乳糖不耐症とは?症状・原因・検査方法・治療方法を紹介!母乳やミルクを飲めなくなる病気なの?

私たちの身体が、血液を全身に送り届けたり、食べた物を消化できるのはなぜでしょうか?心臓や胃腸など、それぞれの臓器がただ「動いているだけ」の状態では、命を維持することはできません。

そこには様々な「酵素」の存在が重要な役割を担っており、酵素があるからこそ、血液を全身に届け、食べ物を消化するといった働きが可能になるのです。しかし、このようないずれかの酵素が欠損することで、臓器が正常に機能できないケースがあります。その一つとしてあげられるのが「乳糖不耐症」という病気です。

そこで、ここでは、乳糖不耐症についての症状や原因、治療法などについて、ご紹介いたします。

酵素について

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乳糖不耐症についての詳細を見ていく前に、まずは、酵素について簡単にご紹介いたします。私たちが生きていくうえで、もっとも重要性の高い酵素には、大きくわけて3つの酵素が存在します。ここでは、それぞれの酵素や役割について見ていきましょう。

代謝酵素

人間の生命維持において最も重要だと言えるのが、この代謝酵素です。心臓を動かして、体内の隅々まで血管を送り届けられるようにしたり、免疫力を向上させて病気を回復させ、あるいは予防することができるのは、この代謝酵素があるからなのです。

このように、代謝酵素は、身体の新陳代謝を促進させる働きを持っています。また、代謝酵素は、次にあげる消化酵素とも密接に関係しており、消化酵素が消費されると、その分、代謝酵素も消費されます。

すなわち、消化酵素の消費が著しく多くなると、免疫力なども低下してしまうというわけです。これらは、「食事の量と質」が、いかに身体に影響しているかということを示しています。

消化酵素

これが、今回のテーマでもある乳糖不耐症にも大きく関係する酵素です。口から摂取した食べ物を消化するために必要な酵素で、食事から摂取した様々な食材を「栄養」に換える働きをしています。

しかし、これらの消化酵素は、どの食べ物に対しても一定量を要するわけではありません。「カロリー」という言葉をご存知のことと思いますが、カロリー摂取が多いほど、消化酵素が消費されてしまします。

とくに、脂っこい食事や、大量に食べ物を詰め込むような食べ方をすると、消化酵素が非常に多く消費してしまうのです。先に述べた「食事の量と質」を再度取り上げると、逆説的には、消化酵素を消費させるのを休ませると、代謝酵素が活性化するため、健康を維持しやすいとも言えるでしょう。

食物酵素

これは、食べ物に含まれている酵素のことです。最近は「酵素を食事で摂取する」などの言葉をよく耳にするのではないでしょうか。食物酵素は、消化酵素と代謝酵素をサポートし、さらに活性化させる働きを持っています。

納豆やぬか漬けなどの発酵食品が良いとされているのは、これらの食品には酵素が豊富に含まれているためなのです。

乳糖不耐症について

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さて、少々前置きが長くなりましたが、今回のテーマである「乳糖不耐症」という病気について、早速見ていきましょう。

これは、上の項目で述べた「消化酵素」に問題が生じて起こります。その名のとおり、「乳糖」を分解する「乳糖分解酵素」という消化酵素が、欠損あるいは減少するため、乳製品などを摂取すると、身体に様々な不調が現れるというものです。

よく、「牛乳を飲んだから、お腹がゴロゴロする」「牛乳を飲んだら下痢をした」と訴える人がいますが、まさに、あのような症状を示します。

乳糖不耐症はどんな病気?

牛乳や乳製品には、「乳糖」と呼ばれる糖の一種が含まれています。これは、アルドヘキソースに分類され、甜菜などにも含まれている単糖の「ガラクトース」と、ブドウ糖の「グルコース」が結合した2糖類と呼ばれるものにあたります。

通常、乳糖は、口から摂取した後に、胃を通過して小腸に運ばれると、小腸の粘膜から吸収されるのですが、この際、乳糖分解酵素が、消化に不十分な量だと、上手く吸収できなくなるのです。

乳糖不耐症の原因は?

