私たちの生活で欠かすことができないのが、日本では当たり前のように手に入る「水」です。料理や洗濯など、日常生活においてだけではなく、生命維持にも不可欠な存在です。
人間の身体は、半分以上が「水」でできていると言われています。そして、細胞を維持したり、老廃物を運んだり、体温調節をしたりと、生命を維持するための大切な役割を果たしています。
そのため、最近では、健康や美容のために、水をこまめに飲むなどの健康法がよく見られるようですが、注意したいのが、「水は腐る」ということです。無味無臭で、透明の水を見ると、あまり腐るといったイメージを抱かない人も多いかもしれませんが、私たちが飲料水として手に入れる水は全て、腐ります。
そこで、ここでは、健康のためにミネラルウォーターなどを持ち運んでいる人には、ぜひご覧いただきたい、水が腐る原因や、対策方法などをご紹介いたします。
水は本当に腐るのか?
私たちがスーパーやコンビニで手軽に買えるペットボトルのミネラルウォーターを見ると、とても水が腐るとは思えません。さらに大容量の水が入っているウォーターサーバーなどを見ると、水が腐るのであれば、あの量が入っているとなると、大問題です。
それでは、腐る水と腐らない水があるのでしょうか?その謎は、どうも水に含まれる成分に関係しているようです。
腐るってどういうこと?
では、そもそも「腐る」とはどのようなことを示すのでしょうか?腐るということを、別の言葉で「腐敗」と言いますが、腐敗は、腐敗微生物や腐敗細菌と呼ばれる物質が、そこに含まれるタンパク質を分解することで生じます。そして、分解する際に有毒な悪臭を発生させるため、腐ったものは異臭を放ちます。
すなわち、腐るものには、そこにタンパク質などを含む有機物が含まれているということです。そして、さらに、そこに微生物や細菌が入り込んでいるという証拠であるとも言えるでしょう。
また、それらに加えて、微生物や細菌がその中で死んでしまって「死骸」となったまま残ると、その死骸もまた、腐敗していくのです。
発酵と腐敗の違いは?
腐敗に似た作用をもたらす現象として「発酵」という分解作用もあげられます。私たちの食生活でもよく登場する納豆やヨーグルト、ぬか漬けなども、「発酵作用」があって初めてできるものです。
実は、発酵と腐敗は、どちらも微生物や細菌によって、有機物が分解されたものを示しているのですが、分解するときに生産する物質によって、以下のように言葉を使い分けているようです。
<発酵>
微生物や細菌が糖類を分解することによって生じる作用。分解後は、乳酸、アルコールなどが生産される。
<腐敗>
微生物や細菌が、タンパク質やアミノ酸などを分解することによって生じる作用。分解後は、硫化水素やアンモニアなどの悪臭を放つ物質を生産する。
水が腐る場合は、タンパク質などの有機物を分解されることで生じるので、「腐敗」のほうに類されるというわけです。
純水ならば腐らない
水の化学式をご存知でしょうか?皆さんも一度は目にしたことがあるかもしれません。水は、化学式で表すと、「H2O」です。すなわち、「H2(=水素)」と「O(=酸素)」でできている化合物です。
このような純水は、無機物で炭素を持っていないため、本来であれば腐ることはないと言われています。
しかし、このような純水は、自然界には存在しません。純粋というのは、水を加熱して出る水蒸気などで人工的に生産されています。これらは文字どおり、不純物を含まないため、精密機械の洗浄や、実験で使用するために、工場などでよく使用されています。
また、「純水」と聞くと、美味しそうに感じますが、味はと言うと、水素と酸素しか含まれていない水は決して「美味しい水」とは言えないのだそうです。ミネラルなどの成分が含まれているからこそ、水が美味しくなるのだと言います。
市販されているペットボトルのミネラルウォーターにも「ミネラル」という言葉がついているように、ミネラル分が含まれ、美味しい水として販売されているというわけです。ところが、前述のように、純水ではないため、腐ってしまいます。
塩素で消毒されている水も腐るのか?
