貴女のお子さんは大丈夫ですか?弱視は遅くとも8歳までに治さないと、一生見えない状態で過ごさなければなりません。お子さんがテレビを見るのに、近くで視たり、頭を斜めにしてみたりしていると、もしかして弱視かも知れません。
弱視について今回は取り上げて見たいと思います。
生まれたばかりの赤ちゃんの眼に映るのは、明るい暗の映像しか映りません。しかし1ヶ月で形が分かる様になり、2か月ぐらいで色がはっきり確認できる様になります。4か月になると眼の前の物を、眼で追う追視ができるようになります。1~2歳頃は何が見えているかの像の形は分かっても、細かいこれは何であって、どの様な物なのかと言うような、細かい視標判別する事まではまだできません。3歳頃には1.0程度に視力検査も可能になり、6歳で大人と同じような視力となります。
生まれて毎日眼を使って、絶えず物を見ていないと、子供の視力は発達しません。それでは一緒に弱視について見ていきましょう!
弱視とは
弱視について知りましょう。
眼の構造
私達が物が見えるメカニズムは、私達の眼の中に物体が入ってくると、角膜と水晶体で屈折し、網膜の中央の黄斑部の中心窩に、焦点を合わせて物を映像するからなのです。焦点が中央の黄斑部より、もっと奥の方で像が合うのが遠視です。網膜上の黄斑部の上で形が2重に見えるのが乱視です。
網膜の上に映った像は視神経を通じて、大脳の後ろにある、視覚中枢に送られ、どの様な形の像なのか確定されます。そして眼に映るものが何であるか、正確に知る事ができるのです。
子供の眼の生長
◆子供は生まれたばかりでは、明るい暗いしかわかりません。殆ど視覚中枢は働いていないのが現実です。だいたい0.03の視力です。生まれたばかりでは視覚路はまだ発達していません。
◆左右の眼から角膜と水晶体で正しく屈折された映像は、焦点が正しい位置の網膜の中央の、黄斑部の中心窩で重なり合う像で刺激されます。これは生後3年間の間に起こります。
この視力の感受性期いわゆる視力が発達する時期に、眼に適切な像の視覚刺激を、受ける事がされなかった場合は、脳はその像を無視するようになります。そうすると視力の障害が起こります。これが長く続くと弱視に成ります。
◆赤ちゃんとして生まれ1ヶ月で形がわかり、2か月で色まで解る様に成ります。4ヶ月で眼の前の動くものを眼で追う、追視ができる様になり、1~2歳で細かい視標判別までは困難ですが何が見えているのか、色や形まで解ります。
◆3歳頃には1.0くらいの視力になり、6歳頃には大人と同じ視力に成ります。ですからこれまでに弱視であれば、修正する事はとても簡単にできます。この時期眼にとって感受性の強い、いわゆる視力が発達する時期に、何らかの障害が起こり、眼から取り入れる刺激が少なければ、10歳から気が付いて、弱視を治そうと思っても、効果は薄いそうです。
その為にもご両親は子供の小さな変化に気が付き、眼科で検査を受ける事が大切な様に思います。
弱視になる理由
この様に子供が生まれてから1ヶ月2か月4か月と、物を見る事で成長するはずが、物をみる訓練が閉ざされた場合、弱視になってしまうのです。
生まれて成長するにしたがって、眼の刺激の訓練ができなく成った時に、弱視になってしまいます。8歳ぐらいの子供の網膜上に、鮮明な像が現れないのは、こうした眼の感受性の強い時期に、視覚訓練の発達が妨げられて、弱視になってしまったのです。この時期から弱視を治そうとしても、視力が出る事は不可能に近い事になります。ですから時期を見過ごさないでほしいのです。
弱視の種類
弱視には医学的弱視と、社会的弱視の2つがあります。
医学的弱視とは視力の感受性の強い、視力が一番発達する時期に、物を見ると言う刺激が、受けられず弱視になった場合です。メガネを掛けたり訓練する事で、視力が回復する可能性はあります。メガネやコンタクトレンズをかけても、視力が上がらない場合を弱視と言います。メガネやコンタクトレンズをかけて、視力が上がる場合は弱視とはいいません。
社会的弱視とは色々な種類の眼の病気が原因で、回復が難しい視力障害の弱視のことです。盲や弱視をロービジョンともいいます。
子供の弱視に気が付くには
子供が弱視かというのは気づくいといえます。弱視に気づく方法を知りましょう。
3歳児に弱視の検査
それではご両親は子供の弱視にどの様な時に、注意をしたら良いのでしょうか?子供の場合はよほど重症な弱視でない限り、症状が分かる子供は余りいません。片目だけが弱視の場合はなおさらです。
3歳児検診でオートレフ検査で計ると、弱視が分かりますがこれは機械が大掛かりで、高価なのでこの機械を持っている自治体と、もってない自治体があります。持っている自治体では3歳児検診の時に、このオートレフ検診をしてくださいます。
もしもってない自治体に、住んでおられるのであれば、自治体に要望を出すか、またご自分で眼科で検査を受ける事が大切ではないでしょうか?子供の一生に繋がります。3歳児になったら必ずこの弱視の検査をする様に、ご両親で話し合われたら如何でしょうか?
