怖い思いをした時や、大きな失敗をしてしまった時に、よく「血の気が引く」という言葉を使いますね。スーっとした寒気を感じたり、中にはフラついてしまったりする人もいるようです。
では、この「血の気が引いた」状態になった時は実際に身体の中で何が起こり、どの様な症状が現れるのでしょうか。今回は、日常的に使われる「血の気が引く」と言う言葉を少し掘り下げてご紹介したいと思います。
「血の気が引く」の意味
辞典では、「恐怖に震え、寒気を感じるさま」、「心理的に動揺したり、驚いたりするさま」などとあります。身体への影響として「寒気」や「動揺」といった反応が見られる様子を表しています。
また他にも、立ちくらみ、めまい、冷や汗、失神などの症状が現れた際にも「血の気が引く」と言う言葉が使用される事があるようです。
血の気が引く原因
症状だけみれば何かの病気なのではないかと疑いたくなりますね。普段何気なく使用する言葉で、症状が現れてもそれほど深く考えない「血の気が引いた状態」になるのは、一体何が原因なのでしょうか。考えられる病気などを含めご紹介します。
低血圧症状
脳は身体の高い位置にあり、そこへ血液を送るためには重力に逆らうだけの圧力が必要になります。ですが血圧が低いと脳へ充分な血液が届かずに、めまいや立ちくらみなどの症状が現れ、血の気が引いた状態となるのです。そんな血圧低下を引き起こす代表的な要因をご紹介します。
自立神経の乱れ
強いストレスを感じると、自立神経の乱れが生じる事があります。この乱れとは交感神経と副交換神経のバランスが崩れる事を言います。本来リラックス効果のある副交感神経が過剰に働く事で血管が拡張し低血圧となるのです。また、生活習慣の乱れや何らかの疾患により自立神経の乱れに繋がる事もあるようです。
起立性低血圧
座った状態から立ち上がった時に低血圧となり、血の気が引いて立ちくらみなどの症状が現れやすくなります。これは、立ち上がった事で血圧を上げる必要があるのに、自律神経の調整がうまくいかず血圧が低いまま(座った状態の時のまま)になってしまう事によるものです。
血液量の減少
強い緊張状態になると多くの汗をかいたり、中には下痢や嘔吐を繰り返してしまう人がいます。そうすると身体を循環する血液量が減少し血圧の低下に繋がります。
心拍出量の減少
不整脈や心筋障害などの心臓の疾患で血液を送り出す力が低下している場合があります。このような人は血圧も低下しやすく、血の気が引きやすい状態にあると言えるでしょう。
病気による影響
低血圧を引き起こす病気を患っている事で、血の気が引きやすい状態になっている事があります。
一例として、心筋梗塞、心不全、肺結核、白血病、肝硬変などが挙げられます。このように重症化する恐れのある病気のサインとなっている可能性がありますので、頻繁に症状が現れる人は一度検査を受ける事をオススメします。
貧血症状
血液が減少する事で、身体に送られる酸素の量が減少し酸欠状態となります。立ちくらみや、めまいなどの症状が現れる他、血中のヘモグロビンが減少する事により顔の色が青白くなり、血の気が引いた事が目に見える事もあるようです。貧血を引き起こす原因をご紹介します。
栄養不足
主に鉄分、たんぱく質、ビタミンB12、葉酸などの不足が大きな要因とされています。これらの栄養素が不足すると、酸素を運ぶ赤血球の生産量が減少し貧血の症状が現れます。
性別による違い
貧血は性ホルモンの影響や生理現象により、男性よりも女性に多く見られる症状です。また、妊娠中には胎児へ栄養を送る必要がある他、食欲不振により栄養が不足し貧血になりやすいとも言われています。
言い換えれば男性で貧血の症状が現れやすい人は、何らかの病気のサインになっているとも考えられ注意が必要です。
出血による血液の減少
血が流れ出てしまい血液が減少する事で貧血の症状があらわれます。体外へ出血した場合は目で確認でき、早急な治療も可能となりますが注意すべきは目に見えない出血です。胃がんや大腸がん、子宮筋腫などの疾患により、内臓から継続的な出血がある場合です。
気が付きにくいかもしれませんが、貧血の症状が続いたり便に血が混じるような事があれば早急に検査を受けましょう。
病気による影響
血液中の必要な成分が、何らかの病気の影響により減少してしまう事があります。一例として、赤血球の寿命が短くなり生産が追いつかず赤血球の量が減少する溶血性貧血や、骨髄の中にある造血幹細胞(赤血球や血小板などの血液成分の元になる細胞)が減少する再生不良性貧血などが挙げられます。
冷や汗
極度に緊張した時やドキっとした時に冷や汗をかく事は多いかと思います。そんな冷や汗をかく原因とは、どのようなものがあるのでしょうか。
精神性発汗
緊張や不安、ストレスなどにより血の気が引いた時に、汗が同時に吹き出る事を精神性発汗と言います。