私たちの日常生活で、密接に関係している水道水はどうでしょうか?水道水は、市販のミネラルウォーターなどと同じように、カルシウムやナトリウムなどのミネラルに加え、炭酸ガスや窒素ガスも含まれています。
しかし、浄水器をお使いの方ならばわかるかもしれませんが、水道水にはそれらに加え、雑菌を消毒するための塩素(カルキ)が含まれています。これは、水を腐りにくくしたり、菌が増殖するのを防ぐためですが、蛇口から出てきた水をそのまま放置しておくと、塩素は抜けてしまいます。
よく、金魚や熱帯魚などの水槽のお水を換える際に、水を1日直射日光に当てる作業を行いますが、あれは塩素を抜くためです。塩素は、早い場合には1日、遅くとも数日で抜けると言われており、直射日光にさらした場合には、数時間で抜けてしまいます。
塩素が抜けた水には、消毒効果はありません。ですので、そのまま放置しておくと、徐々に濁って腐ってしまうのです。
ちなみに、日本は世界の中でも、安全な水が飲める貴重な国として知られています。水道水をそのまま口にできる国はとても少ないのだそうです。
日本の水道水は、蛇口から出る水をできるだけ無菌状態で届けるために、塩素が使用されています。
水が腐るとどうなるのか?
コップにお水を入れて、そのまま放置し続けると確認することができますが、水が腐ると、白く濁ります。あるいは、沈殿物が白く出てくることもあるようです。そして、先にもご紹介したように、微生物たちが有機物を分解する過程で発する悪臭のため、匂いも変わります。
どのような水が腐りやすいのか?
日本の水道水は水道法に基づき消毒されているため、蛇口から出てくる水が腐っているということはありませんが、塩素が抜けると腐ってしまいます。また、安全性を考慮して、飲んでも問題ない程度の量の塩素ですので、すぐに抜けてしまうことは容易に想像がつくことでしょう。
それでは、そのほかに「腐りやすい水」にはどのようなものがあるのでしょうか。私たちの身の回りにある様々な水を例に、見ていきましょう。
浄水器を通った水
塩素や、塩素によるカルキ臭さ、水道水に含まれる不純物が気になるという方は、浄水器をご家庭に設置していらっしゃる方も多いのではないでしょうか?確かに、浄水器を通った水は、水道水に比べると不純物も少なく、すぐに飲む分には大変便利な機器と言えます。
しかし、問題は、時間経過です。例えば、節約のために浄水器の水をペットボトルに入れて持ち歩くという人もいるようですが、浄水器を通った水は、塩素も除去されています。すなわち、保存性がない、ということです。
そして、ペットボトルを開けるたびに、その水は空気に触れてしまいます。空気に触れるということは、腐敗微生物や細菌がそこから侵入する可能性があるということです。保存性のない水に、どんどんそれらが侵入すると、もちろんその水は腐りやすくなってしまいます。
開封したペットボトルのミネラルウォーター
市販されているペットボトルの飲料水の場合も、浄水器の場合と同様です。ミネラルウォーターは、ボトルに充填する前に煮沸したり、フィルターを介すといった処理方法で綺麗な水にされていますが、もちろん塩素は使用されていません。
こういった処理方法は、「ミネラルウォーター」「ナチュラルウォーター」「ナチュラルミネラルウォーター」などで大きく異なります。同じ水でも、このように呼び方が違うのは、処理方法が異なるためです。
このように丁寧に処理されたミネラルウォーターは、賞味期限内であれば、未開封の間は美味しく飲むことができますが、一度開封してしまうと、そこへ微生物や細菌、空気中の有機物も入り込んでしまいます。するとやはり、浄水器の水と同じように、腐りやすくなってしまうのです。
煮沸後の冷めた白湯
健康や美容のために、白湯を飲んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか?水道水を一度煮沸させたものを白湯と言います。白湯は、身体の代謝を良くして、老廃物などを排出してくれると言われており、身体のためには非常に良いものです。
