この病気があるからあの病気にかかったというケースはいくつもあると思います。ひとつの病気を見ていく上で合併症には何があるのかというのも重要です。それにより、どういうリスク管理を行っていけばいいか、どういう薬や手術を行えばいいか等治療に繋がるからです。
今回は様々な病気から起きる胸膜炎について説明していきます。この病気も合併症として聞く可能性のある病気のひとつなので、知っておいて損はないと思います。
胸膜炎とは何なのか
胸膜炎は様々な原因により胸膜に炎症が起きた病態をいいます。ほとんどの場合は胸水を伴っています。この炎症や胸水が体に色々な影響を及ぼすので侮れないです。
もし発症した際は胸膜炎とその奥にある原因をしっかりと見ていかないといけないということです。それが患者のことを理解するということにも繋がるのです。
胸膜とは?
胸膜は肺の表面や胸郭の内面を覆ったりします。肺の表面を覆う方と胸郭の内面を覆う方が胸膜腔を作り、少量の液が入っています。
肺がスムーズに呼吸できるように働いたり、組織液の移動を行ったりします。つまり、全身に酸素を送り込んだりするのに間接的に働く重要な所と言えるのです。
胸膜炎の症状とは
胸膜炎の症状として、胸痛、胸部圧迫感、呼吸困難、発熱、悪寒、疲労感、背中の痛み、体重減少、咳と混じって痰が出る、原因となる病気の症状が見られます。胸痛は深呼吸や咳でひどくなるのが特徴です。
痰に血が混じっていたり、咳がずっと続くなどの症状があると、胸膜炎を疑う必要が出てきます。放っておくと、膿を含んで悪化する場合があります。すぐに受診して早期発見に努めることが大切です。細菌に感染すると発熱することも覚えておく必要があります。
炎症により胸膜がくっついたりすると、肺が膨らみにくくなり、呼吸困難に繋がります。
体重減少は呼吸困難で十分にエネルギーを摂取できず、消費することにバランスが偏って生じます。悪性腫瘍の場合は癌細胞にエネルギーが取っているといった場合もあります。
胸膜炎に気づいた場合どうすればいいの?
深呼吸や咳で痛みが伴った場合、胸膜炎の可能性もあるので、内科を受診する必要があります。喫煙者の場合は悪性腫瘍を発症している場合もあり、より一層受診しなければなりません。こういった部分から早期発見に繋げ、治療に入りやすくなるのです。
胸膜炎の原因って一体何なのか
胸膜炎の原因について移ります。
炎症を伴う胸水は滲出性で漏出性胸水(心不全や低蛋白症、メイグス症候群)とは異なります。胸膜炎を起こす原因は多岐に渡ります。
細菌性
細菌感染により胸膜炎を発症するケースがあります。細菌が肺炎を起こし、それに伴います。好中球が増えたり、悪臭があったりします。肺炎球菌や連鎖球菌、マイコプラズマ、カビなどがあります。マイコプラズマ肺炎は増えていると報告されており、油断ならないのが分かると思います。
結核性
結核菌に感染し、胸膜炎を発症します。リンパ球が増えたり、アデノシンデアミナーゼが増加したりします。感染の可能性はありません。自然に治るものもありますが、症状が悪化するとチアノーゼなどを起こしたりします。
癌性
癌細胞が胸膜に転移して、炎症を起こした場合に発症します。CEAやヒアルロン酸の増加が見られます。胸水があると、肺などから全身に癌が広がっている場合もあるのでかなり重篤と考える必要があります。腺癌を疑ってみるといいかもしれないです。
腺癌の多くは肺癌で胸膜と密接に関わっている部分と言っても過言ではないと思います。
膠原病性
関節リウマチや全身性エリテマトーデスといった複数の場所に炎症が発生する病気が原因で胸膜炎を発症したりします。関節リウマチの場合はRA因子、全身性エリテマトーデスの場合はLE細胞が見られたりします。
これらの病気は自己免疫疾患と言い、免疫系の異常により起きる病気なのです。厚生労働省の特定疾患に指定されているものもあります。関節リウマチや全身性エリテマトーデスといった病気は女性に多い傾向があります。全身の疲労など日常生活を阻害する要素も多いともいえ、厄介です。病態が完全に解明されていないため尚更です。
消化器疾患に伴うもの
膵炎や食道穿孔により胸膜炎を発症する場合があります。
心血管性
肺血栓塞栓症により発症する場合があります。
石綿(アスベスト)によるもの
石綿は肺を繊維化させていきます。これにより呼吸困難などが起きます。肺炎も起こすため、その影響で胸膜炎を起こします。トンネル工事など建設業に携わる方に多いです。
根治できないとも言われ、2005年にアスベストによる健康被害などが問題視され、医療費等の支給を救済するための法律が制定されました。こういった面から私たちの日常生活に身近に存在すると言っても過言ではないと思われます。
つまり
このように多くの病気から胸膜炎を発症する可能性があるという事です。胸膜炎単一というよりは何らかの病気とセットで見られる病気と捉えてもいいのではないでしょうか?
