心筋梗塞の前兆を甘く考えてはいけません。胸の痛み、息苦しい、肩や背中の痛み、しびれ。「前にもあったけど今はもう痛くないから大丈夫」と決めつけてはいませんか?
見逃したくない心筋梗塞の前兆や原因、症状、予防方法をまとめました。
心筋梗塞の前兆
まずは、心筋梗塞の前兆といわれる症状から見ていきます。
心筋梗塞の前兆として、狭心症の症状と、心筋梗塞の発作が起きたときの初期症状を覚えておきましょう。狭心症は心筋梗塞の前段階なので、まずは狭心症の症状が現れます。狭心症だからといって、すぐに心筋梗塞になるわけではありませんが、どのようなときに、どれくらいの痛みがあったか、どれくらい続いたか、などは覚えておくといいでしょう。
また、3人に1人は前兆(狭心症)がなく、突然心筋梗塞を発症するともいわれています。
狭心症の症状
- 胸の痛み、締め付けられるような胸の痛み、息苦しい
- 少し動いたり、坂道や階段を上ると息切れがする
- 呼吸のたびに肺が痛む
- 腕、肩、背中の痛み
- 左手小指のしびれや痛み
- 左肩の痛み
- 首が回らない・歯やあごの痛み
- ゲップやしゃっくりがでる
- 吐き気、嘔吐
- 胃がムカムカする、不快感
- 頻尿
- ED
- むくみ
2~3つ以上当てはまる症状があれば、病院で診察を受けておきましょう。
放散痛といって、心臓とは関係のない離れた場所が痛むことがあります。
心筋梗塞の初期症状
- 普通にはしていられないほどの激痛、死を覚悟するほどの激痛
- 冷や汗が出るほど胸が痛い・腹痛、嘔吐
- 30分以上激しい痛みが続く
- 痛みが治まっても、しばらくするとまた痛む
- 呼吸困難や意識が朦朧とする
これらの症状が現れたときには、一刻を争う事態なので、少しでも早く救急車を呼び、病院で治療を受けましょう。
心臓について
心臓は心筋と呼ばれる筋肉でできています。
場所は、左右の肺の間にあって、中心より少し左寄り、胸骨(肋骨のつながっているところ)の裏側です。その人の握りこぶし程の大きさがあります。
1分間に拍動する回数(心拍数)は成人で約70回、毎分約5Lの血液を全身に送り出しています。
冠動脈とは?
冠動脈は心臓の上に乗っている血管で、心筋に血液や酸素、栄養を供給しています。心臓にとってはとても重要な血管です。冠動脈が詰まったり、狭くなったりすると心筋梗塞になる可能性があります。
心筋梗塞とは
心筋梗塞は、冠動脈がふさがって心筋に血液が流れなくなった場合に、心筋が壊死してしまう病気です。急性心筋梗塞ともいわれます。壊死してしまった細胞は元には戻らず、重症の場合は死に至ることもあります。
心筋梗塞の症状
心筋梗塞の症状はとにかく強烈な胸の痛みや息苦しさなどが挙げられます。まさに「死を覚悟するほどの恐怖を感じる」などと例えられます。
- 焼けるような痛み
- 痛くて息ができない
- 痛みが30分以上続く
- 肩や腕、背中なども痛む
- 冷や汗、血圧の低下、呼吸困難、意識障害などを伴うことがあります。
心筋梗塞を発症した初期の段階では、「心室細動(しんしつさいどう)」という不整脈が起りやすく、このために意識を失うことがあります。とても危険な状態なので、安静にすることが大切です。
糖尿病を併発している人や、75才以上の高齢者のなかには、痛みなどの自覚症状がない人もいます。その場合は、発見が遅れてしまい、重症化するケースがあります。
心筋梗塞の原因
心筋梗塞は、冠動脈がふさがったり狭くなって、血流が減少することで発生します。
血流が止まってしまうほど冠動脈がふさがる状態になるには、主に2つのパターンがあります。
冠動脈硬化
冠動脈の内側にプラーク(コレステロールのかたまり)ができて動脈硬化を起こしたり、プラークが破れて出血し、血栓となって血管を詰まらせてしまいます。現在の医学では、プラークがいつ、どのようなタイミングで破れるのかはまだ解明されていません。
冠動脈スパズム(けいれん)
冠動脈が痙攣によって縮んだり、一部分だけくびれたように細くなることがあります。早朝、タバコ、寒さ、ヒートショックなどがきっかけとなって冠動脈が痙攣を起こし、血管が狭窄することがあります。
心筋梗塞を引きおこしやすい人
次のような持病や生活習慣がある人は、心筋梗塞を発病しやすいことがわかっています。
・病気・疾患
動脈硬化、狭心症、糖尿病、肥満、高血圧、高脂血症、通風、川崎病など
・生活習慣
肥満、喫煙、ストレス、アルコール、加齢など
動脈硬化や狭心症との違い
心筋梗塞も狭心症も心臓や血管、血液などの病気で、虚血性心疾患といわれます。それぞれの違いは次のような点です。
動脈硬化とは?
