血管性肉芽腫って病名、聞いたことありますか?私は名前を聞いた事があまりなかったです。ですが、この病気は子どもや若年層、妊婦に多い皮膚炎のようなものです。
一体どんなものなのか?よくない病気なのか?この記事でご説明します!
この記事の目次
肉芽腫ってなに?どんなものなの?
肉芽腫、という名前自体あまりなじみがありませんよね。一体どんなものなのでしょうか?ここでは、病気の前にまず「肉芽腫」とはなにかについてご説明します!
肉芽腫とは炎症反応(体内に侵入した細菌等を排除するための防衛反応)に基づいて生じる皮膚の腫瘍の1つであると言われています。
細かく説明をすると、人体内に存在しない細菌やウィルスへの反応や、感染症等の様々な原因によって、慢性的な炎症によって発生する炎症細胞や繊維芽細胞が集まってしまいます。
この炎症細胞や繊維芽細胞が集まって固まり、毛細血管が多い繊維から構成される腫瘍のことを肉芽腫といいます。
何が原因で肉芽種は起きるの?
この肉芽腫には様々な分類があり、大まかには異物性肉芽腫と免疫性肉芽腫という分類がされています。他にも分類はあるのですが、今回は割愛しますね。
異物性肉芽腫は、砂や石、木片、或いは外科手術に使用した体に埋め込んだもの等が、体内に長時間分解される事がなく存在してしまった異物が原因の肉芽腫です。今回の血管拡張性肉芽腫はこれに分類されます。
では、この「肉芽腫」というキーワードを使った「血管拡張性肉芽腫」は一体どのような病気なのでしょうか?
血管拡張性肉芽腫とはいったいなんなの?
さて、血管拡張性肉芽腫とは一体なんでしょうか。名前だけで見たら、「悪性のガンのようなものではないのか」と思う方もいるかもしれません。
ですが、そうではありません。ですので、もしこの病気と診断されてこのページを見てる方は、適切な治療を施せばちゃんと治る物ですのでご安心ください!
血管拡張性肉芽腫とは、簡単に言ってしまえば「良性の皮膚の腫瘍」のことを意味します。「良性ってなに?病気なんて全部よくないものなのではないのか?」と思うかもしれません。
良性の腫瘍とは、その場所のみにとどまる腫瘍のことを言います。逆に悪性であれば、周囲を壊しながら拡散したり、離れた部分に飛び移る転移をする腫瘍の事を言います。分かりやすい例では、ニキビのようなものが良性の腫瘍であり、ガンの転移性をもつものが悪性腫瘍であると考えてよいでしょう。
さて、症細胞や繊維芽細胞が集まって固まり、毛細血管が多い繊維から構成される腫瘍のことを肉芽腫というと先述しました。血管拡張性肉芽腫による腫瘍は、この典型的例であるといえます。
血管拡張性肉芽種とはどんなものなの?
ちょっと想像してみてください。ちょっと擦り剥いたり、紙で切ってしまったような軽い傷跡の、血豆のような小さな「しこり」が出来たことはありませんか?
血豆のようなさわやかな赤色でなくても、暗赤色でも構いません。傷の周りの皮膚や粘膜に近い血管から毛細血管の細胞が集まり増殖してしまい、皮膚や粘膜の表面より隆起して、目視で確認できるような良性の腫瘍の事を「血管拡張性肉芽腫」といいます。
この腫瘍は鮮紅色から暗赤色の柔らかい腫瘍であり、大きさとしては、数週間で約直径2-20mm程度の半球状に成長するものが多く見受けられます。
腫瘍に指で触ると少し痛みを感じ、少しの刺激で簡単に破れてしまい出血してしまうため、あまり触らないようにしましょう。これはつぶしてしまうと再発してしまったり、潰瘍を形成してしまう事もあります。悪化させないためにも、完治の為には病院へ通院し治療する事が不可欠となります。
この病気は大人も発症しますが、比較的若い人や小児、また妊婦に発症が多く見受けられる事が多いようです。また、普通は指などにできる事が多いですが、妊婦の場合は口の中や歯肉に出来る事もあるようですので、口内炎と間違わないようにしたいですね。自分の皮膚にそのような腫瘍がないかをチェックしてしましょう!
血管拡張性肉芽腫、どんな症状があるの?
初期段階では、ちょっとした小さな傷や吹き出物の痕からはじまります。このような傷、或いは傷跡から鮮紅色から暗赤色のしこり(以下、赤いしこりと表記)が発生します。主な発生場所は子どもと大人で分かれます。
年齢によって腫瘍が出来やすい場所があるって本当?
子どもの場合には顔に出来やすく、大人では四肢や体幹に発生する事が多いです。また、大人の中でも妊娠中の人に関しては、先述したように口腔内や鼻中隔に生じることが多いようです。
身体中に発生する可能性はほぼなく、高齢者が発症することはほぼありません。この際、痛みや痒みを感じる事は少なく、普通は痒みも痛みも感じない人が多いようです。
腫瘍が大きくなってきたらどうなるの?
