眼瞼黄色腫という瞼のところに、脂肪の沈着ができるのをご存知でしょうか?これはある病気の予測因子とも捉えられていて、高脂血症の人が多く発症すると考えられていましたが、虚血性疾患や心筋梗塞や、死亡の予測因子となると発表されました。
眼瞼黄色腫について見てみたいと思います。
眼瞼黄色腫とは
眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)とはまぶたに、コレステロールが沈着することで起こる病気です。
眼瞼黄色腫のメカニズム
眼瞼黄色腫は高脂血症の人が多く発症しますが、この症状の人は50%が正常な、血中脂質濃度の人です。中年以降の人に多く見られる、上まぶたの内側にできる、黄色の扁平な隆起で、痛みやかゆみはありません。
メカニズムはアテロームのように、皮膚に漏れた脂質をマクロファージが貪食し、コレステロールを吸収して、泡沫細胞(ほうまつさいぼう)として、組織に存在します。
黄色腫の中身は、脂質を取り込んだ泡沫細胞が、真皮内に浸潤したもので、高脂血症の人は多く発症しますが、高脂血症でない人も多いです。
虚血性心疾患や、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症の、重要な皮膚マーカーとなる、予測因子ともなりえるとされています。
泡沫細胞とは黄色腫を作っている泡沫状の細胞で、大型のアメーバー状の細胞のマクロファージが、酸化したLDLの低比重リポ蛋白を貪食することで、細胞内に泡沫状の脂肪滴を蓄積し、その結果泡沫状になった細胞です。
泡沫細胞は黄色腫の他に、粥状動脈硬化などにも出てきて、血管の内膜肥厚が起こって、動脈硬化が一層進行していきます。
眼瞼黄色腫の研究
眼瞼黄色腫の研究発表が、2010年11月13日~17日に、シカゴで開催された第83回米国心臓協会・学術集会で、デンマーク・コペンハーゲン病院の、Mette Christoffersen氏(女性)が発表されました。
眼瞼黄色腫は虚血性心疾患が1.39倍、心筋梗塞1.48倍、虚血性脳卒中0.94、虚血性脳血管疾患0.91、重症動脈硬化が1.69、死亡が1.14倍で死亡の予測因子と、眼瞼黄色腫がなる事が分かりました。
眼瞼黄色腫の研究結果から
コレステロール値の絶対値ではなく、LDLコレステロールと、HDLコレステロールの比重が重要だという事です。
研究結果から解ったことは、眼瞼黄色腫は虚血性心疾患の、予後を規定する独立した因子です。眼瞼黄色腫ができる事は、全身の血管も老化し、ボロボロの状態になっている可能性が、あるという事が示されました。
眼瞼黄色腫ができている人に、心筋梗塞、大動解離、狭心症、脳血管疾患などにかかるリスクが高い可能性があります。
喫煙者であればそのリスクは一層高くなり、眼瞼黄色腫だけを治療しても、生活改善しなければ、また再発するという事です。
眼瞼黄色腫は高脂血症などで、良く知られている血管リスクとは独立していて、心筋梗塞、虚血性疾患、アテローム性動脈硬化などや、死亡の予測因子であると分かりました。
また角膜環はリスク予測因子としては、余り重要でない事が分かりました。
眼瞼腫の腫瘍の良性・悪性とは
黄色腫は一般に全身のリポ蛋白質代謝異常に伴うものですが、脂質代謝異常を認めない正脂血症の場合もあります。
眼瞼腫瘍には良性のもの、悪性のものが存在します。眼瞼腫の腫瘍の場合色々なタイプがあり良性の場合、乳頭腫、皮角、粟粒腫、粉粒、モル腺嚢腫、血管腫、類皮嚢腫、眼瞼黄色腫などがあります。
眼瞼腫瘍のばあいの悪性のタイプは基底細胞がん、腺がん、皮膚がんの黒色腫などがあります。腺がんでは耳前リンパ節や、下顎リンパ節に転移することが多いです。
眼瞼腫瘍の治療法としては、がんの進行や悪性度の程度にもよりますが、放射線治療やがん組織の切除などが行われます。
