皮下血腫ってなんなの?症状や原因、内出血との違いを紹介!

転んで膝や腿を打ったり、身体を何かにぶつけたりすると、腫れて、青アザができますよね。放っておいても、自然に消えることもありますが、腫れたところがコブ状になって、なかなか消えないことがあります。痛みが出ることもあります。これは、皮下血腫ができたためです。

皮下血腫が頭にできると、「タンコブ」と呼ばれます。タンコブは頭を強く打った結果できるので、場合によっては生命に関わることもあります。特に、子供のタンコブは要注意です。

皮下血腫は自然に消えることが多いのですが、中にはなかなか消えず、痛みが強い場合もあります。皮下血腫の原因や症状、治療法をお伝えするとともに、タンコブの危険性についても、お話ししますね。

皮下血腫はなぜできる?

blue-blot-609635_960_720血腫

皮膚の下に皮下組織があります。血管が傷ついて出血した時、皮膚の傷口から体外へ出血するのではなく、皮下組織に出血することがあります。

皮下組織に出血することを皮下出血といいます。血管から流出した血液が皮下組織に溜まって固まったものが、皮下血腫です。

[内出血と皮下血腫は、どう違うの?]

血管が何かの原因で傷ついて、血液の全成分が流出することを「出血」といいます。血液が体表面(皮膚や粘膜)から体外に出て行けば、「外出血」です。血管から流出した血液が、組織や臓器、体腔内など身体の内部にとどまっていれば、「内出血」です。皮下組織内に起きた内出血を「皮下出血」といいます。

組織や臓器の内部で起きた内出血は、出血量によって、「点状出血」「斑状(はんじょう)出血」「血腫」といいます。血腫とは流出した血液が溜まって腫瘤状になったものです。

血腫は身体のいろいろな場所に生じます。心嚢血腫・卵巣血腫・硬膜下血腫などです。皮下組織内で血液が溜まって腫瘤状になったものが「皮下血腫」です。

[皮下血腫の原因は?]

皮下血腫の原因は、血管の障害と血液の病気の2つです。

血管の障害

血管の障害というと、何か恐ろしいもののように聞こえますが、血管が外部からの刺激で傷つくことです。ぶつけたり、打撃を受けたり、強く圧迫されたりすると、血管が傷ついて出血します。流出した血液が溜まって固まると、血腫になります。

血管が傷ついて出血すること自体は、心配要りません。出血が多量だったり、血腫が大きかったりすると、生命に関わることもありますが、通常は、見た目が悪いとか、痛みがとれないとか、その程度のことですみます。

加齢とともに、血管が弱くなります。高齢になるほど、ちょっとしたことで皮下出血を起こし、皮下血腫ができやすくなります。特に、血栓予防で血液をサラサラにする薬を服用していると、「出血しやすくなる」という副作用があります。

手術や穿刺など外科的処置を受けた後に、血腫を生じることもあります。

血液の病気

皮下血腫の原因となる病気には、再生不良性貧血・白血病・クッシング症候群などがあります。先天性疾患や内臓疾患と関わっていることもあります。

どの病気も出血しやすい傾向があるので、皮下血腫ができやすくなります。

再生不良性貧血

血液は、骨髄の中にある造血幹細胞によって造られます。この造血幹細胞が異常を起こして増殖できなくなると、赤血球・白血球・血小板のすべての血球が減少します。そのため、貧血になったり、出血しやすくなったりします。

内出血が起きやすいので、皮下出血斑や皮下血腫ができるようになります。歯肉出血や鼻出血もあります。動悸・息切れ・蒼白い顔・めまいなどの貧血症状がともないます。

白血病

白血病は血液の癌です。血液が骨髄の造血幹細胞で造られる過程で癌化して、増殖します。癌化した血液細胞が骨髄を占拠するため、正常な血液細胞が減少してしまいます。そのため、貧血になり、免疫力が低下し、出血しやすくなります。

詳しくは、白血病の初期症状を紹介!あざやかゆみなどに要注意!を参考にしてください。

クッシング症候群

脳下垂体や副腎皮質に腫瘍ができると、副腎皮質ステロイドホルモンの1種であるコルチゾールが多量に分泌されるため、さまざまな症状が現れます。これをクッシング症候群といいます。

クッシング症候群では、皮膚が柔らかく、出血しやすくなります。手足が細くなるのに、腹部は太くなります。顔はむくんで赤みをおびます。腹部や太腿の皮膚に赤紫の亀裂ができます。

