被害妄想になる原因とは?意味や特徴、治療法も知っておこう!

あなたの周りに、被害妄想的な人はいませんか?

一言伝えただけなのに勝手に話を大きくして慌てたり怒ったり、そもそも何も根拠がないのに相手を罵倒したり悩んだり…。

「ちょっと考えすぎ」という比較的軽度なものから、さすがに行き過ぎではないかと逆にこちらが心配になるようなレベルの人など程度の差はされど、これまで一度くらいは誰かに疑念を抱いたこともあるのではないでしょうか。

こういったことは性格的な問題だと軽く考えてしまいがちかもしれませんが、実はかなり深刻で、何かしらの原因から来る精神的や脳の機能的な「病気」の場合もあるということはご存知でしたか?

ここでは、改めて「被害妄想」について掘り下げて解説していきます。

被害妄想とは

kaboompics.com_Young woman relaxing at home and reading a book

他人から、身体的・精神的な危害を加えられると信じてしまう妄想のことを、「被害妄想」と言います。

そんな事実はないにもかかわらず思い込んでしまうことであり、ポジティブなアドバイスやサポートを受けても逆に「この人は何かを企んでいる」といった具合に心理的にネガティブに捉えてしまうため、周りの人たちは困惑することになります。

実例

例えば、テレビや新聞などでストーカー被害のニュースを見聞きしたとします。そうすると誰しも「恐い」といった感情や「私も被害に遭ったらどうしよう」という不安を少なからず抱くでしょう。これ自体は異常なことではなく、むしろ、防御反応や危険察知能力の観点から正常な反応の一つと言えます。

しかし、その不安感がエスカレートし、次第に周囲の出来事や普段なら気にしないようなことを何かとストーカー関連に結びつけ、実際に「誰かにつけられている」「盗聴器を仕掛けられていると確信してしまうような人がいます。

ここでポイントとなるのは、「軽い思い込み」といったレベルのものではなく「強固な確信」であるということ。単なる思い込みであれば他人が情報やアドバイスを与えることで修正することはさほど難しくはありませんが、妄想の場合は、他人がどれだけ説明や否定などをしても聞き入れず、確信が揺るぎません。

それだけではなく、下手に善意で修正を試みようものなら、それすらも悪意と受け取られ、「この人は自分自身を陥れようとしている」とすら思われしまうのです。

被害妄想のタイプ

「妄想」自体には色々なタイプがありますが、ここでは被害妄想に絞って挙げます。

■直接被害タイプ

意地悪をされている、陰口を叩かれている、悪だくみをされている、誰かに狙われているといった、自分自身が直接的に被害に遭っていると心理的に妄想するタイプです。

自分の中だけの被害意識に留まらず、エスカレートすると妄想上の加害者に逆襲しようと迷惑行為をしたり裁判沙汰に持ち込んでしまう場合もあります。

■嫉妬タイプ

恋人や配偶者に浮気をされているという妄想をするタイプです。無関係な情報や物事を浮気の痕跡や証拠だと決めつけ、相手を責めます。

どんなに否定されようともその確信は揺るがず、エスカレートすると傷害事件などに発展してしまう場合もあります。

■過剰不安タイプ

周りの人が自分をやたらと見ている、誰かに監視されている、盗撮や盗聴をされているといったように周囲から観察されていると妄想するタイプです。

思い込みが強くなると幻覚すらも見るようになり、ますます不安感や嫌悪感がエスカレートしていき、外出ができなくなってしまう場合もあります。

被害妄想が強くなる精神病や人格障害は一定の確率で発生する

被害妄想が強くなってしまう人格障害などの病気による問題は日本人口の2%〜8%の割合で存在していると言われています。実際に治療を必要とするレベルでの症状を発生しているのは1〜2%程度となっています。

まだ精神疾患の分野に関しては、詳しい脳の働きについてのメカニズムなどが発展途上の段階でもありますので、具体的な指標がなく精神科の先生が人格障害と診断したらそのように決定されてしまうという現状もあります。

しかし、何かしらの原因から性格上の異常や人格の歪みを発生させてしまう人は人口に比例して発生してしまう傾向があるようです。

これは政治的な情勢や、印象の強い事件などが発生する事が精神や脳に影響して増加する事も報告されています。

被害妄想を引き起こす原因

悪寒

そもそも被害妄想の疑いがある時、それが病的なものなのかそうでないのかによって、対処も考えられる原因も変わってきます。

そのため、まずは病気か否かを判断する(診断してもらう)必要があります。

「病気」ではない“思い込み”

話の流れで家族や友人に「それは被害妄想でしょ!」と言われたりした経験のある人もいるのではないでしょうか。そのような場合、まずはどういう気持ちになりますか?

