動悸や息苦しさに突然襲われた経験をしたことがあるでしょうか?動悸や息苦しさに突如として襲われた経験をした人に言わせると、命の危険を自覚させられるような言いようのない不安・恐怖も感じるようです。
実は、動悸や息苦しさは病気でなくとも感じますし、病気であったとしても動悸や息苦しさをもたらす疾患・病気は非常に数多く存在します。
そこで今回は、動悸や息苦しさをもたらす原因について、順を追ってご説明していきたいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
動悸と息苦しさの基礎知識
そもそも動悸や息苦しさとは、どのような状態のことなのでしょうか?「動悸」も「息苦しさ」も良く使われる言葉ではありますが、正確な定義について確認したことがある人は多くないのではないでしょうか。
そこで、まずは「動悸」や「息苦しさ」という状態の正確な定義について、確認してみたいと思います。
動悸とは?
動悸とは、自らの心臓の鼓動・拍動について、自分自身で自覚できる状態のことを言います。動悸は、激しい運動時や人前に立って緊張した時のほかに、貧血をはじめとした様々な疾患で現れます。
動悸について「心臓がドキドキ」あるいは「胸がドキドキ」というような表現をすることから、動悸が心拍数の増加を伴うものと考えがちですが、必ずしも動悸を感じる際に心拍数が増加しているわけではなく、心拍数が減少している場合にも動悸を感じることはあります。
そして、留意しておかなければならないこととして、動悸はあくまでも自分自身が感じる自覚症状であって、他人が感じられる症状ではないということです。
息苦しさとは?
息苦しさとは、本来ならば無意識的に行われる呼吸について、呼吸を意識的に行わなければ酸素を取り込めないような努力感や呼吸を意識的に実施しても苦しさを感じるような状態のことで、医学的には呼吸困難と言います。
呼吸困難というと、一般的には呼吸の障害で酸素と二酸化炭素の交換が一切できないという極端に言えば呼吸が止まる寸前の状態をイメージしますが、実はそうではありません。
酸素と二酸化炭素の交換ができない状態のことは、医学的には「呼吸不全」とされて検査を通じて客観的に判定されます。このような呼吸不全に対して、呼吸困難は呼吸に際しての努力感や苦しさを自分自身が感じる自覚症状のことで、「呼吸困難」と「息苦しさ」・「息切れ」は医学的には同じ意味として使われるのです。
そして、息苦しさ・呼吸困難という症状も動悸と同様に、様々な病気・疾患で現れます。また、動悸と息苦しさは互いに関連する症状でもあるのです。
病気が理由ではない動悸と息苦しさの原因
前述したように、動悸や息苦しさという症状は何も病気によってのみ現れるわけではありません。普通に日常生活を送っている中でも、自分の心臓の拍動が感じられる場面やちょっとした息苦しさを感じる場面は存在します。
そこで、まずは病気が理由ではない動悸や息苦しさの症状の原因について、ご紹介したいと思います。
激しい運動
日頃から運動習慣がない人が、突如として激しい運動をした場合に動悸や息苦しさの症状を自覚する場合があります。例えば、運動習慣のないサラリーマンやOLの人が電車に乗り遅れそうだからとダッシュするような場合、学生時代は特に問題もなかった距離でも息が上がって心臓がバクバク・ドキドキしてしまいます。このような経験をしている方は、少なくないでしょう。
とはいえ、対処法として少し安静にしていれば、動悸や息苦しさも落ち着きます。このような場合は、特に病気・疾患を疑う必要はないでしょう。
人前に立って緊張する
重要な会議やプレゼンなどで人前に立つと、誰しもが最初は緊張して心臓が飛び出しそうなほどの動悸を自覚し、呼吸も浅くなりがちです。
このような症状は、自律神経の働きによるものとされています。というのも、心臓の動きである拍動・心拍は、交感神経と副交感神経によって構成される自律神経の支配を受けているからです。そして、人前に立つといった緊張・不安・恐怖といった感情が先立つストレスのかかる場面では、交感神経が優位になって身体が戦闘態勢に入り、筋肉の緊張・血圧上昇・心拍数の増加・呼吸が浅くなるといった状態がもたらされるのです。
しかし、この場合も会議やプレゼンが終了すれば、動悸や息苦しさが落ち着きますから、特に病気・疾患ではないでしょう。
妊娠・月経前症候群
女性特有の動悸・息苦しさの原因として、妊娠や月経前症候群があります。月経前症候群とは、排卵後の生理前1~2週間程度前から症状が現れて、生理が始まると症状が消失する様々な精神的症状や身体的症状の集まりのことです。
月経前症候群は、いわば妊娠の準備のために女性の体内でホルモンバランスが変化して女性ホルモンのうち黄体ホルモンが多くなることに要因があるとされ、病気とまでは言えません。また、妊娠すると妊娠を維持するために、引き続き黄体ホルモンが多くなります。
このようなホルモンバランスの変化が、動悸や息苦しさといった症状をもたらすことがあるのです。
身体疾患が原因となる動悸と息苦しさ