眼科で検査
また幼稚園や保育園などで視力検査で異常が見つかった時などは、眼科で弱視でないかどうかの精密検査を受ける事がとても大切です。
弱視は6歳までに治さないと効果がなく、治らない事があります。早ければ早いほど治りは早いです。お子様の行動に不信を持った時は、眼科で検査を受ける事は、安心にもつながります。下記の様な症状がお子様にある時は、一度眼科で調べてもらうのも大切です。
弱視の子供が行う症状
- 眼の焦点が同じ方向を向いていない。
- テレビに近づいてみるので、注意しても治らない。
- 眼を細めて物をみる。
- 片方の目を手等で覆ってみる。
- 集中力が続かない。
等の行動がある時は、一度弱視を疑って眼科で診てもらうのも、良いのではないでしょうか?子供ははっきりと表現しないだけに、親が注意して3歳ぐらいまでに見つけて6歳の時点では、弱視を正常の視力に戻してあげるのが、親の責任の様にも思います。
弱視の原因
弱視の原因の種類には、形態覚遮断弱視、斜視弱視、不同視弱視、屈折弱視があります。
形態覚遮断弱視
形態覚遮断弱視とは眼に入ってくる視覚入力が、先天性の白内障や瞼の腫瘍、眼帯、眼瞼下垂等の障害によって阻害される為におこる弱視です。新生児はこの様な症状があると、数日間で弱視になる可能性があります。
眼瞼下垂の様に生まれた時からまぶたが下がっていたり、角膜混濁の様に黒目の部分が濁っていたり、白内障などの病気で網膜に刺激が十分入らない場合は、視覚刺激を受ける為の手術が必要となります。
形態覚遮断弱視とは乳幼児期に視性刺激が阻害されて、元に戻す事の出来ない視力低下を起こしたものです。後天性で視覚の1~6歳の感受性の強い期間内に、眼窩腫瘍、先天性白内障、高度の眼瞼下垂、眼瞼腫瘍、角膜混濁、眼帯を付けていた等により、網膜に光を通しにくくして遮断され、これまでにこの様な病気などに、掛かったものが原因している場合です。
斜視弱視
斜視弱視とは斜視の症状があって、眼が物体を見ないで網膜で最も感度の高い、黄斑部の中心窩に像を結ぶことができず、視機能の発達が妨げられる弱視を言います。
斜視弱視の原因は斜視によるものです。斜視眼では網膜の黄斑部の正しい位置の中心窩で像を結ぶことができない為に、斜視眼の視力が発達しない為弱視になります。
斜視の場合には正常の眼の方は、視力は良くて優位に働く為、どうしても斜視になっている方の眼は弱視になってしまいます。
斜視とは眼の焦点がずれて、片目は正面を向き片目は違う方向をむいたり、両方の眼が同じ方向を向かないで、違う方向を向いているのを斜視と言います。片目の視線がずれている場合は使われない方の眼の斜視眼は、視力が発達しなくて弱視になります。
不同視弱視
不同視弱視とは網膜の中の、黄斑部に屈折を結ぶ左右の、屈折度の大きさによるもので、屈折度の差が大きいと、ピントを合わせにくい方の眼が弱視になります。
両方の眼が遠視であり、左右の屈折度が3Dディオプター以上になると弱視になります。また片側の眼だけが、強度の近視の場合も弱視になります。
不同視弱視が発見されるのは、視力検査で片眼ずつ検査する段階でわかります。不同視が左右の屈折度の差が2Dディオプター以上であり、屈折度の異常の強い方の眼の、視力障害による片方の眼のの弱視で、屈折異常の弱い方の眼の視力はとても良いです。
乱視や遠視による不同視はとても弱視になりやすく、遠視性不同視の不同弱視は、弱視の屈折度が2Dディオプター以上以上健康な眼よりも強くなります。
