パソコンを使った作業や書類の整理、長時間のテレビ鑑賞、車の運転、飛行機や新幹線での長距離移動など、私達先進国の住民は、知らず知らずのうちに座りっぱなしの生活をおくっています。一日を振り返ってみると、数時間、もしくは一日の大半を座って過ごしてたなんて方もいるのではないでしょうか。
当たり前のように習慣化してしまった座りっぱなしの生活ですが、実は寿命を縮めるかもしれない病気を招く恐れがあるのです。しかし、危機感を持っている人は少ないように感じます。
そこで今回は、座りっぱなしによって起こりうる恐ろしい病気のリスクと、その回避方法やケアについて説明します。少しの意識で病気を未然に防げたり、症状を軽くすることも出来るので、是非参考にしてみてください。
この記事の目次
座りっぱなしで起こる体の変化
ただ座っているだけのつもりかもしれませんが、実は体の中で様々な変化が起こっています。まずは座りっぱなしの状態が続くとどうなるかを理解しましょう。
カロリーの消費量が低下する
座っているとほとんど筋肉を使用しません。ですから自動的にカロリーの消費量も低下してしまうのです。立ち仕事をしている人とデスクワークなどで座りっぱなしの人とでは、一日の消費カロリーが人によっては100~200キロカロリーも違ってきてしまうのです。
最近痩せにくいな、太ってきたかも、と感じている人はカロリーの消費量が減ったことで、脂肪が付きやすくなっているのかもしれません。
血行が悪くなる
座って仕事をしているだけなのに異常に疲れを感じていませんか?実はデスクワークなどは立ち仕事と同じくらい肉体疲労が蓄積するのです。それは血行が悪くなっているからです。座った状態が長く続くと、太ももの付け根部分が圧迫され下半身の血行が悪くなります。
血行が悪くなると体に蓄積した老廃物や疲労物質が体内に滞ってしまうので、結果として疲れを感じるのです。
筋肉量が減る
座りっぱなしの状態は体を動かさないので筋肉もほとんど使用しません。ですから結果的に筋肉量はどんどん減ってしまいます。立ち仕事の場合、脚の筋肉はもちろん、お腹など全身の様々な部分の筋肉が活動しているのです。
筋肉量が減ると代謝も落ちるので、より太りやすくなってしまいます。
背中への圧力で腰痛が起こる
特にデスクワークの場合、パソコンの画面や書類の作成に集中するあまり無意識のうちに姿勢が悪くなってることがあります。
猫背など無理な姿勢が長く続くことで背中に圧力がかかり腰痛を引き起こす原因となります。
眼精疲労
一日中パソコンに向かって仕事をしている方に特に起こりやすいのが眼精疲労です。パソコンの画面に釘付けになっていると、眼精疲労から様々な症状が出てきます。
頭痛、肩こり、首こり、目のかすみ・充血、めまい、吐き気、などこれらの症状があった
場合は眼精疲労が原因となっている場合があります。
冷える
座りっぱなしで体を動かすことが少ないと血行が悪くなります。エアコンの効いたオフィスで一日中過ごしていると、特に心臓から離れた足先は血行不良になりやすく、より冷えやすくなります。
いかがですか。該当する項目が自分自身にもいくつかあった方もいるのではないでしょうか。
座りっぱなしが引き起こす病気
先ほど座りっぱなしで起こる体の変化について説明しましたが、本当に注意すべきなのは、座りっぱなしの状態が長く続くことによって引き起る病気です。
中には寿命をも縮める怖い病気もあるのです。
エコノミークラス症候群
エコノミークラス症候群は飛行機のエコノミークラスだけで発症するのではなく、長時間同じ姿勢で座ってることによって引き起ります。
最悪な状態なら死に至る恐ろしい疾患でもあります。特に座っている時に足を組んでいると起こりやすいといわれており、全身の血流が停滞し、ひどいときには血栓ができてしまいます。血栓ができると血流が停滞するどころか止まってしまうこともあります。
