便の状態は体調を確認する1つの方法です。例えば下痢が出るようでしたらお腹が冷えていたり、何かの感染症の可能性があるかもしれませんよね。便秘であれば、腸内環境は悪いことが予想されます。
便が細いというのも腸の状態を確認する方法です。健康な便はバナナのような形をしていますが、一方で細すぎるケースでは一体どのようなことが考えられるのでしょうか。その原因や改善法についてみていきましょう。
便が細い原因とは
便は食べ物の残りカスです。食べ物はまず胃で消化されます。そのあと、小腸で栄養が吸収され、大腸へ運ばれます。大腸は便を固くするために運ばれてきた食べ物の水分を吸収するという役割があります。
このため、便が細いというのは大腸に何かしらの異常が考えられます。時として重篤な病気が隠れていることもあるため、注意が必要です。具体的な原因として以下があげられます。
大腸ガン
便が細いという症状を発症したとき、最も怖いのが大腸ガンでしょう。
大腸内で発生したガンが便の通り道を細くしてしまうため、便が細くなってしまうことが考えられます。
特に直腸ガンやS状結腸がんは肛門から近い部位に腫瘍ができるため、便が細くなることがあります。
大腸ポリープ
大腸がん同様、便を細くする原因です。
腸管内の粘膜に隆起した組織が発生します。大腸がんの原因となることもあり、注意が必要です。
詳しくは、大腸ポリープの原因について!種類と症状、予防法も紹介!を読んでおきましょう。
過敏性大腸症候群
精神的なストレスが腸の状態を左右することもあります。例えば仕事が忙しく、なかなか休息がとれていない。こういったときも便に何かしらの異常が出る傾向があります。
このように、精神的なストレスが腸に悪影響を与えてしまう病気を過敏性大腸症候群といいます。便が細いというのは特徴的な症状の1つですもし、症状が何日も続いているようであれば、単に休息がとれていないだけなのかもしれません。過敏性腸症候群を改善するためにきちんと休むようにしましょう。
一方で大腸に原因がないケースも
大腸に異常が起こると便が細くなる、というお話をしました。一方で、大腸に原因はないこともあります。具体的には以下のことが考えられます。
腹筋が弱っている
排便されるとき、勢いがあれば便は太くなります。反対に出すのに力を要し、勢いがなければそれだけ便が細くなります。出す力が弱まっているのは腹筋が弱まっているからかもしれません。
このような症状は体力・筋力が低下している高齢者によく起こります。トイレに行くといつも時間がかかってしまう。こんなことに心当たりがあるようであれば、筋肉が低下しているだけかもしれませんよ。
肛門に問題がある
便の最終的な通り道である肛門に異常があると便が細くなることがあります。それは具体的に括約筋の緊張、切れ痔などです。これらは下痢症状を繰り返すことで発症します。
下痢が続くと何度も肛門を刺激するため、筋肉に負担をかけてしまいます。すると筋肉が凝り固まり、伸縮性が低下します。結果、便が細くなってしまうのです。
便が細くなる重篤な病気
便が細くなる病気の中でも、大腸ガンやポリープは注意が必要な病気です。
では、どうして病気を発病してしまうのか。また、その他の症状についてもみていくことにしましょう。
大腸ガンと便の異常
大腸ガンは大腸に悪性腫瘍ができる病気です。日本では女性の死亡原因の第1位です。先に述べたように、腸内にできた腫瘍が便の通り道を細くすることで便が細くなるという症状が起こります。
ただ、便が細くなるといっても、ガンの発生部位によって起こる起こらないがあります。例えば肛門から遠ければ便が細くなることは稀です。しかし、肛門から近い部分にガンがあれば、便が細くなることは十分に考えられます。
大腸ガンにはいくつか種類があります。その中でも肛門に違い位置にあるS状結腸、直腸にガンが発症することで便が細くなることがあります。一方で肛門から遠ければ、いくらガンが大きくとも便が細くなることは稀です。
これら部位にガンができると、便が細くなる症状のほか、以下のことがみられます。
血便
ガンが進行すると便と粘膜が擦れてしまい出血が起こります。結果、血液が便に混ざり血便を発症させます。血液の色が明るいという特徴があります。
便秘・下痢が続く
大腸の機能が低下すると、便をうまく形成できなくなります。そのため、便秘・下痢症状が続きます。特にこれら症状が交互に繰り返されるようであれば要注意でしょう。
残便感
排便をしたものの、なんかかすっきりしない感じ。これを残便感といいます。大腸ガンの1つの症状で、これも続くようであれば注意が必要でしょう。
症状が末期になると
大腸ガンが進行すると腹痛や体重減少がおこります。腹痛は他の部位に転移や炎症を起こしているケース。体重減少はガンに栄養を吸収されていることで起こります。
便の異常は些細なものですが、わかりやすい症状でもあります。上記症状に心当たりがあったり、何日も続くようであればまずは検査を受けてみることをオススメします。
詳しくは、大腸がんの原因とは?運動不足や食生活に要注意!を読んでおきましょう。
大腸ポリープと便
