高安病ってどんな病気?症状・原因・治療法を知ろう!予防方法はある?

今回の記事では高安病、いわゆる「脈無し病」について紹介していきます。日本人女性に多い病気で、特に若い方を中心に症例が多い病気です。

未だ解明されていない部分も多い未知の病であり、若い女性の方には注意して読んでいただきたいと思います。

高安病について

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高安病は血管に炎症が起き、それが原因でさまざまな疾患が生じる病気です。日本だけで約5,000人程度の患者さんを抱えていると言われています。

だいたい10万人のうち4人くらいの割合で高安病の患者さんがいらっしゃるようです。毎年およそ200人程度の方が新たに高安病を発症しているそうです。

高安病とは何か

高安病はかつては大動脈炎症候群という名称で呼ばれ、あるいは、脈無し病という俗称によって呼ばれることのある疾患です。高安動脈炎という言い方もあります。大動脈以外の全身で症状が生じる症例が報告されてから、高安動脈炎または高安病というのが一般的な呼称です。

高安病は大動脈もしくは大動脈から枝分かれして伸びている大きな血管に炎症が生じることによって、血管が狭く縮こまってしまったり、炎症が原因で血管が詰まったりしてしまったりする病気です。

大動脈では体循環といって体全体に血液を巡らせ、酸素を体の各部位に供給しています。そのため、この血管における血液の循環および酸素の運搬が停滞した場合、脳、心臓、腎臓といった重要な臓器にダメージを負ってしまったり、手足が疲れやすくなったりするという現象がおきます。

いつ・誰が発見したのか

高安病は、1908年に眼科医の高安右人(みきと)さんが発見・報告したので高安病という名前になりました。サンドウィッチを考案したサンドウィッチ伯爵などど同じようなネーミングのスタイルですね。星や珍しい生物の名前になるならともかくとして、自分の名前が病名になってしまうというのはどのような心境なのでしょうか。

高安医師は日本眼科学会でこの高安病を発表したため、眼科のお医者さんというイメージが強いですが、金沢医科大学の設立に関わった方で、同校の初代学長でもあります。実は、日本眼科学会で高安病を発表した際には病名は確立していなかったそうで、それが後に高安病と呼ばれるようになったという話です。

高安病の患者さんはどのような人が多いのか

高安病の患者さんのほとんどは女性です。患者さんの男女比はだいたい9対1で極端に女性の患者さんが多いことが見てとれます。近年では男性の発症者も増加の傾向にあるという調査結果もありますが、依然として女性の方が発症率の高い病気には違いありません。

さらに、高安病を発症する女性は年代別に見ると、15~35歳までの若い女性に集中して、高い高安病の発症件数が見られます。つまり、高安病は若い女性に特に多い疾患であるということが言えるかと思われます。症例は少ないですが、10歳未満で発症した患者さんの例も報告されています。

高安病の特徴

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高安病は大動脈の血管に起こる原因不明の炎症およびそれに起因するさまざまな疾患を総合したものであり、若い女性に多い病気であることが分かりました。

続いては、高安病の特徴について見ていきましょう。

高安病の分類

高安病は基本的に、大動脈の血管が狭窄もしくは閉塞することによって血液および酸素やその他の養分が身体の組織に供給されなくなる現象によって特徴づけられます。実際に生じる高安病の症状としては、症状が軽微または末端が中心のものと、症状が重篤なものに分けることができるでしょう。

たとえば、手や足へ向かう血管、つまり四肢の動脈が詰まったり、血液の流れが悪くなったりすると、末端まで血液が循環しなくなって手足のしびれや指先が冷える感じがします。逆に、心臓から直接繋がる重要な血管の一部が塞がってしまった場合、全身の血圧が急激に下がったり、場合によっては命に関わる重篤な症状が生じたりします。

比較的軽微な症状

高安病で怖いのは、全身を巡る血液の循環がどこかでストップすることです。ただし、同じ高安病の患者さんでも、症状には個人差があります。比較的ゆっくりと血管の炎症が進行し、血流の量が少しずつ制限されるていくような症例の場合、急激に血液の流れがストップしてしまうような劇的な症状は起きないことが多いです。

そのような症例の場合、たとえば大動脈から末梢へと枝分かれしたある血管がゆっくり、時間をかけて閉まっていくとしましょう。そのときは、血管内の血流の制限も少しずつ進行するため、初期症状もほとんどなく、徐々に疲れやすくなったり、手足にしびれが出たりなどの症状が出てきます。この場合は特に、ゆっくり進行が進む分、発覚が遅れることも多いです。

重篤な症状

高安病は動脈に炎症ができることに特徴づけられる、女性に多い病気です。しかし、なぜそうような炎症が動脈で発生するのかはまだ原因がわかっていません。そのため、気付けば、いつの間にか症状が進行しているということがあります。今までの高安病の症例では、胸からお腹にかけての大動脈のどこかで炎症が起きるケースが多いようです。