眼瞼黄色腫の原因
眼瞼黄色腫の原因は、血中脂質分類すると、家族性の高脂血症の場合や、肝臓、腎臓、膵臓の疾患のある人、また糖尿病などの合併症における二次性高脂血症の人や、高脂血症でない正脂血症の人も含まれています。
原因となるまた予測因子となる病気
脂質異常症
脂質異常症とは、高脂血症、高コレステロール血症、高リポ蛋白血症ともいわれます。血液中に脂質やコレステロールが多すぎる病気です。
血液中にコレステロール値や中性脂肪値が多い値となっていて、コレステロール血症は高コレステロール血症です。高脂血症にはコレステロールが増えれば、高コレステロール血症といい、トリグリセライド(中性脂肪)が増えれば、高トリグリセリド血症といいます。
高脂血症は高リポ蛋白血症ともいわれ、リポタンパク質とは中性脂肪、コレステロール、リン脂質、アポ蛋白からできています。脂質は血液中に取り込まれていますが、水の相性の良いタンパク質を包んでいる様な、リポタンパク質の粒子となっているのです。
コレステロール降下薬には、LDLコレステロールを下げる薬と、中性脂肪を下げる薬があります。しかしコレステロール降下薬には副作用があります。
高コレステロール血症になると、スタチン系薬剤はコレステロールの量を、血中から減らして、肝臓のコレステロールを減らしながら、血中のLDLコレステロールが主成分のリポタンパクを、肝臓内に取り込み、代謝促進をします。またプロブコールなども同じ働きをします。
しかしコレステロール降下薬には、副作用や個人差が随分ありますので、必ず医師の指示の元、脂質の変化や副作用のチェックを、しながら使用することが大切です。
コレステロール濃度は
・・・・・・・・・・・・・・総コレステロール LDLコレステロール
- 基準値・・・・・・・・・220mg/dl未満・・・140mg/dl未満
- 高コレステロール血症・・240mg/dl未満・・・160mg/dl未満
です。高コレステロール濃度が高い状態が続くと、動脈硬化が進んで、血管が狭くなり、また血栓が剥がれて、心筋梗塞や狭心症などの、血管や心臓の病気を引き起こしたりします。
眼瞼黄色腫はこのような高脂血症などの、場合に出現することがあることが解っています。
家族性高コレステロール血症
家族性高コレステロール血症は、生まれつき悪玉コレステロールのLDLが異常に増えてしまう病気で、LDL受容体の遺伝子や、これを働かせる遺伝子が異常を起こして、血液中のLDLが細胞に取り込まれないで、血液中に残ったままになってしまう病気です。
虚血性心疾患
虚血性心疾患というのは狭心症や急性心筋梗塞などの、冠動脈が何らかの理由で狭くなり、閉塞したり血流が阻害される、心臓の病気の総称です。
アテローム性動脈硬化症
重度のアテローム性動脈硬化症は、眼瞼黄色腫の1.69倍になる事が分かっています。
アテローム性動脈硬化症は、脂質異常や、糖尿病、高血圧、喫煙、運動不足などが危険因子となり、最終的には動脈の血流が遮断されます。
トリグリセリド血症
トリグリセリド血症とは、中性脂肪が多くなりすぎている状態で、トリグリセライド(中性脂肪)が高い状態の脂質異常症で、動脈硬化と非常に関係が深くなっていて、急性膵炎とも関係があります。
眼瞼黄色腫の症状
眼瞼黄色腫の症状は目の上まぶたに、黄色い塊ができる症状で、皮膚に漏れた脂肪が組織化し、泡沫細胞として目のまぶたに存在しますが、この原因は血中の脂肪が多いことで、眼瞼黄色腫の症状が出てきます。
もし高脂血症の方がこのような症状を示すようになりますと、虚血性疾患や心筋梗塞の可能性があり、循環器内科の専門医を受診することが大切です。症状の現れ方として、結節、発疹、扁平型などがあります。
結節性黄色腫症
