「いててっ!」と突然、腹部の右上に痛みを覚えたり、急に熱が出たり、という症状のある人はありませんか?
これらの症状は、ひょっとしたら、急性の胆管炎かもしれません。放置しておくと、重要な臓器に悪影響をおよぼす可能性もあるので、注意が必要です。
ここでは、胆管炎とはどのような病気か、その症状や原因、治療法などを紹介していきます。
◆胆管炎とは?
まず、胆管炎とはどういう病気なのか、胆管の構造なども含めて説明していきます。
肝臓で作られた胆汁には、脂肪分の消化吸収を助ける働きがあります。その胆汁を貯蔵するのが「胆のう」であり、胆のうは、肝臓と十二指腸の間にあります。それらの3つの器官をつないでいるのが「胆管」です。
まず、肝臓に張り巡らされている細い胆管は、川の流れのように合流し、2本の胆管になります。これが、「肝内胆管」といわれ、左右に1本ずつあります。
その左右の肝内胆管の合流地点にあるのが胆のうで、胆のうでは、胆汁の水分と塩分が吸収されて、10倍の濃度に濃縮されます。
そこから十二指腸に流れ出る管を「総胆管」と呼ばれます。十二指腸と総胆管とのつなぎ目が、「乳頭部」といわれる部分です。
食べ物が十二指腸に入ってくると、胆のうが縮んで胆汁が胆管を通り、乳頭部から十二指腸内に胆汁が排出されて、食べ物の消化を助けるのです。
これらの肝内胆管、総胆管、乳頭部までを含めて、「胆管」と呼ばれます。この胆管に炎症が発生したのが胆管炎で、胆のう炎を併発することも多いようです。
◆胆管炎の症状は?
それでは、胆管炎になると、どのような症状が現れてくるのでしょうか?ここからは、胆管炎の症状について説明していきます。
食事を摂って2~4時間ぐらいしてから、上腹部やみぞおちあたりに痛みを覚えたり、吐き気や悪寒を感じたり、熱が出たりします。
日本人は、夕食をしっかり食べる習慣の人が多いので、夜間に痛むことが多いようです。痛みは、肩や背中にまで出ることがあり、右の上腹に触れると、強い痛みを感じます。これらの痛みは、数時間以内に自然に収まるのが通常です。
また、黄疸といって、血液中のビリルビンという黄色い色素が増えていろいろな組織にたまるために、顔や腕、胸、白目の部分などに黄色みが目立ち始めることもあります。
さらに胆管炎が重症になると、これらの症状のほかに、意識障害やショックが加わる場合もあるようです。
○黄疸はどのようにして起こる?
胆管炎の主な症状として現れる黄疸は、どのようにして起きるのでしょうか?
黄疸を起こすビリルビンは、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)から作られています。
骨髄で作られた赤血球は、約120日で寿命が尽きて壊れますが、この時にヘモグロビンが赤血球の外に放出され、これがきっかけとなってビリルビンができます。こうしてできたビリルビンは、間接ビリルビンと言われます。
間接ビリルビンは、血清中に含まれているアルブミンというタンパク質と結合し、血液と一緒に体内をめぐるうちに肝臓に運ばれてきます。
そして、間接ビリルビンは肝臓の中で直接ビリルビンに変化し、胆汁の成分となるのです。
このように、健康な人の血液中にも、少量のビリルビンは存在するのですが、その量が過剰になると、皮膚や粘膜にビリルビンがたまり、黄疸が起きてくるのです。
特に、胆管炎の場合には、胆石ができていることがおおく、肝臓で作られた胆汁が十二指腸に排出されなくなり、血液中のビリルビンが増えて黄疸になります。
◆胆管炎の原因は?
ここまでは、胆管炎の概要と、主な症状を見てきました。ここからは、胆管炎の原因を見ていきたいと思います。
胆管炎の大部分は、細菌感染によって起こります。胆汁は、食べ物の吸収の手助けをする有効な消化液なのですが、最近にとっては栄養に富んだ成分が含まれているために、胆道に細菌が侵入すると、勢いよく繁殖してしまうのです。
原因菌は、大腸菌のことが多いようですが、クレブシエラ菌などのこともあります。また、稀に、化学物質の刺激が原因で起こることもあります。
また、胆管炎を起こした人の大部分は胆石を持っています。胆管のどこかに胆石があると、胆汁がつかえて流れにくくなり、細菌に感染しやすくなってしまうのです。
特に、胆のうと胆管のつなぎ目に胆石が詰まっていると、炎症が起こりやすいと考えられています。
しかし、無石胆管炎といって、胆石のない人にも胆管炎が起きる場合があります。口から食事を摂取できず、注射などで長く栄養を摂っている寝たきりの人に起こりがちです。それは、十二指腸に長く食べ物が入ってこないので、胆のうが収縮せず、胆汁を排出しない状態が続くために起きるようです。
◆胆管炎の主な原因・胆石とは?
