「眼球に傷」聞いただけでも驚いて心配になりますよね。コンタクトレンズや小さなごみなどで意外と眼球は傷がつきやすいのです。ドライアイも原因となることがあります。そんなときのために知っておきたいことをまとめました。
万が一の時も慌てずに処理ができるようにしておきましょう。眼球に傷がついたらどのようにすればよいのかも説明しますね。
眼球に傷がついたときは、自分だけで処理をせず必ず医師に相談することが大切です。
眼球に傷がつく原因
眼球に傷がつく原因、いろいろなものがあります。どのような原因があるのかご説明しますね。一緒にみていきましょう。
まず角膜と結膜について知っておこう
その前に角膜と結膜について説明をしておきます。
目の黒目の部分は「角膜」、白目の部分は「結膜」といいます。角膜は黒目のもっとも外側にある透明な膜で、カメラのレンズのフィルターのような役割をしています。また黒目を保護する役割もあります。角膜は痛みを感じやすい部分です。
一方、結膜は眼球とまぶたを結ぶ役割をしています。痛みにはさほど敏感ではなく、「目が痛い」という時は角膜が痛い可能性が高くなります。
①異物が入った
ゴミや埃、砂が入ることで眼球に傷がつくことがあります。小さなゴミ程度ならそれほど深刻な傷はつきにくいといえますが、ものによっては小さくても眼球にダメージを与えることがあります。
例えば何かの作業中に、金属片や木片などが目に入ってしまうことがあります。これらは小さくても眼球に深い傷がつけたり、感染したりする可能性があります。
急いで病院に行きましょう。植木の剪定や、木工細工などの時は特に注意が必要です。
また化学物質の混入もあります。掃除中にカビ取り剤が目に入った、洗剤が目に入ったなどでも眼球に傷がつくことがあります。調理中に油がはねて目に入ることも傷がつく原因となります。
②目の打撲
スポーツの練習や試合などで多くみられます。球技中にボールが目にぶつかった、またはボクシングなどの格闘技で目にこぶしが強く当たったなどが原因で眼球に傷がつく場合があります。
特に試合では、力が入っていることが多く傷がつきやすくなります。
目を強く打つと、角膜と虹彩という部分を損傷して出血することがあります。また角膜が破れたり、ガラス体が出たりしてしまうこともあります。目を強く打った時はとにかく急いで病院に行きましょう。
③コンタクトレンズ
コンタクトレンズは直接眼球に触れるものなので、眼球へのトラブルも多くなります。まず傷つきやすいのが装・脱着のときです。急いで装着しようとしたり、目が乾燥しているのに無理にはがそうとしたらりしたときなどに傷がつきやすくなります。
また眼球とコンタクトレンズの間に、ごみなどが入ってしまうとそれだけでも傷がついてしまいます。
消毒が不完全であったり、装着する際の指が不潔であったりすることは感染症の原因となり、ここから眼球に傷がつくことがあります。
使い捨てコンタクトレンズの場合、指定された日数を守らないことも原因となる可能性が高くなります。
④ドライアイ
よく耳にする「ドライアイ」。意外な感じですが、ドライアイも眼球を傷つける原因となることがあります。普段は眼球を保護してくれている涙が減ってしまうことで、目が乾燥し栄養がいきわたらなくなります。
そして乾燥が進むと、目の表面に傷がつきやすくなってしまいます。痛みや視力低下を伴うことがあります。
ドライアイはコンタクトレンズの着用をはじめ、高齢化によるもの、スマートフォンやパソコンでの目の酷使、エアコンにいつも当たっていることが原因となります。また自己免疫疾患など身体の病気でドライアイの症状がでることもあります。
⑤花粉症・アレルギー
つらい花粉症やハウスダストなどのアレルギーによって、目が痒くなりこすってしまうこと、ありますよね。
アレルゲンが目に入ることで、免疫細胞が活発化しヒスタミンが大量に放出されます。このヒスタミンが目のかゆみや充血を引き起こします。