胸腹部の大動脈自身が炎症によって血管が収縮したり、塞がってしまった場合、その大動脈からさらに枝分かれした先の動脈、上半身や下半身それぞれに向かう血流が阻害されてしまうことが考えられます。その場合は、体の各部位にきちんと酸素や養分の供給がなされないようになってしまいます。そして、特に症状が重いものになると内臓や腕・脚などの機能が低下する、もしくは何らかの麻痺を生じる可能性があります。

高安病の原因

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高安病は大動脈やその枝分かれした動脈で生じる血管炎だということが分かりました。また、現在のところ明確な原因が分かっていない突発的な難病であることも示唆されています。

続いては、高安病がなぜ生じるのか、原因不明でも、いくつか提唱されている仮説があるのでそれを見ていきましょう。

高安病の主な原因

現在のところ、高安病が発生する明確な原因は明らかになっていません。高安病では、炎症が生じた血管の部位によって様々な症状がでます。重要な臓器やその他重要な体の器官に通じる血管で高安病を発症した場合、重篤な症状として現れてきます。その発生メカニズムまだよく分かっていないという現状です。

そのため、高安病は英語でTakayasu arteritis(artetitisはinflammation of an arteryすなわち動脈における炎症のことです)と呼ばれる難病として、海外でもその研究が進められています。

現在のところ、日本に最も多く患者さんがいるとされていますが、インドや中国などのアジア諸国でも患者さんが見つかるようになっており、その発症原因の解明が急がれています。まだアジア以外では症例が少ないため、アジア地域に特有な病気として扱われることもあります。

間接的原因

高安病について、やはり多くの方が気にされることは、それが先天的なものであるのか、それとも後天的なものであるのかという問題です。発症の根本的な原因はまだ不明ですが、最近の研究によって、高安病の、動脈における炎症が起きる際には感冒のような症状が初期の症状としてまず現れるケースが多く報告されています。

このため、何らかのウイルスなどによる人体への感染が高安病と関係しているのではないかという仮説も立てられています。

この場合ですと、多くの症例は後天的なものだと予想されます。しかし、一方では、炎症の制御に関わる遺伝子が欠損もしくは不活性化してしまうことによって高安病が生じるのだという説もあり、その場合は先天的にそのような因子を患者さんが持っておられるという可能性は考えられます。

メカニズム・鑑別

高安病の発症メカニズムについてもまだまだ不明な点が多く、今のところ、大動脈周辺の動脈で炎症が起き、それが動脈の狭窄や閉塞を引き起こすという、一連の流れがあるということくらいがはっきり言えることです。

一卵性双生児における高安病の発症に関しては約98%の相関が見られるというデータが存在しているため、その発生メカニズムに特定の遺伝子の発現もしくは不活性化が関連しているという見方もできます。

特に免疫制御に関わるHLAという遺伝子があります。HLAは遺伝的に多様性に富んでいるため、単純に自然免疫に関わるだけでなく、さまざまな身体の機能に関わっています。免疫に関わる遺伝子は生物にとって重要であるため、生物はHLAのタイプが異なる相手を生殖の相手に選ぶとされているため、恋愛遺伝子などと呼ばれることもあります。このHLAと高安病の患者の症状の大きさに相関が見られます。

高安病の治療

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高安病が何らかのウイルス反応を原因とする病気である、もしくは特定の免疫に関係する遺伝子、HLAが高安病と関係しているかもしれないということが示唆されました。

続いては、その高安病にはどのように治療法が考えられるのか見てみましょう。

治療の種類

高安病の治療には内科的なものと外科的なものと両方あります。だいたい高安病全体の症例のうち、20%程度が特定の血管の異常によるものだということが分かっています。その場合は、その血管自体をどうにかしないといけないため、手術が必要とされます。

残りの8割は内科的な治療法が有効だとされています。基本的な治療方針としては、炎症の抑制を目的とした投薬が行われます。炎症の反応の度合いを観察しながら、炎症が収まるまで少しずつ薬を使って症状を緩和させていく治療法が採られることが多いようです。

治療の前に

高安病の可能性が視野に入ってきた場合、まずは患者さんの体の状態を正確に把握する必要があります。なぜなら、高安病は依然として発症メカニズムや発病の原因がはっきりしない病気だからです。女性に多い症状であるため、女性ホルモンの分泌とも何らかの関わりがあるのではないかとも考えられるのです。

ホルモンバランスについては血液を検査すれば体内でどのように内分泌系が働いているのかを知ることができます。ただし、とにかく、高安病で急ぐべきは大動脈に血栓ができてしまっていないかどうかです。CTやMRAなどの検査によって血管の狭窄と拡張および閉塞について調べます。

