角膜は外から入ってきた光を屈折させ、網膜に像を映し出す、いわばレンズの役割をしています。この部分に潰瘍ができてしまう病気を「角膜潰瘍」といいます。
角膜潰瘍は様々な原因がありますが、治療をせず放置してしまうと視力の低下は元より、失明の危険性まであります。気づいた時点での早期治療が完治のためのポイントになるでしょう。
では、角膜潰瘍とはどんな病気なのか。その症状や原因、そして治療方についてみていくことにしましょう。
この記事の目次
角膜潰瘍とはどんな病気?
角膜潰瘍は冒頭でも述べたように角膜に潰瘍ができてしまう病気です。潰瘍とは外側の層が剥がれ落ち、その下の層まで到達してしまっている状態です。
角膜は上皮・内皮の層に分かれています。角膜潰瘍ではこの上皮がなんらかの原因で欠損し、内皮まで到達してしまっています。この段階では視覚異常を感じます。
角膜潰瘍の症状とは?
角膜潰瘍の症状は主に以下のことがあげられます。
視力の低下
角膜がレンズの役割を果たせなくなるため、重度の視力低下が起こります。年齢や老眼に限らず、視力低下が著しい場合は注意が必要でしょう。
多量の涙が出る
角膜潰瘍の原因の1つの細菌感染があります。この細菌を排出しようとして、大量の涙がでます。睡眠中にも出ることがあり、大量の目やにを作り出します。
目の違和感
眼球を動かしたときに、目の違和感やごろつき、ひっかかりを感じます。角膜が剥げ落ちてしまっているからですね。この症状が常態化します。
目の痛み
目の痛みを感じます。時として激痛が走ることもあり、そのような場合ではかなり病気が進行している可能性があるでしょう。
白目の充血
角膜潰瘍によって白目部分にかなりの充血症状がみられることがあります。睡眠不足や飲酒の際に目が充血するなんてこともありますが、そのようなことをしていなかければ要注意かもしれません。
複合的に症状が出るときは要注意!
視力の低下や目の痛みというのは加齢や疲労によって引き起こされることがあります。自分も年をとったなぁと思うこともあるかもしれません。
一方で症状が複合的、かつ継続的に起こっている場合。もしくは、短期間で症状が悪化したということであれば、角膜潰瘍の疑いを持ってもいいでしょう。
角膜潰瘍の原因とは?
角膜などの眼球は通常まぶたやまつげ、涙などで保護されています。まぶたはほこりなどから眼球を守り、乾燥を防ぎます。まつげも同様にほこりから眼球を守ります。涙は異物を排出します。
それでも角膜潰瘍になってしまうのは、目に細菌が繁殖しやすい環境ができてしまうことが大きな原因です。その原因について詳しくみていきましょう。
細菌やウィルスに感染
私たちの身の回りにはたくさんの細菌やウィルスが存在します。それらがふとした瞬間に目の中に入りこみ、繁殖してしまうことで病気を招くことがあります。
日常生活では汚れた手で目をこすってしまう、長い間洗っていないタオルが眼球に触れてしまったといった、細菌が過度に繁殖しているものに触れると発症することがあります。
また、体の抵抗力が弱っていると感染症のリスクを高めるでしょう。疲労が溜まっていたり、睡眠不足であったりするほど、抵抗力が弱くなり、病気の発病を助長することになります。
自己免疫疾患
私たちの体は外敵から身を守るために免疫システムがあります。ウィルスや細菌を破壊するシステムですね。このシステムにエラーが起こり、自身の細胞を攻撃してしまうのが自己免疫疾患です。
有名な病気として関節リウマチがあります。免疫システムが自己の細胞を攻撃し、関節に炎症を起こしてしまう病気です。角膜潰瘍は実はこの関節リウマチ患者に多いことがわかっています。このような角膜潰瘍を「蚕触性角膜潰瘍」といいます。
酸やアルカリ成分によるもの
化学薬品が誤って目に入ってしまった時、角膜を損傷してしまうことがあります。このようなケースを「角膜化学腐食」といいます。目に異常を感じたらすぐに病院へいくようにしましょう。
病気を招く大きな原因とは?
ご紹介した原因の中でも、細菌やウィルス感染が病気を発病しやすいといわれています。その理由は広く普及しているコンタクトレンズ。この継続的な着用が角膜潰瘍の原因となるのです。コンタクトレンズをつけることで、2つの悪影響があります。
角膜を傷つける恐れがある
レンズが固いということはあまりないとは思いますが、それでも自分の目にあっていないコンタクトレンズを着用すると、角膜を傷つけることがあります。また、着用時に指で傷つけてしまうこともあるでしょう。
このような時、角膜には小さな傷ができます。その傷に細菌が溜まり、繁殖しやすい環境が作られます。これが角膜潰瘍の原因になることがあります。
長期着用が細菌を繁殖させる
コンタクトレンズを長期的に着用することは衛生上、よくありません。水分が豊富で細菌にとっては非常に繁殖しやすい環境ですから、病気のリスクを高めることになるでしょう。
角膜潰瘍の治療とは?
