採血する時に「血管が細いから、採血しにくい」と言われたことはありませんか?血管が細いと、なかなか針が入らず、痛い思いをしますよね。「採血しやすいから」と、手の甲に針を刺されたりすると、本当に痛いですね。
どうして血管が太い人と細い人がいるのでしょう?細い血管を太くすることはできないのでしょうか?血管が細いと、将来、何か危険な病気になるのでしょうか?
血管が細い原因と対策、細い血管の危険性とその予防策について、お伝えしますね。
血管が細くなる原因と、血管を太くする方法
血管の太さは人によって違います。太い静脈が浮き出ていて、採血に苦労したことのない人もいれば、細い静脈をなかなか探り出せず、痛い目に遭う人もいます。
血管の太さは生まれつきもありますが、成長過程や生活習慣で細くなることもあります。血管が細くなる原因がわかれば、太くする方法も見つかります。
[血管の働き]
血液は、人間の生命活動に必要不可欠です。血液は生命を維持し、各臓器の働きを活性化させるために酸素と栄要素を運びます。また、身体の中で生じるいろいろな老廃物を運び去って処理します。さらに、体外からの侵入物(細菌やウィルスなど)や、体内で発生する異物(癌細胞など)を排除して私達の身体を護る免疫という働きも担っています。
血管は、血液の流れる通路です。酸素や栄養分、老廃物、免疫作用を担う白血球を運ぶ通路ですから、全身の隅々まで血管が張り巡らされています。
血管には2種類あります。主として酸素や栄養分を運ぶ動脈と、主として老廃物を運ぶ静脈です。
心臓は、肺で酸素をたっぷり取り込んだ血液を全身に送り出します。この酸素をたっぷり含む血液は動脈を通って、全身に流れます。これを動脈血といい、鮮やかな赤い色をしています。心臓からポンプで送り出されているので、動脈を傷つけると、多量の血液が噴き出します。
血液は酸素等を全身に運び、そこで二酸化炭素など不要な老廃物を受け取ります。二酸化炭素を多量に含む血液は静脈を通って心臓に戻ります。これを静脈血といい、暗赤色をしています。採血するのは、静脈血です。
心臓に戻った静脈血は肺に送り出され、二酸化炭素を捨てて酸素を受け取ります。そして肺から心臓に戻り、再び全身に送り出されます。これが、血液の循環です。
血液循環には、心臓から全身を巡って心臓に戻る大循環と、心臓から肺に行き心臓に戻る小循環があります。ですから、心臓から送り出される血液の通る血管を「動脈」、心臓に戻る血液の通る血管を「静脈」と覚えると、簡単です。
血管は、血液を運ぶという大事な役割があります。血管が狭くなったり、詰まったりすると、血液がスムーズに流れなくなり、身体のあちこちで酸素不足・栄養不足が起きて、いろいろな障害を生じます。時には、生命の危険を招きます。血管はとても重要な器官なのです。
[血管はなぜ細くなる?]
