脳が委縮(縮まる)と聞いて、何を想像しますか?もともとあった大きさよりも小さくなってしまうなんて、なんだか怖いですよね。また、脳というのは非常に大切な器官ですし、わたしたちの行動を決める司令塔の役割も果たしています。
そんな大切な脳が小さく縮んでしまうと、一体どのような弊害があるのでしょうか?そもそもなぜ、脳が委縮してしまうのでしょうか?ここではその原因と、脳の萎縮を食い止めるための方法などについて、詳しくご紹介します。
脳の萎縮はなぜ起こる?
ではなぜ、脳が縮んでしまうのでしょうか?その原因は生活習慣にあります。中でも特に注目すべき原因について、原因別にご紹介しましょう。
過度の飲酒
何事も程度を守らなければ体の毒です。アルコールの過剰摂取は、脳にマイナスの影響を与え、脳細胞を減少させる原因になります。
元々、人の脳は30歳を過ぎると細胞が死に始め、その数は日々10万〜20万と言われています。この脳細胞の死滅がさらに進んだ状態が、脳委縮というわけですね。
タバコや栄養不足による血行不良
ファーストフードやコンビニ弁当などの偏った食事などにより、加工添加物を過剰すると、脳細胞に悪影響を与えます。また、タバコには血液を悪くする物質が多く含まれていますから、脳の毛細血管にまで血液が行き届きにくくなるのです。このように、タバコや添加物などによって血流が悪くなると、脳が酸欠や栄養不足に陥り、細胞の死滅を加速させることにもつながるのですね。
食後のタバコを楽しみにしている人もいるでしょうが、タバコは百害あって一利なしと言いますから、できる限り控えることをオススメします。
ストレス
人は強いストレスを受けると脳が萎縮してしまうと言われています。特に、子供の時に受けるストレスは脳に大きな影響を与えます。幼い頃に強いストレスを受けると、脳の発達が遅れ、脳が萎縮するという研究結果も出ているようです。
また、脳の萎縮によって神経伝達物質や幸福を感じるホルモンの分泌が滞ると、うつ病の原因になるとも言われています。社会に出て生活する限り、多少のストレスは避けられませんが、できる限り、ストレスなく過ごしたいものですね。
脳萎縮の症状
脳が萎縮すると、容積が減るため、記憶力や行動にも異変が起こり始めます。これまで当たり前に出来ていたことができなくなるなど、目に見えて変化が現れます。
認知症
脳の萎縮で現れる症状として最も有名なのが認知症です。認知症になると徘徊や言語障害など、様々な症状が現れてきます。では、認知症について詳しく見ていきましょう。
認知症の原因
認知症やパーキンソン病の原因と言われるのが、アミロイドβというタンパク質です。わたしたちの体内には様々なタンパク質が存在していますが、これがアミロイドβに変わると、認知症の原因となります。アミロイドは不溶性のため解けずに体内に残ります。これが心臓などの重要な器官に溜まると、重大な疾患を引き起こすことがあります。
そして、アミロイドが脳に蓄積したものが認知症というわけですね。実際、認知症患者の脳には、まるでゴマのように黒いシミのようになって、アミロイドβが蓄積しています。
認知症・5つの症状
認知症患者の数は、近い将来、5人に1人の割合でかかると言われています。認知症はそれまでできていたことができなくなったり、通常では考えられない行動を取ったりと、患者家族も戸惑ってしまうことばかりです。
また、認知症が進行すると以下のような症状が現れてきます。目安として、心に留めておいてくださいね。
- 人の名前が思い出せない
- 徘徊するようになる
- トイレ以外の場所で排泄してしまう
- 小さな子供のような言動を取る
- 人を傷つけるようなことを平気で言う
人の名前を忘れるのは、単なる物忘れでも起こりうることですから、少々分かりにくいですね。しかし、ほかにも徘徊や暴言、子供のような言動などがある場合、認知症がすでに進んでいる可能性が高いと言えます。
徘徊先は認知症の特徴とも言える症状ですが、事故に遭ったり、最悪の場合、死亡するケースもあったりますから、認知症の中ではかなり厄介です。また、トイレがきちんとできずに周りを汚してしまったり、ひどく傷付く言葉をぶつけられたりすると、精神的にもきついですよね。
認知症の治療法
認知症を治療する方法としては、薬に頼る薬物療法と、専門家または家族や身近な人が対応する、介護に頼る方法があります。特に介護は、専門家ならまだしも、個人で行うのはかなり厳しいですし、体力的、精神的な負担は大きいですよね。
脳委縮の自覚症状
脳萎縮は検査しなければ分かりませんが、時には自覚症状が現れることもあります。ここでは、3つの自覚症状についてお話しましょう。
物忘れ