動脈硬化は、主に加齢よって血管が硬くなり、弾力を失ってしまうために、傷つきやすくなったり、機能が低下してしまう病気です。血管の老化現象ともいえるこの症状は、加齢によってだけでなく、肥満や糖尿病、高血圧なども原因となります。
血管にプラークといわれる脂肪の塊がついてしまうことも血管を老化させる一因です。内側に脂肪がついて血管が塞がり、血流が悪くなります。この状態が続くと、加齢とともに徐々に、狭心症や心筋梗塞といった重大な病気を引き起こすことになります。
狭心症とは?
狭心症は、冠動脈が狭くなって、一時的に血液や酸素が足りなくなった状態です。冠動脈に動脈硬化が起こったり(冠動脈硬化)、冠動脈の痙攣(スパズム)によって冠動脈の一部が縮んで細くなってしまうなど、心臓の筋肉(心筋)へ血液や栄養、酸素が送れなくなったときに発症します。
血流が再開されれば、痛みや発作などの症状は和らぎます。しかし、狭心症は心筋梗塞の一歩手前ともいえるため、注意が必要です。特に、発作が悪化して、頻繁に起こる、痛みがひどくなる、安静にしていても痛む、などの症状が現れてくる場合は、心筋梗塞の前兆として注意が必要です。
狭心症と心筋梗塞との違い
狭心症と心筋梗塞はどちらも、心臓の血がない、足りない病気として、虚血性心疾患のひとつとされています。どちらも動脈硬化や、血管の狭窄によって血液の流れが悪くなり、心筋に十分な血液を送れなくなった状態です。狭心症と心筋梗塞の違いは、その症状や重症度にあります。
・狭心症
血管が細くなって一時的に血流が妨げられますが、完全にはふさがっていない状態です。血流が戻れば痛みなども消え、心筋は元に戻ります。
・心筋梗塞
狭心症が悪化したものです。完全に血管が塞がれ、その先に血液が送られなくなって、心筋が壊死した状態です。壊死した細胞は二度と元には戻りません。
心筋梗塞の対処法
今までになかったような胸痛や息苦しさ、息切れなどを感じたら、まずは安静にして、なるべく早く病院を受診しましょう。心臓の病気は早期発見、早期治療が何よりも重要です。
とてもガマンできないような異常な痛みや発作、呼吸困難などの症状があれば、命に関わることもあるので、一刻も早く119番に電話しましょう。大抵の救急車には、AED(心室細動を止めるための機械)が準備されています。
救急車が来るまでは安静にして、救急隊員や救命士の指示に従いましょう。
病院は何科?
心臓の専門科は循環器内科です。心臓内科、循環器科としている病院もあります。近所の内科や総合病院を受診し、適切な専門科へ紹介してもらうこともできます。
心筋梗塞の予防方法
心筋梗塞を予防するためには、規則正しい生活や健康的な毎日を過ごすことが基本です。
早朝と寒さに注意
心筋梗塞は、早朝と冬場に多く発症する傾向があります。急に寒さを感じると、血管がぎゅっと縮んで突然血圧が上がり、心臓に負担がかかります。冬場は風呂場や脱衣所、トイレなども注意が必要です。
生活習慣の改善
不摂生、不規則な生活習慣などは見直してみましょう。動脈硬化を予防するためには、肥満や高血圧を改善し、健康的な食生活を心がけることがなによりです。
ビタミン、ミネラル、食物繊維を豊富に含む海藻やキノコ類などを食事からバランス良く摂取しましょう。抗酸化作用の高いポリフェノールを含む食品や青魚に含まれるDHA・EPAやビタミンEがよい血液を作り、高血圧や血栓ができるのを予防すると考えられています。
運動、ストレス解消
定期的な運動を行い、運動不足を解消しておきましょう。適度な運動は体型や健康の維持だけでなく、ストレスの発散にもなります。
飲酒と喫煙
タバコやアルコールは心臓や血管などの大敵です。タバコのニコチンや一酸化炭素は体を酸化させ、血管が収縮したり、血圧や脈拍を上昇させ、動脈硬化を引き起こします。
まとめ
心筋梗塞や心筋梗塞の前兆について、おさらいしておきましょう。
心筋梗塞の前兆は胸の痛みや息苦しさ、肩や背中などの痛みなどさまざまです。
心筋梗塞の前兆は狭心症の症状である可能性があります。
呼吸困難や意識障害を伴う胸の痛みが心筋梗塞によるものであれば、すぐに病院へ行きましょう。
肥満や糖尿病、高血圧を患っている人は、特に注意が必要です。
心筋梗塞は、ある日突然発症することが多いですが、その前段階として、動脈硬化や狭心症などの症状を感じているはずです。健康診断などで異常値があれば、なるべく早く改善していき、動脈硬化の段階から予防することが大切です。健康的に長生きするためにも、できることから改善していきましょう。
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