もし「被害妄想なのかもしれない・・・」という不安な気持ちを抱いたならば、この時点でそれは被害妄想ではないと言えます。つまり、病的なものではないでしょう。なぜなら、被害妄想は先に述べた通り「強固な確信」だからです。

自分で疑念を持つということは、冷静に判断しようとしている証でもありますので、このような場合は病気ではなく、一時的な精神の不安定感が原因だと考えられます。

「病気」である“被害妄想”

周りの人がいくら説得や助言をしようとも一切聞き入れず、他人から見て思い込みだと考えられるものを本人が確固たる自信をもって事実だと認識している場合は、病気の疑いがあります。

このような時は単純に他人が修正しようとしても効果がないばかりか悪影響にもなりかねないため、医師の診断を受ける必要が出てきます。

原因

被害妄想があまりにもひどい場合に考えられる原因には以下の病気やその他の要因の可能性が考えられます。

いずれかの原因に当てはまるかどうかについてチェックしてみましょう。

■統合失調症

統合失調症の場合は被害妄想がよく見られ、監視されている、尾行されている、盗聴されているといった強い思い込みを持つことが多いです。

幻覚や幻聴などから、実際に起こっていないことを現実的なものとして知覚してしまいます。

統合失調症は強いストレスや自律神経の乱れをきっかけとして脳の情報集約機能が不調を引き起こしてしまい問題を発生させてしまいます。性格、遺伝、環境の3つの要因が重なって症状を発症してしまいます。

特に我慢強い人や無口な性格な人、友達や関係の深い身内などの相談役にあたる人が存在していない時期に発生しやすい症状でもあります。

その為、巣立ちの病とも言われていて、若い世代では高校生から社会人初期になるまでの反抗期や巣立ちで環境が変わってしまい、周囲に相談役が存在しない時期に多発している精神病でもあります。

統合失調症の被害妄想では、ひどい場合は暴れたり、奇声をあげたり、物を破壊するなどの行為に走ってしまうこともあり、その行為をしているときの記憶がない場合には解離性同一性障害(精神分裂症)と診断することも出来ます。

■うつ病

うつ病の場合の被害妄想としては周りの人たちが自分を責めている、虐げているという気持ちを抱いてしまうことが多くあります。

うつ病の場合はマイナス思考になっているため、妄想も同様にネガティブな方向に進み、重い病気にかかっているといったことも考えてしまい、他人が否定しても逆に思い込みが強くなってしまいます。

うつ病の思い込みや被害妄想の場合は内向的な被害妄想なため、周囲に迷惑をかけてしまう問題はあまり発生しませんが、自傷行為などの内向的な自分を卑下する方向に被害妄想が進んでしまう事が多くあります。

■認知症

認知症の人は被害妄想を出現させる確率が高く、中でも、自分の財布や貯金通帳が盗まれたと訴える「盗害妄想」を実に8割以上が占めていると言っても過言ではありません。

また、統合失調症の妄想と違って内容が固定されておらず、目まぐるしく変化したり、過去の出来事が影響していたり、加害対象が身近な人であることが多いと言われています。

■アルツハイマー症

認知症と似ているものに、アルツハイマー症という病気もあります。

認知症は病名ではなく認識力、判断力、記憶力に障害が発生して社会生活に支障をきたしている状態のことを指しますが、アルツハイマー症はれっきとした病気で脳を萎縮させてしまう事によって脳の機能障害が発生してしまう病気です。

症状としては個人差がありますが、記憶障害も引き起こりますのでひどい場合では妄言や奇声などを挙げて、意味不明に他者に怒り出すなどの行為をすることもあります。

しかし中には高齢者の発症者でも自立して10年以上静かに暮らしている患者さんもいらっしゃいます。

■境界性パーソナリティ障害

境界性人格障害とも呼ばれる精神障害で最近は境界性パーソナリティー障害と呼ばれます。この人格障害と呼ばれるものは、喜怒哀楽や日常生活を送る上で誰しもが表に出す感情の一部が尖った状態で表現される人の事で、制御が出来ないほどに怒りの感情や悲しみの感情が発生する人に人格障害であると言う事が言えます。

境界性パーソナリティー障害の場合には性行為や友人関係などの特定の関係性に依存する、人への過剰な不信感や裏切られることへの恐怖を感じていることや、一時的な記憶障害が生じている、自傷行為や自殺行為によって周囲の注目を集めようとしている。

などの精神状態が発生します。

■トラウマ(心的外傷後ストレス障害)

いわゆる「PTSD」で、トラウマとなった体験がよみがえり、それに関係する何かを見ただけで「攻撃される」「狙われる」といった被害妄想に繋がってしまいます。

慎重に信頼関係などを構築して、時間をかけて治療していく必要のある病気になります。

■極端に自分に自信がない

自分に自信がある人は思考がネガティブな方向に傾いたりはしませんが、内気だったり憶病だったり何かと自分に自信がないタイプの人は他人との関係に不安を持ち、それが被害妄想へと発展していまうことがあります。