赤いしこりが発生して約2-3週間で急速に腫瘍が隆起し始め、大きくなります。ですが、これは数週間で大きくなるのは止まります。
この大きくなった腫瘍は膜が薄い事から、例えば包丁を使ったり、重いものを持ったりすること等、日常的動作でも痛みを生じる事があります。
先述にもありますが、この腫瘍は膜が薄く柔らかいため、ちょっとした刺激でも膜は破れてしまい、出血します。この際、腫瘍の大きさの割に出血量が多い事が多く、出血した際に驚いて病院へ来る人も少なくないようです。
もし腫瘍を潰してしまったらどうなるの?
この腫瘍自体は潰れますが、その後傷跡が膿んだような状態になってしまい、ジュクジュクとしたような傷になり、かさぶたが出来たりします。このかさぶたがはがれた際には、また同じような腫瘍が隆起してきて、再発状態が起こります。
腫瘍が潰れるまでは、外見的症状しかないため「変なところにできた赤ニキビかな?」と思い、潰してしまう事が多いようです。これは赤ニキビにも言える事ですが、潰しても治る事なく、寧ろ悪化してしまうことの方が圧倒的に多いです。是非とも間違えて潰さないように、或いは潰れない間に病院へ行き、正しい処置をすぐに受けましょう。
血管拡張性肉芽腫、原因は一体なんなの?
さてこの血管拡張性肉芽腫、原因は一体なんなのでしょうか。
3つに分けて、ご説明します。
大まかな原因
現在のところ、実際の原因はよくわかっていないというのが現状です。
しかし、怪我による切り傷や擦り傷外傷、虫刺され等による湿疹、ニキビによる細菌感染等によって、毛細血管が異常に増殖してしまいます。
この異常増殖によって症状の初期状態である「しこり」が形成されてしまいます。血管が拡張する事が原因となってこの病気の症状が生じる事があります。
この病気は子ども、女性に比較的多く罹患します。
ではこの対象者は全て同じような原因によって、血管拡張性肉芽腫を発症しているのでしょうか?実は女性と子どもの発症原因は異なると考えられています。
女性の場合に考えられる原因とは?
女性の場合は、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)にあると言われています。妊娠中の女性が血管拡張性肉芽腫を発症しやすい理由としては、このエストロゲンが関係していると言われています。
産婦人科では、血管拡張性肉芽腫と言われると、先述にもありますが「悪性の病気なのでは?」と妊娠中の女性を不安がらせてしまいます。
ですので、あえて血管拡張性肉芽腫という正式名称を使っていません。妊娠中におきるものであることから、「妊娠腫瘍」という名前で呼ぶ事も多いようです。
何故妊娠中はエストロゲンが増えてしまうの?
エストロゲンは生殖機能に作用する働きでよく知られていますが、女性にとっては非常に多くの大切な役割を担っているホルモンであるといわれています。主な役割としては、次のようなものが挙げられます。
- 脳の働きを活発にし、自律神経を安定させる
- 子宮内膜を厚くする。
- コレステロールや中性脂肪を抑える
- 乳房(乳腺)の発達を促進し、女性らしい体型を維持する
- 骨を丈夫に保つ
- 頭髪を豊かにする
- 血管を広げて血液の流れを良くする
このような作用がありますが、今回では最後の「血管を広げて血液の流れを良くする」という点に着目します。妊娠中には胎児に対して栄養を与えたりする等、様々な事のために血液量を多くしなければいけません。
そのため、エストロゲンが機能し、妊娠中は血液量が通常の約1.4倍にもなります。計量カップでの増加量でいえば、1200cc以上の増加といったところでしょうか。
血液量が増えると、流石に女性の身体のホルモンバランスは崩れてしまいます。このようなホルモンバランスの乱れにより、血管の拡張作用は増大し、毛細血管を含む細胞が局所的に増加します。
はっきりとした原因はまだ医学的に証明されていませんが、医学界ではこの毛細血管が局所的に増殖するために血管拡張性肉芽腫が生じるのではないかという論が主流となっているようです。
妊娠中の血管拡張性肉芽種の治療はどうしたらいいの?
基本的に妊娠中の患者に対して、医者は積極的な治療を行わない事が多いです。このホルモンバランスの乱れは妊娠により、エストロゲンが非常に多くなっていることにより起こるものです。
また、妊娠中の肌は非常にデリケートであることから、下手に切除手術等を行う事によって、感染症にかかったり悪化する事を避けるための処置ともいえます。
妊娠中に治療を受けられない事自体に不安を覚える人も少なくないですが、妊娠してからの血管拡張性肉芽腫は妊娠中のエストロゲンが増加している事が主な原因です。
これはつまり、妊娠期間が終わったら自然に治癒されるという事になります。医者が様子見というのは、妊娠期間が終われば自然に治る事が多い為、様子見をしつつ自然治癒をした方がよいという事です。
数か月待てば自然に治癒するものを、リスクを負って治療するのは医者的にも芳しくないということですね。殆どの場合が出産後には解消されると言われているので、比較的安心です。
子どもの場合はどうして起こりやすいの?
