虚血性腸炎という病名、聞き慣れない方が多いかもしれませんね。
実はこの聞き慣れない病気は、女性がかかりやすいという事をご存知でしょうか?
今回は「虚血性腸炎」とは一体何であるのか、原因は何なのか。そしてどんな人がなりやすいのか、どのように治療すべきなのかをご説明いたします。
この記事の目次
虚血性ってそもそもなに?
虚血性腸炎の説明をする前に、まず「虚血性」という単語についてご説明いたします。病気について知る事も大事ではありますが、病名を構成する単語の意味も確認しましょう。
では「虚血性」とは一体なんでしょうか?虚血とは、身体の一部分に対して発生する貧血状態のことです。この貧血状態となった一部分のことを「虚血状態」といいます。
通常であれば、この虚血という貧血状態は一時的なものであり、その後は血流だけは元に戻ります。ですが、虚血状態にある部分は血液が不足している状態が一時的にはいえ起こります。
虚血性が起こる仕組みとは?
これはつまり、血液が運搬する酸素がその場所にいきわたらずに、「酸欠状態」になっているという事が考えられます。体の中には、酸欠に耐え切れない細胞も多々存在します。
その細胞は死んでしまい、生命維持に対して身体は虚血状態の部分に血液を流し、酸素を供給させます。しかしその際に発生する活性酸素という物質により細胞を覆っている細胞膜を傷つけたりするため、虚血状態の部分によって機能障害を引き起こす事もあります。
このような虚血状態による症状のことを虚血性疾患といい、今回では虚血性腸炎という病名を扱います。
つまり虚血性腸炎とはなにか?
では本題に戻り、虚血性腸炎とは一体なんでしょうか。
具体例を出しましょう。脳の血管が詰まる事によって、脳梗塞が起こる事はご存知でしょうか。原因は多々ありますが、脳梗塞の主因は血管が詰まり、栄養分も運べず老廃物も体中に運搬できなくなる事であると言われています。
実は虚血性腸炎も脳こうそくと同様に、腸の血管(動脈)が詰まってしまい、腸の粘膜に送られる血液量が減少してしまうことによる、腹部に強烈な痛みや様々な症状を引き起こす病気なのです。
いわば、脳梗塞ならぬ、腸梗塞と言ってもよいでしょう。通常であれば1-2週間で改善、完治する病気でありますが、食事の摂り方について考えたりする必要があったり、安静にする事が求められる為、入院する人も多いようです。
どのような人がなりやすいの?
この病気は動脈硬化、不整脈等の症状により高齢化に伴い、動脈硬化を起こすような起因的疾患をもつ高齢者が多くなるものであると考えられていました。
しかし、現在では生活習慣や食生活の違いから、便秘気味の女性が多く見受けられます。このような便秘気味の女性もこの虚血性腸炎になりやすいと、近年の大腸内視鏡の普及によりわかってきました。
また、似た名前で虚血性大腸炎というものがありますが、これはほぼ同じ病気であると考えて問題ありません。以前は大腸のみの出血だけだと考えられていましたが、近年機材の発達により、小腸からの出血例があることもわかってきました。そのため、虚血性大腸炎と虚血性小腸炎を合わせて虚血性腸炎と呼ぶようになりました。
つまり虚血性腸炎とは、腸内の血管が詰まる事引き起こされる腹部に強烈な痛みや様々な症状を引き起こす病気であると認識いただけたら問題ありません。
虚血性腸炎はどんなタイプがあるの?
