ゆっくりと寛ぎたい!デスクワークに集中したい!じっと趣味に集中したい!なのに脚がむずむずしてじっとしていられない!不快で目の前のことを楽しめない!そんな風に脚に違和感や不快感を感じたことはありませんか?
こんな捉えどころのないような症状にも、ちゃんとした症候名がついています。それが「むずむず脚症候群」です。「レストレスレッグス症候群」「下肢静止不能症候群」とも呼ばれます。40代~70代の女性に多く見られる症候です。
この奇妙な症状の原因や対処法などを書きましたので、足の違和感でお悩みの方は、ぜひ読んでみてください。
むずむず脚症候群(RLS)について
初めに「むずむず脚症候群」とはどんな病気なのかをご紹介します。
足の不快感は皮膚表面ではなく、皮膚より中の方に感じます。動かさずにはいられない、動かすと楽になったり消えたりする、というのが特徴です。
感じ方はイライラする、ほてる感じがする、だるい、うずく、痛い、小さな虫が動いているようだ、など、人により千差万別です。また、勝手に足がピクピク動いてしまうこともあります。
症状は、じっと座っていたり、車や電車に乗ったり、横になって寛いだりしている時に現れることが多くあります。
日中より夕方から夜にかけて強くなりがちで、就寝時や睡眠中に感じる方も多く睡眠不足の大きな原因にもなってしまいます。重症になると日中でも起こり、じっと落ち着いて何かに取り組むことが難しくなってしまいます。
むずむず脚の原因
なぜ、むずむずしたりイライラしたりするのでしょうか?正確な原因は未だ分かっていませんが、神経に異常が起こってるのではないかと考えられています。
脳内ドパミン神経の機能障害
私たちは、身体内外からの沢山の情報を中枢で受け取り、判断し指示しています。身体にある沢山のセンサーから情報が集まり、体がスムーズに動けるようにしてくれている大きな中枢が脳です。
体の表面や体のいたる所にセンサーがあり、センサーが感知した情報は中枢(脳や脊髄)に向けて送られます。中枢に送られてくる情報は非常に膨大です。生体に影響を与える重要な情報もあれば、生体活動になんら影響のないごく些細なものまであります。
脳や脊髄といった中枢にこの情報がすべて、一気に集まってしまうと、情報を的確に処理しきれず混乱が生じます。中枢での混乱を避けるために、また、大切な情報を選択して、早く確実に伝えるために工夫がなされています。不必要な刺激情報は途中で遮断されるのです。
この不必要な刺激情報を遮断してくれるのが、ドパミンという物質です。ドパミンの機能に障害が出て、衣服が触れたり風が動いたりといった、些細で不必要な情報までもが脳に伝わり、下肢の不快感として認識されるのだろうと考えられています。
A11神経核の機能低下
ドパミンとドパミンの受容体はA11神経核でつくられ、脳や脊髄に送り出されています。この、ドパミンの製造元に機能障害が生じ、十分な量のドパミンとドパミン受容体を作り出せなくなっている状態が推測されます。
また、十分な量は作られているのに、分泌される量が減ってしまっていることも考えられます。低下は加齢でも起こり得ますが、遺伝的にA11神経核の機能が低い場合もあります。
鉄の不足
ドパミンとドパミンを受け取る受容器は、作られる時に鉄の作用が必要です。さらに作られたドパミンを放出する際も、鉄が関わっています。
このため鉄分の不足はドパミンの産生不足や放出減少につながるのです。鉄は赤血球の材料でもあります。過多月経や貧血の方では、慢性的に鉄が不足している可能性があります。
脊髄や末梢神経の異常
ドパミンは脳だけでなく脊髄神経や末梢神経での情報処理にも活躍しています。脊髄でのドパミン機能が弱まっても、足の不快感が起こります。
遺伝
むずむず脚症候群の患者さんの家族にはむずむず脚の方が多く、また、身体活動が旺盛な小児期~青年期でも発症する割合が低くはないことから、遺伝的な病気でもあると考えられます。