近視性不同視の場合は、遠くを見る時は屈折異常の弱い方の眼をつかい、近くの方を見る時は屈折異常の強い方の眼を使う事になるので、弱視になりにくい場合が多いです。
屈折弱視
屈折弱視とは遠視や強度の乱視などが原因で起こります。強度の遠視や乱視は、視機能の発達が妨げられるため弱視になりやすいです。視力はピントを近くを見る為に合わされているので、視力の発達は近くを見る事で発達します。
近視は病的な近視でない限り、近くの物にピントが合うため、弱視にはなりません。屈折弱視は未矯正や不均等な屈折異常が原因で、左右の屈折度の差が大きい時に起こります。
何故子供は弱視になりやすい?
子供は目を使う訓練をすることで、眼の視力が強化されます。子供が眼を使う訓練をしないと、眼の網膜に映った像は、視神経を伝わり大脳に伝えられます。大脳に伝えられて、初めて物が見えるのです。これを視覚伝導路といいます。
視覚伝導路に適切な刺激が与えられないと、物がはっきりとは見えません。子供の視力の発達には、刺激が必要で、刺激がないと視力の発達は止まります。そして弱視になります。
弱視になる原因
弱視になる原因は両眼の屈折異常で、両眼の視力障害によるものです。屈折異常には乱視、遠視、近視による屈折異常によって起こりますが、中でも乱視や遠視の場合は弱視になりやすいです。
弱視の症状
屈折弱視の症状は3歳児検診や、就学時検診で見つかる事が多く、自覚症状がなく視力の程度に応じて、小さな字を読むことができません。
不同視弱視の症状はこれも3歳児検診や、就学時検診で見つけられる事が多く、片目の視力低下なので余り自覚症状がありません。
斜視弱視の症状はこれも症状として自覚症状はなく、片側の視力低下と眼位のずれですので、見た眼で斜視とわかれば、お母さんは症状に気が付く事は、容易にできる様に思われます。
形態覚遮断弱視の症状は、網膜に光を通しにくい視性刺激の、遮断による眼の視力の低下と、感覚性斜視の両眼性機能の失われた、二次的斜視になります。形態遮断弱視の症状としては、物につまづいたり、目の前の小さなものを取る、事が出来ない等の症状をおこします。
弱視の治療
◆弱視の治療としては6歳ぐらいまでに正常な視力に戻すのが、一番治しやすい治療です。眼にとって感受性の強い時期は生まれてから、3か月ぐらいから6歳頃までで、10歳頃では殆ど弱視機能の感受性は無くなっています。ですから10歳ころから弱視の治療をしても、効果を望めません。
◆弱視の治療は矯正的に弱視の眼に合わせるのが基本です。弱視の眼に完全に矯正した、視力の良い方の眼を時間を決めて、見えなくした眼鏡をかけて、両眼とも同程度の視力低下にすることが大切です。
◆屈折性弱視の場合は、完全矯正したメガネをかけるだけで、治る場合もあります。早期に治療すれば効果は大きく、検診の3歳児検診などで異常が疑われたときは、眼科で精密検査等をうける事をお勧めします。
◆弱視の治療には弱視の種類や、発生した時期などにより、治療の違いも出てきます。どの様な弱視でも屈折の異常がある場合は、網膜の中心窩に焦点を合わせるメガネをかけて、網膜に鮮明な像が結ばれる状態にして、視力の発達を促す事が大切となります。
網膜に鮮明な像が結ばれる状態のメガネを、掛けないと視力は良くなりません。遅くとも8歳ころまでには、視力の発達が望める正常な視力にしておくことが大切です。
屈折弱視の治療
