炎症反応とは?種類や検査方法、症状について知っておこう!

「血液検査を受けて、『炎症反応があります』と言われたけど、一体何がどうなっているのかいまいちわからない・・・」とか「血液検査後、『CRPの値が高いですね』と言われて、意味がよくわからない・・・」とお悩みの方も少なくはないのではないでしょうか?

あるいは、「炎症反応を起こしているようなので、安静にして様子を見てみましょう。」と、医師から言われて、何をどうして良いかわからない方も多いのではないでしょうか?

医師から、そんな指摘を受け、「心配だけど、言葉の意味がわからずにそのまま・・・」と苦しんでいる方あるいは、悩んでお過ごしの方のために、これから、炎症反応についてお話ししたいと思います。

炎症反応とは

睾丸の痛みと炎症

「炎症を起こしている」と医師に言われたことのある方は多いかと思いますが、実際に「炎症って何?」と尋ねられると、一般の方では、きちんと答えられる方は少ないかもしれませんね。かつて、私もその一人でした。

まずは、そんな方のために、炎症の一般的な意味について辞書の定義を確認しておきましょう。

炎症

細菌感染・化学的作用・物理的作用などによる組織の障害に反応して、身体の一部に発赤・腫脹・疼痛・発熱などを起こすことおよびその症状。異物の侵入または異物化した組織を排除しようとする生体の防御反応。

広辞苑第五版 岩波書店

言葉の定義からすると、炎症とは、何らかの組織の障害に反応して人体が反応する作用や症状を指しているようですね。ついでに、英英辞典でもその意味を確認しましょう。

inflammation n.

A condition in which a part of the body becomes red, sore and swollen because of infection or injury:

(感染あるいは障害のために、身体の一部が赤みを帯び、痛み、腫れ上がる状態。)筆者訳

OXFORD Advanced Learner’s Dictionary

こちらも、広辞苑同様、何らかの原因により、身体に異常をきたして反応している状態ですね。

広辞苑には、異物や異物化した組織の排除ともあるので、免疫についても調べてみましょう。

免疫

生体が疾病、特に感染症に対して抵抗力を獲得する現象。自己と非自己を識別し、非自己から自己を守る機構で、脊椎動物で特に発達。微生物など異種の高分子(抗原)の体内への侵入に対してリンパ球・マクロファージなどが働いて特異な抗体を形成し、抗原の作用を排除・抑制する。細胞性免疫と体液性免疫とがある。

広辞苑第五販 岩波書店

こちらも英英辞典で意味を確認しましょう。

immunity n.

The body’s ability to avoid or not be affected by infection and disease:

(感染や病気を避ける、もしくは感染や病気に冒されないようにする身体の力)

OXFORD Advanced Learner’s Dictionary

炎症にせよ、免疫にせよ、英語の定義の方が、平易に書かれていて理解しやすいのではと思います。抗原の体内への侵入に対して、「特異な抗体」を形成し、抗原の作用を排除して抑制するしくみなんですね。

つまり、炎症反応とは、人体の正常な防御活動のことであり、異物が侵入してきた際に人体がその異物の悪影響を排除するーそんな役割を担っているのです。

炎症反応の原因としくみ

炎症という言葉、実はギリシア・ローマの時代までさかのぼることができる古い医学用語で、発赤、はれ、熱、痛みの4つを特徴とする病変のことを指します。現在では、これに動かすことのできない機能障害を加えて炎症の5徴候とも呼ばれています。

炎症の原因

炎症の原因は、物理的・化学的外力や微生物など、何らかの刺激に対して生体組織の示す一種の防衛反応とされています。まとめると、以下の3つを挙げることができます。

  1. 物理的因子
  2. 化学的因子
  3. 生物学的因子

物理学的因子

機械的な外部からの圧力、あるいは、電気、紫外線、放射線、高温によるやけどや低温による凍傷など、一定以上の刺激が加わると、炎症の原因となることがあります。

化学的因子

重金属や有機溶剤による中毒、酸またはアルカリなどによる腐食など、化学物質による障害が炎症の原因となるときもあります。

生物学的因子

細菌や真菌、ウィルス、原虫、寄生虫など病原体の侵入によっておこる感染症もまた、炎症の原因になります。

炎症のしくみ

退行性病変

上記のような原因によって、人体の組織に障害が起きると、軽い変性から壊死に至る退行性病変が起きます。すると、破壊された細胞や血小板などから、ヒスタミンやロイコトリエンなどといったさまざまな化学伝達物質が放出されて炎症が引き起こされます。

循環障害

充血やうっ血、血行静止などといった血流の循環障害が起こります。

血しょうたんぱくの滲出(しんしゅつ)

放出されたヒスタミンなどの化学伝達物質は、血管を拡張(炎症充血)し、血管壁の透過性を亢進(こうしんー神経や脈拍などが高まり進むこと)させます。そのために、白血球、特に、中性好性白血球が血しょうたんぱくとともに血管外に出る滲出が起きます。

このようにして、ヒスタミンなどの化学伝達物質の作用により、炎症細胞が炎症局所に集中し、集まった細胞から放出されるタンパク質分解酵素などによって炎症が拡大します。

除去と修復

組織の障害が治ると、人体内では、残った有害物質や壊死した組織の除去、および、欠損した組織の修復作業が行われます。リンパ球は、免疫反応を通じて病原を排除し、中性好性白血球が処理しきれなかった病原体や壊死細胞は、マクロファージが貪食します。