また、ステロイド系のお薬も炎症を抑えるために使用するのですが、ステロイド系のお薬は体内のホルモンバランスを変動させることがあるため、使用しても大丈夫かどうかも併せてチェックすることになります。

具体的な治療

内科的な療法の場合、副腎皮質ステロイドがもっと多く使われるお薬のようです。炎症反応や実際に患者さんに現れている症状の大きさなどを見て、継続的に投薬されることが多いです。だいたい4週間が目安と考えられていて、4週間で症状の安定が見られれば、薬の減量が開始されることが多いです。

ただし、4週間経っても症状が安定しない、もしくはお薬を減量した途端、症状の再燃が起きてしまった場合、お薬の投薬を続けるか、免疫抑制剤との併用が検討されます。もし、血栓ができてしまっていた場合、抗血小板薬や抗凝固薬などが投薬されることがあります。外科的な手術によって異常な血管を取り除く場合、基本的には症状が安定してから行われることが多いです。

高安病の診断

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高安病の治療に関しては、血管の炎症を抑えることが大きなウェイトを占めることが分かりました。続いては、高安病をどのように診断・検査できるのか見ていきましょう。

高安病の見かけ

高安病が外見上の特徴でぱっと分かるということは稀です。ただし、血流が阻害されているわけですから、体の末梢、つまり手足にきちんと血液が行きわたらないことによるチアノーゼに似た症状や、全身にかけての不調・疲労感の蓄積などは目に見える症状として指摘することはできるでしょう。

基本的には高安病は早期発見が大切です。腎動脈や大動脈といった人間の身体にとって非常に重要な血管で症状が発生している場合、一刻も早く治療を開始しなければ心筋梗塞やうっ血性の心不全、動脈瘤破裂など重篤な症状が合併症として現れてくる可能性があります。

緊急の対症療法を施しつつ、病因を探していくことになりますが、場合によっては後遺症や生命の危機が予想されます。

症状の個人差

高安病は若い女性に多く見られる病気であるため、妊娠や出産といった女性の人生計画にとって重要な位置を占めるイベントの際に問題となります。もちろん、検査をしてみて、血管の炎症が安定しており、また、重篤な臓器の障害も見られないようであれば、基本的に可能です。

ただし、症例のなかには、出産をきっかけに高安病による血管の炎症が再発したケースも報告されています。そのため、医師や家族と十分相談する必要があるでしょう。

診断方法

MRIやCTによって血管の状態を調べることによって、血管に炎症が起きているかどうか知ることができます。近年ではこのような検査技術が進歩・普及したおかげで高安病の早期発見に繋がっています。

高安病はとにかく早期発見・早期治療が大切です。それによって治療後の予後が全く違います。早期発見ができれば、たとえ症状が見つかったとしても、長生きしたり、出産や育児といった患者さんのQOL(クオリティオブライフ)を高めるイベントも可能になります。

高安病の予防

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高安病はとにかく早期発見して早期治療を行うことが大切だということが分かりました。

続いては、そのような高安病における血管の炎症、もしくはそれによる合併症を未然に防ぐにはどうすればよいのか見ていきましょう。

予防は可能か?

高安病の発症メカニズムはまだ不明な点も多いです。そのため、本当に予防は可能かと言われるとまだまだはっきりとしたことを言うのは難しいでしょう。

しかし、定期的な血管と血液の検査を通して、自分の体を継続的にチェックしていることが症状の早期発見につながることは間違いないでしょう。

治療の継続で症状を抑制する

また、一度発症してしまってからは、再発しないかどうか、やはり継続的に見ておく必要があります。出産など大きなライフイベントに際しては、症状の再燃が十分予想されるため、患者さんとその周囲の方々は心身ともに万全の態勢で臨むことが重要でしょう。

一度症状が安定しても、高安病は薬の減量による症状の再発率が7割とも言われる根治の難しい病気です。そのため、早期からの適切な治療および、場合によっては、手術によって異常のある血管を除去するなどといった対策をしておく必要があるでしょう。

まとめ

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  • 高安病は高安先生が見つけた病気で、大動脈周辺の血管で炎症が起きる
  • 高安病による血管の狭窄・閉塞が臓器やその他身体の機能に異常をきたす
  • 高安病の根本的な原因は依然不明で、若い日本人女性に多い
  • 高安病の治療は内科的な投薬がメインで、症状が安定すれば手術もある
  • 高安病は見かけには現れにくく、女性のライフイベントに際しては問題として表面化することが多い
  • 高安病は早期発見・早期治療が大変重要である

高安病によって、特に血栓ができた場合などは、重篤な合併症へと繋がる可能性が高いため、日頃から血管や血液、体の調子に問題がないかどうか観察しておくことが大切だと思われます。

  
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