糖尿病
座りっぱなしの状態でいると筋肉を使わなくなるのでカロリーの消費量が減ります。すると太りやすくなり、高血糖状態が続くことにより、糖尿病になるリスクが通常の人の約2倍高まるという研究結果が、カナダのトロント大学より発表されています。
また、糖尿病対策のプログラムには運動不足解消をテーマに構成されているものがあり、長時間の座りっぱなしの状態は、悪い影響をもたらす原因ともいえます。
高血圧
座りっぱなしでいると股関節の付け根が圧迫されて血流が悪くなり老廃物が溜まりやすくなります。更に2時間以上同じ姿勢が続くことで筋肉が固くなり、内臓などの働きも悪くなってしまうのです。このような状態が続くと高血圧になりやすくなります。
特に年齢が高いほどより筋肉が固くなりやすいので高血圧のリスクも高まります。
がん
がんの多くは生活習慣が大きく影響しています。特に血流を良くすることは体を健康に保つことの基本とされています。しかし毎日座りっぱなしの状態でいると、血液の巡りが悪くなります。レーゲンスブルク大学の研究結果によると、一日に何時間も座ってる人は、がんの発生率が66%アップするといわれています。
更に詳しく説明すると、常に座りっぱなしという人は大腸がんのリスクが24%アップ、子宮体がんは32%、肺がんは21%アップするという結果が出ています。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は眠っている間に呼吸が止まってしまう病気のことです。実は座りっぱなしと関係ないように思われがちですが、日々デスクワークなどで姿勢の悪い座り方をしていると、首に負担がかかっている場合があります。それにより、血流が滞り足へと溜まってしまいます。
睡眠のため、夜横になることで血液が頭に移動し、睡眠時無呼吸症候群になりやすい状態になってしまうのです。
痔
体に合っていない椅子を使用して長時間座っていると、腰や背中はもちろん、実はお尻にもかなりの負担がかかっています。
さらにデスクワークなどで一日中エアコンの効いたオフィスで仕事をしていると、体を動かさないので冷えやすくなります。するとお尻も冷えてしまうので、うっ血して痔になりやすくなってしまいます。
脳梗塞
座りっぱなしの状態が長いと血液の循環が悪くなり、血管の機能が低下します。すると血液がドロドロになってしまうこともあります。
そのような状態でいると、脳の血管が詰まり、脳梗塞を引き起こしてしまうリスクが高まるのです。
下肢静脈瘤
下肢とは足のことで、静脈瘤は静脈つまり血管がコブのように膨らんだ状態の病気です。座りっぱなしが長く続くことで下肢静脈の血流が悪くなり、血管内にどんどん溜まってしまう可能性があります。その結果、血管が太くなりコブのように盛り上がってしまうのです。
また、下肢静脈瘤は血管が膨らむだけでなく、痛み、体のだるさ、むくみ、かゆみ、こむら返りなどの様々な症状を誘発させますので、気になった場合は早期に治療しましょう。
このように座りっぱなしの生活を続けていると最悪の場合、死につながる恐ろしい病気を発症してしまうかもしれません。しかしながら、仕事の都合でどうしても長時間デスクワークをしなければならないなど、すぐに回避するのが困難な方も多いでしょう。
そこで、最悪の事態を起こさないように日頃から少しでの工夫で改善できる方法を次にご紹介します。
座りっぱなしによるリスクを回避する方法
突然環境を変えるのは働いている人にとっては容易なことではありませんが、少しの工夫と
注意で座りっぱなしによる危険から身を守ることができます。
座る姿勢を意識する
まずは基本でもある座り姿勢を意識することが大切です。姿勢が悪いとそれだけで身体の様々な部分に負担がかかり不調をきたします。
- 背筋を伸ばし深く腰を掛ける
- 椅子と机との距離を開けすぎない
