脂質代謝異常症とは?治療には食事療法が大事?原因や症状を知っておこう!

脂質代謝異常症とは別名高脂血症とも言います。脂質には、大きく分けるとコレステロールと中性脂肪の2つに分けることができます。

この症状は、平たくいうと、脂質の代謝が異常な状態になるということです。歳をとると代謝が悪くなるとか、お腹が出てきたから運動しなきゃなどと日常会話でよく聞きますよね。また、近頃では若い方のメタボも増えていますよね。

生活習慣病が原因?加齢により起こるの?過食や運動不足によって起こるの?どんな症状?それでは、この症状について詳しく見てみましょう!

コレステロール、中性脂肪、とは?

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最近メタボ気味。お腹が出てきた、どうにかしなきゃ!

コレステロールや中性脂肪のこと詳しくは分からないけれど、からだに悪いものだから減らさなければと思い、手っ取り早く食事制限。食べることの我慢はできないからと、とりあえず脂肪の吸収を抑えるお茶を飲んでみる、など努力されている方もおられるでしょう。

そもそも脂質である中性脂肪やコレステロールとは何でしょうか?

コレステロール、中性脂肪はいらないもの?

そうではないんです。コレステロールは細胞を構成する成分の一つであり、中性脂肪と共に血液中に存在しているものです。また、またからだに入った菌と闘う役割を果たすステロイドホルモンやビタミンの原料になります。

つまりコレステロールも脂肪もからだになくてはならないものなんですね。それに、大きくは悪玉コレステロール(別名LDLコレステロール)、善玉コレステロール(別名HDLコレステロール)、の2種類に分けられます。

悪玉(LDL)コレステロールとは?

悪玉(LDL)コレステロールとは何でしょうか?悪玉とは言っても、いらないものではないんです。

コレステロールは肝臓でつくられて、各臓器に運ばれます。その運ぶ働きをしているたんぱく質のことです。適量であれば適切に役割を果たすものであり、運動不足、過食、肥満などによって、役割を果たせなかった余分な悪玉コレステロールが血液中に溢れることになると、その性質が少し変化し、じわじわと血管の壁に浸み込んでたまっていくようになります。

そのようにして血管の壁にたまったコレステロールは、まさに悪玉という表現通りそこで炎症を起こしてしまいます。もしこの炎症が長引いた場合、血管の壁が厚くなり、血管全体が硬化してしまいます。これが、動脈硬化という状態です。

この動脈硬化が徐々に進むと、しだいに血管の内腔が極端に狭くなることになります。

これにより血液の流れが悪くなって、血のかたまりつまり血栓が出来ることにより、血液の流れがせき止められてしまうことになるのです。それが心臓に起こると狭心症や心筋梗塞、脳に起こると脳梗塞を引き起こします。

善玉(HDL)コレステロールとは?

善玉(HDL)コレステロールには、善玉という表現の通り、からだのなかの余分なコレステロールを掃除し、取り除く働きがあります。

よって血液中に善玉(HDL)コレステロールが不足している場合、良い状態とはいえないということですね。善玉(HDL)コレステロールが低い場合、先に書いた狭心症や心筋梗塞、脳梗塞の危険性を高めることになります。

コレステロールと中性脂肪がどのように作用したら、脂質代謝異常症となるの?

脂質代謝異常症は、はじめは自覚症状がないものです。

悪玉(LDL)コレステロールが血液中に多くなったとき、血管の壁にその使われない分が付着してしまいます。そのとき、からだの防御機能が働き、肥満細胞がその使われない分を掃除しようとして集まってきます。

肥満細胞が悪玉(LDL)コレステロールを掃除すると、その場所で死んでしまうのです。その肥満細胞が死んだ血管壁に、アテロームというかたまりが溜まっていきます。このアテロームは、どろっとしたコレステロールを含んだかたまりのようなものです。このかたまりのようなものが血管を詰まらせることにつながります。

逆の作用をするのは、善玉(HDL)コレステロールです。血管を詰まらせることにつながる余分な悪玉(LDL)コレステロールを血管からはがし、肝臓へと戻す働きをするのです。この働きの違いから、文字通り善玉と悪玉、なんですね。同じ脂質でも、逆の役割を持つものです。

ただし悪玉(LDL)コレステロールと比べて、善玉(HDL)コレステロールは処理能力が低いのが難点ですので、もし悪玉(LDL)コレステロールが含まれる食品を過剰に摂取している場合、善玉(HDL)コレステロールはその能力を存分に発揮できないことにつながります。

中性脂肪とは?