血管の太さは人それぞれですから、生まれつき血管の太い人もいれば、細い人もいます。
血管が太いと、血液の流れが良くなり、血液が大量に流れます。また、血液が常に大量に流れているので、血管は太くなります。
血液が心臓から全身を巡って心臓に戻るためには、筋肉の支えが必要です。筋肉が収縮したり弛緩したりすると、筋肉内の血管も収縮・弛緩をくり返し、血液の流れを良くします。
また、運動などで筋肉を動かすには大量の酸素を必要としますから、血液も大量に流れます。そのため、血管も太くなります。
運動不足や加齢により、筋肉は衰え、筋肉量が低下します。筋肉の支えがないので、血管の収縮・弛緩がうまくいかず、血液の流れが悪くなります。筋肉量が少ないので、大量の血液を必要とすることもありません。そのため、血管が細くなり、血行が悪くなります。血行が悪いとさらに血管が細くなるという悪循環が起きてしまいます。
[血管を太くする方法]
血管を太くするには、いくつか方法があります。
筋肉量を増やす
筋肉量を増やすには、運動することです。血管が細くなっている人は、運動が苦手で運動不足になっていることが多いので、軽い有酸素運動から始めるといいですよ。毎朝、少し早起きして20~30分程度散歩するのはどうでしょう?早起き散歩が難しければ、通学・通勤途中で、1駅歩くようにするとか、エスカレーターやエレベーターを使わず、階段を上り下りするとかしてください。階段の上り下りは、いい運動になります。
ペットボトルを両手に持って、スクワットをするなど、筋肉トレーニングが最も効果的です。腹筋運動や腕立て伏せなどで、血管を太くすることができます。でも、運動が苦手の人に、いきなり筋トレをススメても、長続きするはずがありません。
運動不足で筋肉量が低下しているなら、毎日、無理なくできる運動がいいでしょう。加齢による筋肉の衰えにも、散歩はオススメの有酸素運動です。
血液をサラサラにする
血液がサラサラになり、血流が良くなれば、血管もある程度太くなります。
血液をサラサラにする食べ物があります。
青魚(サバ・マグロ・イワシなど)には、不飽和脂肪酸DHAやEPAが含まれています。DHAやEPAは血液をサラサラにして、中性脂肪やコレステロールを減少させ、動脈硬化を予防します。
大豆食品(豆腐・納豆など)に含まれるアルギニンには血管拡張作用があります。また、納豆のナットウキナーゼには血栓を作らないようにする働きがあります。
血液をサラサラにするためには、十分な水分をとることも大事です。
身体を温める
身体が冷えると、血管が収縮して血行が悪くなります。身体を温めると、血管が拡張して血行が良くなります。
夏は、冷房で冷えすぎないように注意しましょう。冷たい飲み物の取りすぎも身体を冷やします。シャワーで汗を流すだけでなく、ゆっくりお風呂につかって身体を温めてください。夕食には生野菜より温野菜がオススメです。熱い飲み物や適度な香辛料も、身体を温めますよ。
血管が細いと危険なの?
血管が細いと、血管が詰まりやすくなります。また、血流が悪いので、免疫力が低下します。血管が詰まると、生命に関わることがあります。運良く生命を取り止めても、後遺症に悩むことが多くなります。
でも、血管が細くても、ちょっとした注意で危険を防ぐことができます。
[動脈硬化]
動脈は全身に酸素や栄養分を運んでいます。動脈が加齢などにより弾力性を失って硬くなったり、血管内にコレステロールなどが付着して狭くなったりして、血液の流れが滞るようになることを、動脈硬化といいます。
動脈内部にコレステロールなどにより粥腫(じゅくしゅ=アテローム)ができると、血管内が狭くなります。いわゆる「血液ドロドロ状態」ですね。アテロームはどんどん肥厚して血管内を塞ぐようになります。アテロームが破れると血栓ができて、血管は完全に塞がれてしまいます。血管が細いと、アテロームで塞がれやすいのです。
[コレステロール]
コレステロールには悪玉と善玉があります。アテロームの原因となるのは悪玉コレステロール(LDL)です。動物性脂肪を取りすぎると、LDLが溜まりやすくなります。
中性脂肪も動脈内を狭くします。アルコールや糖分の取りすぎが中性脂肪を増やします。
善玉コレステロール(HDL)には、動脈硬化を抑制する働きがあります。
[動脈硬化が起きると危険な部位]
動脈硬化は全身いたるところで起きる可能性があります。手足など末端の細い動脈で起きると「細動脈硬化」と言います。脳動脈・大動脈・冠動脈など太い動脈で起きると、生命に関わる重大な病気になります。
➀ 脳動脈
脳の動脈硬化で血流が悪くなると、酸素不足になります。頭痛やめまいが起きたり、記憶障害など認知症のような症状が出たりします。動脈硬化が進んでいるところへ脱水症などで血の塊ができると、動脈を完全に塞いでしまいます。脳の動脈が完全に塞がれると、「脳血栓」「脳梗塞」が起きます。硬くもろくなった脳動脈が破れると、「脳出血」が起こります。
脳の血流が絶たれれば、酸素不足で脳細胞は修復不可能なダメージを受けます。
② 冠動脈
冠動脈が硬化すると、血液循環が滞るようになります。「狭心症」になると、胸が痛んだり、息苦しくなったりします。血流が完全に絶たれると、「心筋梗塞」を起こします。
③ 大動脈
腹部や胸部の大動脈に動脈硬化が起きると、動脈が瘤のように膨れ上がる「大動脈瘤」ができることがあります。大動脈瘤が破裂すると、体内で大出血が起きて死ぬこともあります。
[免疫力の低下]
動脈硬化が起きて血流が悪くなると、免疫力が低下します。
免疫作用を担うのは、血液内の白血球です。白血球は体外から侵入する細菌やウィルスと闘って排除するだけではありません。私達の体内では、毎日約5,000個の癌細胞が生まれていますが、白血球の仲間が破壊して排除しています。
血流が悪いと、白血球が全身に行き渡らず、癌細胞など異物や侵入物と闘うことができません。
[血管が細い人は、どんなことに注意すればいいの?]