屈折弱視の治療にはメガネを、お風呂と寝る時以外にはかけ続ける様に、正常な視力の発達にブレーキを掛けている、屈折異常をしっかり矯正するメガネをかけます。眼鏡を掛けて様子を見ます。左右に差がある場合は、検眼遮閉(けんがんしゃへい)や検眼に調節麻痺剤を点眼する場合があります。
不同視弱視の治療
不同視弱視の治療には左右の屈折度が、生まれつきでなく後天的に違い、片方の眼は疲れた時にピントを片眼だけに合わせるのをやめました。この様な場合早期に治療をすれば、左右の差がなくなって、治療がはやければメガネをかけるだけで弱視は治ります。その場合は不同視は治りません。
不同視の治療は健康な筋肉を使い過ぎに起こる為、弱視を治すためには良い方の眼を隠して、悪い方の眼だけで見るようにします。また調節麻痺剤を点眼する事もあります。
不同視弱視の治療では、屈折異常を矯正する為の眼鏡をかける事が、治療の第1歩となります。屈折異常の矯正が主体で、眼の良い方は健眼遮閉をおこない、弱視眼の視力が健康遮閉で良くならない場合は、アトロビンと言う薬剤を健眼に、点眼する治療もあります。両方の眼の視力が無くなって安定した、視力が維持できれば薬剤をやめます。
斜視弱視の治療
斜視弱視の治療には眼の位置のずれ、また両方の眼が同じ方向を向いていない、また眼の視線が目標とは違った方向を向いている状態なので、斜視弱視は斜視のない方の眼の視力はとても良好です。斜視のある方の眼は、片眼性視力障害となります。検査で片目での視力検査や、即位検査により発見されることが多いです。
物を凝視するときに固視異常があると、固視矯正の為に良い方の眼の健眼遮閉をおこないます。物を見る事が正常にもどれば、視力を上げる為にさらに、健眼遮閉をおこない、斜視手術をしたり、薬剤にはアトロビン点眼を使用します。
形態覚遮断弱視の治療
形態覚遮断弱視の治療は、先天性白内障や、水晶体の混濁に応じての水晶体摘出の手術や、瞼の腫瘍、眼瞼下垂等の疾患を、取り除く事が第一の治療です。先天性白内障は全身麻酔の後、手術でレンズの埋込が行われます。
原因となる疾患を治療した後は、弱視の治療として、メガネ、コンタクトレンズを使用した、矯正眼帯で弱視の矯正訓練がおこなわれ、屈折矯正や健眼遮閉等の治療が行われます。治療は遅くても8歳までに、行わないと効果が望めません。
弱視の予防
全ての子供に視力のスクリーニング検査をすることが大事です。スクリーニングで異常がみとめたら、眼科医に行って精密検査をすることが大事です。弱視は時間との戦いで、6歳ころまでに治すと殆ど完全に治りますが、遅くても8歳ごろまでには、治療を終える事が大切です。
8歳までに治療が行われなかった場合は、殆ど視力の回復は難しく、運転免許なども取れない状態になってしまいます。
弱視の治療で一番大事なのは早く見つけて、早く治療する事です。
まとめ
如何でしたでしょうか?あなたのお子さんは大丈夫ですか?本来は自治体など地域社会で、この様な検査をすることが大切ですが、今の日本は地域によって違ってきています。生まれてきたお子さんは成長しますので、生まれて3歳までにはこの検査を受ける様にして、弱視でないと言われれば親も安心できます。
3歳までが勝負です。可愛い盛りで何も変化がない様に思われても、赤ちゃんは症状を訴える事ができません。それだけに日頃の動作などに気を付けて、眼に異常がみられる様でしたら精密検査を受けられる事が、お子様の将来の健康に大きく、関係してくる事となります。
3歳までに異常な様子がないようでも、このスクリーニング検査は受ける方が良いのではないでしょうか?安心する為には必要なようにおもいます。