閉所恐怖症とは?症状や原因、克服する方法を紹介!

高い所に行くと、異常なほどの恐怖を感じる「高所恐怖症」や、尖った物の先端を自分の方へ向けられるのを異常に拒む「先端恐怖症」など、ある限定された環境や物に、正常ではいられなくなるほどの恐怖を感じる「恐怖症」。

恐怖心は、誰もが抱くものですが、パニック発作が起こり、日常生活に支障をきたすほどの恐怖心は、心の病であるとも言われています。

このような恐怖症の一つでもある「閉所恐怖症」と呼ばれる病気をご存知でしょうか?実は、意外と多くの人が閉所恐怖症であるとも言われており、その人の“性格”のようにも受け取られがちですが、本人にとっては、大変苦痛を伴います。

しかし、心の病は、原因となる要素を解決することで、必ず克服できます。そこで、ここでは、閉所恐怖症について、原因や克服法などを詳しくご紹介いたします。

閉所恐怖症について

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閉所恐怖症は、実際に閉じ込められていたり、逃げ出せないわけではないとわかっていても、本人が閉塞的だと感じる環境に身を置くことで、様々なパニック発作を起こす病気です。

精神的な要素が大きく関係するため、通常の病気とは異なり、原因も人によって異なります。では、閉所恐怖症とは、どのような病気なのかを、さらに詳しく見ていきましょう。

パニック発作を起こしやすい環境・状態は?

自分が閉じ込められている、あるいは逃げ出せないと錯覚する環境は、それぞれ異なりますが、以下のような環境でパニック発作を起こす人が多いようです。

  • 飛行機
  • 映画館
  • エレベーター
  • 電車やバス
  • MRI検査
  • 狭い部屋やカプセルホテル

このような「空間」だけではなく、何らかの会場内での奥まった席や、人ごみ、あるいは海の中や、フルフェイスのヘルメットなどでも恐怖を抱いたり、あるいは、ウェットスーツのような強い圧力で全身を纏うような、窮屈な洋服を着るのが困難だという人もいます。

「怖い」という感覚だけで治まれば良いのですが、“恐怖症”になってしまうと、飛行機やバス、電車などの公共交通機関を使用することもままならなくなるため、日常生活にも支障をきたします。

どのような発作が起きるのか?

閉所恐怖症の症状は、パニック障害の症状によく似ています。パニック障害は、何らかの強いストレスや不安、緊張など、「心身を混乱させる精神的な要素」が原因であるため、正確な原因要素が判然としません。

一方、閉所恐怖症では、閉塞的だと感じる「環境・状態」といったように、原因となる要素を明確に特定できます。

いずれの場合においても、症状には自律神経の乱れが大きく影響していますが、代表的なものとして、以下のような症状が発作的に起こると言われています。

<動悸>

誰でも、不意をつく衝撃的な出来事が起こると、ドキッとすることがありますが、閉所恐怖症の場合、極度の恐怖から、それが「動悸」にまで発展してしまうことがあります。

胸を押さえていなければ、どうにかなるのではないのかと思うほど、自分の鼓動を強く感じたり、息苦しさや痛みを伴う人もいるようです。これらが、さらに不安を煽り、ほかのパニック発作を引き起こす要因になる場合もあります。

<過呼吸>

呼吸機能は、自律神経の影響を受けやすい器官でもあるため、極度の恐怖や不安が、過呼吸を引き起こすことがあります。

過呼吸とは、自律神経のバランスが崩れることによって、全身の酸素量が減少し、身体が本能的にそこから脱しようとする際に、必要以上に深く早い呼吸をしようとして、身体が過換気状態になることを言います。

過換気状態になると、血液に二酸化炭素が過剰に排出されるため、しびれや痙攣、ひどい場合には意識障害を引き起こすこともあります。

また、過呼吸の応急処置として、紙袋を口にあてるという方法が知られていますが、これは、方法を間違うと、窒息死を招く可能性もあるので避けましょう。

過呼吸になったときには、まず、「息を吐く」ことに意識を向けてください。そして、「吸う」と「吐く」の比率が1:2程度になるように、ゆっくりと呼吸します。一人ではなかなか難しい場合がありますので、近くの人のサポートがあると、より心強いでしょう。

<冷や汗・吐き気>

冷や汗も自律神経の乱れによるものです。極度の緊張や恐怖などによって、交感神経が刺激されると、とくに暑いわけでもないのに、脇や手のひら、額などにぽたぽたと雫が落ちるほどの汗をかくことがあります。

この発汗作用によって、体温が奪われると、身体が冷え、筋肉の痙攣や震えを引き起こす可能性もあります。一時的なものなので、これらの原因となる環境から脱すれば、冷や汗は治まります。

また、冷や汗と同時に、吐き気を催す人もいるようです。実際に嘔吐をしてしまうケースは少ないのですが、電車などを利用しているときに、このような発作が起きた場合には、そのまま乗っていられないほど強い吐き気を催すようです。

<めまい>

閉塞的な空間に身を置くことで、恐怖とともに、空間感覚が上手くつかめなくなると、地に足がつかないような感覚になったり、血の気が引くようなめまいが生じる場合もあります。

このようなパニック発作で生じるめまいは、メニエール病とは異なり、脳の神経伝達物質の異常によるものです。

めまいが、先に述べた吐き気や過呼吸を連鎖的に引き起こす場合もあります。転倒による怪我などの注意が十分に必要になりますので、めまいが起きたときは、壁や手すりなどに掴まり身を支え、周囲に人がいる場合には、助けを借りてください。

閉所恐怖症の原因は?