中性脂肪と聞いて、思い浮かべるのは、美食化の太ったおじさまというのは私だけでしょうか?実際、この中性脂肪は、いわゆる「あぶら」で、料理で使うラードと同じですので、あながち遠くないかも。

しかし、このあぶらは身体を動かすためのエネルギー源として非常に重要なものです。身体を動かすためのエネルギー源にはまずは糖質が使われるのですが、その次に使われるのが脂質であり、中性脂肪はその脂質の貯蔵庫としての役割を果たしているのです。

中性脂肪には、断熱材としての役割や衝撃から内臓や骨などを守るクッションとしての役割もあるのです。ですので不足すると免疫力の低下が起こり、疲れやすくもなるとされています。緩衝材や断熱材としてのはたらきも低下してしまいます。

逆に、この中性脂肪も生活習慣の乱れにより高くなる傾向があります。甘いもの、揚げ物やあぶらもの、それらの過食によるカロリーオーバー、アルコールなどが影響します。中性脂肪の高い状態についても、先に書いた狭心症や心筋梗塞、脳梗塞の危険性を高めることになります。また、膵臓にも影響し、膵炎を引き起こしてしまうこともあります。

中性脂肪が増えることで、悪玉(LDL)コレステロールが増えます。同時に善玉(HDL)コレステロールが減りますので、このことが動脈硬化を進めることになるのです。

また中性脂肪が低い値の場合、肝硬変や甲状腺機能亢進症などの肝臓の病気の原因となることもあります。自覚症状がほとんどなくわかりづらいとされていますが、低い状態が続くと良い状態ではないとされています。

詳しくは、中性脂肪の基準値とは?高くなる原因や下げる方法を紹介!を読んでおきましょう。

中性脂肪のコレステロールへの影響

中性脂肪とコレステロールの関連性はあるのでしょうか?

実は中性脂肪が増えると、それに伴い悪玉(LDL)コレステロールが増えやすくなり、善玉(HDL)コレステロールが減るため、間接的に動脈硬化を進めることに繋がります。

脂質代謝異常症の診断基準

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脂質がコレステロールと中性脂肪に分けられるということで、説明させていただきましたが、コレステロールと中性脂肪のこと、それがどのようになると脂質代謝異常が起こり、どのような病気を引き起こすかについては、理解して頂けましたでしょうか?

それでは、脂質代謝異常症と診断される基準とは何でしょうか?

皆さんは、健康診断や人間ドックを受診されておりますか?そこでは必ず、コレステロールと中性脂肪の値がチェックされています。脂質代謝異常症と診断されるには、下記の基準があります。

  • LDLコレステロール 140mg/dl以上
  • HDLコレステロール  40mg/dl未満
  • 中性脂肪      150mg/dl以上

(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007度版、日本動脈硬化学会)

これは、早朝空腹時の血液検査で診断されますが、上記3つの項目のうち、1つでも当てはまる場合、脂質代謝異常症と診断されます。

なお、学会のガイドラインによると、総コレステロールの数値よりも善玉(HDL)コレステロールと悪玉(LDL)コレステロール の数値を重視するようになっています。

脂質代謝異常症と診断されたら?症状は?

実は、脂質代謝異常症と診断されても、大半の患者さんは症状が全くありません。

しかし、しばしば皮膚や手足の腱にコレステロールの成分がたまることで、皮膚に結節というしこりができたり、腱の一部が大きくはれることがあります。

また黒目のふちに沿って白い色素沈着がみられることがあります。これは、コレステロールの白い色素があらわれたものです。いずれも悪玉(LDL)コレステロールが高くなっていることにより起こります。

また中性脂肪が高い患者さんが膵炎をおこしてしまった場合は、下痢や激しいお腹の痛みやはき気をもよおすことがあります。

さらに怖いのはこの脂質代謝異常症の合併症として引き起こされるのが、先に書いた狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や閉塞性動脈硬化症ということです。心臓に起きる心筋梗塞や狭心症は、胸の痛みや圧迫感が特徴的な症状です。脳梗塞つまりろれつがまわらない、手、足が麻痺する、また、意識がなくなるといった脳への障害が現れることがあります。

脂質の中でも、善玉(HDL)コレステロールについては基準値よりも少ないほうが問題であり、日本動脈硬化学会が、高脂血症から脂質異常症に呼び名を置き換える方針を出しました。

考えられる脂質代謝異常症の原因

脂質代謝異常症となる原因は何でしょうか?

