人の脳は年齢によって日に日に劣化していってしまう、そんな気がしていないでしょうか。ですが、意外な事に脳も日々のトレーニングで鍛える事が可能です。特に自発性や理性、感情を司る前頭葉を鍛える事によって機能が向上し、人とのコミュニケーションが円滑になる、仕事がスムーズに進むようになる等の効果を得る事が可能です。
脳は非常に変化しやすい器官であるため、その機能は年齢に関わらず大きく改善する可能性があります。日々簡単な運動で前頭葉を鍛える事が可能なので、すこしづつ取り入れて仕事のできる脳を手に入れましょう。
前頭葉とは
前頭葉は大脳の一部で、名前の通り脳の前の方にある部位を指します。脳を大きなボールと考えた場合、大体前の方1/3〜1/2くらいが前頭葉と呼ばれる範囲になっており、割と大きなパーツになっています。左右に分かれており、隣のパーツである頭頂葉との間には溝があります。
前頭葉は思考や自発性、性格、理性、感情などを司っており、大体25歳前後で完全に成熟すると言われています。
前頭葉の働き
人間の前頭葉は他の動物に比べて特別に発達しており、脳の司令塔といえる働きをしています。大脳全体で得た情報から現状の認識を行い、次の行動に向けての指令を出します。
行動と欲求の制御を行い、自分の考えや意思決定を行う事や、自制心や論理的な思考を司り、言葉を話す・運動を行うなどの指令もここから来ています。自分を自分でコントロールするために動いている脳といえます。
前頭葉は人間的な生活を送る上でかかす事の出来ない部分で、事故などにより前頭葉に損傷を負ってしまった場合、意欲の低下や興味、喜びの喪失が見られ、うつ病に似た症状が現れる事があります。
また、前頭葉に怪我をして性格が大きく変わってしまったという話は有名で、元々は非常に礼儀正しく落ち着いた人であったのが、事故を境に礼儀知らずで頑固になってしまった、優柔不断になってしまったというような話が残されています。昔の話であり、かなりの誇張が含まれている可能性はありますが、前頭葉が人の性格や行動に大きな影響を与えている事が伺えるエピソードと言えるでしょう。
前頭葉を鍛えるとどうなるか
前頭葉の働きは大きく分けると以下の3つに分類されています。
- 知…考える、計画する
- 情…空気を読む、人の気持ちを読む
- 意…最終的な決断を下す
「知」だけで判断すると空気を読む事ができず、「情」だけで判断すれば段取りがぐちゃぐちゃになってしまう事もあります。矛盾する事も多い「知」と「情」の間を調整し、最終的な決断を下すのが「意」の部分という事になります。
つまり、前頭葉を鍛える事で高度な情報処理ができるようになり、計画や段取りの能力の向上や、交渉力の向上が起こります。先の事を予測して判断する事ができるようになるのに加えて現状の把握、決定までをスムーズに行う事ができるようになります。
逆に前頭葉の働きが悪くなり、指令を出す事ができなくなってしまうと、人は感情の欲求に従うようになってしまい、先々大変な事になるのが分かっているのにも関わらず面倒な事をしたくなくなったり、命令がなければ判断ができないような状態になってしまいます。
前頭葉を鍛えるために出来る事
脳は非常に変化しやすい器官と言われて、筋肉のように使えば使うほど鍛えられ、放っておくと衰えてしまいます。また、脳は非常に高度な情報処理器官なので、そもそも外部からの情報に速やかに適応し変化する運命にあるとも言われます。そのため、ぜひ少しでも脳を鍛える運動を取り入れてみて下さい。
前頭葉は無意識な状態では活発に働く事ができません。そのため、できない事を意識して行っている時に活性化すると言われています。
有酸素運動
運動は脳を複雑に使って行われるため、脳にとっては非常によい刺激となります。
また、運動後に脳由来神経栄養であるBDNFという物質が分泌されるため、脳細胞の増殖が起こり、今ある細胞の保護にもつながります。
また、下半身には全身の7割の筋肉が集まっており、下半身を重点的に動かす事で酸素が脳に大量に送り込まれて脳が刺激されます。特に太ももの筋肉と脳の機能には相関があると言われており、ウォーキングやジョギングなどがおすすめです。一日に15~30分程行えば充分に効果があります。
ゲーム
ちょっとしたゲームにより、前頭葉を鍛える事ができます。前頭葉を鍛えるポイントは、ワーキングメモリーと呼ばれる作業記憶を使う事と、慣れない事をして脳の活性化を促す事にあります。
作業記憶はRPGのようなゲームで使う事ができます。どのアイテムが使えたのか、次がどんな展開になるかなどを考える事が脳を鍛える事につながります。
また、テレビゲームでなくてもクイズやしりとり等も非常に効果的です。中でもしりとりは簡単に出来て効果が高いゲームで、条件に当てはまる言葉をひねり出そうとする時に大変よい脳のトレーニングになります。よく使う言葉だけをつなげている時点ではまだ脳のトレーニングにはならず、一通り出尽くしてしまってからが脳にとっての本番になります。
音読
頭を鍛える際に、大変効果的なのが音読です。音読を行う際、私達は「文字を眼で追う」「口に出して読む」「読んだ声を聞く」という三つの運動をしています。視覚と筋肉、聴覚を活用している動きなので、脳のトレーニングになるのです。
さらに、音読するスピードをどんどん速くする事により前頭葉のワーキングメモリをフル活用する事になり、より効果的なトレーニングにする事ができます。おまけの効果として、音読という単調な運動を行う事で脳内にセロトニンが分泌されるというものもあり、気軽に出来て大きな効果を得る事ができます。
栄養や食事
前頭葉を活性化させる栄養素は、まずDHAとEPAです。DHAは必須脂肪酸の一つで、必須と名前が付く事から分かるように体内では合成できない栄養素です。血をさらさらにするので、動脈硬化を防ぐ事に加えて脳の神経脂肪の発育を促します。EPAも同様に血液をさらさらにする効果を持ちます。
次に、脳の神経伝達物質を生成する材料になる栄養素として、レシチンと亜鉛、チロシン、蛋白質があります。レシチンとチロシンは神経伝達物質の原料となり、亜鉛は神経細胞間の刺激伝達物質を合成します。蛋白質は全身の細胞の構成に関わる栄養素です。
実際に、前頭葉に効果のある栄養素がどの食品に含まれるかについてまとめました。
- DHA…マグロ、ぶり、サバ
- EPA…イワシ、マグロ、サバ
- レシチン…大豆、ピーナッツ、卵黄、穀類
- チロシン…大豆、かつお、小麦、高野豆腐
- 亜鉛…かき、からすみ、レバー、チーズ
これらの食材をバランス良く摂取する事で、脳を活性化させ前頭葉を鍛える事につながります。また、脳を動かすエネルギーであるブドウ糖も合わせて摂取するとよいでしょう。
まとめ
前頭葉は日々の活動で鍛える事が可能です。鍛える事で空気を読む力や計画能力、判断力など人間がいろいろな状況で行っている高度な情報処理がうまくできるようになり、仕事の面や人間関係の面など非常にスムーズに対応する事ができるようになります。
前頭葉を鍛えるためには、普段使っていない筋肉や脳の部分を使う事により前頭葉を活性化させる事や、脳の神経の材料となる栄養素を摂取する事が有効です。ただし、筋肉の運動で活性化される部分と脳の運動で活性化される部分は異なるので、これらの対策をバランスよく組み合わせて脳を鍛えるように心がけましょう。
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