物忘れは誰にでもありますし、軽度なものであれば大して気にかけることもないでしょう。しかし、物忘れの中に認知症が潜んでいることもあるのです。
前日のメニューを忘れる
こちらも物忘れと似ていますが、昨日の晩御飯に何を食べたか、答えられますか?もしも思い出せないことが頻繁にあるようなら、認知症の可能性があります。
言おうとしたことを忘れてしまうことが頻繁にある
ぱっと頭に思いついたことを、次の瞬間には忘れてしまうこと、ありませんか?「度忘れ」だと思っていても、あまりに頻度に起こるなら認知症の可能性を疑いましょう。
これだけ見ると、思い当たることがあって不安に感じてしまいますよね。しかし、自覚症状があるうちはまだ安心です。と言うのも、自覚症状があるということは、脳が記憶を引っぱり出して思い出そうとしいてる証だからです。それよりも注意すべきなのは、自覚のない場面で不可解な言動をしていることです。
自分には覚えがなくても、周囲を驚かせるような行動を取ったり、迷惑をかけていたりする場合、それこそが「認知症」のサインと言えるでしょう。ここまできてしまうと、すでに脳委縮がかなり進行していると考えられます。
脳萎縮の検査方法
では、脳萎縮の検査はどのようにすればよいのでしょうか。有効なのがMRI検査です。いわゆる輪切り状態で脳の中身を確認できるため、現在の脳の状態を知ることができます。
もしも脳が委縮している場合には、頭蓋骨と脳の間に隙間ができています。通常は隙間はなく、ぎっしり脳みそが詰まっているはずですから、一目瞭然ですね。
脳萎縮を防ぐには
脳萎縮に生活環境が関わっていることが分かりました。では、脳萎縮にならないためにはどうしたらよいのでしょうか?
脳内環境を整える
脳萎縮の根本的な原因は、血流が悪くなることなどによる栄養不足や酸欠です。ですからまず、血液がきちんと行き渡るよう、血流をよくすることが大切です。
お酒を控える
もちろん禁酒もよいですが、いきなりは難しいという方は、お酒の量を減らすところから始めましょう。脳萎縮は、1日に缶ビールを2本飲むだけでもリスクがあります。目安としてはまず、350mlの缶ビール1缶を目標に掲げましょう。
食生活の改善
お酒を控える以外に、食生活で予防する方法もあります。血行をよくする食材としては、以下のようなものがあります。
青魚を食べる
に、サバやマグロ、サンマやイワシなどの青魚をメニューに取り入れましょう。旬のものを選んで、上手においしく取り込めると理想的です。
ビタミンの多い食材を食べる
脳は酸素とぶどう糖を大量に消費します。これらを消費すると活性酸素が溜まりやすいため、抗酸化作用を持つビタミンC・E、β-カロチンなどを含む食品を多く摂ることが大切です。パプリカやパセリ、柑橘類はビタミンC、ニンジンやかぼちゃにはβ-カロチンが豊富です。積極的に摂るようにしましょう。
文書の読書や計算を習慣づける
長年の経験から得た知識や記憶を元に判断や決断を下している脳ですが、この働きを司っているのが前頭前野です。前頭前野を活発にを働かせることが、脳の萎縮を防ぐためには重要です。日記をつけたり、短時間でも読書したり、計算は暗算にするなど、日頃から前頭前野を使うことを心掛けましょう。
脳をしっかり休ませる
わたしたちは眠っている間に細胞の新陳代謝が活発化します。成長ホルモンが分泌されるのも夜10時から深夜2時の間で、この時間帯はゴールデンタイムと言われる、とても大切な時間です。ですから、この時間帯にきちんと睡眠を摂ることが大切ですよ。また、脳をしっかり休ませるためには6〜8時間の睡眠が必要とも言われています。
ストレスを避ける
先ほどお話ししたように、ストレスは脳委縮の原因になります。人の脳はストレスを感じると、コルチゾールというホルモンを分泌します。コルチゾールが大量に分泌されると、脳の働きが悪くなり、大脳辺縁系や海馬に悪影響を及ぼし始めます。
大脳辺縁系は感情や本能を司るため、感情が鈍くなりますし、記憶を司る海馬に影響を与えることで、記憶力の低下などが起こってきます。
日々の生活の中で少なからず感じるものではありますが、過度のストレスは極力避けるようにしましょう。
まとめ
脳の萎縮と聞くと、とても怖いイメージがあるかも知れません。特に有名なものとしては認知症があり、1度かかってしまうと治療は困難です。本人だけでなく、介護する周りの人達への負担は計り知れませんよね。
さらに厄介なことに、脳は1度委縮してしまうと元には戻らないそうです。つまり、いかに脳の委縮を食い止めるかが、何よりも重要になってくるわけですね。脳の萎縮は加齢によってどうしても起こってくるものですが、生活習慣の改善や少しの努力で、緩やかにすることはできます。脳の大切さを再認識し、今日から脳に優しい生活習慣を始めてみませんか?