瞬きをするたびにアレルゲンとなる異物が角膜を刺激して、傷をつけることがあります。また目をかきむしることでますます悪化してしまいます。
⑥逆さまつげ
逆さまつげとは、まつ毛の生える方向が内側に向かってしまう場合と、まぶたそのものが内側に向いていることで生じる症状です。
内側に向いたまつ毛が、いつも眼球に触れてしまうので傷がついてしまいます。
⑦流行性角結膜炎(はやり目)
はやり目はウイルス性の流行性結膜炎の1つで、感染力が強いのが特徴です。アデノウィルスやエンテロウイルス、ヘルペスウイルスなどのウイルスに感染することによって引き起こされます。
症状は目が充血したり、目やにがでたりというものが多いのですが、炎症が強いと、黒目(角膜)の部分に傷がついてしまうことがあります。傷跡が残ると「角膜混濁」になる可能性もあります。
⑧市販の目薬
意外なことに市販の目薬が眼球に傷をつける原因となる場合があります。目薬に配合されている防腐剤が、角膜に傷をつける可能性があるのです。
防腐剤の成分「塩化ベンザルコニウム」がコンタクトレンズに吸着してしまい、角膜の上皮に傷をつける「角膜上皮障害」を引き起こす可能性が高くなります。
また、糖尿病患者の方や高齢の方も、免疫力が落ちているため防腐剤で角膜上皮障害を起こしやすくなります。
眼球に傷がついた時に現れる症状・病気
眼球に傷がついたときはどのような症状が現れるのでしょうか。考えられる症状をご紹介します。
これらの症状があるときは必ず眼科医に診てもらいましょう。
目の症状
眼球に傷がついたとき、目に現れる症状をみてみましょう。どれもすべてが一度に現れるわけではなく、1つだけのこともあります。
痛み
まずは痛みが挙げられます。角膜は痛みに大変敏感なので、傷がつくととても強い痛みを感じます。目も開けられない、という状態になることもあります。
傷がついていなくても、眼圧が上がっている急性緑内障は突然の目の痛みが生じます。同時に頭痛を感じたり、視力の低下が見られたら我慢せずに急いで病院にいきましょう。急性緑内障発作は一晩で失明してしまう危険性があります。
涙が止まらない
角膜に傷がつくと、痛みと同時に涙が止まらなくなることがあります。涙が止まらず目も開けづらい、ということがなかなかおさまらない時は早めの受診をおすすめします。
目やにがでる
目やにも多くみられる症状です。痛みがあり、涙が出る、目やにが出るときは目になんらかの異常が起きています。傷だけではなく、細菌性やウィルス性の結膜炎にかかると目やにが多くでます。
目がごろごろする
異物感があり、いわゆる「目がごろごろする」という状態です。結膜炎やものもらい、角膜上皮びらんで目がごろごろすることが多くなります。
おさまらない時は、こすったり触ったりしないようにして眼科にいきましょう。
まぶたが腫れる・ぴくぴくする
角膜に傷ができたとき、まぶたが腫れぴくぴくとけいれんすることがあります。角膜が細菌感染、ウィルス感染するなど「角膜感染症」になったときもこの症状が起きることがあります。
ドライアイの人は、角膜に傷がつきやすい上感染もしやすくなります。またステロイド剤の点眼薬を長期にわたって使用したときも、角膜感染症になる危険性があります。
充血する
角膜びらんや角膜潰瘍など、角膜の傷による病気によって白目の充血が生じます。
細菌性結膜炎やウイルス性結膜炎、また花粉症やハウスダストなどアレルギーでも充血が生じます。
傷がつくことによって起こりうる病気
眼球に傷がつくことで、起こりうる病気もあります。どのような病気があるのかご紹介します。おかしいと思ったら早めに病院にいきましょう。
細菌性結膜炎
眼球に傷が出来たときは、細菌感染による細菌性結膜炎にかかってしまうことがあります。目やにがでたり、涙が出る、充血するなどの症状を伴います。
感染性角膜炎
目に砂が入ったり、ゴミが入ったことで角膜に傷がついたときに、細菌感染してしまうことがあります。