血管が細いと、血管が詰まりやすくなります。でも、ちょっと注意すれば、血流を良くして、血管が詰まらないようにできますよ。
動脈硬化の危険因子に注意する
高脂血症・高血圧・糖尿病・高尿酸血症という病気は、動脈硬化を起こしたり、促進したりします。「危険因子」と呼ばれています。血管の細い人は、これらの病気に注意してください。
これらの病気は服薬と生活習慣の改善で進行を防ぐことができます。医師に相談して、指示に従うことが大事です。
タバコ・アルコール・糖分を控える
タバコは動脈硬化を促進します。アルコールと糖分は中性脂肪を増やします。動物脂肪の取りすぎと高カロリーの食事に気をつけてください。
青魚や大豆食品は血液をサラサラにして、動脈硬化を防ぎます。
運動不足にならないようにする
運動不足だと筋肉が衰えて、血管が細くなります。身体の負担にならない有酸素運動を毎日行うようにしてください。
ストレスを溜めない
ストレスが溜まると自律神経系の働きが低下して、血流が悪くなります。大声で歌ったり、気分転換をしたりして、ストレスを解消しましょう。良質の睡眠を十分とることも大事です。
身体を冷やさない
身体が冷えると、血流が悪くなります。健康な人の適正体温は36℃~37℃ですから、血管が細くて、体温が低い人は、できるだけ身体を温めるようにしてください。
血管の細い人が、採血で困らない方法
血管の細い人は、将来の危険な病気も心配ですが、今困っているのは、採血や点滴ですよね。採血や点滴で痛い思いをしない方法があります。
ホッカイロで温める
ホッカイロを手で握ったり、首の後ろに当てたりして、身体を温めます。採血する腕の部分に当てても、効果があります。火傷しないように、ホッカイロをタオルで巻いてください。
水分をたっぷりとる
採血前にたっぷり水分をとり、血流を良くします。水分が不足すると、血行が悪くなります。
冷たい飲み物は身体を冷やして、血管を収縮させます。温かいお茶やミルク、ココアなどがオススメです。カモミールティーやミントティーは不安を鎮めるので、リラックスできます。
採血する看護師に血管が細いことを伝える
「血管が細いので、針が入りにくい」と、看護師さんに伝えましょう。看護師さんも針を入れる工夫をしてくれます。
馴染みの病院で、採血の上手な看護師さんがいるならば、「血管が細いので、○○さんに採血してほしい」と希望するのもいいですね。
採血前に、手を握ったり開いたりする
手を握ったり開いたりすると、血流が良くなります。また、採血する部分(腕の内側)を叩くと、血管が見つかりやすくなります。
まとめ
血管が細いと、採血の時に苦労しますが、今すぐ心配する必要はありません。
ただ、血管が細いと、流れる血液の量が少なくなります。私達の身体に必要な酸素や栄養分が行き渡らず、身体の機能が低下することがあります。
また、血管が細いと、血管が詰まりやすくなります。動脈硬化を起こし、脳梗塞や心筋梗塞など重大な病気を引き起こします。血流が悪いと免疫力も低下します。
適度な運動をして筋肉をつけ、身体を温めて血流を良くすれば、血管を太くすることができます。若いうちから血管を太くして、将来の危険な病気を防ぐようにしてくださいね。