結節性黄色腫症は、色は黄色から赤褐色で、皮膚から1㎝盛り上がった結節で、膝、肘、指、足趾などに症状が現われ、高ステロール血症に多く見られます。
発疹型黄色腫症
発疹型黄色腫症は、1㎝以下の盛り上がった丘疹が多発し、中性脂肪の高トリグリセリド血症に合併しやすいです。
扁平型黄色腫症
扁平型黄色腫症は、扁平に盛り上がる黄色腫や、盛り上がらずに変形の黄色調に変化したものなどがあります。
眼瞼黄色腫の3分の2は正脂血症に伴うもので、手掌線条型(しゅしょうせんじょうがた)は手のひらのシワに沿って黄色腫が現われ、高コレステロール血症の人に多いです。
腱黄色腫は腱の肥厚として触れて、アキレス腱や指の伸展腱に好発します。二次性の黄色腫症は、長期の高脂血症に合併する発疹型です。四肢間接の背面にでてきます。
眼瞼黄色腫の検査
眼瞼黄色腫の検査は、まず血液検査から実施します。血液の中にどれくらいの脂質が混入しているか、特に中性コレステロールなどがあれば、動脈硬化などの疾病がないかチェックします。この病気は血液検査で、眼瞼黄色腫かどうかはハッキリとわかります。
組織検査では泡沫細胞の有無をみます。また高脂血症の検査では、血清コレステロール、トリグリセリド、リポタンパクの定量及び電気泳動などを見ます。
それにより高脂血症かどうかを診断します。扁平型黄色腫症では、骨髄の検査が必要となり、正脂血症のものでは、卵ゲルハンス細胞組織球症、びまん性扁平黄色腫、若年性黄色肉芽腫の区別が必要となり、またレーザー治療するためにも、正確な検査診断が必要となります。
眼瞼黄色腫の治療
眼瞼黄色腫の治療法には、炭酸ガスレーザー治療の方法と、手術の方法と、液体窒素凍結方法があります。治療方法はどちらを選ぶかは本人が決めますが、形成外科では炭酸ガスレーザー治療が行われています。
皮膚科クリニックやクリニックなどでは、手術や液体窒素凍結方法が行われています。一般的に黄色腫の切除する手術をおこないます。しかし再発率は多く40%に及びますが、瞼の皮膚の余裕には限りがあるので、再手術は難しくなります。
内服治療
内服治療には脂質低下薬のプロブコールの、脂質異常症治療薬の内服治療が有効です。しかし長期に服用することが必要で、改善はしますが完治させるのは難しいです。また元々高脂血症ではない人には効果が余りありません。またプロブコールの副作用もありますので、高脂血症でない人は、よくよく考えられて、先生に相談されるほうが良いです。
欠点として長期に服用しなければならない事と、改善はしても完治はしない治療が、内服薬だけの治療法です。内服薬と併用に行う治療もあります。
炭酸ガスレーザー治療
炭酸ガスレーザー治療の方法は、患部の部分に局所麻酔を行い、CO2レーザーを黄色腫に照射して、組織を切開蒸散させる方法を行います。
炭酸ガスレーザー治療のやり方
炭酸ガスレーザーの治療の方法は、10.6μm波長を用いて、身体の水分で吸収されることで、著明な熱効果をあらわし、患部にレーザーを当て炭酸ガスレーザーを照射することで、組織を高温で切開蒸散させるやり方です。
炭酸ガスレーザー治療のメリット・デメリット
メリット
黄色腫を熱で凝固させ蒸散させるので、断面からの出血もなく、局所麻酔を行った後、皮膚の浅い所にある病変を直視して、確認しながら行うので、数分で終わりとても良い方法です。
治療時間が数分で済み、当日から洗顔も可能になります。痛みもすくなくレーザー治療後は、自宅で軟膏を塗って、軟膏治療を行います。
黄色腫の大きさにもよりますが、2~3週間で傷は治り、数か月には腫れや赤みが取れ、平らで目立たない傷になります。
炭酸ガスレーザーの治療はどの様なかたでも治療ができ、再発が起こったとしても、炭酸ガスレーザーなら、治療を繰り返すことができます。
デメリット
