みなさんが心音を測る時にまず手を当てるのは左胸ではないでしょうか。心臓=左側にあるというのは多くの人が信じてきたことだと思いますし、そういった風に発信されてきました。
ですが実際は心臓は胸の中央に位置しているのです。では、心臓病の痛みやサインはどこから受け取ればいいの?また、左胸に感じる痛みは別のもの?
そんな疑問を解消し、心臓の仕組みや位置、重大な病気やその気付き方について詳しくご紹介していきます!
心臓は左胸ではなく中央にある!?
実際の心臓の位置は中央にあります。ではどうして左胸に手をあてた時に鼓動を感じるのでしょうか?
心臓の仕組みと位置に加え、左胸で鼓動を強く感じる理由を以下にまとめました。
心臓の仕組み
心臓は酸素を全身に供給する重要な臓器です。ある程度大きい臓器だとイメージしがちですが、実際には握りこぶしくらいの大きさしかありません。重さは成人で200~300グラムほどです。こんな小さな臓器が一生のあいだ休むことなく体中に酸素と血液を送り続けてくれているのです。
心臓は右心房・左心房、右心室・左心室の4つに分かれ、心房と心室の間には弁と呼ばれるものがあります。弁は動きに合わせて開閉し、血液の逆流を防いでくれる働きをします。
まず心臓の右側から血液循環が始まります。全身を回り終えて酸素が不足した血液が静脈を通り、右心房に入り、次に右心室を通り抜けて肺に送り出されます。そして酸素を含ませ、再び心臓に戻り今度は左心房に入ります。そして今度は左心室へ流れ込み、ここからポンプのように動脈へ送り出され、体中を循環します。
心臓は1分間に60回から90回程の規則的な収縮を繰り返しています。1年に換算すると驚くことに4200万回以上これを行っていることとなります。
実際の心臓の位置
心臓は、体の胸の部分である「胸郭」の中でしっかりと守られています。
胸椎と肋骨、それらの結合部にある肋軟骨、胸郭(胸骨などの骨格を形成している部分で、いくつもの骨で構成されています)の中に心臓は収められられており、その位置は体のほぼ中央です。ただし、心臓の先端は左側に傾いています。
心臓は真ん丸な形状をしているわけではないので、若干左右に振れてしまいます。この結果、わずかに左寄りに位置しているという結果になっています。
どうして左胸に手を当てるとドキドキしているの?
簡単に言うと、心臓左側の筋肉が鍛えられて厚くなっているためです。これは心臓の働きが関係しています。
先ほど心臓と血液循環の仕組みをご説明しました。血液は左心室からポンプのように全身に送り出されるのですが、この時に高い圧力を必要とします。
特に腎臓を通る際には毛細血管を2度通らなくてはならず、最大の難所と言われています。こうした理由で左心室の筋肉は鍛えられ右心室より分厚くなっています。そのため鼓動が強く伝わってくると言われています。
右側に位置している場合もある?
右胸心(うきょうしん)と呼ばれるもので、右側に心臓が傾いている人が稀に存在します。
この状態が発生する原因としては、先天的な要因や後天的な要因が関係して発生している場合の2種類があります。一つは先天的なもので、元から臓器の一部やすべての臓器が反転している状態で生まれてきた場合です。
もう一つは肺の変形や圧迫などが原因で心臓が圧力を受けてしまい、右側に傾いているもしくはよってしまっている状態です。
この様な問題で心臓が右側に傾いている人は5000人に1人ほどの割合で存在します。
中には症候群や病気から心臓の位置の変化が起こっている場合がありますが、全内臓逆位などの場合であれば、健康的問題が発生していない場合、特に治療の必要は無いものとなります。
しかし、きちんと検査をしておかないと合併奇形などが発生する可能性があったり、逆であることをきちんと把握して、医師に予め伝えないと、診断ミスなどが発生する可能性が高まります。
左胸以外の痛みでも重大な心臓病の危険が
心臓は左側ではなく胸の中央に位置していることをご説明しました。そのため胸の真ん中に痛みが出た時に、心臓の痛みではなく胃の痛みだと誤認してしまう場合があります。ですがそれは狭心症や心筋梗塞などの恐れがあります。
代表的な症状と危険性についてまとめました。
狭心症・心筋梗塞の恐れ
冠動脈の動脈硬化が進んで、血管が狭くなると血液が十分に供給されなくなります。
そうすることで心臓が酸素不足に陥り、虚血性心疾患となってしまいます。それらの代表的な病気が狭心症と心筋梗塞です。
動脈硬化の主な原因は、糖尿病や脂質異常症、高血圧と言われています。
狭心症
冠動脈の内部が狭くなり起こります。心筋に必要な酸素・栄養が不足し発症してしまうとされています。狭心症には以下の種類があります。
①労作性狭心症
歩行や階段の上り下りなどといった労作や、精神的な興奮やストレスにより誘発されます。安静にしたりストレスがなくなったりすることで、15分以内に治まることが多いとされています。
通常は運動などにより心筋の動きが盛んになると正常に働くために酸素や栄養が必要になり、血流が増加します。しかし動脈硬化が起こると血流を送ることができなくなってしまいます。このため症状が現れます。