同じ風邪の中でも高熱と咳、のどの痛みがある風邪と、咳と発熱のみの風邪、熱っぽいだけの風邪等、それぞれで重症度は異なるタイプがありますね。
実は虚血性腸炎にも同じように重症度で分別した3つのタイプがあります。下記ではその3タイプについて、ご説明します。
一過性型
虚血性腸炎で病院にくる患者のほとんどはこの一過性です。突然の腹痛や下血、吐き気も怒る事から「重い病気では?」ととらえがちですが、多くはこの敬称である一過性型と認められます。このタイプの際は虚血状態も一時的であり、症状自体も数日でおさまる事が多いです。
この一過性型は点滴を行い、投薬することにより二次感染を防ぐのが大切です。このような処置を適切に行えば、短期間で正常な出血をしない腸に回復することが多いです。
この型であれば入院の必要はありませんが、出血が多量であったり、潰瘍が広く深い際には入院して禁食にする場合もあります。ほとんどが積極的治療ではなく、腸の安静を保つ事が求められます。
狭窄型(きょうさくがた)
狭窄とは、腸管自体が狭くなり、消化するはずの食べ物等を通しにくくなった状態の事をいいます。
この狭窄型は患者が10人来たらそのうち1人に見受けられ、腸炎により潰瘍が起こっている際にこのタイプに診断されます。この型と後述にある壊死型からは入院が必須となります。
この型は症状が長引き、慢性化しており治癒するまでに数か月を必要とします、また、血流が低下している虚血状態の部分は狭くなった血管のまま治療する事が多いです。狭窄を解除するために外科手術を行う事も時には必要となってきます。
壊死型
壊死型は投薬や点滴を行っても血流が回復せずに腸管が虚血状態にあり、壊死している状態です。潰瘍部に対して穴が開くこともあり、腸自体に穴が開く事も症状の1つとして挙げられます。
これは一過性型、狭窄型と異なり、症状が急速に進行します。急速に組織が壊死する事により、腸穿孔や腹膜炎、敗血症等の合併症を引きおこす可能性が高く、急速な治療が求められます。この壊死型では手術が必須となり、死亡率は30%から60%であると言われています。
虚血性腸炎は具体的にはどんな症状があるの?
この虚血性腸炎、一体どのような症状があるのでしょうか?Cleveland Clinic Journal of Medicineという医療雑誌によれば、虚血性腸炎患者数の60%は軽度~中程度の腹痛があるという事実が2003年の時点で明らかになっています。
主には急な腹痛が多く、具体的には左下腹部が痛む事がこの病気は非常に多いです。感覚的にはお腹を下した感覚に近いと言われています。この腹痛に加え、鮮血便や鮮血の混ざった下痢等が特徴としてあげられます。発熱等をする事があまりない事も特徴の1つです。
鮮血が出るという事に関してですが、「どこから出血しているのか?」と考える方もいるのではないでしょうか。実は、その出血は腸の中からの出血なのです。先述では、急速に組織が壊死してしまうと記載しました。
その組織が壊死したことにより、腸内の粘膜上にむくみやただれ、びらん、潰瘍(かいよう)が出来てしまいます。主には潰瘍やただれなどの炎症からの出血が下血として排出される事が多いと明らかになっています。
虚血性腸炎の根本的原因は一体何なのか?
この病気は腸内の血管(動脈)が詰まってしまうことにより引き起こされる病気であると先述しました。ではいったい根本的な原因はなんなのでしょうか?
根本的な原因としては、様々な要因を挙げる事が出来ます。具体的な原因として、便秘と動脈硬化についてご説明します。
便秘
比較的若い女性に見受けられる状態の1つに、便秘があります。この便秘には食生活も含め、様々な要因があります。その要因のうち1つに、ストレスがあります。「ストレスで腸がおかしくなるなんてあるのか?」と考える方も多いかもしれませんが、順を追って考えてみましょう。
腸脳相関、という言葉をご存知でしょうか。これは、腸と脳には非常に深い関係がある事からつけられた言葉です。 腸は「第二の脳」とも言われ、それぞれが自律神経やホルモン等の情報伝達物質を通して、脳から腸に伝え密接に影響を及ぼし合っています。
例えば、「仕事先で上手くいかない…」「この試験は絶対に成功させなければいけない」等と考えたとしましょう。このような事を考える事により、脳がストレスを感じます。
このストレスの刺激が自律神経を通して腸に伝わることにより、腹痛や便意を催したり、或いは便秘になったりします。脳と腸の間にこのような関係がある事から、本人がストレスと感じていなくても、便秘になってしまう方は非常に多いです。
便秘になる原因として起こりやすいものとは?