額や手のひらなどに汗をかきやすく、特に神経質な人などは症状が現れやすいと言われています。基本的には誰にでも起こりうる症状ですが、この反応が過剰な人は多汗症と言う病気の可能性があるようです。
低血糖
食事を抜いていたり、服用している薬の作用などで血糖値が下がり過ぎると冷や汗や、めまいなどの症状が現れる事があります。
自律神経の乱れ
興奮とリラックスのバランスを調整する自律神経の乱れにより、冷や汗など様々な症状が現れます。
病気による影響
女性に多く見られる甲状腺機能亢進症やメニエール病、また肺結核、腎梗塞などの可能性が挙げられています。
他に心筋梗塞発症のサインにもなっており、冷や汗とともに顔面蒼白になる事があります。まさに血の気が引いた状態となり特に注意が必要です。
寒気
単に気温が低くて寒さを感じたり、風邪を引いている訳でもないのにスーっとした寒気を感じ、血の気が引く事がありますね。そんな時に起こる、寒気の原因とはどのようなものがあるのでしょうか。
悪寒戦慄
気温や風邪とは関係なく寒気を感じ、震えが出たり身体が冷たくなったりする事があります。
自立神経の乱れ
緊張などで交感神経の働きが活発になると、身体の毛細血管が細く収縮してしまいます。そのために体温が手足などの末端に伝わらず寒気を感じてしまいます。
更年期障害
主に40代50代の女性に見られる症状です。女性ホルモンの減少から自律神経の乱れが生じ、暑くも無いのに寒気を感じる事があります。
冷え性
食習慣や運動不足などから血行不良になると、体温がしっかり伝わらず特に手足や背中などから寒気を感じる事が多くなります。また、血行不良により顔の血色も悪く見える事で、血の気が引いた状態となってしまうのです。
病気による影響
風邪以外にも寒気を感じる事があります。その一例としてイフルエンザ、腎梗塞、胆のう炎、細菌性赤痢、子宮内膜炎など寒気には多くの病気の可能性が隠されています。
これらの病気が原因の場合、多くは寒気以外の症状も現れる事がありますので、そのサインを見逃さないよう注意しましょう。
めまい
血の気が引くと、めまいを感じグラグラする事がありますね。重症な場合は立っていられなかったり、座り込んだりするめまいは多くの病気の可能性が隠されています。
貧血
貧血の状態になっていると脳への酸素供給が不十分となり、めまいとなって現れる事があります。
ストレス・生活習慣
ストレスなどからくる自律神経の乱れによりめまいが発生する事があります。
病気による影響
めまいの原因となる病気は主に耳と脳にあるとされています。
耳の病気
三半規管の異常・・・耳の奥(内耳)にある三半規管は自分の身体(頭など)の位置を判断する機能を持っています。この機関に異常があると今の位置の正しい判断ができず、周りの景色が回って見える回転性のめまいを引き起こすと言われています。
前庭神経炎・・・こちらも内耳にある機関の病気の一つです。はっきりとした原因は不明ですがウイルスによるものと考えられており、回転性のめまいが起こる他、冷や汗などの症状が現れる事もあります。
脳の病気
椎骨脳底動脈循環不全・・・平衡感覚を司る機関への動脈に血流障害が起こる事により、めまいが発生する原因となります。
- 脳梗塞、脳出血・・・脳の血液循環が悪くなり、めまいとなって現れる事があります。
- 脳腫瘍・・・脳内にできた腫瘍が脳を圧迫し、めまいや嘔吐頭痛などの症状が現れます。
対処法
血の気が引く原因への対策などをご紹介したいと思います。
低血圧
水分、塩分をしっかり摂取し、適度な運動をして下半身を鍛えましょう。
貧血
食事やサプリメントから鉄分などの必要な栄養をしっかり取り入れる事が大切です。また貧血の症状が現れた際の緊急処置として、シャツやズボンなどを緩め血流を良くした後、身体を冷やさないようにし安静にする事が効果的とされています。
冷や汗、寒気、めまい
何らかの病気の発症のサインとなっている事が多いので、他の症状と合わせて適切な検査・治療を行いましょう。
自律神経の乱れ
食生活や生活のリズムに大きく影響していますので、生活習慣の改善を行う事が重要です。
まとめ
最後に簡潔にポイントをまとめました。
●「血の気が引く」とは、主に動揺したり恐怖を感じた際に使われ、身体に何らかの症状が現れる事を指す言葉です。
●血の気が引いた際に出る主な症状・・・低血圧・貧血症状・冷や汗・寒気・めまいなど
●対処法・・・必要な栄養を摂取し、適度な運動を心掛けます。また、他の症状が見られる時や重篤な場合は早急に適切な検査受けましょう。
【最後に】
今回ご紹介したように「血の気が引く」と言う言葉の中には、多くの病気が潜んでいる可能性があります。生活習慣に深く関わる症状ばかりですので、頻繁に症状が現れる人は今一度ご自身の生活態度を見直す事をオススメします。