咳が出る、血痰が出るなどの症状は、肺がんの初期症状である可能性があります。肺がんは転移しやすく、重要な臓器に近い場所にあるため早期発見が重要です。
おかしいなと思った時点で自分で調べたりせずすぐに病院に行くべき話なのですが、この症状はどうして起きているのかなと心配になってしまった方向けに、肺がんの初期症状をご紹介いたします。
肺がんとは
体の細胞は、普段必要な分だけ分裂して増加し、古くなると壊れるという過程でバランスを保っています。しかし、この過程が狂い細胞が増え過ぎてしまい塊を形成する事があり、これをがんと呼んでいます。
肺がんは、その名前の通り肺に起きるがんの事はもちろんですが、肺から発生するがんの事全般を指しています。
肺は体の左右に存在しています。空気が入るスポンジのような感触をしていて、19の区域(葉)に分かれています。数が奇数になっているのは不思議な気がしますが、実は右肺は左肺よりもちょっと大きく、右肺に10個、左肺に9個の区域があるのです。
気管を通って入って来た空気は左右の肺に分かれて入って、さらに枝分かれした気管支を通って、肺胞まで辿り着く事で酸素と二酸化炭素の交換を行っています。
肺がんは、気管や気管支、肺胞の細胞が様々な原因でがん化したものを指しています。
肺がんは、肺門型肺癌と肺野型肺癌に大別されます。
・肺門型肺癌
肺の入口でまだ枝分かれする前の段階にある太い気管支におこるがんの事です。気管支、肺動脈、肺静脈が出入りする部分で、体の中心にあるためX線では見つけづらい場合があります。
・肺野型肺癌
肺の奥の方で枝分かれした細い気管支や肺胞などにがんが出来た場合を指します。X線検査やCT検査では見つけやすいがんですが、肺野部には感覚神経がないので、症状が出た段階ではかなり進行しているおそれがあります。
このように、肺野型肺癌は特に症状が見えづらいがんと言われているため、これからご紹介する初期症状についての記載は、肺門型肺癌の発見に寄与する情報となります。
初期症状として現れるもの
肺がんははっきりした初期症状が出にくい病気です。そのため、自力で早期発見しようとする場合には小さな異変にも気が付く注意力が必要です。
血痰が出る
まず思いつく症状として血痰がありますが、血痰が出ただけで肺がんと決めつけるのは早計でしょう。他の症状と同時に見られた場合に心配すべき症状です。
肺がんによる血痰は、がんに侵された部位から出血が起こる事によって生じます。血の塊のような血痰が出るケースは少なく、痰の中に細い血が混じる程度の事が多いようです。
咳が続く
風邪に似た症状のため見過ごしてしまう事が多いですが、肺がんの初期症状として咳は特徴的です。
肺がんの初期の咳の特徴として、乾いた空咳であるという点が挙げられます。また、長期間継続して咳が出続ける場合には特に注意が必要です。
熱がないのに一ヶ月以上の空咳が合った場合、息切れを伴う程の咳が出る場合は肺がんの初期症状である可能性があります。
嚥下困難、呼吸困難
肺にがんがあると、肺炎や気管支炎を起こしやすくなります。また、肺がんが食道近くのリンパ節に転移した場合食道や気管支が圧迫され、呼吸がしづらい、食べ物が飲み込みにくいという症状が出る事があります。
声が枯れる
がんが声帯の神経まで到達してしまうと、声が枯れる事があります。
喘鳴
喘息のようなゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音がする症状です。気管や気管支にがんが出来ている場合、空気の出入り口が狭くなってしまうので笛のような作用をおこし、喉が鳴る場合があります。
背中の痛み
肺がんが原因となって背中が痛くなる理由は2つあるといわれています。一つは肺の腫瘍から出血が起こりその周りで炎症が起きている、その場所がたまたま背中だったという場合、もう一つは肺の奥で大きくなった腫瘍が背中側に突出し、背中の神経を圧迫している場合です。
前者はやや早期に見られる症状ですが、後者はそれなりにがんが進行している恐れがあるため注意が必要です。
その他(やや進行が進んでいる可能性がある場合の症状)