またコンタクトレンズによっても感染する場合があります。
黒目が白くなったりまぶたが腫れるなどの症状を伴います。角膜潰瘍になったり酷いときは失明につながることもあるのでしっかり治療をすることが大切です。
真菌性角膜炎
真菌(カビ)によって角膜炎を起こすことがあります。コンタクトレンズを連続して使ったときや、植物で角膜に傷を付けたときに発症することがあります。
またステロイド剤点眼薬を長期にわたって使用したことで、起こることがあります。
点状表層角膜炎
角膜の表面に、小さな点状の傷がたくさんつく病気です。逆さまつ毛、ドライアイ、コンタクトレンズが原因でなりやすい病気です。自覚症状があまりない場合もあります。
悪化すると角膜上皮びらん、角膜潰瘍という病気になってしまう可能性もあります。
視力低下を招くこともあるので、自覚症状が乏しくても早めに病院で処置をしてもらいましょう。
角膜上皮びらん(角膜上皮剥離)
角膜上皮びらんは「角膜の一部またはすべてがはがれてしまった状態」をさします。次に説明する角膜潰瘍に比べると軽症ですが悪化させないためにしっかり治す必要があります。目やにはそれほど出ませんが、痛みや充血という症状が起きます。
また「再発性角膜びらん」といって、治療をしても再発する角膜びらんもあります。
角膜潰瘍
角膜に傷がつき感染症を起こしたことから、角膜の障害が上皮だけでなく、その下にある「角膜実質」まで及んでしまうことで「角膜潰瘍」になってしまいます。
痛みも強く、涙も出て異物感も取れません。黒目に白い点が見られることもあります。
視力の低下や角膜穿孔などの合併症を招くこともあり、速やかな治療が必要です。角膜移植が必要になる場合もあります。
眼球に傷がついた時の対応法・予防法
傷が上皮だけなら自然治癒をする可能性があります。しかし症状が収まらないときや、異物感が取れないときは自己判断せずに必ず病院にいくようにしましょう。
対応法
病院へ行くまでにできることをやっておきましょう。どうしたらいいかわからない時は、まず病院に連絡をして対応法を聞いてみましょう。
冷やす
少し痛いという程度でしたら、まぶたの上から冷やすなどして様子をみます。しかしあまりにも痛みがひどいときや出血をしている時は、急いで病院に行きましょう。
木片が入った、カッターなど先のとがったもので傷をつけたというのが明らかな場合は冷やすより、急いで病院に行きましょう。
水で洗い流す
小さなごみが目に入った、虫が入った、などでごく小さな傷がついた場合は、まずきれいな流水でよく洗いましょう。ゴミが取れても、目の異物感が残っている。痛みがあるというときは受診します。
化学薬品や油が飛んだなどの場合も急いできれいな流水で洗い流し、急いで病院に行きましょう。
目をこすらない
ごろごろする、痛いなど気になってもこすらないようにしましょう。傷が悪化してしまう恐れがあります。いつまでも異物感があるときは受診します。
またアレルギーなどでかゆみがある場合は、アレルギーを抑える薬を内服したり点眼薬を処方してもらい点眼するなど、あらかじめ対策をすることも大切です。
コンタクトレンズは休む
普段からコンタクトレンズをしている方で、眼球に傷がついてしまったら治るまではめがねを使用するようにしましょう。
傷が治りきらないうちにコンタクトレンズを装着することは、傷の治癒を遅らせるだけではなくあらたな感染を起こす恐れがあります。
また治療中の場合は、コンタクトの装着については眼科医の指示に従いましょう。
眼科を受診する
眼球に傷ができて「痛みがひどい」「出血している」という時は近くの眼科医に連絡して受診をしましょう。
また目に入ったものが木片や金属片、カビ取り剤や有機溶剤など化学物質だった場合も急いで受診します。あらかじめ連絡して何が目に入ったかという情報を伝えておくとよいでしょう。
治まったように思えても、傷がついている場合は必ず受診してくださいね
予防は?