②安静狭心症
こちらは動きやストレスに関係なく起こる狭心症のことを指します。
(1)異型狭心症
冠動脈の痙攣によって起こります。夜間や明け方に発作が起きることが多いという特徴を持ちます。
(2)不安定狭心症
狭心症になってから1ヶ月以内に症状が起こりやすくなり、発作回数が増えていたり、ニトログリセリンなどの効きが悪くなっていたりする場合などはこちらに当てはまります。
また心筋梗塞へ発展しやすいとも言われています。
③安定狭心症
不安定狭心症とは反対に、発作の起こり方が安定している場合のことを指します。
心筋梗塞
動脈硬化により血管の内腔が狭くなり、血液の流れが制限されてしまうことで生じます。冠動脈が閉塞すると約40分後に心筋が壊死し始めることを心筋梗塞と呼びます。
壊死が始まると6時間から24時間後には貫璧性梗塞となります。
心筋梗塞の半数はその前触れとして狭心症がありますが、もう半数は全く前触れがないまま発症してしまいます。詳しくは、心筋梗塞の前兆は?症状を知って適切な処置を!を参考にしてください。
代表的な症状
症状には以下のようなものがあります。
- 胸の中央が圧迫される痛みがある
しめつけられる、押さえられるような感じがする、焼けつくような感覚がある場合などがあります。また、胸の広い範囲が痛む時も。 - 動悸が激しい、不整脈がある
- 呼吸困難に陥る
- 頭痛
- 吐き気や嘔吐
- 放置痛
奥歯やのど、あご、左腕や肩などに痛みが出る場合があります。しびれなどを感じることも。
痛みは冷や汗をかいてしまう程強いものから、少し違和感を感じる…といった程度の弱いものまでさまざまです。
糖尿病を患っている方は症状を軽く感じることが多いと言われていますが、実は重症であることも多いため注意が必要です。
また、心筋梗塞が重症である場合、発症時にショック状態となることがあります。
自覚症状がある場合は直ちに病院へ
こうした症状がある場合は生命に関わる危険性が。特に激しい痛みには要注意です。症状に気付いたら一刻も早く医療機関を受診し、医師の診断を受けましょう。
受診する際に、どこがどのように痛むのか、どのくらい続くのか、他に症状はあるかなどを正確に伝えることが求められます。
精神的に不安になってしまうと症状が悪化することがあるため、まずは落ち着いて痛みの位置や間隔を把握することが大事です。
もちろん日頃の予防も大事
心臓病はとても重大な疾患です。そうならないように日頃の予防も心がけたいですね。冠動脈の動脈硬化を進行させる因子を「冠危険因子」と言います。
先にご紹介した高血圧や脂質異常症、糖尿病に加え、喫煙や過度の飲酒、肥満や運動不足がこれに当てはまります。さらにストレスなどの精神的なものが原因となる場合も。
適度な運動をすることにより動脈硬化や、それを引き起こす高血圧などの予防が期待できます。精神ストレスも和らげてくれるでしょう。
特に有酸素運動は効果的です。ジョギングやウォーキング、サイクリング、水泳などの有酸素運動を週に3回から4回、30分以上行うと良いとされています。無理のない範囲で続けていき、習慣にしたいですね。
喫煙や過度な飲酒も控えた方が良いでしょう。普段の生活習慣を見直し、改善に努めていくことが求められます。
左胸に感じる痛みは心臓病ではないことも
左胸に痛みが走った時、「心臓病かも!?」と心配になることがあります。ですがそれは別の症状のサインかもしれません。
左胸に痛みがある際に考えられる症状にはどんなものがあるのでしょうか。原因や対策とともにまとめました。
肋間神経痛であることも多い
肋間神経痛とは三大神経痛のひとつです。肋骨に沿う形で伸びている肋間神経が圧迫され、断続的に痛みが生じるといった症状が現れます。
チクチクと痛む、鈍痛がする、くしゃみや咳などの衝撃で鋭く痛むなどの症状がありますが、人によって痛みの現れ方はさまざまです。
片胸に痛みが起こることが多いのですが、右胸が痛む時はそこまで心配にならなくても、左胸に痛みが起きた時は心臓に関わる重大な病気かもしれないと思ってしまいますよね。
肋間神経痛は身体の症状であり病気ではありませんので、まずは安心して大丈夫です。ですが、肺がんなどの初期症状として現れることもありますので、おかしいと感じたら早めに医療機関を受診しましょう。肺がんについては、肺がんの初期症状をチェック!咳や背中の痛みに要注意!を参考にしてください。
肋間神経痛の症状は狭心症や心筋梗塞とは違う
ではその症状とはどんなものでしょうか。
特徴として、肋骨から脊髄、背中や肩甲骨の内側など広い範囲の痛みが瞬間的に続くというものがあります。
狭心症や心筋梗塞の場合は痛みが5分以上続くのが特徴ですが、対して肋間神経痛の場合は数秒~2分前後と短いものです。
また、体をひねったり伸ばしたりした際に痛みが強まることがあります。これは姿勢によって神経が圧迫されることによって起こります。
原因は圧迫やストレス?