むずむず脚の対処方法
では、むずむずの症状を抑えるのはどうすれば良いか紹介します。
カフェインや煙草の摂取を控える
カフェインと煙草は、どちらも脳を覚醒させる作用があるので眠りを浅くします。むずむず脚は入眠時や就寝時に症状が強くなりがちですから、深い眠りが得られず症状が強く出てしまいます。
カフェインの覚醒効果は平均3~4時間あるといわれます。長いと10時間以上もあることがあります。紅茶や緑茶にもカフェインは含まれますから、夕方からの一杯はノンカフェインのものを選びたいですね。
煙草には、覚醒効果と同時に沈静効果もみられます。沈静効果のお陰で落ち着いた気分になるのですが、覚醒効果の方が強いため、結果的に寝付きにくく浅い眠りになってしまいます。
煙草の効果が薄まるのにも2~3時間はかかりますから、就寝2~3時間前には喫煙を終わらせましょう。また健康的にも良いことは無いので、なるべく禁煙するようにしましょう。
アルコールは就眠3時間前まで
アルコールは、飲むと眠気を誘い寝付きやすくなりますが、脳の活動が静まりきらず浅い眠りとなってしまいます。
アルコールを飲んだ時は、早く眠れたが夜中に目が覚めたなんて経験はありませんか?睡眠が浅く途絶えがちになり、むずむずを余計に強く感じてしまいます。
睡眠に影響を及ぼさないよう、就寝3時間前には飲み終えるのが望ましいです。
鉄分を摂る
鉄瓶や鉄鍋を日常的に使うことで、鉄分を自然に少しずつ摂取することができます。
食品には、体内への吸収率が高いものと低いものがあります。
・体内への吸収率が良い : レバー いわし カツオ キハダマグロ 赤貝 など
・体内への吸収率が低い : ホウレン草 菜の花 ひじき 牡蠣 卵 大豆 など
足を動かす運動をする
むずむず脚は「足を動かすと軽快しやすい」という特徴があることから、足を中心に動かす運動がお勧めです。
軽いジョギングやウォーキングなど、足の循環が良くなる運動で症状の改善が期待できます。もっと簡単に、家事中の足踏みやストレッチ、座りながらの足首の屈伸運動など手軽なことでも充分です。気長に続けましょう。
足のマッサージ
筋肉をほぐす効果と、血液循環改善につながります。足の老廃物の排泄も促されます。心地よい箇所を心地よい強さで握り、放すことを、つま先の方から膝、股関節に向かい行います。
また、足を押し握ったまますり上げても、同様な効果が得られます。
東洋医学
漢方薬や鍼灸治療は個人の体質に合わせた治療をしてくれます。新陳代謝を促し体質改善することで、症状の出にくい体を作ってくれます。
むずむず脚症候群を引き起こしやすい方
症状が出やすいのは、鉄欠乏性貧血、腎不全(人工透析)、パーキンソン病、妊婦さんなどです。また、精神的な不安や心配事があると増悪する傾向にあります。
紛らわしい病気
下肢の静脈瘤、腰椎疾患、糖尿病性の神経障害、うつ病などは、むずむず脚と同様の不快感が出やすいです。
自分の原因は何かを把握することが大切ですね。
まとめ
むずむず脚の原因
・脳や神経の機能障害だと考えられる。
・ドパミン不足が一番の原因だと考えられる。
・鉄不足がドパミン産生に影響する。
・脊髄や末梢神経に障害があることも考えられる。
・遺伝性の症候群とも考えられる。
むずむず脚の対処法
・カフェイン、煙草、アルコールを控える。
・鉄分を補給する。
・足を動かす運動をする。
・マッサージやストレッチをする。
・東洋医学で体質改善を図る。
むずむず脚症候群を引き起こしやすい方
・鉄欠乏性貧血、腎不全、パーキンソン病、妊婦さんなど
紛らわしい病気
・下肢静脈瘤、腰椎疾患、糖尿病性神経障害、うつ病など
むずむず脚は足の症状だけに留まらず、重篤な睡眠障害の原因ともなります。
また、不快感や違和感は足だけでなく体の色々な所で感じるようにもなってきます。今ある症状を改善する為にも、症状の悪化を予防するためにも、自分に合った方法を見つけて地道に続けたいものです。