傷がつかないようにドライアイの方やコンタクトレンズ使用の方は、日頃から予防することも大切です。
ドライアイには角膜保護成分の入った目薬を
ドライアイの時は、角膜保護成分入りの点眼薬を差して様子をみます。角膜保護成分が角膜を保護、修復してくれます。この時は防腐剤の入っていない目薬を選ぶとよいですね。
ただし目薬を使ってもドライアイがなかなか改善されない場合は、早めに眼科を受診しましょう。
また、スマートフォンやパソコンの画面を見つめ続けているとドライアイがますます悪化する可能性があります。こまめに休憩して目を休ませることを心がけましょう。
自己免疫疾患など全身の病気が原因で、ドライアイになっている場合もあります。口の中も乾くなど他の症状がある場合は専門医に相談しましょう。
コンタクトレンズを使う時は防腐剤なしの目薬を
目薬の保存性を高めるためには防腐剤「塩化ベンザルコニウム」はなくてはならないものです。しかしコンタクトレンズをつけている時には、角膜上皮障害を起こさないために防腐剤の入っていない目薬を選ぶようにしましょう。
防腐剤の入っていない目薬は保存がきかないので、使用期限についてはしっかり守ることが大切です。
コンタクトレンズは適切に使用する
コンタクトレンズを適切に使用することが大切です。コンタクトレンズを装着するときも、はずすときもきちんと石鹸で手を洗うようにしましょう。コンタクトレンズの消毒も必ず行います。
また、使い捨てレンズを指定の日数より多くつけるなどは絶対にやめましょう。
コンタクトレンズを装着したまま寝てしまうことも眼球に傷をつけてしまう原因となります。
コンタクトレンズは眼球に直接触れるものなので定期的に眼科を受診して、目の状態をチェックしてもらうことも大切です。また、使用していて異物感や痛みがあるときは使用を中止して、受診するようにしましょう。
病院ではどんな治療をするの?
眼球に傷がついたときは、自己判断せずに病院に行くようにしましょう。
眼球に傷がついたときの治療法は原因や症状によってさまざまです。医師の指示を良く守ることが大切です。
異物を取り出す
眼球に異物が入って自分で取り出すことができず、目に傷がついた場合は眼科医に取り除いてもらいます。
結膜の表面についている場合は生理食塩水で洗い流します。異物がまぶたの裏に入り込んでしまうこともあるので、その際は裏返して取り除きます。
金属片が目に入り、それが鉄だった場合は角膜に鉄さびの環ができてしまう恐れがあります。これは黒目の濁りの原因となり視力低下も招いてしまうので必ず専門家に診てもらう必要があります。
自覚症状がなくても異物が入ったままになっていて、眼球に傷がつく場合もあります。何かが目に入ったときは、念のため診てもらうと安心です。
縫合・手術
刺し傷や深い切り傷の場合は、縫合をします。その後治療用のコンタクトレンズを装着して角膜が再生するのを待ちますが、角膜が濁る場合は角膜移植をする場合があります。
目を強く打ったり、突き刺してしまったなど重症の場合は、異物が入っていれば取り除き、手術をして損傷を負った虹彩や毛様体を修復します。
抗生物質・抗真菌薬
感染症や角膜びらんには抗生物質入りの点眼剤を処方します。軟膏を塗って眼帯をする場合もあります。
真菌による感染を起こしている場合は抗真菌薬入りの点眼薬を処方されます。
また飲み薬が処方される場合もあります。
逆さまつ毛は
まぶたが内側に向いている場合は、まぶたを外側に少し向ける手術をします。
また、まつ毛が内側に向いている場合は、内側に向いてしまっているまつ毛を抜く処置をします。ただまつ毛は再び生えてくるのでそのたびに抜く必要がでてきます。頻繁な場合はレーザーで毛根細胞を焼く方法があります。
医師とよく相談することが大切です。
まとめ
眼球は、体の大切な器官のひとつです。しかしその大切な眼球に傷がついてしまうことは、誰にでも起こりうることです。
傷がつかないようにコンタクトレンズの使い方に注意をしたり、ドライアイの治療をしたり日頃から気を付けることがまず大切です。
また目に異物が入るなど急なトラブルにも対応できるように、普段からかかりつけの眼科医を見つけておくなどの対策もしておくと安心ですね。
眼球に傷がついた、と思ったらたとえ自覚症状があまりなくても自己判断せず受診して、必ずみてもらうようにしましょう。
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