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多くの場合は、閉塞的な場所に閉じ込められたときの経験が、トラウマとなるケースが多いようです。とくに、感受性の豊かな幼少期、あるいは思春期にそういった経験をすると、大人になっても過剰な恐怖を抱くようになってしまうことがあります。

小さな頃の経験だけではなく、大人になってからも、命の危険を感じるほどの恐怖を経験すると、それがトラウマとなり、閉所恐怖症になる場合もあるようです。原因となる経験は、人によって異なり、他人から見れば、何てことないように感じることでも、本人にとっては、パニック発作を起こすほどの傷になっているのです。

また、これには、トラウマを思い出すことによって、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスが崩れ、恐怖を感じる、脳の「扁桃体」と呼ばれる部分が、必要以上に活発に働くために、パニック発作を引き起こすという、医学的な理論もあります。

閉所恐怖症の克服法

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閉所恐怖症は、その人の「性格」ではありません。何らかの原因が引き金となって、精神的に過剰な負荷がかかり、そこから身体的な異常(パニック発作など)を引き起こしています。

「自分は、閉所が苦手だから」と諦めてしまっている人も多くいるようですが、その反面、克服して、日常生活をこれまで通りに過ごせるようになっている人がいるのも事実です。

克服法としては、3つのアプローチがあげられます。それでは早速、閉所恐怖症の克服法について、見ていきましょう。

閉所に対する異常な思い込みを手放す

「それができていれば、閉所恐怖症にならない」と思う人もいるかもしれませんが、閉所恐怖症になってしまったのは、ある経験から脳に刷り込まれた“強い思い込み”によるものと言えます。それも、ごく短時間に刷り込まれた恐怖です。

本来であれば、異常に恐怖を感じずに済む空間を、極度のショックによって、「危険な場所」と捉えているのです。そういった刷り込みは、必ず解くことができます。

専門のカウンセリングなどで、恐怖を感じたときの感情を全て吐き出し、自分自身でも、そのときの状況や感情を俯瞰して受け止め、手放しましょう。

大切なのは、『怖かったという気持ちを、誰かに伝え、共感してもらうこと』そして『そのときは怖かったけれど、もう、そのときとは違う。閉所という環境は、怖いものではないということ』を、少しずつ、納得しながら自分自身で消化していくことです。

しかし、一度刻まれた心の傷は、そう簡単には治すことができません。一番のポイントは「本人が納得する」ということです。そのためには、このような“考え方の修正”に加え、実際に“体験すること”が必要です。この“体験”による治療法が、次にあげる「暴露療法」です。

暴露療法

これは、必ず専門医と行ってください。上であげた“考え方の修正”とともに、実際に体験して、身体に「自分が思っているほど、閉所が危険な場所ではないこと」と覚えさせていくのが、暴露療法と呼ばれる治療法です。

少しずつ、閉所に身体を慣らしていくのですが、段階ごとに、どの程度の恐怖に身を置く練習をするのかという判断を素人が行うのは、非常に困難です。無理をすると、恐怖を膨らませてしまう可能性もありますので、専門医の指導が必要になります。

また、このとき、閉所という環境を、段階的に調整して作り出すのは難しいという問題点があります。そのため、実際に暴露療法を実践する際には、必ず協力者とともに行うことが大切です。

たとえば、エレベーターに乗る練習をする場合には、いつパニック発作が起こっても大丈夫なように、頼れる人をそばに置いておくということです。「安心」をベースに、閉所に挑むことがポイントです。

このように、カウンセリングと平行して、暴露療法を行うことで、少しずつ脳へ刷り込まれた異常な思い込みを、新たなものへ、すり替えていくのです。

薬物療法

根本となる精神的な問題を、薬物で改善することは不可能なため、薬物による治療をメインにするのは、あまりおすすめではありません。しかし、暴露療法などを行う際に、抗不安薬を服用することで、一時的に不安を和らげるなど、段階的に取り入れることで、効果的に治療を進められます。

電車に乗る練習をするときの安心材料として、薬をポケットに入れておくなど、専門医と相談して使用すると良いでしょう。また、副作用等の問題もありますので、薬を飲むタイミングや、断薬するタイミングについても、よく相談して服用することをおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。心の傷を簡単に拭うことは困難ですが、根本となる原因に向き合い、それらをどのように癒していくのかを見極めれば、必ず治癒が可能です。

閉所恐怖症の場合も、実際に克服した人も多くいます。焦らずに、ゆっくり、じっくり問題と向き合うことで、「閉所=恐怖」という見方だけではなく、「閉所=そこまで怖くない」「閉所=怖くないときもある」といったように、徐々に多角的に捉えることができれば、克服までの道のりも、そう遠くはありません。

これらを克服できれば、映画館を楽しめたり、電車でいろいろな所へ出かけることができるなど、人生の楽しみを増やせることができます。

怖いことだけではなく、世の中には楽しいことがたくさんあるのだということを知ることも、“新たな刷り込み”として、大きなポイントになるのではないでしょうか。

  
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