また、水道水に含まれる塩素は、水中で殺菌作用を起こす際に「トリハロメタン」と呼ばれる物質を発生させます。この物質は、発がん性物質としても知られているため、飲んでも身体には問題ないと言われていても、気になる人は気になってしまうでしょう。
しかし、白湯を作るときに、20分以上煮沸させることで、このトリハロメタンを除去することができます。そういった意味でも、白湯は身体に優しい飲み物であると言えるかもしれません。
ところが今度は、煮沸させると、塩素や発がん性物質が抜けて、身体には安心して飲めるお湯になる反面、菌を殺菌する成分がなくなってしまうので、そのまま放置しておくと危険です。
白湯が熱いうちは問題ないのですが、冷めた状態になると、菌も繁殖しやすくなるので、冷めてから時間の経った白湯は、腐りやすくなってしまいます。
やかんに沸かしたお湯をそのままにし、さらにその後、残った水を使用する人もいるようですが、できるならばその都度、やかんのお湯は使い切るのが理想的でしょう。
ウォーターサーバーの水
ウォーターサーバーの水が腐りやすいなんて危険じゃないかと驚く人もいますが、これは、ウォーターサーバーの蛇口から出たあとの水についての話です。
市販のミネラルウォーター同様に、ウォーターサーバーの水には塩素や保存料は含まれていません。ですので、コップに注いだ水をそのまま放置しておくのはやめましょう。
しかし、ウォーターサーバー内の水は腐りにくいと言われていますので、安心してください。製造過程で、殺菌されて無菌状態の水を、微生物などが侵入しないように充填・密封されていますので、簡単に腐ることはありません。
また、サーバー機器自体にも、雑菌処理するための装置が搭載され、注ぎ口から水を注ぐ際にも腐りにくくなるようになっています。
流れのない水
そもそも水は、川のように常に流動しているものは、腐らないと言われています。それは、常に流動することで、水に酸素が供給され、有機物の分解が上手く行われるためです。
逆に、流れのない水を見てみるとどうでしょうか。例えばため池や水槽など、流動することのないまま水を張った状態では、藻が発生します。水槽が緑色になったり、時期を終えたプールが緑色になっているのを皆さんも一度は見たことがあるかもしれません。
藻の量が増えると、水面を藻が覆うため、水中に日光が届かなくなってしまいます。すると、日光を浴びて光合成することで水中の酸素を生産している水草などが、上手く光合成できなくなってしまうため、酸素を水中に供給することができなくなってしまうのです。
酸素濃度が低下した水中では、生物が生きていくのが難しく、死んでしまいます。その死骸たちが、水の腐敗を招いてしまうというわけです。
公園などに噴水が設置されているのは、水を循環させることで、こうした水の腐敗を防ぐことを目的としていると言われています。
ではここで、マメ知識として、井戸水の話をご紹介しましょう。
<井戸水は腐る?腐らない?>
地下数メートルから組み上げる井戸水は、腐らないのでしょうか。そう疑問に思っていらっしゃる方も多いかもしれません。とくに、井戸水の仕組みを知らない若い人などは、井戸水と聞くと、あまり清潔なイメージを持たない人も少なくないようです。
しかし、井戸水の水源は何かと言うと、地下水です。地下水は、文字通り地下を流れている水で、常に流動しています。すなわち、水槽の水のように溜まっている状態ではないので、腐りません。
ところが一方、別の問題もあるようです。まず一つ目が、絶対に水が流動した状態であるとは限らないということです。井戸によっては流れが停滞しているところもあるでしょう。
さらに二つ目は、水質の問題です。場所によっては、井戸水から有害物質が発見されたというケースがあり、様々な有害物質の検出が報告されている場所もあるようです。
綺麗な場所の井戸水は、不純物も少なく、ミネラルも豊富なため、非常に身体にも良いと言われているのですが、この2点は注意事項としてあげられています。
水の賞味期限や保存方法は?