原因は、前述のように乳糖分解酵素が必要量以下であるということです。これには、

  • 遺伝の問題で、先天的に乳糖分解酵素を持たないケース
  • 二次的(後天的)に乳糖分解酵素が低活性の状態になるケース
  • 成長において、次第に乳糖分解酵素が減少するケース

といった3通りの原因が考えられます。2番目にあげた「二次的に乳糖不耐症になる場合」については、

  • セリアック病や熱帯性スプールなどの腸疾患
  • ウイルスや細菌による腸内感染症
  • 栄養不足などによる腸機能の低下
  • コルチシンやネオマイシン、カナマイシンなどの特定の薬物服用による副作用
  • 広範囲に渡って消化管を切除する手術を受けたあと

などが原因となって、ラクターゼが低活性の状態になってしまう場合に起こると考えられています。

とくに、乳糖分解酵素が放出される場所は、小腸の粘膜のうち、先端部分にあたります。腸疾患や感染症などによって、これらの粘膜が傷ついたりすると、酵素活性が低下することもあるようです。

しかし、このような場合においては、食事等に注意して、一時的に小腸を休ませてあげることで粘膜が回復するので、一生酵素活性の低下が続くというわけではありません。

また、遺伝によって乳糖分解酵素を持たない場合においては「先天性乳糖不耐症」と呼ばれています。このケースでは、後にあげる改善方法などの対処も、効果が見られないケースもあるようです。

乳糖不耐症の症状

それでは、乳糖を分解することができなくなると、どのような症状が生じるのでしょうか。

分解されなかった乳糖は、消化の過程で腸内細菌によって大腸で発酵します。すると、発酵によって分解された炭酸と脂肪酸によって、腸が刺激されるため、蠕動運動が必要以上に促進されてしまうのです。

乳糖不耐症の特徴としては、牛乳や乳製品を摂取した30分~2時間程度後に、以下のような症状が現れます。

<小児の場合>

  • 下痢

<成人の場合>

  • 腹部膨張感
  • 胃痙攣
  • 下痢
  • 吐き気
  • 鼓腸(腸内にガスが溜まってポコポコしたり、腹部が膨れる)
  • 腸鳴(腸からゴロゴロと音が聞こえる)

乳幼児期の場合においては、母乳やミルクを主食としているので、このような症状が現れると、体重が増加しないなど、成長においても大きな問題が生じてきます。

また、成人の場合においても、下痢や嘔吐などの症状があまりにもひどい場合には、正常に腸から栄養を吸収することができないため、体重減少の症状が見られることもあるようです。

乳糖不耐症に見られるこれらの症状は、ほとんどの場合軽症で済むと言われており、腸内感染症などによって生じる諸症状の場合は、より重度の症状が現れます。

乳糖分解酵素について

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では次に、乳糖不耐症における大きなポイントである乳糖分解酵素とは、どのようなものなのかを見ていきましょう。

上項目で述べたように、成長においてもその数は変化し、民族によっても異なることが明らかになっているようです。

乳糖分解酵素について

これまでにご紹介したように、乳糖とは、牛乳や乳製品に含まれている糖の一種で「ラクトース」とも呼ばれています。

ラクトースを分解するためには、小腸の内層細胞で生産される酵素が必要なのですが、それが、「乳糖分解酵素」別名「ラクターゼ」と呼ばれる酵素なのです。もともと、私たち人間は、母乳を必要とする乳児から大人になるにつれて、このラクターゼの量が少なくなるとも言われています。

さらに、ラクターゼの生産量も人によって異なるため、まったくラクターゼがないという人もいれば、少量はあるものの、十分に乳製品などを分解できるほどの量はないという人もいるようです。