肋間神経痛の原因としては、以下があげられます。
- 外部からの圧迫や冷えによる神経炎
- 感染
- 外傷や肋骨・神経の障害
- 疲労が溜まっている
- 無理な姿勢などの生活習慣によるもの
- ストレスが溜まっている
- 睡眠不足
このように、生活習慣による原因も多いようです。
几帳面な性格だったりストレス発散の方法を持っていない方などは肋間神経痛になることが多く、注意が必要です。日常的にリラックスできる時間を設け、体を労わることが重要と言えるでしょう。
冷房を直接浴びるなど、体の冷えにつながる習慣も避けましょう。
睡眠不足や過労も大敵です。またパソコンやスマホを見る時に無理な態勢を続けるのも良くありません。普段から姿勢を整えることを心がけましょう。
その他の病気について
心臓に関わるその他の病気を紹介します。
心臓の位置あたりに違和感や痛み、不整脈などを感じている症状をかかえている場合に考えられる病名の症状や、原因などについて知っておきましょう。
脈打つ度に心臓から変な音がしている
心臓に痛みを感じる場合や、違和感のある音がしている場合に考えられる病気があります。心臓にも同時に違和感を感じるので、心臓の病気かな?と思ってしまうこともあるもので、肺気胸(自然気胸)と言います。
肺の上の方に存在している肺胞にブラと呼ばれる、小さな風船のようなものが破裂し、肺に穴が空いてしまうことで空気が胸腔内に溜まってしまい心臓や肺などを圧迫して痛みや息苦しさを発生させる病気になります。
痩せ型で高身長の人に発生しやすい病気で、自然に穴が塞がって胸腔内に漏れた空気も吸収されて治る場合が多く、病院を受診しない人も多く居ます。
しかし穴が大きいと、肺から漏れ出した空気で著しく肺が圧迫されて萎んでしまい、呼吸が浅くなったり、心臓が圧迫されて心臓に痛みを発生させたり、ポコポコ言うような音が脈打つ度に発生する事もあります。
基本的には背中に刺すような痛みを発するのが特徴的な症状になりますので、大きめの病院でレントゲンやCT検査などをして肺の収縮具合を調べてみましょう。
心臓に痛みがある
心臓が痛くなる事のある病気をまとめてみました。以下の病気で心臓に痛みが発生する事があります。
- 狭心症・・・胸に痛みや圧迫感を感じる
- 大動脈解離・・・急激な胸痛が発生する、痛みがどんどん広がる
- 急性肺血栓塞栓症・・・気圧の変化での心臓の痛み
- 気胸・・・背中及び胸や肺に感じる痛み。特定の姿勢や呼吸を誘引として痛みが強くなる
- 胸膜炎・膿胸・・・発熱や悪寒を伴う胸の痛み
- 悪性腫瘍・・・持続的に痛みが発生する。痛みが発生しているのは腫瘍が大きくなってから
- 逆流性食道炎・・・嘔吐感や、食欲不振、口の中の匂いなどが気になる
それぞれの病気の可能性を疑って病院で心電図をとったり、CT痛みが検査をしたり、胃カメラや血液検査などをして心臓及び、消化器官、肺、胸膜などに炎症や腫瘍などの異常が発生していないかどうか検査してみましょう。
心臓に違和感がある
心臓神経症の可能性もあります。
痛み及び、不快感や違和感、息切れや不整脈などを頻繁に感じます。ストレスが大きな原因となるため、近年増加している症状でもあります。心臓の異常をきっかけに病院を受診しますが、心電図などにも特に問題が見受けられず、心臓に病的な要因も認められない場合に考えられるもので、治療は心療内科や精神科で行います。
気持ちを安定させたり、不安を取る除くことで症状が回復します。
一見、狭心症と似ている症状が発生しますので看護師や医師なども、まずこの病気を疑いますが、自覚症状以外での狭心症で見られる血液や血圧の異常が認められない事など多くの点で狭心症でないことが判断できます。
ストレスや過労、心臓の違和感による不安感などが症状を悪化させる原因になり、悪化するとめまい、呼吸困難なども引き起こすことがあります。
まとめ
心臓の仕組みや位置、胸が痛む際に考えられる症状についてご紹介してきました。
心臓の位置が体の真ん中にあるという事実は意外と知られていませんよね。左胸に痛みがあるから心臓病なのではないか、胸の中央が痛むから心臓とは違う病気なはず…といった認識も改めるべきであることが分かります。
痛みに気付いたら位置や症状を自分で判断することも必要ですが、こうした自覚症状がある場合はすぐに病院に行き医師の診断を受けるようにして下さいね。
関連記事として、
これらの記事も合わせてお読みください!