健康診断で大腸ポリープがある、と診断された人は意外と多いのではないでしょうか。先に述べたようにポリープは腸管粘膜にできるイボのような隆起物です。
ポリープは大きく分けて2に分類があります。1つ目は腫瘍。腫瘍はさらに良性腫瘍と悪性腫瘍にわけられます。前者は腺腫とも呼ばれることがあります。後者はいわゆるガンであり、最も注意しなければならない状態です。
もう1つは腫瘍以外のもの。これは炎症性ポリープと過形成ポリープがあります。前者は腸の炎症を起こす病気にかかったあと発症します。後者は老化現象の1つといわれていて、それほど心配する必要はありません。
いずれの症状にしても、大腸内の発生部位によって便が細いという症状を発症することがあります。検診でわかっていても、警戒する必要があるのかもしれません。
細い便が出たときの対処法
大腸ガンやポリープ、その他の症状などの原因は腸内環境が悪いことに起因します。腸内細菌の活動が緩慢であったり、体に悪い物質を産生することが病気の原因になるのですね。
細い便が出るというのも、腸内環境悪化の1つのサインです。このため、きちんと対処する必要があります。早い段階から行動すれば、いつまでも健康を維持することができます。
では、具体的にどういった対策をしていけばいいのでしょうか。
食物繊維を摂取する
腸内細菌は大きく3つに分類されます。1つ目は善玉菌。その名の通り、腸に対して良いことをする細菌です。2つ目は悪玉菌。こちらは腸に対して悪いことをする細菌です。そして3つ目がどちらにも属さない日和見菌です。日和見菌は善玉菌、もしくは悪玉菌が増えると増えた方に作用するという特徴があります。
さて、腸内環境を改善するためにまずやってほしいことが、食物繊維を摂取するということ。食物繊維は善玉菌のエサとなる成分です。これを意識して取ることで細菌を活性化させ、腸内環境を良くすることができ、ダイエット効果も期待できます。
食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。便のかさを増やし、腸内をきれいにしてくれるのは不溶性食物繊維で、これを特に意識して摂取するといいでしょう。
腸内では3つの細菌のバランスが保たれています。しかし、食物繊維が不足し、善玉菌が減ると悪玉菌が増加します。結果、便秘といった症状を招きます。
また、長期間、腸内環境が悪いとそれが大腸ガンを始めとする病気の原因になることもあります。悪玉菌のエサは動物性タンパク質や脂質ですから、これらを意識して減らすことも大切です。少しずつでいいので食物繊維の摂取量を増やし、お肉などの量を減らしていくようにしましょう。
リラックスする
大腸は自律神経という体の興奮・鎮静を司る神経と密接に繋がっています。意外と思われるかもしれませんが、この自律神経の鎮静を意識して、リラックスすることも腸の活動を良くする方法の1つです。
リラックスする方法は様々ですが、オススメは「ゆっくりと呼吸する」ことです。座ったり、横になったりして体の力を抜き、ゆっくりと呼吸をする。これだけで自律神経をリラックスすることができます。
電子機器の発達によって、心が四六時中オンの状態になっている人も多いと思います。ですが、腸のためにも、一度立ち止まって心を落ち着けることをオススメします。
運動をする
運動は腸を物理的に動かす効果があります。便秘の人ほど運動不足であるといわれていて、腸活動が低下している可能性があります。ですから、便秘の人は特に運動をした方がいいでしょう。
運動はウォーキングで十分な効果を得ることができます。ちょっと早く歩き、背筋を伸ばし、視線は遠くに。これらのことを意識して1回30分を週に3回ほどすれば、腸活動を活発にすることができます。
検査を受ける
上記のような対策でも症状が改善されない場合、重篤な病気が隠れている可能性があるかもしれません。そうであれば、きちんと検査を受け、腸の状態を確認する必要があるでしょう。
放置すればするほど病気は進行していきます。しかし、体はきちんとサインを出していて、それをきちんと受け止めるかどうかは私たち自身にかかっています。異変を感じたら、早めに検査を受けるようにしましょう。
大腸の検査
便が細いといった症状などが継続的に続く場合、もしかしたら病気の可能性があるかもしれません。
しかし、そのままでは大腸の状態はわかりませんから、きちんとした検査を受ける必要があるでしょう。では、大腸検査の方法には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
大腸内視鏡検査
肛門から内視鏡を挿入し、モニターで直接大腸内の状態を確認する検査です。大腸の検査として、最も一般的な方法といえるでしょう。病巣を速やかに発見することができます。
内視鏡検査を行う際は食事制限ののち、下剤も併用して大腸内を空っぽにした状態で行います。検査時間そのものは20〜30分程度で終わります。
直腸指診
直腸に直接指を挿入し、腫瘍の有無を触って確認する検査です。
内視鏡検査のように下剤を飲んだりする必要がないので、数分程度で終わり、患者の負担も軽いことが特徴です。
注腸造影検査