子どもの発症原因としては、まだ成長が未発達である部分が多いという点にあります。体温調整や血液量の調整を行う静動脈の部位が未発達な事が多いです。
そのため、静動脈の部位がまだ未発達である事により、一部に毛細血管が集中して増殖することによって、血管拡張性肉芽腫が出来るのではないかと考えられています。
また、子供であれば外で遊んだりする際に切り傷を知らぬ間に作ってしまう事が多いですよね。その際の傷が原因で血管拡張性肉芽腫を発症する事があるようです。
血管拡張性肉芽腫、一体どんな風に治療するの?
さて、女性や子どもが罹患しやすい原因はお分かりいただけたのかな、と思います。実際この病気、どのように治療するのがよいのでしょうか?
まず前提として、先述した「しこりをひっかいたりするとかさぶたが出来てしまう」という事は覚えているでしょうか。
自分で治そうとするのは絶対ダメ!
部位をつぶしたりして、自分で軟膏を塗りばんそうこうを張ったとしても、症状が悪化してしまったり、新しく出来るしこりの大きさが潰す前より大きくなってしまい、再発を繰り返してしまう事が多いです。
また、先述で妊娠している最中であれば自然治癒をする事もあると書きましたが、これは飽く迄「妊娠中」の方にほぼ限ります。
血管拡張性肉芽種の治療において大切な事は?
血管拡張性肉芽腫は、ちょっとした刺激で腫瘍の皮が破れてしまい出血してしまうので、放置したり自分で適当に治そうとする事によって自然治癒をする事はほぼないと言われています。
ですので、大切な事は「病院に行き、適切な診断を受け、処置を受ける」という事になります。病院の科は、皮膚科がよいでしょう。もし血管拡張性肉芽腫でなかったとしても適切な処置を行ってくれる事が推定されます。
では実際病院ではどのような処置を行うのでしょうか?いくつか例を3つ挙げてみます。
ステロイド軟膏による治療
通常であれば、腫瘍を切除する事で治療をする事が多いです。しかし、腫瘍がごく小さいものだと、ステロイド軟膏を塗布し続けることにより収縮する事もあるようです。
とはいえ、下記の療法に比べて治療効果が薄いため、最初から液体窒素を使用したり、外科的手術やレーザー治療を行った方が正確であるといえます。
液体窒素を使った凍結療法
液体窒素を使えるのは、しこりの大きさが小さく、明らかに診断が血管拡張性肉芽腫であると確実性がある際に用いられる治療方法です。
液体窒素を使用することにより、しこり自体を凍結させて壊死させ、新たな皮膚が下から再生されることにより患部をカサブタ状にして治す治療法です。これは数回に分けて行う治療であり、これは局所麻酔を使用しません。
なので治療により痛みを感じる事もありますが、正確に確実な治療であると言われています。ただ、妊娠中の血管拡張性肉芽腫については、この液体窒素を使用した治療はあまり効果がないといわれています。
これは妊娠中で肌が敏感になっていることから、刺激に耐え切れずに悪化する傾向が多いようです。
外科的手術による療法
外科的手術は主に電気メスでの切除の事をいいます。電気メスでの切除は麻酔も行う事から、痛みを感じる事はありません。
肉芽腫自体が小さい場合には電気メスで焼き切り、大きな腫瘍に関しては切除をして取る事が多いです。
この時にしっかり取っていかないと再発の恐れがあるといわれています。手術は約10-15分位の時間を要します。局所麻酔が切れると患部に痛みを感じる為、痛み止めは処方してもらったほうがよいでしょう。
レーザー治療
この治療方法はCO2を使った炭酸ガスレーザー照射によって、腫瘍の根から焼き切り除去するという方法です。
「妊娠中でも、痛いし出血するからどうしても治したい!」と考えるに対して最もお勧めの治療法はこれであると考えられます。
局所麻酔を使用する事から、「胎児に対しての影響はどうなのか?」と考える方もいると思います。妊娠中の局所麻酔について使用される主なものには催奇形性はないですが、胎盤通過性はあります。
しかし、使用量ははるかに少なく、更にそれを薄めて使用するため安全であると言われています。このレーザー治療は他の治療方法と比べても、治療後の管理が容易であることから、妊娠中の方のみでなく全体的にお勧めできます。
まとめ
さて、ここまで血管拡張性肉芽腫についての説明を色々としましたので、簡単にまとめてみましょう。
血管拡張性肉芽腫とは、である赤いしこりからはじまり、それが腫瘍と分かる位に隆起している状態の病名です。
症状としては、腫瘍が大きくなった際に、日常生活での動作で痛みを感じる事があげられます。
この腫瘍が発生する原因としては、毛細血管が異常に増殖する事ですね。治療方法は主に4つあり、体調や重症度によって推奨されるものは変わってきます。ステロイド軟膏を塗布する治療法、凍結療法、外科的手術療法、最後にレーザー治療法があります。一番推奨されているものがレーザー治療です。
もしこの病気にかかった際は慌てずに、そして間違っても腫瘍を潰さないようにしましょう。そして病院へ行き、正しく治療を受けましょう!
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