発症してしまった人は、再発予防になります。
生活習慣病を改善して、心原性脳梗塞の予防と再発防止をしてください。
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