レントゲン検査の一種です。
レントゲンに写るバリウムを肛門から注入し、その状態で写真を撮影します。大腸の状態、腫瘍の有無、腫瘍があればその大きさや位置を確認することができます。
検便
便を専用の検査キットで採取し、便の内容物を検査する方法です。
この方法では便に血液が混じっている「便潜血」を発見することができます。目ではわからないため、重要な検査法となっています。
大腸の病気の治療
検査で何かしらの異常があり、治療が必要だと診断された。
では、大腸の病気を治療する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
内視鏡治療
検査と同様、内視鏡によって病巣を切除することができます。最大のメリットは体への負担が少ないこと。切開する必要がないので、治療後、その日に退院することが可能です。
内視鏡治療の対象になるのは病巣の形で決まります。大腸粘膜からキノコのように発生しているようであれば、容易に切除することができます。
また、粘膜が隆起しているだけのケースでも切除が可能です。腫瘍に生理用食塩水を注射し、隆起を大きくしてから切除することができます。
外科手術
腫瘍が比較的大きい場合、大腸の一部を切り取る外科手術が選択されることがあります。切り取り後は残った腸管同士をつなぎ合わせます。
外科手術で気になるのは排便障害ですが、後遺症が残ることもなく、その後も安心して生活することができます。また、食事に関しても食べ物に制限もなく、今まで通り食べることができます。
抗がん剤治療
内視鏡手術にしろ、外科手術にしろ、目に見える範囲の腫瘍のみを摘出することしかできません。仮にがん細胞が体内に残っていた場合、再発の可能性があります。
このため、術後は抗がん剤を服用し、がんの再発を防ぐ治療を行うことがあります。再発の可能性が高いのはがんのステージが進行している人で、この人たちが治療の対象となります。
放射線治療
強いエネルギーを持つ放射線をがん細胞に照射することで、がん細胞そのものを破壊する治療法です。正常な細胞に影響が及ぶこともありますが、自然に回復していくため、実質的な影響はありません。
大腸の他の病気
便が細いとき、大腸がんやポリープといった病気の疑いがあります。
一方で、便が細いといった症状がでていなくても深刻な病気が隠れていることがあります。それぞれの病気の特徴と症状についてみていきましょう。
虚血性大腸炎
虚血性大長編は何らかの原因で大腸への血液量が低下し、伴って炎症や潰瘍を招く病気です。命の危険もあるため、早急な対応が求められる病気の1つです。
主な症状としては激しい腹痛、下血などがみられます。動脈硬化と便秘が合併することで発症リスクが高まります。基本的には高齢者にみられる病気ですが、重度の便秘症の女性にも発症することがあります。
基本的な治療法は安静です。また、絶食とし輸血や抗生剤投与を行うことがあります。一過性であることがほとんどですが、壊死性といったタイプの大腸炎では手術をすることがあります。
詳しくは、虚血性腸炎になりやすい人はどんな食事してるの?原因や症状、対処方法を知ろう!を参考にしてください。
潰瘍性大腸炎
その名の通り、大腸に多数の潰瘍ができる病気です。原因不明で難病されている病気で、その患者数は年々増えています。難病の中でももっとも患者数が多いといわれています。
また、若い人に好発することも特徴です。男性であれば20代前半、女性であれば20代後半をピークとして発症します。主な症状としては下血、継続的な腹痛、下痢です。
治療では薬物治療や手術を併用して行なっていきます。手術では重症のケースで適応となり、場合によっては大腸の摘出することもあり、非常に注意が必要です。
詳しくは、潰瘍性大腸炎は完治するの?原因や治療方法を紹介!を参考にしてください。
大腸憩室出血
大腸の粘膜の一部が袋状に突起してしまっている状態を憩室といいます。大腸憩室出血はその憩室から出血してしまう病気です。主な症状としては下血、腹痛、発熱がみられます。
原因は便秘です。便秘が続くことで腸内の圧力が上がると、憩室が作られます。長期的な便秘が日常茶飯事という人は注意すべき病気といえるでしょう。
軽度であれば、食事を改善し、内服薬で治療することができます。一方、重度の場合は手術を行うことがあります。
まとめ
大腸の病気は便に異常が出ることが多いです。それは便が細いだけではなく、下痢や便秘。そして下血といった目で見てわかる症状があります。一方で初期症状が少ないこともありますから、これら症状がでたときは注意したいものです。
病気の原因の多くは普段食べているものです。特に大腸ガンの増加は欧米の食事の普及に伴い増加しているという研究もあります。食事が腸内環境を決定づけるのです。
腸内環境を良くし、病気を回避するためにはなるべく体に良いものを食べること。そして、適度に運動し、腸内を流動的にすることがポイントでしょう。便に異常を出たときは、生活習慣を見直してみてくださいね。
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