先日、勤務先の提携病院で定期健康診断を受けました。結果を見ると、「総コレステロール値が高めです。食事に注意してください」とのこと。
ところが、友人の結果は、「総コレステロール値が低めです。食事に注意してください」と書いてあったのです。コレステロールは悪いもので、低ければ低いほどいいと思っていましたが、どうやらそれは間違いだと分かりました。
そこでここでは、健康のバロメーターであるコレステロールについての基本的な知識や、その異常値による症状、また、対処法について学びたいと思います。
この記事の目次
◆コレステロールとは?
コレステロールと聞くと、とにかく悪いもの、というイメージですが、そもそもコレステロールとは何なのでしょうか?
人間が生命を維持するうえで必要なのが、タンパク質、炭水化物、脂質の3つの栄養素です。コレステロールは、その中の「脂質」に分類される栄養素で、体内で循環している量の半分は、血液中を流れています。
コレステロールには、大きく分けると4つの役割があります。
○細胞膜の形成
私達の体は、約60兆個の細胞でできていると言われます。これらの細胞は、細胞の内と外を隔てる細胞膜で包まれています。この細胞膜を構成する成分の一つがコレステロールです。
細胞膜は、細胞の中にウィルスなどが入り込むのを防ぎ、細胞の中身が外に出てしまわないように、巧妙な構造になっています。この細胞膜の強度を保ち、免疫力を高めるために必要なのがコレステロールなのです。
○ホルモンや胆汁の材料
コレステロールは、私達の体内で作られる性ホルモンや副腎皮質ホルモン、胆汁の材料となっています。男女の生殖器で作られる性ホルモンは、性機能を維持するのに大切なホルモンです。
また、左右の腎臓の上に1つずつある「副腎」という臓器では、50種類以上の副腎皮質ホルモンが作られており、炎症を抑えたり、タンパク質や糖質をエネルギーに変える代謝に深く関係しているため、不足すると疲労を感じたり、食欲が減退します。
さらに、肝臓で作られる胆汁には、脂肪を小腸で消化・吸収しやすくする働きがあります。
○情報伝達
成人の場合、体内のコレステロールの25%は脳に存在しています。そしてその3分の1は、神経細胞付近にあります。
実は、コレステロールは、脳から体の各部分に命令が伝えられるとき、他の回路に情報が迷い込まないように、ブロックする役割を果たしており、私達の脳の情報伝達や記憶などの活動に重要な役割を果たしていると言われています。
このように、コレステロールは私達が生命を維持するのに必要なものです。1日あたり必要なコレステロールの量は、成人で1,200~1,300mgといわれますが、その約7~8割は、体内で作られます。そこで、食べ物から補給する必要があるのは1日に200~300mg程度です。
ちなみに、健康な人ならば、食べ物から多くコレステロールを摂取してしまったときには体の中で作る量を少なくするよう調節機能が働きます。
◆コレステロールには善玉と悪玉がある
一口にコレステロールと言っても、「悪玉コレステロール」「善玉コレステロール」の2種類があります。ここでは、それぞれについて学びます。
○悪玉コレステロール
悪玉コレステロールは、英語では「low density lipoprotein cholesterol」と言われ、健康診断の結果では、よく「LDL」と表記されています。
コレステロールは肝臓などで作られ、血液によって体内の必要な場所に運ばれますが、コレステロールは脂質ですから、水が主成分の血液に溶けません。そこで、水に溶けやすい形に変化して血液に溶け込みます。
その水に溶けやすい形状の一つであるLDLは、体内の隅々の細胞にコレステロールが行き届くのに重要なのですが、増えすぎると血液がドロドロの状態になって、血管の壁に溜まり、動脈硬化の原因となってしまいます。
付着したコレステロールが酸化したり、それを食べに来た白血球がくっついたりして、血管が固くぼろぼろになってしまうのです。
それで、「悪玉コレステロール」と呼ばれるのですね。
○善玉コレステロール
善玉コレステロールは、英語では「high density lipoprotein cholesterol」と言われ、健康診断の結果では、よく「HDL」と表記されています。
HDLは、血管などに溜まっている悪玉コレステロールを回収して、肝臓に持ち帰る働きをしています。血液中を流れるコレステロールは、肝臓に戻されると胆汁やホルモンの原料となるため、動脈硬化を防ぐ働きがあるのです。
それで、「善玉コレステロール」と呼ばれるのですね。
HDLは肝臓や小腸、血液などで作られていますが、タバコやお酒ののみすぎ、運動不足はこれらを減らしてしまいますので、日常生活の改善が大切です。
特に、栄養素が少なく、カロリーやトランス脂肪酸などが多く含まれている食べ物を摂ると、体内の中性脂肪の量が増え、HDLを減らし、LDLを増やしてしまいます。
このコレステロールの値の正常値は、
- 総コレステロール値……120~219
- LDLコレステロール値……70~139
- HDLコレステロール値……40以上
と言われますので、健康診断の結果を元に判断してください。
◆コレステロールが高いと起こる症状は?