- 顎を引いて猫背にならないようにする
- 肘は体の真横に置く。肩に力が入り過ぎないようにする
パソコンの画面と目の高さを合わせる
無理な目線の高さや角度で長時間作業をしていると、目にかなりの負担がかかります。
まずはパソコンの画面と目の高さを合わせます。そして、前かがみの姿勢にならないように注意し、約40センチの距離を保つことを意識しましょう。
椅子の高さを調節する
椅子が高すぎても低すぎても座り姿勢を悪化させる原因になります。膝を90度の角度で曲げて、足の裏がしっかりと床につく高さに調節しましょう。
1時間に5分を目安に歩く
最低でも1時間に一度は椅子から立ち上がるようにしましょう。少しでも歩くことで、血液の
循環が良くなります。
手の届くところに物を置き過ぎない
仕事の効率などを考えると手の届く範囲に必要な物を全て置きがちですが、少しでも立ち上がって歩く機会を増やすことも大切です。何か一つでも離れた場所に置いて意識して動きましょう。
座ったままできるストレッチをする
座ったままでストレッチをするのも効果的です。気分転換にもあるのでなるべく意識して取り入れてみてください。
- 上半身を左右に動かしたりひねったりする
- 背もたれにもたれ、左回り・右回りの交互に頭をゆっくり回す
- 天井を見上げ、胸を広げながら肩甲骨同士をゆっくりと近づける
- 靴を脱いで足首を回す
こまめに水分補給をする
長時間座り続けると血流が悪くなり血液がドロドロになる場合もあります。
血液の循環を良く
するためにも、なるべくこまめに水分補給をすることが大切です。意識して水分を摂取してください。
脚を冷やさない
長時間エアコンの効いた場所で座っていると、動かないのでどんどん脚は冷えていきます。
ひざ掛けやストールなどを一枚用意しておくと冷えから守れるでしょう。
内線やメールを使わず直接話す
オフィスでの仕事中、ちょっとした報告など内線やメールで済ませる方も多いかと思いますが、座りっぱなしの状態を防ぐために直接相手の元に行って伝えてみてはいかがでしょうか。
コミュニケーションも取れて好感度も上がれば一石二鳥です。
自宅で簡単にできるケア
仕事が終わって自宅に帰宅した後でも簡単にできるケアがあります。
一日頑張った自分の体を
少しでも労わってあげましょう。
入浴
一人暮らしの方など忙しいとシャワーで簡単に済ませてしまいがちですが、入浴には温熱作用があり、毛細血管が広がり血液の循環が良くなるといわれています。血液の循環が良くなることでむくみの解消にもつながります。
また、体内に蓄積された老廃物や疲労物質が取り除かれることで肩や背中のコリにも効果があります。
ホットタオル
デスクワークで長時間パソコンの画面に向かっている人は、ホットタオルで目元を温めるとよいでしょう。
5分程度横になって目元を温めることで、目の周り全体の血行が良くなり眼精疲労にも効果的です。
股関節のストレッチ
一日座りっぱなしでいると特に股関節周りの筋肉が固くなります。お風呂上りや寝る前など軽くストレッチをして筋肉をほぐしましょう。
■足を前後に大きく開脚し、ひじを床につける
- 猫背にならないよう背筋をまっすぐ伸ばし、足を前後に開脚する。
- 足の位置はそのまま維持し、両手を前足の内側に置くように体を前に倒す。
- 股関節周りの伸びを深めるために、両ひじを床につける。
- そのまま5秒間キープする。
- 左右の足を入れ替えてそれぞれ2回繰り返す。
■ひざを曲げて足を合蹠させる
- 床に座り、足の裏同士を合わせる合蹠の姿勢になり、両手で足首を持つ。
- 猫背にならないよう背筋をまっすぐ伸ばす。
- 足首をもったまま体を前に倒す。
- そのまま10秒間キープする。
- ゆっくりと体を元に戻し、3回繰り返す。
■床に座って足を左右に開脚し、体側を伸ばす