それでは、激しい運動をしたわけでもなく、緊張する場面に立っているわけでもなく、妊娠や月経前症候群でもないのにもかかわらず、日常生活の中で頻繁に動悸や息苦しさを自覚するならば、何らかの病気・疾患を疑う必要があります。
何らかの病気・疾患かもしれないと思ったら、速やかに内科・循環器内科・呼吸器内科などの病院・医療機関で専門家である医師の検査・診断を受ける必要があるでしょう。
そこで、動悸や息苦しさの原因となる可能性がある身体疾患について、簡単にご紹介したいと思います。
心臓疾患(心疾患)
心臓疾患(心疾患)は、いわゆる心臓に関する病気・疾患の総称であり、心臓病とも心機能障害などとも呼ばれます。
一口に心臓疾患と言っても、含まれる病気・疾患は様々であって、動悸や息苦しさの原因となる可能性がある心臓疾患も多く存在します。
虚血性心疾患
虚血性心疾患は、心臓を動かすための酸素や栄養素を供給する冠動脈が閉塞・狭窄することが原因となって心筋への血流が滞り心機能に障害が発生する病気の総称で、心筋梗塞・狭心症が代表的です。
このような心筋梗塞・狭心症などが原因となって、動悸・息苦しさといった症状が現れることがあります。
心臓弁膜症
心臓弁膜症は、血液の逆流を防ぐための弁が心臓には4つ存在していて、そのうちのいずれかに機能障害が発生して血流障害が発生する病気の総称です。
そして、心臓弁膜症が原因となって、動悸・息苦しさといった症状が現れることがあります。詳しくは、心臓弁膜症の手術について!症状・原因・治療法を知ろう!を読んでおきましょう。
心筋症
心筋症は、心臓を動かす心筋の異常によって心機能障害を引き起こす心臓疾患のことです。心筋症には、肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症、不整脈原生右室心筋症の4つと、いずれにも分類できない分類不能型心筋症があります。
これらのうち発症例の比較的多い肥大型心筋症や拡張型心筋症でも、症状の一つとして動悸・息苦しさといった症状が現れることがあります。
心筋炎
心筋炎は、心臓を動かす心筋にウイルスが感染して炎症が発生する病気です。原因ウイルスは、風邪や胃腸炎を引き起こすウイルスと同じであることが多いとされます。
心筋炎では、当初は風邪でよく見られる症状が現れ、その後に胃痛・下痢などの消化器症状、筋肉痛や全身倦怠感、動悸・息苦しさ・胸の痛みなどの心症状など様々な症状が現れ、場合によっては心不全などで死に至ることもあります。
詳しくは、心筋炎とは?原因や症状、治療方法を詳しく知ろう!を読んでおきましょう。
不整脈
不整脈は、心拍数や心拍・鼓動のリズムが不規則で一定でない状態・症状のことで、厳密には病名・疾患名ではありません。心臓は、いわばポンプのような働きで血液を全身に送り出しているのですが、心臓をポンプのように動かす元になるのが電気刺激・電気信号とされています。
そのため、医学的には心拍が整っていても、この電気信号を捉えた心電図に異常があれば不整脈と判断されます。
詳しくは、不整脈の原因とは?症状や治療方法も合わせて紹介!を参考にしてください。
不整脈の原因
不整脈は、主に狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、心筋症などを原因として発症します。ただし、普通に健康な人でも、体調不良の際に不整脈が一時的に発生していることがあるとされています。
不整脈の種類
不整脈は、心拍数の大小によって頻脈性不整脈・徐脈性不整脈・心拍異常を伴わない不整脈に分類することができます。
頻脈性不整脈は、通常の人の安静時心拍が1分間で60~70回前後であるのに対して、それを上回る場合です。一方で、徐脈性不整脈は、それを下回る場合を言います。
このような分類の他に、電気信号が心臓のどの部位で乱れるかによっても、様々な分類がされます。例えば、心房で電気信号が乱れ細かく不規則に動く場合は心房細動と言い、心室で同じようになった場合は心室細動と言います。
不整脈の症状
不整脈の症状は、動悸や息苦しさ(呼吸困難)などに加え、めまい・胸の痛み・胸部違和感などがあり、場合によっては失神することもあります。
また、不整脈の種類によっては治療せずに放置していると短時間で死に至る不整脈もあり、心室細動や心房細動はその危険性が高いとされています。
呼吸器疾患
呼吸器疾患は、口や鼻から気管・肺に至るまでの呼吸に関与する器官の病気・疾患のことです。呼吸器疾患で動悸と息苦しさが現れるのは、特に肺炎や慢性閉塞性肺疾患などの肺障害が挙げられます。
肺炎は何らかの原因によって肺に炎症が生じる疾患であり、慢性閉塞性肺疾患は肺胞壁や末梢気管支に異常が生じて主に息苦しさ・呼吸困難が生じる病気です。いずれの病気も息苦しさが先立ちますが、併せて動悸も現れやすいとされています。
ちなみに、風邪や鼻炎などで鼻づまりになると、息苦しさを感じることがありますが、動悸まで現れることはほとんど無いと言えるでしょう。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になることで、多岐にわたる症状が現れる病気です。