民族によって異なるラクターゼ濃度

実は、これらのラクターゼの濃度に関しては、私たちが育ってきた環境も大きく影響しているようです。いずれの場合においても、乳児に比べて、大人の方が腸内のラクターゼ濃度が低いことには変わりありません。

しかし、それでも、黒人やヒスパニックではラクターゼ濃度の低下が見られる確率が80%なのに対し、私たちのようなアジア人の場合においては、その確率はほぼ100%であるとも言われています。

一方、北西ヨーロッパの白人系の人々は、食環境に牛乳や乳製品の存在が大きく関わっています。アジア人に比べると、乳製品などを摂取する量や頻度は、比べものにはならないくらいと言っても良いでしょう。

このように、彼らは、常にラクターゼを必要とする環境で生まれ、成長しているため、80~85%の人がラクターゼ濃度に大きな変化は見られないのです。すなわち、何の問題もなく、牛乳や乳製品を摂取できるということです。

また、欧米人に関しても、同様のことが言えるようです。彼らは牧畜が開始された古くから、牛乳を飲むという歴史が続いています。しかし、日本人の場合にいては、牛乳を飲料として取り入れるようになったのは、歴史上ではごく最近のことです。

長年の歴史と人間の身体の進化の過程で、ラクターゼ濃度の変化が大きく影響すると考えるならば、日本人には、牛乳との関わりの中で、まだまだ進化における十分な歴史がないことも、大きく関係しているとも言えるでしょう。

乳糖不耐症の治療法は?

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それでは、乳糖不耐症の治療法には、どのようなものがあるのかをご紹介いたします。小児の場合においては成長にも大きく関係することですので、できるだけ早めの段階で、親御さんが手を打ってあげることが大切です。

それではここで、乳糖不耐症の検査方法に加えて治療方法をご紹介いたします。

検査方法と診断

まずは、出ている症状が本当に乳糖不耐症によるものなのかの判断が必要です。たとえ、牛乳や乳製品を食べたあとに症状が出ている場合でも、もしかすると、何かのウイルスや細菌に感染したことで起こっている症状であれば、治療法も全く異なってきます。

適切な治療を行うためには、検査と正しい診断が必要です。乳糖不耐症の検査は、実際に乳糖を患者に飲ませて、

  • 血糖値の検査
  • 検便

をして、診断を下すことが一般的だと言われています。乳糖を飲んでも、血糖値の上昇が見られない場合や、便に糖が混じっていれば、乳糖不耐症と診断されます。

また、これらの検査のほかにも、3週間~4週間程度牛乳や乳製品の摂取を一切禁止した食生活を送って、症状が改善された場合においても、乳糖不耐症とみなされるようです。

乳糖不耐症の治療方法

乳糖不耐症の治療方法は、牛乳や乳製品の摂取を制限することが主な治療法になります。これらが好きな人にとっては大変辛いかもしれませんが、仕方ありません。

ここで気をつけなければならないのは、カルシウム不足です。カルシウムは牛乳などに多く含まれるため、これらの食材に制限をかけることで、カルシウム不足を起こしてしまう恐れがあるのです。

ですので、治療中はできるだけ、カルシウムを多く含むそのほかの食材を摂取したり、サプリメントなどで補うといった工夫が必要です。医師によっては、カルシウム剤を処方してくれるところもあるようですので、気になる場合には、担当医に相談してみるのも良いでしょう。

そして、全ての乳製品がNGというわけではないのです。乳糖をあらかじめ分解して販売されている乳飲料もあるようですので、そちらを試してみるのも良いかもしれません。

また、ヨーグルトなどの発酵した乳製品では、20~30%程度は乳糖が分解されて、牛乳に比べると少なくなっています。牛乳ではお腹を下すという人も、ヨーグルトならばそれほどひどくないといったケースもあるので、試してみる価値はありそうです。

乳糖不耐症は改善できる?