そして、欠損した組織は、線維芽細胞や細網組織、細胞間組織の増殖が起こり、それによって作られた膠原繊維が欠損部分を埋めて修復します。

このような修復の過程で、除去された老廃物の運搬、あるいは修復に必要な栄養素などの運搬のために、毛細血管が構築されて肉芽組織が形成されます。修復が進むにつれ、毛細血管は徐々に減少していき、膠原繊維が増殖していきます。すると、肉芽組織にかわって瘢痕組織という繊維性組織に変性していくのです。

炎症反応の血液検査

免疫

血液検査と炎症反応

血液検査を受けてCRP値を調べると、病状や進行状態を把握することができます。したがって、病気を確定する検査としてだけではなく、治療中にCRP値を調べて炎症反応の程度から病状の程度を知ることができます。

  • CRP基準値ー0.00〜0.30mg/dL

平常の健康状態のCRP値の数値です。特に問題はありません。

  • CRP値0.6〜2mg/dL

通常の健康状態よりも少し高めの数値です。炎症の初期や病気の治癒中、あるいは風邪などの感染症の範囲内です。感染症などにより、一時的に数値が上昇する場合があるので、治癒後に再検査することもあります。

  • CRP値2〜10mg/dL

炎症反応としては中間の数値であり、悪性腫瘍や心筋梗塞、関節リウマチなどの可能性がありますので、さらに検査が必要となります。

  • CRP値10mg/dL以上

重度の感染症や腫瘍、関節リウマチの進行が考えらえます。また、手術を受けて術後の経過観察時にも見られることがあります。

炎症反応の種類

炎症には、いくつかのタイプがあります。

  1. 変質性炎
  2. 滲出性炎
  3. 増殖性炎
  4. 特殊性炎(肉芽腫性炎)

変質性炎

細胞や組織の変性や壊死が見られても、滲出や増殖が生じていないような状態を変質性炎と言います。肝細胞の変性や壊死が見られるウィルス肝炎や火傷に見られる症状です。

滲出性炎

炎症を起こした部位の循環障害と血液成分の滲出に特徴があり、その滲出成分によって以下のような分類があります。

  • 漿液性炎(しょうえきせいえん)

ほとんど血清(血しょうからフィブリンを除く成分)と同じような成分を滲出する炎症です。この場合、火傷のときに炎症となる水泡や虫刺されのあとの腫れ、アレルギー性鼻炎などがあてはまります。

  • 線維素性炎

肺や胸膜、心外膜などに見られる多量の線維素(フィブリン)が溶液、または溶融状態から血しょうが分離して出てくる特徴を持つ炎症です。大腸粘膜に多く見られる粘膜の線維素炎に壊死が伴う場合、偽膜性炎と呼ばれています。

  • 化膿性炎

膿瘍や蜂窩織炎などが含まれる細菌感染による好中球浸潤を特徴とする滲出性炎です。

膿瘍ー組織が欠損して新しく生じた空洞中に、好中球や壊死したかたまりである膿汁が含まれる状態を指します。

蜂窩織炎ー急性虫垂炎などに見られるびまん性の好中球浸潤んと浮腫がみられます。

  • 出血性炎

インフルエンザ肺炎などに代表される出血の著しい炎症のことを言い、赤血球の血管外への漏出によるものです。

  • 壊疽性炎

急性虫垂炎などが放置されて進行する壊疽の著しい炎症は、壊疽性炎と呼ばれています。嫌気性菌が感染して加わった特殊な壊死の形態のことを壊疽と呼びます。

増殖性炎

肝硬変や肺線維症などに代表される持続性の刺激に対して引き起こされる炎症反応です。線維芽細胞の増殖がその特徴であり、慢性炎症でよく見られます。

特殊性炎(肉芽腫性炎)

結核や梅毒などに代表される増殖性炎の特異なもので、肉芽腫形成がみられます。結核菌や真菌など、処理が難しい特殊な病原体によって生じることが多いようです。

おわりに

ここまで、炎症反応についてお話ししてきましたが、今まで疑問に思っていたことやわからなかったことが少しでもご理解いただけると幸いです。

炎症反応の血液検査で判明するCRP値によって、体内の異常や病気の進行具合を知ることができます。また、CRP値により、病状などもまた、ある程度は診断できることがお分かりいただけたと思います。

CRP値は、前述したとおり、値そのものが病気を指し示す数値では決してありません。

この数値は、むしろ、体内に起こっている異常に対して、身体が正常に機能していることを表しています。

CRP値の数値が高い場合、体内で何らかの炎症反応を起こしています。したがって、その炎症反応によって出てきた血液中の成分を調べることによって、体内で起こっている病気や炎症を診察することができるのです。

万が一、CRP値の数値が高い場合は、医師の診察を経て指示に従って、適切な処置を受けられるようにしましょう。

大切なのは、このCRP値を押し上げる原因となっている炎症を引き起こしている病気の特定とその治療です。

医師の適切な治療を受けて、健康な身体を取り戻しましょう。

  
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