この自信がない事の原因が他者から酷いことを言われた。信頼していた人に裏切られた。失恋した。酷い言葉をかけ続けられた。いじめられていたなどの行為が原因となって発生している可能性もあります。

■対人関係が苦手

人と接する経験が少なく、また様々な人間関係を築いてきた経験があまりない人は、他人への信用・信頼感などを持つことが難しいことが多いです。そのため、誰を本当に信じていいのか上手く判断できず、その不安感や恐れから、被害妄想的思考をしてしまうことがあります。

被害妄想の人の対処・対応

薬

被害妄想の人たちには、どういった対処法があるのでしょうか。また、周囲の人たちはどのように対応すれば良いのでしょうか。あくまでも、すでに被害妄想であることを前提として、考えていきましょう。

治療法

原因が病的なものである場合は、薬物治療が中心となります。ドーパミンを遮断する作用のある抗精神病薬を用いることが多いですが、まずは精神科で適切な診断を受けましょう。

カウンセリングなどの精神療法も行われることがありますが、カウンセラーにさえも被害妄想を抱く場合があるため、やはり薬物療法ありきで治療を進めていくことが重要となります。

周囲の対応方法

繰り返しお伝えしているように、被害妄想を解消することは容易ではありません。いくら否定しようともその妄想は消えず、むしろ逆効果になってしまうため、説得や訂正はしないようにしましょう。

だからといって「共感」したりなど、肯定的な言動を取ることもいけません。周りが信じてくれることによって、その妄想はさらに強いものへとエスカレートしてしまうからです。

よって、否定も肯定もせず、その「苦しんでいる」という気持ち自体に心を寄せて「苦しいんだね」と受け止めてあげて、「何かあれば、すぐに教えるよ」と周りが味方であることを伝えて安心感を与えてあげることがポイントとなります。

被害妄想にならないために

笑顔 女性

性格的な面からも、被害妄想になりやすい人、なりにくい人がいます。しかし誰もが人生において様々な体験をするため、それによって自覚のないうちに自分が病気にかかってしまう可能性もあります。

また、病気であろうとなかろうと、早い段階で自分の意識に違和感を持つことができれば、自身の心の持ちようで対処できることもあるのです。

自分を責めない

物事によっては自分の行いを反省し、改める必要がある場面は当然あります。しかし、だからと言って何でも悲観的に捉えてしまうことはいけません。案外、自分が思っている以上に周りは気にしていないことが多いものです。

例えば何かミスをした時、配慮の足りない発言などをしてしまった時、後から反省したり悔やんだりすることもあるでしょう。そういうことがあると、それをきっかけに「みんなが私を嫌いになったのではないか」「陰口を叩かれているのではないか」と不安になることがあります。すると、今まで気にしていなかった周囲の小さな言動が気になりだし、ますますその不安が強くなってしまいかねません。

こういった場面で必要なのは「次はもっと慎重にやろう」「この経験を活かそう」「きちんと謝ろう」といった前向きな姿勢であり、実際にそれが最も効果的な対処方法であると言えます。

いくら後ろ向きな気持ちで悔やんでも、物事は前に進みません。瞬間的に自分を責めてしまったとしても、その後は気持ちを切り替えて「次」に目を向け、取り組んでいきましょう。

自分を受け入れる

何にでも言えることですが、嫌なものや気持ちを無くそうという意識を強めると、逆にそれが頭から離れなくなってしまうなどの逆効果を生みだしてしまうことが多いです。他人にも自分にも言えますが、「そのものを受け入れる」という気持ちが大切であり、その上でそれをどう変化させられるかということが重要になってきます。

不安や恐れがあるということは、それを抱くだけの恵まれた状況が何かしらあるものです。恋人の浮気を疑ってしまうのならば、その恋人は浮気を疑えてしまうほどに魅力的であり、そのような人と付き合っている自分も魅力的であると言えるわけです。そういうふうに考えていくことで、「今ここにある幸せ」や「恵まれているからこその悩み」であるというポジティブな気持ちで捉えることができるようになっていきます。

まとめ

日常会話で出てくることもある「被害妄想」という言葉。普段の話であれば、それは相手にツッコミを入れたりなどの軽い感じで使われることも多いですが、実際は病的なものが原因で深刻なケースもあります。

また、直接的に単語として出なくても、その人の言動があきらかにおかしい、度が過ぎているといった印象を抱く場面もあるかもしれません。そのような時は、単なる性格の問題ではなく、何かしらの疾患を持っている可能性があります。

本当の「被害妄想」とはどういったものなのかをきちんと理解し、適切な対処・対応を行う必要があることを覚えておきましょう!

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