- できる限り足を大きく開脚する。
- 骨盤を立てるように背筋をしっかり伸ばし、両腕を頭の上で組む。
- 体の重心を少し前に移動させ、股関節周りの筋肉の伸びを深める。
- 右の体側をゆっくり伸ばし3秒間キープしたら、左側の体側も同じように3秒間キープする。
- これを3回繰り返す。
手軽なむくみケア方法
デスクワークなど長時間の座り仕事をしている女性の方に多い悩みとして「脚のむくみ」があります。心臓から足の裏までの高さがあるほど、足への静脈圧がかかりやすくなり、むくんでしまいます。
そのままにしておくと脚が太くなってしまったり、靴がキツくて入らないなんて事態にもなりかねません。そんな女性の脚のむくみにオススメのケア方法をご紹介します。
着圧・弾性ストッキング
脚がむくんでしまう前からケアしておくことが大切です。着圧・弾性ストッキングは、脚を適度な圧力で圧迫するため、むくみ予防に効果的です。
見た目も普通のストッキングと変わらないので職場でも気にすることなく着用できます。
睡眠時用着圧ソックス
先ほど着圧・弾性ストッキングを紹介しましたが、こちらは睡眠時に使用するタイプの着圧ソックスです。座りっぱなしでパンパンにむくんでしまった脚を寝ながらケアします。
日中使用する着圧・弾性ストッキングよりも脚への圧力が少し強めに作られています。丈もひざ下からひざ上まで数種類あるので、ご自分の好みの物を選びましょう。
サプリメント
手軽にむくみケアができるということで人気なのがサプリメントです。夜寝る前に飲むだけで、翌朝スッキリむくみを解消してくれるので忙しい女性にもぴったりです。
トウモロコシ茶
トウモロコシ茶はカリウムが豊富で高い利尿作用があり、むくみ解消以外にもダイエット効果などにも期待することができます。クセもなく飲みやすいので、食事の際にもオススメです。
血液をサラサラにする食べ物
座りっぱなしは血液の循環を悪くし、様々な病気を発症させるリスクを高めます。普段から血液の巡りを良くする食品を意識して接種して健康的に過ごしましょう。
血液の巡り良くする食べ物には以下の物があります
野菜
玉ねぎ、菜の花、にら、にんじん、トマト、ホウレンソウ、セロリ、セリ、サトイモ、アスパラガス、くわい、かぶ、パセリ、にら、にんニク、らっきょう、しそ、ネギ、しょうが、みょうが…など
キノコ類
椎茸、マッシュルーム、舞茸、なめこ、エリンギ、ヒラタケ、キクラゲ…など
果物
レモン、グレープフルーツ、いちご、甘夏、マスクメロン、プリンスメロン、スイカ、ゆず、キウイ、パパイヤ、すだち、バナナ、りんご、ブドウ、オレンジ、柿、パイナップル…など
魚介類
イワシ、さば、マグロ、ぶり、カツオ、サンマ、カニ、海藻…など
豆類
黒豆、納豆…など
飲み物
緑茶、ウーロン茶、麦茶…など
調味料
お酢(クエン酸・酢酸)…など
なるべく多くの食材を摂取することが効果的です。サラダやみそ汁、焼き魚などの「定食」を
意識して食べることで少しでも血液の巡りを改善してみてください。
まとめ
テレビやパソコン、自動車、飛行機、新幹線など暮らしを便利で豊かにする物がどんどん開発される一方で、私達現代人は、気がつかないうちに「座りっぱなしの生活」になってしまっています。余分な体力やエネルギーを使用しない分、子供からお年寄りまで幅広い年齢層の方が楽になったかもしれませんが、その生活の延長線上には、怖い病気が潜んでいるのも事実です。
医療が進化し、人々の寿命は飛躍的に伸びてはいますが、日頃から自分自身が気をつけて健康管理をすることが大前提です。
座りっぱなしが原因による病気で死亡リスクを高めてしまう前に、座る時間を意識してコントロールし、適度に運動量を増やし、バランスの良い食事を心掛けましょう。
関連記事として、
・足指を広げると得られる効果とは?ストレッチを行い健康に!!
これらの記事も読んでおきましょう。