それでは、コレステロールの値が基準値を超えると、どのような症状となって現れるのでしょうか?ここでは、コレステロールが高いことによって引き起こされる代表的な症状を紹介しましょう。
○心筋梗塞、狭心症
狭心症とは、心臓の筋肉を動かしている細胞に酸素や栄養が行き届かなくなり、胸が締め付けられるような痛みを覚えることを言います。
さらに、その状態から細胞が壊死してしまうと、心筋梗塞と言われます。
コレステロールが高いと、血管が詰まりやすくなります。酸素や栄養を運んでいる心臓の冠動脈という血管が動脈硬化を起こし、詰まってしまうと、これらの致命的な症状が起きてしまうのです。
○脳卒中
脳卒中とは、脳の血管に問題が起きて発生する症状のことで、大きく分けると「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3種類に別れます。
脳梗塞とは脳の中の血管が詰まって、その血管が運んでいた酸素や栄養が行き届かなくなり、その先の細胞が壊死してしまったことを言います。
脳出血は、脳の血管が破裂して脳内に出血した状態であり、意識がなくなったり、手足が動かせなくなったりします。
くも膜下出血とは、脳を覆っているくも膜という膜と脳の間に出血した状態であり、ガツンと殴られたような激しい頭痛を感じます。
コレステロールが高いと、脳の血管が詰まったり、破裂しやすくなってしまうので、これらの症状が起こりやすくなるのです。
◆コレステロールが低いと起こる症状は?
ここまで述べてきたとおり、総コレステロールは数値が高いと危険ですが、実は、低すぎても健康を著しく害してしまいます。
先ほどの悪玉コレステロール(LDLコレステロール)には、体中にコレステロールを運搬する役割があります。コレステロールは、細胞膜の原料となっているため、少ないと細胞膜の働きが弱くなり、体内への病原菌の侵入を防ぐ働きが弱まってしまいます。
その結果、少なすぎても脳出血や脳卒中、がんのリスクが高まると言われています。
喘息が持病だと、コレステロールが不足することによって症状が悪くなってしまう可能性もあるのです。
○自殺率が上がる?
コレステロールは脳内に多く存在していると述べましたが、これが少ないと、精神の安定、安らぎをつかさどる脳内ホルモンであるセロトニンの伝達経路が安定しなくなり、本来伝わるべき神経に届かなくなってしまいます。
すると、自殺率が上がったり、攻撃的な言動やうつ病になりがちになってしまうのです。
コレステロールが不足している人たちは、うつ状態が進むのが早く、年をとるほどその進行スピードが早まることが知られています。東京都老人総合研究所が、秋田県のある村の65歳以上の住民504人を対象に、4年間追跡調査を行ったところ、LDLコレステロールが不足していると、うつ状態の傾向が高いと判明しました。
○肝機能障害
コレステロールは胆汁酸の原料となるため、不足すると肝臓の機能が悪化し、「肝硬変」や「肝炎」など肝臓の病気を引き起こす場合があります。
そうなると、更に肝臓でLDLコレステロールが作られなくなり、悪循環が起こってしまいます。
○老化の促進
コレステロールが不足すると、体内では、足りないコレステロールを補おうと、肝臓などで一生懸命コレステロールを作ります。その時、活性酸素も同時に発生してしまいます。
活性酸素は、他の物質と反応しやすい状態になった酸素のことで、これが体内の細胞を攻撃して、シミを増やしたり、がんのもととなったり、動脈硬化を引き起こしたりするのです。
そのため、コレステロールの不足は老化を促進する事にもなります。
○甲状腺機能亢進症
甲状腺とは、喉仏の下にある器官で、血流にホルモンを分泌することで、代謝を正常に保つ機能を持っています。
甲状腺機能亢進症とは、この甲状腺からホルモンが分泌されすぎることによって、全身の代謝が高くなってしまう病気です。
イライラしたり、全身に震えが来たりします。代謝が上がるので、暑がりになり、体重が異常に減少したりすることがあります。
この甲状腺機能亢進症のため、体内のコレステロールがエネルギーになってしまい、不足してしまっている可能性もあります。
◆総コレステロールが低い場合の対処法は?
それでは、総コレステロール値が低すぎる人は、どうすればよいのでしょうか?それには、コレステロールがたくさん含まれている食材を食べるのがよいとされています。
例えば、卵やレバーなどに良質なコレステロールが多く含まれていますので、コレステロールが低すぎる人は、これらを使っている料理をふんだんに摂るようにするとよいでしょう。
◆まとめ
いかがでしたか?
コレステロールは一般的に悪いもの、というイメージが強いのですが、実際には、多すぎても少なすぎても良くないものであることが、お分かりいただけたかと思います。
定期健康診断の結果を見れば、自分の体内の総コレステロール値が分かりますので、健康を維持する目安として、適度なコレステロール摂取量を保つようにすると良いですね!
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