脂質代謝異常症は、悪玉(LDL)コレステロール、善玉(HDL)コレステロール、中性脂肪の異常により引き起こされることが分かりました。

原因としては、生活習慣の乱れにあることが多いのですが、実はしばしば遺伝的な要因である場合があります。それは、家族性高コレステロール血症とも呼ばれ、その場合は生活習慣の乱れが原因とは限らないものです。このような場合には家族調査を行うことがあります。

また、女性では閉経後悪玉(LDL)コレステロールが上がりやすくなる傾向があります。女性ホルモンのバランスが変化することにより悪玉(LDL)コレステロールの代謝が低下するものです。

つまり、脂質代謝異常症は、遺伝や他の病気によっても起こるものですが、8割程食生活に下原因があるものといわれています。欧米型つまり食生活が脂肪摂取が多いものになったことによって、近年日本人にも中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロール値が高い人が増えてきました。

特に子どもたちも脂質の多い食事を提供するファーストフード店を気軽に利用するようになったことから、子どもたちの脂質代謝異常症が肥満大国アメリカに追いつく勢いです。

このままでは、日本の脂質代謝異常症の人口は増え続けてしまうと考えられています。糖分も中性脂肪を増やす原因となります。普段口にすることが多い清涼飲料水にも糖分が多く含まれており、過剰摂取には充分気をつける必要があります。

脂質代謝異常症の治療方法

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脂質代謝異常症の治療方法を紹介します。

食事療法

過食の改善が必要な場合、摂取カロリーの見直しが勧められます。

適正摂取カロリーは、一般的に1日あたり、標準体重×25~30kcal(標準体重(kg)=[身長(m)]2×22)といわれています。

悪玉(LDL)コレステロールが高い場合は、コレステロールが多い食物の過剰摂取に気をつけましょう。善玉(HDL)コレステロールが低く中性脂肪が高い場合は、脂肪の多いものや揚げ物甘いものをひかえることが大切です。

食物繊維をしっかりとること、また悪玉(LDL)コレステロールは酸化することにより血中にたまりやすくなるため、それを防ぐために緑黄色野菜特にビタミンEやAを多く含んだものをしっかり摂ることも大事です。アルコールを控えめにすることは大きな効果が期待されます。

運動療法

ウォーキング1日30分くらいを週3日以上行うのは効果的でしょう。しかしながら、心臓病などのある場合は、あまりお勧めできないこともありますので、主治医との相談が必要です。

3.薬物療法

・悪玉(LDL)コレステロールを下げる薬の処方

肝臓のコレステロール合成を抑える薬や、腸管でのコレステロール吸収を抑える薬など。

・中性脂肪を下げる薬

中性脂肪の代謝を促進する薬の処方。(ただし中性脂肪が高くなる原因のほとんどは生活

習慣の乱れによるもののため、薬だけではなく生活習慣の見直しが重要。

・飲み薬の効果が不十分な場合、血液浄化の機械(透析のような)を使用して、悪玉(LDL)コレステロールを除去する場合もあります。

脂質代謝異常症を予防、改善するには?

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脂質代謝異常症は、自覚症状が乏しいものですが、健康診断または人間ドックで診断されることが分かりました。受診さえすれば、必ず分かる症状と言えますね。

また、発症の原因が生活習慣に多くあるということも分かりました。それでは、事前に予防も改善もできるということですね。具体的にどうしたらよいでしょうか?

キーポイントは、運動とバランスの良い食事!

予防には、他の生活習慣病と同様、よく運動し、栄養バランスのよい適量の食事をとること、これしかないですね。実際診断された方は、個々に処方が変わってきます。

心筋梗塞や脳梗塞を起こしたり、高血圧、高血糖、肥満をともなっている場合は悪玉(LDL)コレステロールの目標値は高くなり、食事制限も厳しくなります。

ですが、標準体重で、中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールの値が基準値内にあり、善玉(HDL)コレステロールも基準値を超えていれば、気をつけるべき食生活のポイントと現在の食事を見直すことができれば改善につながります。

それには、完璧な食生活を続けるよりも、無理せず長続きできる方法を用いたほうが良いと考えます。

また摂取する脂肪は肉類よりも魚の脂肪や植物性脂肪がよく、なぜかといえば、魚や植物性の脂肪には、悪玉(LDL)コレステロールを減らし、善玉(HDL)コレステロールを増やす効果があるからです。

しかし、動物性脂肪をまったくとってはならないということではなく、また実は悪玉(LDL)コレステロールを減らすという植物油は、とりすぎた場合は善玉コレステロールが減る原因となりますので注意が必要です。神経質にならなくて良いと思いますが、要はバランスなんですね。

まとめ

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脂質代謝異常症は、健康診断や人間ドックの血液検査で必ず分かるものというものです。診断された場合でも、必ず治療が必要ということではありません。患者さんによって個々に脂質管理の目標値が設けられています。

先に書きましたように、脂質代謝異常症の治療の目指すところは、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や閉塞性動脈硬化症をいかに防ぐかということと、すでに既往のある患者さんの再発を防ぐかということです。

診断された脂質管理の目標値に向かって生活習慣を改善していく必要があります。また、患者さんの病状に見合った薬物療法が提示されることもあります。

まずはバランスの良い食事、運動を心がけて、予防したいものですね。もし診断されても、改善に努めて、大きな血管の病気につながらないようにすること、個々人にあった生活習慣改善方法を実践して、健康寿命を延ばしていきたいものですね。

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これらを読んでおきましょう。

  
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