では、角膜潰瘍になったらどのように治療をしていくのでしょうか?具体的に以下の治療法があげられます。
薬剤治療
角膜潰瘍の原因が細菌やウィルスによるものの場合、原因菌に対応した薬剤によって治療をしていきます。点眼薬、眼軟膏、点滴や内服薬など薬の種類は様々です。原因が細菌やウィルスではない場合、炎症を止める抗炎症薬を使うことがあります。
医療用コンタクトレンズの使用
角膜潰瘍の治療には医療用のソフトコンタクトレンズを使用することもあります。目の保護、乾燥の予防し、細菌・ウィルスの侵入や繁殖を防ぐことに繋がります。
角膜移植
角膜潰瘍がかなり進行し、深刻な視覚障害が起こってしまった時、角膜を移植する手術を行うことがあります。また、薬剤による治療でも予後が良くなければ、同様に手術をすることがあります。
治療中にできる3つのこと
角膜潰瘍の治療と合わせて、生活の中で気をつけたいことがあります。
汚れに気をつける
目の衛生状態を保つためにはまず、汚れに気をつける必要があります。ほこりの多いところはもちろん、入浴の際のシャンプーといったものにも気を配る必要があるでしょう。
やたら触らない
治療中は眼帯をつけることで目を保護することが多いです。しかし、蒸れてしまいかゆくなるなんてこともあります。それがきっかけとなって触ってしまうと症状はより悪化してしまうでしょう。基本は触らないようにすることが大切です。
メガネを使用する
角膜潰瘍の治療中は医療用のコンタクトレンズ以外のコンタクトレンズは使用しないようにします。そのため、日用使いでは目への負担を軽減するためにメガネを使用するようにしましょう。
角膜潰瘍の5つの基本的な予防法
角膜潰瘍にならないためにできる予防法をご紹介します。
コンタクトレンズを清潔に保つ
角膜潰瘍は目に細菌やウィルスが繁殖することが一つの原因としてあげられます。これらは長期間使用された不衛生なコンタクトレンズで好んで繁殖します。
このため、コンタクトレンズを常用している人は、コンタクトレンズを清潔に使うように心がけましょう。使い捨てのものを使ったり、戦場を忘れないようにしてください。
コンタクトレンズをつけたまま寝ない
コンタクトレンズをつけたまま、ついつい寝てしまった。そんな経験があるという人も多いのではないでしょうか。仕事疲れや飲み会なんかがあると、取り忘れてしまいますよね。
しかし、装着したままですと、目の乾燥や細菌の繁殖を助長します。それが続くようであれば、まさに角膜潰瘍を招く原因になるでしょう。どんなに疲れていてもコンタクトレンズは外すようにしてくださいね。
体の抵抗力を落とさない
体の抵抗力の維持も病気にならないために大切なことです。仕事で疲れていたり、睡眠不足であったり。このような状態の体は抵抗力が低下しています。
抵抗力の低下は細菌の侵入・繁殖を容易に許してしまいます。病気にかからないためにも、普段から生活習慣には気をくばるようにしましょう。
異物は清潔に取り除く
時々、目に異物が入ることってありますよね。そんなとき、手で取ってしまうことがあると思いますが、その手が衛生的に汚いと原因となる細菌が目に侵入してしまいます。
目に異物が入った時は、まず落ち着くこと。そして、手で取るのであれば、きちんと手を洗うようにしましょう。
異常がある時はすぐに眼科へ
医者に行くことに抵抗がある人は少なくないでしょう。ちょっとのことでも痛くなければいかない。その気持ちが病気を悪化させてしまうこともあります。
角膜潰瘍では目で見てわかる症状が起こり始めますが、その段階では少々治療が遅れていることがあります。先にご紹介した症状が複合的に現れているのであれば、早めに眼科へ行くようにしましょう。
症状が進行すると失明の可能性もある角膜潰瘍。視力を失うことは生活にとって大きな影響を与えます。そうならないためにも、日々の生活習慣を見直すようにしてみてくださいね。
まとめ
角膜潰瘍は日常から目の衛生状態を管理していれば、予防できる病気です。反対に言えば、病気になってしまったのであれば、目の衛生管理を考え直す必要があるでしょう。
このことをきちんと考えなければ、たとえ医者に行き、病気が治ったとしても再発の可能性があるかもしれません。習慣を正す必要があるのです。
コンタクトを長期的に使用していないか。身の回りの生活環境は衛生的か。よく目をこすっていないか。手をきちんと洗っているだろうか。このような小さなことから病気は始まるのです。
もし、心当たりがあるのであれば、意識して改善するようにしましょう。また、きちんと医者へいき、きちんとした治療を受けるようにしてください。
症状が進行すると失明の可能性もある角膜潰瘍。視力を失うことは生活にとって大きな影響を与えます。目が見えなくなるって、想像しただけでもいやですよね。そうならないためにも、日々の生活習慣を見直すようにしてみてくださいね。