この他に、血友病や膠原病など出血傾向のある病気を持っていると、皮下血腫ができやすくなります。

特に強い打撲を受けた覚えがないのに、しょっちゅう皮下血腫ができるようなら、出血傾向のある病気を疑う方がいいかもしれません。

皮下血腫の症状と治療法

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皮下血腫は自然と消えることが多いものですが、中には、皮下出血がカチカチに固まってしまって、何年も吸収されないこともあります。皮下血腫ができる場所によっては、痛みが出たり、早く取り除かないと生命に関わったりします。

皮下血腫がなかなか消えなかったり、傷んだりする場合は、摘出手術が必要になることがあります。

[皮下血腫の症状]

ぶつける、転ぶ、打たれるなどすると、打撲を受けた場所が腫れて、青または紫なります。血管が傷つけられて内出血が起きたためで、青または紫に見えるのは、皮膚のメラニン色素のせいです。内出血が皮膚表面に近いほど紫色が濃くなります。

打撲を受けた部分に皮下血腫ができると、コブ状になります。皮下血腫は、たいていの場合、熱を発します。青紫に変色したコブが熱く感じられます。

皮下血腫は痛みを生じます。関節部に強い打撲を受けて血腫ができると、動かすたびに痛みが出ます。

内出血が少量であれば、皮下血腫はしだいに体内に吸収されて消えていきます。しかし、かなり強くぶつけたり、勢いよく転倒したり、強く打たれたりすると、血管が大きく損傷して、多量の内出血が起こります。皮下血腫も大きくなり、激しく痛みます。皮下血腫が大きいと、なかなか自然消滅しません。シコリになって残ることが多いようですが、そのシコリも時間が経つにつれて小さくなります。

一度小さくなったシコリ(皮下血腫)が、再び腫れて痛みが増すことがあります。皮膚の傷などから細菌が血腫に侵入して、血腫が化膿するのです。血腫が化膿して、感染症を起こすこともあります。

皮下血腫は、皮膚の硬いところでは広がりにくいものですが、皮膚の柔らかいところでは、広がる傾向があります。また、重力の作用を受けて、腕の上部の皮下血腫が手首の方まで広がったり、腿の皮下血腫が膝へ、脛の皮下血腫が足首まで広がったりすることがあります。

時には、血腫がカチンカチンに固まってしまい、気づかずに十数年過ごすこともあります。

[皮下血腫の治療法]

ちょっとぶつけた程度で、痛みも激しくなく、皮下血腫も小さい時は、自宅で手当てすることもできます。

まず患部を、冷水や氷、アイスノンなどで冷やします。血管を収縮させて内出血を止めるようにします。安静にして、患部を動かさないようにします。患部を冷やしてから、メントール剤などの冷湿布をします。打撲を受けてから3~5日ほど経つと、患部の熱がとれます。患部の熱がとれた(炎症が収まった)ら、温湿布に切り替えて、温めます。代謝を良くして、皮下血腫の吸収を促進します。

激しく転んだり、高い所から落ちたり、野球の速球にぶつかったり、強い打撲を受けた時は、できるだけ早く整形外科を受診することをオススメします。

整形外科では、レントゲンやMRIの検査をして骨折していないかを調べます。MRI検査で皮下血腫ができていることもわかります。血腫の検査は、触診・観察の他、カテーテル検査をすることもあります。

内出血量が多く、皮下血腫が大きいと、注射器で血を抜き取ります。

打撲を受けた直後は冷湿布をしますが、数日後から温湿布に切り替えます。皮下血腫の吸収を促進するために、温熱療法・電気療法を行います。吸収を促進するヒルドイド成分を含むゲル(ローション)を塗ります。ヒルドイド成分の入ったローションを処方してくれて、「ローションを塗りながらマッサージするように」と言うこともあります。

整形外科へ行くのが遅れて血腫がゲル化したり、固まってしまったりすると、もう針で抜くことはできません。また、針で完全に血腫を抜ききれないこともあります。皮下血腫はシコリとなってしまいます。皮下血腫はたいてい1ヶ月程度で吸収されますが、シコリになってしまうと、小さくはなっても、残ることが多いようです。

皮下血腫がシコリになって残っても、特に問題はありません。ただ、身体の場所によっては気になることが多いものです。その場合は、切開してシコリを取り除きます。

切開手術の痕は、それほど大きくありませんが、傷痕は残ります。そのため、最近は、シリンジ陰圧法という血腫除去法が開発されています。針で抜き取るのが難しい血腫から固いシコリとなった血腫まで、簡単に取り除くことができると言われています。

皮下血腫の近くに傷があると、細菌感染して化膿することがあります。皮下血腫が化膿した場合は、抗生物質を投与します。

一度は小さくなった皮下血腫が再度腫れてきたり、痛みが激しくなったりした時は、できるだけ早く、整形外科の診療を受けてくださいね。

頭のタンコブは要注意!