甲状腺ホルモンは体内のエネルギーの利用を促進する働きをするホルモンで、甲状腺ホルモンが過剰となると全身の組織細胞の働きが過剰となります。
具体的な症状は、心臓の働きが活発になることで頻脈となり不整脈・動悸・息苦しさ・めまい・吐き気などが現れるほか、エネルギー消費が進むことにより体重減少・過食・多飲多尿・発汗・高血糖・高血圧などの症状も現れます。また、精神的にイライラしたり、不安感に襲われたり、うつになる場合もあるとされます。
詳しくは、甲状腺機能亢進症の症状をチェック!原因や治療方法も紹介!を読んでおきましょう。
貧血
貧血は、簡単に言ってしまうと血液が薄くなってしまった状態・症状のことです。
貧血では、血液の成分である赤血球が少なくなり、酸素を運ぶ役割をする赤血球内のヘモグロビンも減少するので、全身の細胞が酸素不足に陥ります。
そのため、酸素不足の解消法として呼吸量や血流を増やす身体の反応が見られます。そして、その結果として動悸や息切れ(息苦しさ)が生じます。
ただし、このような身体の代償反応が追い付かなければ、全身の細胞が低酸素状態となり、身体の諸機能が低下していきます。
更年期障害
更年期障害は、主に40代後半以降の女性に多く見られる症候群で、加齢に伴う卵巣機能の低下によって女性ホルモンのうち卵胞ホルモンの分泌が減少することで現れる様々な症状のことです。
卵胞ホルモンには自律神経を整える働きがありますが、卵胞ホルモンが減少することで自律神経の制御が上手くいかなくなることがあります。すると、自律神経の支配下にある循環器や消化器に不調が現れ、また精神的にも不安定になりやすくなります。
このようなホルモンバランスの変化に端を発する自律神経の乱れによる循環器の不調の症状として、動悸・息苦しさ・頻脈・頭痛・ほてりなどが現れます。
精神疾患が原因となる動悸や息苦しさ
このように内科・循環器内科・呼吸器内科などの病院・医療機関で検査・診断を受けて原因となる病気が判明すれば、その原因疾患の治療を行います。
しかしながら、身体の検査をしても異常が見つからない場合は、その動悸や息苦しさは精神疾患からくるものかもしれません。精神科の病院を受診して専門医の検査・診断を受ける必要があると言えます。
そこで、動悸や息苦しさの原因となる可能性がある精神疾患について、簡単にご紹介したいと思います。
パニック障害
パニック障害は、予期しないパニック発作が繰り返し現れる精神障害のことで、不安障害の一つとして分類されています。
パニック発作とは、密室などの狭く閉鎖的な空間あるいは広場など多くの人が存在する空間に入ると、突然強いストレスに襲われ動悸・息苦しさ・めまいなどの自律神経症状が現れ、急激に不安感を覚えるという発作のことです。パニック障害の患者の多くに、交感神経と副交感神経のバランスが乱れる自律神経失調症が見られます。
パニック障害の原因は未だ解明されていませんが、現在は脳機能の異常が原因であるとする見解が有力となっており、認知行動療法が治療法として有効と考えられています。また、抗不安薬などの投与による薬物治療も有効です。
詳しくは、パニック障害の症状をチェック!原因や治療法を紹介!を読んでおきましょう。
全般性不安障害
全般性不安障害は、明確な対象をもたない心配や恐怖が過剰となる不安発作が繰り返し現れる精神障害のことで、不安障害の一つとして分類されています。
全般性不安障害の患者にもパニック障害の場合と同様に、自律神経失調症が見られることが多く、心配・不安・恐怖によって動悸・息苦しさ・めまいなどの自律神経症状が現れます。
全般性不安障害の対処方法もパニック障害の場合と同じく、認知行動療法や薬物療法が実施されます。
ちなみに、以前はパニック障害と全般性不安障害を合わせて不安神経症と呼んでいました。
うつ病
うつ病は、抑うつ状態や意欲の低下などを特徴とする精神障害のことで、気分障害・感情障害の一つとして分類されています。
うつ病では、精神症状の他にも自律神経失調症が一緒に現れることが多いとされ、動悸・息苦しさ・めまいなどの自律神経症状が現れることがあります。
うつ病の改善方法・改善策としては、認知行動療法をはじめとする心理療法、抗うつ薬の投与などの薬物療法などがあります。
まとめ
いかがでしたか?動悸や息苦しさの原因となる可能性がある病気について、ご理解いただけたでしょうか?
確かに、動悸や息苦しさは病気でなくとも日常生活の中で感じることがあります。しかしながら、運動時や人前に立つような緊張する場面でもないのに動悸や息苦しさを感じる場合は、何らかの病気を疑うべきかもしれません。
ですから、運動時や緊張する場面でもないのに動悸や息苦しさを感じる場合は、速やかに医療機関を受診すべきでしょう。動悸や息苦しさを感じる病気は非常に沢山あり、中には死に直結するような重篤な病気もありますから、躊躇せずに医療機関を訪れてください。
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