それでは、胆管炎の主な原因となっている胆石とは、どのようなものなのか、解説していきます。
胆石とは、胆のうや胆管にできた結石のことです。
いろいろな成分が含まれていますが、その胆石を構成している主な成分によって、「コレステロール系石」「ビリルビン系石」「その他の胆石(脂肪酸カルシウム石、炭酸カルシウム石など)」に分類されています。
細かく分析すると、コレステロール系石やビリルビン系石といっても、いろいろな成分が種々の割合で混ざり合ってできているものが多く、手術で取り出した石を見ても、大きさ、形、外観など千差万別です。
日本では、昔はビリルビン系石、特にビリルビンカルシウム石の頻度が高く、特に農村にその傾向が強かったそうですが、現在では、食生活の欧米化によって、コレステロール系石が急増しています。
コレステロール系石の原因は、肥満、過食、不規則な食事、女性ホルモンや薬剤の作用などが影響して発生すると考えられています。
血液中のコレステロール値の高いことと、胆石の発生とは直接関係はありませんが、コレステロールを多く含む食品を食べ過ぎると、胆石が発生しやすくなります。
なお、胆管でコレステロール系石が作られることはまずありません。大抵は、胆のうで作られ、そこから飛び出して総胆管に詰まってしまうようです。
◆胆管炎の治療法は?
ここまでは、胆管炎の症状や原因などを紹介してきました。ここからは、胆管炎の検査方法や治療法について見ていきたいと思います。まず、胆管炎の疑いがある場合、検査を行います。
症状からおおよそ検討がつきますが、採血して、血液検査をすると、炎症反応が出ていたり、白血球の増加や、GOT、GPTなどの数値が上昇しているなど、肝機能の異常が見られます。
また、細菌感染が原因の場合には、胆汁を採取すると、緑色をしていたり、膿を含んでいたり、細菌が多数検出されることで診断が確定します。
最近では、腹部エコーで胆のうの様子を調べたり、CTスキャンで状態を調べたりすることもできます。
治療は、軽度の場合には水と電解質を点滴で補給しながら、食事を摂らずに、抗生物質と鎮痛剤を投与します。
抗生物質は、原因となっている細菌に有効で、しかも胆汁の中に入っていきやすいものを使用します。体質によって胆石ができやすい場合が多いため、症状が治まった後日、胆石や胆のうの摘出手術を行うことが多いようです。
ちなみに、意識障害やショックを起こしている重度の胆管炎の場合には、急いで胆管に管を入れ、胆汁を抜いて黄疸を解消しないと、生命に危険が及びます。
管は、肝臓から針を刺して挿入する方法や、十二指腸から挿入する方法があります。
◆胆管炎の予防法は?
胆管炎は、かかると激痛が走るので、できることなら胆管炎の発症を避けたいですよね?
それでは、胆管炎はどのようにすれば予防できるのでしょうか?
胆管炎は、胆石によって発生することが多く、胆石の原因となる脂っこい食事を避けたり、食べすぎ、飲みすぎをしないよう、日常の食生活を見直すことが大切です。
○脂っこい食事を控える
胆管炎の原因となる胆石は、コレステロールを多く摂る人にできやすいと言われていますので、脂っこい食事は控えめにするように心がけましょう。
○規則正しい食事
食事の時間が不規則になると、胆のうから胆汁が出されない時間が長くなり、胆汁がたまって細菌感染を起こしやすくなるのです。
○30回以上噛む
よく噛んで食事を摂ることも効果的です。早食いの人は、ついつい食べ過ぎてしまい、コレステロールを多く摂取してしまううえ、消化器系に負担を掛けてしまいます。
○絶食の時間を必要以上に長くしない
食欲がないからといって、何も食べずにいると、胆汁が胆のうの中に溜まってしまい、胆石ができやすくなってしまいます。
特に、食物繊維の多い食べ物を摂るように心がけると、胆石の発生を予防する効果があると考えられています。
また、魚介類に多く含まれるタウリンは、胆石の大きくなるのを防ぐ効果があると言われています。
なお、高齢者の胆管炎は、しばしば重症になることがあるので、症状が軽めだと感じても、早めに医療機関を受診するようにしてください。
◆まとめ
いかがでしたか?
胆管炎は、一時は軽い症状で収まっても、その後再発することが多いと言われていますので、食生活を見直してコントロールするようにしましょう。
普段から食生活のバランスを心がけ、もし発症したときには、早めに内科、外科、消化器科などを受診して、治療するようにしてくださいね。