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高い所から落ちたり、自転車やバイクで転倒したりすると、頭を強く打つことがあります。頭を強く打つと、皮下血腫の他に硬膜下血腫ができることがあります。

硬膜下血腫は脳挫傷により出血が起き、硬膜下に出血が溜まって血腫となり、脳を圧迫します。高齢者に多く、若い人はスポーツ中の頭部外傷によって生じます。子供には、ほとんど見られません。

子供で怖いのは、タンコブです。頭部にできる皮下血腫です。頭部に打撲を受けると、頭皮の下で内出血が起こり、血が溜まって腫瘤となります。

[タンコブができたから心配ないって、本当?]

「頭を打っても、タンコブができたから心配ない」と言われますが、大間違いです。タンコブができるということは、かなり強い打撲を受けて、多量に内出血しているのです。頭蓋骨骨折の可能性もあります。

頭を打ってもタンコブができなければ、それほど心配しなくても大丈夫です。

「頭を打ったけれど、血が出たから大丈夫」というのもウソです。頭部の傷は多量に出血します。傷口から細菌などが侵入して感染症を引き起こすこともあります。

「頭の傷からたくさん血が出ないのは、内部に血が溜まっているのでは・・・」と心配することがありますが、傷口からの出血と脳内出血は別の物です。

「頭を打った後で、吐き気がしたり、嘔吐したりしたら、危険だ」と、よく言いますが、子供は、ちょっとしたことで吐き気を催したり、吐いたりします。タンコブができて、吐いたからといっても、危険信号とは限りません。

「大きなタンコブができているのに、泣くこともしない」というのは、気になります。「泣くこともできない」状態かもしれません。すぐに病院へ行ってください。

[ぶよぶよタンコブは放っておけ?]

ぶよぶよしたタンコブは、皮下血腫とは違います。「帽状腱膜下血腫」といいます。帽状腱膜と頭蓋骨との間に血液が溜まります。

帽状腱膜には小さな血管がたくさん集まっているので、血液が固まってしまうことはありません。だから、ぶよぶよしているのです。ただ、握りこぶし程度の大きさになるので、重症に見えます。

ぶよぶよタンコブは自然に吸収されて消えてしまいます。消えるまでに1ヶ月ほどかかるので、心配になりますが、マッサージなどはしないでください。放っておくのが、一番の治療法なのです。

どうしても心配ならば、何もしないでお医者さんへ行ってください。

[タンコブができた子供から、一晩目を放すな]

タンコブができるということは、強い打撲を受けた証拠です。タンコブを見つけたら、冷やしておいて、すぐに病院へ行ってください。

病院で「異常はないようです」と言われても、その晩は子供から目を放さないようにします。

嘔吐は心配ないことが多いのですが、軽く見ない方がいいでしょう。ひきつけ(けいれん)を起こしたり、意識が朦朧(もうろう)としたり、ぐったりするようなら、すぐに救急車を呼びます。小学校高学年や中学生には、記憶を確認するといいですね。記憶があいまいなら、すぐにお医者さんの診療を受けてください。

私は、若い頃、学習塾で小学生を教えていました。私の生徒の一人、小学4年生の男の子が、夏休み中に亡くなりました。塀の上を歩く遊びをしていて、塀から落ちて頭を打ちました。タンコブができましたが、本人も周囲も気にしないで、そのまま野球の試合に出ました。打ち上げで大騒ぎした後、夜中に容体が急変し、救急車が来る前に息を引き取りました。30年以上経っても、忘れることはできません。

まとめ

頭部にできる皮下血腫は脳を圧迫したりして、生命に関わることがあります。頭部の皮下血腫は、できるだけ早く脳外科の診察を受けてください。

その他の場所、手や腕、腿や膝などにできる皮下血腫は、それほど心配は要りません。たいてい1ヶ月ほどで、皮下血腫は体内に吸収されて消えてしまいます。ただ、シコリができると、完全には消えにくくなります。

激しい痛みがあったり、皮下血腫が大きかったりしたら、できるだけ早く整形外科へ行くことをオススメします。皮下血腫が早く吸収されるようにしてくれます。

子供のタンコブ(頭部の皮下血腫)には気をつけてください。タンコブができたら、すぐに脳外科へ行ってください。

  
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