デメリットとしましては、治療組織が蒸散されるので、病理学的検査に出すことができないため、術前に病理学的検査を十分にやらないと、どの様な眼瞼黄色腫かどうかが、正確に解らない事で、正確な診断が必要となります。
取り残しや色素沈着、合併症、瘢痕化などを起こさないためにも、術前の正確な診断が必要となり、炭酸ガスレーザーの治療を行う際の注意点としては、病理の勉強を確りされている、皮膚科の専門医の元で行うことが大切です。
何故なら例えば脂腺増殖症などは、病変が深いところまで達しているので、完全除去した場合真皮の欠損はある程度深くなります。
ですから治療をした部分は、真皮の欠損部分となり、いくいくは自然治癒しますが、その過程で瘢痕化や色素沈着などの、合併症が起こる場合がありますので、それを予防しなければなりません。
炭酸ガスレーザーの眼瞼黄色腫以外の病気の治療
青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)
ウイルス3型の皮膚感染が原因で、顔面、手の甲、前腕など小さな米粒の半分ぐらいの、淡褐色の丘疹が多数できるイボです。こちらも炭酸ガスレーザーの治療が行われます。
脂漏性角化症
脂漏性角化症は老人性イボまたは老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)ともいわれ、加齢になりできる事が多く良性のいぼです。治療は炭酸ガスレーザーが行われます。
治療の保険について
炭酸ガスレーザーの保険適用について、皆様ばらばらの意見を持ってられます。大手病院で治療して保険がきいたという人や、皮膚科で保険がきかなかったという人など、沢山おられます。
炭酸ガスレーザーの治療を行う場合、美容の為行うのは保険がききません。しかし病気の一環として治療を行う場合は、保険がききます。それは先生の考え方により、違いがあるようです。
高脂血症やその他の病気で眼瞼黄色腫が、出ている場合保険適用されます。ですから高脂血症で、コレステロール降下薬など使用している人は、担当の先生に相談されると、先生が切除が必要と感じられたら、保険適用になります。
眼瞼黄色腫は上でも述べたように、心筋梗塞や狭心症他の病気が疑われるからです。あくまでも美容のために眼瞼黄色腫を、取りたいと言えば保険はきかないでしょう。
ですので形成外科や、内科、皮膚科で一度先生と相談されることが、良いのではないでしょうか?そして保険適用になるのか、はっきりと聞かれると良いでしょう。
美容整形外科では保険適用にはならないでしょう。
液体窒素で焼く療法
イボなどを取るときに行われる液体窒素で焼く(凍結)治療法は、実際のやられた方が再発が多いようですが、皮膚科では多くのところで、この治療法が用いられています。
食事療法
低脂肪、低カロリー食、低炭水化物食など、高脂血症に合わせた食事制限をするとともに、薬物治療で、抗高脂血症薬を使います。
予防法としては食生活の改善が必須です。欧米風の高カロリー食品や、高コレステロール値の高い食品、ファーストフードなどの過剰摂取は、眼瞼黄色腫を起こさせます。
野菜や果物や魚といった低カロリーな食品や、低脂肪食品、低炭水化物に切り替えた食事をすることが大切です。そして適度な運動を行うことで、基礎代謝の向上が期待できます。
まとめ
如何でしたか?眼瞼黄色腫も最近研究が進んで、色々な病気の予測因子にもなるようですので、眼瞼黄色腫がある方は、一度血管の検査をされるほうが良いのでは無いでしょうか?
もし血管が老化していて眼瞼黄色腫が出ているのであれば、生活環境を変えない限り再発しますので、検査をすることが必要のように思います。
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