以上は肺がんの初期症状として挙げられるものですが、肺がんの症状は非常に気が付きづらいものです。また、転移しやすいという特徴があるため、別の器官への転移によって気がつく場合も見られます。
以下は、他の器官への転移によって起こりうる症状です。
・体の中心にある骨に転移しやすく、肋骨や胸椎、腰椎等に転移するとその骨が痛む、感覚が麻痺するなどの症状が起こります。また、神経が侵される事により腕の痛みやしびれ、肩の痛みが現れる事があります。
・大静脈に浸潤した場合、また、副腎に転移してホルモン分泌に異常が起きた場合は、顔や首が腫れる事があります。
・さらに、肺がんの転移の中でも最も恐ろしいとされる脳転移が起きた場合、感覚障害や目のかすみ、頭痛、歩行困難などが起きる場合があります。
似た症状が現れる別の病気
これだけ聞くとちょっとした症状でも肺がんかも?と心配になってしまいますが、似た症状が現れる他の病気の場合もあります。
風邪
血痰、咳、体がだるい等の症状は風邪に非常に似ています。風邪と間違えて放置してしまう場合もありますが、あまりにも長期に渡り症状が続く場合は肺がんの可能性を疑うべきでしょう。
気管の炎症
気管支炎や気管拡張症が起こると、肺がんの初期症状と同様に血痰が出る場合があります。気道から出る血の場合、鮮やかな赤になる事が特徴です。
また、咳もこれらの病気の症状です。
また、気管の炎症として喘息がありますが、咳は喘息の代表的な症状でもあります。通常の喘息だとヒューヒューと音のでる喘鳴の症状がありますが、咳結核だとこの症状がありません。また、喘鳴は気管や気管支にがんが出来た場合にも起こる症状なので、見分けを付けるのは困難です。
間質性肺炎
間質性肺炎は、肺の組織の線維化が起きる疾患の総称です。肺が硬く縮んでしまう病気で、空咳や呼吸困難など、肺がんと似た症状が出る事が多く見られます。
間質性肺炎は肺がんを併発しやすく、がんの治療が肺炎に悪影響を及ぼす事もあるため治療が難しくなります。
遺伝やウイルス感染により起こるとされており、喫煙が危険因子となります。軽い病気ではないため、こちらが心配される場合も早めの受診が必須といえるでしょう。
肋間神経痛
肺がんが転移した場合背中の痛みが症状として現れる事がありますが、同様に肋間神経痛によっても強い背中の痛みが起こる場合があります。肋間神経痛は肋骨に沿って走っている神経が痛む症状の事で、神経が骨や筋肉の間に挟まれて起こります。
通常では起こらない程の非常に強い痛みのため、内蔵疾患ではと疑いがちな症状ですが、神経の病気なので別の対処が必要になります。
予防方法
肺野型肺癌は喫煙の習慣にはあまり関係なく起こると言われていますが、肺門型肺癌にはタバコがリスクになり得るため、できるだけ辞めておく方がベストでしょう。
ヘビースモーカー程リスクが高くなるので、完全に禁煙するのは難しい方はせめてちょっとずつ減らしてみてはいかがでしょうか。受動喫煙もできるだけ避けましょう。
また、排気ガスやアスベストなども炎症を気お越し、がんを促す要因となります。
肺に限らず、がんの予防には抗酸化作用のあるものを摂取する事が効果的と言われています。ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEには抗酸化作用があるとされており、チョコレートや赤ワイン、ブルーベリーなどにその栄養が含まれています。
また、カロテノイドには抗酸化だけでなく肺を守る効果があるといわれており、にんじん、ほうれん草など、食物からの摂取がおすすめです。(喫煙者のβカロチン単体のサプリ摂取は肺がんリスクを上げる可能性があるため控えた方がよいとされています。)
まとめ
肺がんの予防には、当たり前ですが喫煙習慣の改善が挙げられます。喫煙だけが原因になる訳ではありませんが、できるだけ本数を減らす事をおすすめします。
また、カラフルな果物はがんのリスク軽減に役立つので、積極的に食べるようにしましょう。
肺がんの初期症状をいくつか紹介しましたが、肺がんは自覚症状のあまりない疾患、早期発見が難しいと言われています。定期検診を受け、少しでもおかしいなと思ったらすぐに病院へ行って下さいね。