他に便秘になる原因として、「水分不足」が挙げられます。自分では多くの水分を摂っていると思っても、実際にはそれは水分として扱われていないこともあるって、ご存知ですか?
推奨されている1日の水分摂取量は「水約2リットル」です。これはジュースなどではなく、普通のお水や、白湯などで補給するように心がける事が求められます。
ですので、ジュースではなく、白湯やお水、或いは日本茶等を飲むとよいでしょう。水分が不足していると腸が活発的に動く事が出来ず、便秘気味になりやすいです。もし水分不足で便秘気味であるのなら、朝起きた際に温かい白湯を飲んでみるのはいかがでしょうか?
朝起きてからすぐの水分補給は腸を活発にします。更に白湯のような温かい飲み物は便を柔らかくする効果と腸を温める効果があります。
このような効果から、腸の働きを改善するには一番お勧めで簡単な方法が「白湯を起きてから飲む事」です。
なんで便秘が虚血性腸炎に結びつくの?
さて、便秘になる事により、どうしてもガスや便が腸に溜まってします。それにより腸が圧迫され腸自体の血管も広がってしまい、どうしても悪くなってしまう血管が出てきてしまいます。このような悪くなってしまった血管は、腸壁の粘膜を傷つけながらギリギリでくっついている状態であり、悪くなった血管には圧力がかかる事により更に血行が悪くなり虚血状態を引き起こします。
更にいうと、便秘になると、腸は激しく運動をして固い便を押し出そうとします。この運動により、腸内の圧力が高まり、腸内の血管は細く伸びてしまいます。これは先述した「狭窄型」に分類され、あまりにも血管の太さが細くなってしまった際には手術をする事になります。
腸内の血管が細く伸びてしまう事により、血流が減少し腸内の組織が壊死してしまう事があります。先述した「壊死型」はこのような事により起こりうるタイプの虚血性腸炎です。この壊死型は緊急手術が必要な位重体であり、他の病気を併発してしまうこともあります。
簡単に言うと、「ストレスが元となり便秘を引き起こし、その便秘により血液が循環せず、虚血性腸炎になる可能性がある」という事です。ストレスはどうしても生きる上でなくならないものですので、趣味や睡眠に対して出来る限り時間を費やしストレスを減らし身体を休める事が求められます。
また、食生活や運動、或いはその他で出来る事をして便秘は解消しておくことが、この病気だけでなく、他の病気にもかからないようにする上で大切ですね。
動脈硬化
血管自体に問題がある際も、この病気は発症しやすいです。特に、この病気のもっともな原因は「動脈硬化」です。
この血管側因子としては、動脈硬化や血栓症等が挙げられます。このような状態は高齢者、糖尿病患者、血管炎、高脂血症などの、動脈硬化を引き起こすもととなる基礎的疾患を持つ人が発症しやすいと言われています。
動脈硬化、という単語自体は知っていても実際どんな病気なのか、実際はあまり知られていない事が多いので、軽くご説明しますね!動脈硬化とは血管内部に「悪玉コレステロール」や「中性脂肪」がこびりつく事により、血管本来の柔軟性等が失われ、血管の一部が効果してしまう病気です。
また、血管の柔軟性が失われる事により、血管は破れやすい脆いものとなってしまいます。破れたら勿論、出血してしまいますね。脳出血のような病気はこのような動脈硬化によって引き起こされていると言われています。
なぜ動脈が硬化してしまうの?
動脈硬化は高齢者に多い症状ではありますが、なぜ動脈は硬化してしまうのでしょうか。その答えの1つに食生活があります。 具体例を挙げてしまえば、油を多く使った揚げ物やジャンクフード等である事は有名ですが、煙草や慢性的運動不足、アルコール等も動脈硬化の原因であり、便秘の原因にもつながります。
悪玉コレステロールの含まれるものを避ける事も大切ではありますが、悪玉コレステロールを処理してくれる肝臓に対して気を遣った食事をする事を是非とも心がけてみてはいかがでしょうか。具体例を挙げれば、しじみの味噌汁やタコやイカ等、魚介類をお勧めします。是非ともお試しください。
なんで動脈硬化が虚血性腸炎に結びつくの?