胸膜炎の治療をしても元になる病気がある限り、また胸膜炎を再発する可能性も十分考えられます。だからこそ、全体を見るということが大事なのです。それが治療などに繋がってくるのです。
胸膜炎を診断するポイント
胸膜炎を発症しているかどうかを見極めるため、どのように診断していくかについて移ります。進行の度合いなどを見ていく上でも重要です。診断の際に早期発見を行い、適切な治療に繋げていくためです。
聴打診
胸水が溜まっているかどうかを聴打診で判断していきます。胸水が溜まっている所だと濁音が聞こえたり、呼吸音が弱くなっているという場合があります。胸膜摩擦音が聞かれたりします。場合によってはこの段階で胸膜炎かどうか診断できる場合もあります。
胸部X線検査
胸水が溜まっているかどうかを判断していきます。胸水があると、肺の透過性が低下して白く写ったりします。
CT検査
胸水が少量の場合、CT検査で分かる場合があります。体の断面を見て、肺の内側の病変なども見ることが可能です。早期の肺癌をも見つけるといったことも可能になります。X線検査で分かりにくい場合はこちらで検査するという流れになると思われます。
つまりこの段階で胸膜炎だけでなく、腫瘍の発見も並行して行っていかなければならないという事です。
胸水検査
胸水を採取して血性の場合は結核や悪性腫瘍の可能性があります。胸水の比重や蛋白濃度が高値だと感染症や悪性腫瘍を判断します。低値の場合は低蛋白血症やうっ血性心不全を疑います。白血球の分類も行います。
好中球が多いと細菌感染、リンパ球が多いと結核や悪性腫瘍を疑います。アデノシンデアミナーゼを見て、結核の有無を診断するのも必要となります。ここで細かな原因を突き止め、その人に応じた治療アプローチを決めていく流れになると思われます。胸腔穿刺という方法がポピュラーです。胸腔穿刺は胸腔に針を刺して行う検査です。
超音波を使って胸腔内の様子を見つつ、胸腔内に溜まっている胸水を採取するというものです。胸水の成分を見て、何が原因かを見ていきます。
胸腔鏡
胸腔鏡で胸腔内を肉眼で観察し、病変と思われる部位を確定します。
つまり
聴打診で大まかに判断し、胸部X線検査やCT検査でどこに病変があるのかを見ていきます。胸水を採取して大元になる病気は一体何なのかを見つけ、個々に応じた治療を行っていく流れになります。問診などの際にどのような訴えがあるかを聞いて、病気の候補を絞っていくことも必要と思われます。
胸膜炎の治療とは
胸膜炎の治療について移ります。
原因となる病気の治療が大切
胸膜炎を引き起こしている病気の治療がまず重要となります。前述のように胸膜炎は様々な病気からなる病気です。その原因を絶つことで胸膜炎の治療に繋がるというわけです。だからこそ、胸膜炎単体だけ見るのではなく、原因となる病気や合併症を見ていく必要があるのです。
悪性腫瘍から来る場合は胸膜を癒着させて胸水を溜まりにくくします。胸膜の癒着は発熱や痛みを伴う場合もあるので注意も必要です。膠原病の場合、在宅酸素療法を行い、24時間酸素吸入を管理する必要も出てきます。細菌性の場合、安静にしておくことも必要となります。
薬物投与
細菌感染の場合は抗生剤、結核の場合は抗結核剤、悪性腫瘍の場合は抗がん剤を投与して、治療を行っていきます。医師の指示に従って、治療を行っていく必要があります。
排液
ドレーンチューブを用いて排液を行っていきます。血餅や膿、粘液といったものを体外に排出するためにも重要となる治療法です。その際、薬剤で血餅などを小さくして行われます。大漁に胸水があると、十分排出されるまで入院する必要があります。急激な排出はショックの原因になるので注意しないといけません。
悪性腫瘍がある場合は抗がん剤やピシバニールを注入して胸水が溜まるのを予防する必要が出てきます。胸膜炎の治療といえばこれをイメージする方も多いのではないかと思います。
副作用は大丈夫なの?
胸膜炎の治療の際、免疫反応などで2週間以内に発症したりします。細胞傷害性の場合は数週間以上経過して起こります。
つまり
胸膜炎を治療するということはその原因となる病気の治療がセットになるということです。胸膜炎だけ治しても、原因を取り除かないと同じことの繰り返しです。原因を含めて治療を行っていくことが真の胸膜炎の治療ということになるのです。
まとめ
今回、胸膜炎のことを紹介させて頂きました。胸膜炎は単一の病気と捉えず、何かの病気から派生して起きる病気というのを頭の中に入れておく必要があります。
胸膜炎を疑う際はそれらの病気のことを知り、早期発見と治療に努めないといけないと思われます。この記事を読んで、少しでもそのことを意識して頂けたら幸いです。