食べ物の賞味期限は、ごく当たり前のように確認しますが、普段、水の賞味期限を確認する人はあまりいないのではないでしょうか。
しかし、実は、水にも賞味期限があります。災害用にペットボトルの水を備蓄している人もいるかもしれませんが、それらを飲み水として備蓄してる場合には、念の為に賞味期限を確認しておいたほうが安心かもしれません。
また、開けてしまったペットボトルの水などを、少しでも長持ちさせるためには、どのように保存すれば良いのでしょうか。早速見ていきましょう。
ミネラルウォーターの賞味期限は?
ペットボトルのミネラルウォーターは、保存方法や保存状態によって、未開封の状態であればかなりの長期保存が可能になるケースもあるようです。
しかし、食品と同じように、各メーカーのミネラルウォーターや、ウォーターサーバーにも、その水を問題なく飲むための期限を定めることが決められています。そして、なるべくその期間内に使用するよう推奨しています。
どれも未開封の状態の賞味期限ですが、大体の目安としては、
<ペットボトルの場合>
- 1.5L~2.0Lのボトルで約2年
- 500mlのボトルで約1年
<ウォーターサーバーの場合>
- 未開封の状態で約6ヶ月~1年
- 開封後(サーバーにセットした後)の状態で約2週間~4週間
とされています。不明な場合は、各メーカーに問い合わせてみると確実な期限を確認することができます。
ちなみに、賞味期限とは、その商品を美味しくいただくために設けられた期間です。未開封の場合、賞味期限を過ぎたとしても腐りませんが、風味は変わってしまいます。そうなる前に、本来の味を楽しむために設けられた期間です。
一方、「消費期限」という言葉もあります。これは、明記された期限までに、確実に消費しきらなければならないというものです。
つまり、水の賞味期限を過ぎても、飲料水としては飲めますが、その水本来の味が保証されているわけではないということです。
水の保存方法は?
それでは次に、開封したペットボトルや、煮沸した白湯、浄水器の水のペットボトル保存について見ていきましょう。
まず、開封したペットボトルの水は、できるだけ早く飲むようにしましょう。やむを得ず飲みきれなかった場合は、微生物や細菌が繁殖しにくいように、以下のようなことに気をつけて保存してください。
- 直射日光に当てないようにする
- 暑い場所や気温の高い場所は避け、冷暗所で保管する(冷蔵保存がベスト)
- 直接ペットボトルに口をつけて飲まない
これらは、浄水器の水をペットボトルに入れて飲む際にも同様です。浄水器の水の場合は、すでに空いたペットボトル(除菌されていないもの)を使用することになるので、そこに何らかの有機物が入っている可能性があります。市販のミネラルウォーターよりも早めに飲みきるのが一番です。
また、白湯の場合は、煮沸させてから熱いうちに、耐熱性の保存瓶などに入れて密封しておけば、冷蔵庫で週単位で保存できると言われています。
ちなみに、未開封のペットボトルのミネラルウォーターは、中の水を腐りにくくさせるために、ごく僅かではありますが、酸素を透過させることができる構造になっているようです。そのため、保存する際に、匂いの強い食材、あるいは芳香剤などを近くに置いておくと、匂い移りすることがありますので、保存場所には十分に注意して、冷暗所で保管しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。私たちの生活で不可欠な水も、食べ物と同じように腐ってしまうのですね。ペットボトルのミネラルウォーターを飲みかけにして何日も放置しておくのは危険ですので、やめましょう。
また、「停滞させない」ことで水を腐りにくくするということを証明する面白い実験結果もあるようです。ペットボトルのお茶に振動を与えるものと、そうでないもので、腐敗の度合いを調べた結果、振動を与えたほうが、軽度の腐敗で済んだというものです。
しかしこれは、あくまで実験です。健康のためには、やはり、早めに飲みきってしまうのが一番です。美味しく水を飲んで、美容や健康に役立てましょう。
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