腸の中には栄養、血管を運ぶ血管が張り巡らされています。この血管に動脈硬化が起こる事によって、腸に血液や酸素がうまく行きわたらずに血液不足である虚血状態を起こします。酸素が行きわたらなかった部分(硬化してしまった動脈部分)が壊死し、びらんや潰瘍を生じる事も症状としては少なくありません。
このような形で動脈硬化が虚血性腸炎に結びついてしまいます。文章にしてしまえば簡単にわかるかもしれませんが、実際になったら「どう対応すればいいのか?」「出血するなんて自分は死んでしまうのではないか?」と慌ててしまう事も多いかもしれませんね。
根本的な原因は改善できるの?
さて、主因となりがちな「便秘」と「動脈硬化」について説明いたしましたが、便秘、動脈硬化を複合型ともいえる2つ兼ね備えた人が最も多いです。是非ともどちらかひとつは解消したいところですね。
どちらの原因も食生活を変える事によって改善可能であることが分かっています。是非とも、どちらかの症状に合わせて、或いは両方改善を希望するのであれば併せた食事や運動をする事を心掛けてみましょう。以下は飽く迄参考にしてみてください。
- 便秘解消をしたいのなら、発酵食品や乳製品を大目に食べ、出来るだけ食物繊維の多い野菜を食べること。また、寝起きに白湯を飲む事で腸の動きを活発化できるため、試す価値はある。
- 動脈硬化を避けたいのなら、出来るだけ悪玉コレステロールを下げる魚介類やキノコ等を積極的に摂取すること。可能であれば、ウォーキングや水泳のような有酸素運動を行う事が望ましい。
虚血性腸炎はどんな治療をすべき?
この虚血性腸炎は、風邪でいう「なんか熱っぽい」のような前症状がありません。激しい腹痛、下痢を同時に起こし下血する事によりはじめて自覚する事が多いです。普通の腹痛や下痢とは異なる痛みを持つため、違いについてはわかりやすいようです。
この病気は普通の腹痛とは異なることから、市販薬等を飲むべきではありません。弱っている身体に対して異なる効果を起こす薬を投与することは悪影響ですので、おとなしく病院へ行くことを推奨いたします。
病院は何科へいけばいいの?
では病院に行くとしても、どの科にいけばよいのでしょうか?腹痛だけでしたら、内科でもよいでしょうが、今回の虚血性腸炎の原因は、腸内の血管です。
虚血性腸炎になった際に取りあえず病院に行くこと自体は大切ですが、腸の専門であればすぐに虚血性腸炎を診断してくれることでしょう。
腸の専門科は一体どこでしょう?じつはこれは、「肛門科」なのです。もし近くに肛門科がない際は、消化器科へ行くのがよいでしょう。ですが、重要なことは、重症な壊死型かどうかを早くみきわめることです。壊死型であれば早急に緊急手術をする事が求められます。
ですので、まずは自分だけで「まだ大丈夫」と思わずに迷わず病院へ行くことが最優先です。
まとめ
虚血性腸炎について、ある程度はわかっていただけたでしょうか。虚血性腸炎とは、腸の血管(動脈)が詰まってしまい、腸の粘膜に送られる血液量が減少してしまうことによる、腹部に強烈な痛みや様々な症状を引き起こす病気です。
そして、ストレスによる便秘や、悪玉コレステロールの含まれる食べ物を食べすぎることによる動脈硬化によってこの病気は起こり得ます。
ストレスによる便秘は勿論、悪玉コレステロールの含まれる食べ物ばかり食べる事は肌にあまりよくないです。これを読んだ方は是非食生活だけでも変えて、健康と綺麗に向かっていってください。
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