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食事に関することが不自由になるというのは、想像以上にストレスが溜まるものです。朝は、やっぱり牛乳が飲みたいという人もいるでしょうし、乳製品が嫌いではないのに、お腹が痛くなることを想像すると、どうも食べられないといった方もいることでしょう。

しかし、諦めるのは、まだ早いようです。同じように乳糖不耐症で悩んでいる方の中には、日々の工夫や対処などで、徐々に症状の頻度が減少したり、症状が改善したという人もいるようです。

ここでは、実際に症状が和らいだり、改善したという人たちの経験に基づいた方法をご紹介いたします。

ヨーグルトを定期的に摂取する

先にも述べたように、ヨーグルトならば、それほど症状がひどくならない、あるいは症状が出ないという人もいます。これは、ヨーグルトの中に含まれる乳酸菌が持つ乳糖分解酵素があるためただと考えられています。

ヨーグルトを定期的に摂取することで、この乳酸菌とともに乳糖分解酵素を腸内に保持し、徐々に症状が改善したという人もいるようです。

しかし、乳酸菌は胃酸に弱いので、摂取するのは胃酸の影響が少ない食後がおすすめです。

サプリメントやラクターゼ製剤を使用する

これは、ダイレクトに乳酸菌や乳糖分解酵素を、サプリメントや錠剤で摂取するという方法です。インターネットやドラッグストアなどで販売されているサプリメントなどを、コンスタントに摂取することで、症状が良くなったという人もいるようです。

また、乳酸菌のサプリメントは、非常に種類が豊富です。ドラッグストアなどで購入する場合には、薬剤師に相談してより効果的なものを吟味してみるのも良いでしょう。

温めた牛乳を継続して飲む

これは、乳糖不耐症を抱える多くの人が実際に試して効果があったと言われている方法です。冷たい牛乳は、胃腸に刺激を与えてしまうため、さらに症状を悪化させている可能性があります。

  • 温めた牛乳をコップ1杯ではなく、半量などに量を減らして飲む
  • 温めた牛乳をココアやコーヒーなどに混ぜて、摂取量を減らして飲む
  • 温めた牛乳を、一日数回にわけて飲む

以上のような方法で、継続的に牛乳を摂取することで、腸内のラクターゼ活性が誘導され、さらには、善玉の腸内細菌が増えるのです。

すると、徐々に、下痢や腹痛といった症状の頻度が減り、緩和していくといった実例もあるようです。

症状を経験した人にとっては、「牛乳を飲む」ということ自体に抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、試してみる価値はありそうです。

注意点

これらの改善策を試みる前に、注意しなければならないことがあります。それは、乳糖不耐症とほかの病気と一緒に考えないことです。

代表的な例として、混同されやすい病気で「ガラクトース血症」と呼ばれるものがあります。どちらも乳製品などを摂取することで症状は見られるのですが、同様に腹痛はあるものの、ほかの症状や原因が全く異なるのです。

乳糖不耐症では乳糖分解酵素が必要量に満たないことで生じますが、ガラクトース血症の場合は「乳糖そのもの」が原因となって生じます。

症状においても、腹痛のみではなく、腎不全や肝硬変、言語障害など非常に深刻なものになります。すなわち、ガラクトース血症の人が、乳糖不耐症だと思い込んで、改善のために乳製品を何らかの形で摂り続けてしまうと、血中の乳糖濃度が高くなり、最悪の場合は命を落とすこともあるのです。

とくに、乳時期から下痢や嘔吐の症状が見られる場合には、まず、かかりつけの医師に見てもらうことをおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。体内には様々な酵素があり、それらが正常値から大幅に外れることで、身体にも症状が現れてきます。今回ご紹介したのは、消化酵素である乳糖分解酵素ですが、生命維持に欠かせない代謝酵素も大切です。

代謝酵素を正常に働かせるためには、食生活や生活習慣、適度な運動に加え、身体を低体温の状態にさせないことも大切です。低体温の人は、平熱が36.5℃~37℃程度に維持できるよう、体質改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

健康な身体は、活発な酵素があるからこそと言っても過言ではないのかもしれません。

  
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