甲状腺機能低下症のことは、良くお聞きになられる人が、おられると思います。甲状腺機能低下症の患者は人口比で10~25%程度の人がおられます。甲状腺疾患の潜在患者数は、日本では21%の約5人に1人の割合で、2385万人の潜在的患者数だそうです。
結構沢山の人が甲状腺機能低下症の、疾病を抱えておられます。この病気は甲状腺ホルモンの、分泌量が低下することにより、基礎代謝が落ちて起こります。放置しているととても怖い病気ですので、症状を見つけたら、早めに病院に行かれることをお勧めします。
甲状腺機能低下症について詳しく調べてみました。一緒に見ていきましょう!
この記事の目次
甲状腺機能低下症とは
甲状腺はH型の内分泌器官で、甲状腺ホルモンを分泌していて、喉ぼとけの下に位置します。甲状腺機能低下症とは、どのような病気なのでしょうか?
3大代謝内分泌疾患
甲状腺機能低下症は、3大代謝内分泌疾患の一つです。
甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが過剰に分泌される)・ホルモンは正常で、副腎、甲状腺、脳下垂体などの内分泌臓器に腫瘍がある、これらが甲状腺代謝内分泌疾患です。
発症しやすい年代
甲状腺機能低下症とは血液の中の、甲状腺ホルモンの分泌が、低下することで起こる内分泌系の疾患です。
男女比は1:5と圧倒的に女性に多く、また40歳以上全体の5%に見られますが、高齢女性に限ると10%と非常に多くの人が、疾患を抱えています。ただしどの年代でも発症します。
甲状腺ホルモン
体のエネルギーの代謝を活発にする働きのある、甲状腺ホルモンですので、この甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、日常生活においても活動や、また身体の新陳代謝が低下しますので、体の全身の不調をきたすことになります。
また血液の中のコレステロール値が、上がることもあります。
甲状腺機能低下症の疾病
甲状腺機能低下症は字のごとく、甲状腺の機能が低下して、甲状腺ホルモンを作る働きが十分されなくて、活動的身体機能が徐々に低下していきます。
甲状腺機能低下症の患者は、甲状腺ホルモンの投与を生涯にわたって、受け無ければならなくなり、永続性の治療が必要となります。またこれとは全く逆の、甲状腺ホルモンの分泌が多くなって、全身の活動機能が活発になりすぎるバセド病や、甲状腺機能亢進症があります。
甲状腺機能低下症を放置していると、疲労感が増し、貧血、低体温、心不全を起こします。低体温になっていくと錯乱状態や意識喪失、昏睡を生じるようになり呼吸が遅くなり、脳への血液の流れが減少して、致命的な合併症に進行する場合があります。
甲状腺機能低下症の原因
甲状腺機能低下症の原因には、どのような物があるのでしょうか?
甲状腺機能低下症の原因について
甲状腺機能低下症の原因は、甲状腺そのものに原因がある、甲状腺自体が損なわれる「原発性甲状腺機能低下症」と、甲状腺以外に原因のある、甲状腺をコントロールしている、甲状腺刺激ホルモンの分泌低下の「続発性甲状腺機能低下症」とがあります。そして稀ですが甲状腺ホルモン不応症に分かれています。
甲状腺機能低下症の多くは橋本病が挙げられます。また甲状腺機能低下が一時的になる亜急性甲状腺炎や、甲状腺機能低下症の一番重篤な症状を引き起こす、粘液水腫昏睡があります。
また甲状腺機能低下や甲状腺ホルモンの異常によるものは、食べ物や環境だけでなく、遺伝性によるものもあると考えられています。
薬剤・放射線治療による原因
薬剤の副作用によって起こる場合もあります。甲状腺機能低下に影響のある薬剤は、うつ病に処方される炭酸リチウム・不整脈に処方されるアミオダロン・B型肺炎、C型肺炎などに処方される、インターフェロンの薬剤が原因で、甲状腺機能低下症になることもあります。
放射線ヨウ素治療を行ったときも、甲状腺機能低下になることもあります。甲状腺機能亢進症やバセド病患者、または甲状腺がんなどの治療後に、甲状腺機能低下症が起こることがあります。治療中に放射線ヨウ素や、薬の使用によって起こる場合があります。手術で甲状腺を切除したり、薬の使用によって甲状腺ホルモンを、作る機能がなくなったりすることで、甲状腺ホルモンが作られなくなります。
甲状腺の腫瘍やバセドウ病の治療で、甲状腺の切除、または放射性ヨウ素の投与などを行っていると、ヨード摂取自体不足や過剰になって、甲状腺機能低下症になる場合があります。
ヨード不足によるもの
開発途上国の多くの国では、慢性的なヨウド不足の食事が行われているため、ヨード欠乏状態となり、甲状腺機能低下症の最も多い原因となっています。ただし米国ではこの原因による、甲状腺機能低下症の人は少ないそうです。それは乳牛の乳房殺菌にヨードを要したり、食卓塩をヨード添加配合にしたり、乳製品にもヨードが含まれ、日々の食事においてヨード摂取が簡単にできるからです。
甲状腺ホルモンを調節する、下垂体または視床下部などの、さらに上部の命令に当たる臓器の異常が起こると、甲状腺機能低下になることがあります。
ヨードの過剰摂取が原因
日本は海に囲まれて海藻類を、豊富に食卓に乗せることができます。豊富に含まれる海藻類のヨードの量を摂りすぎることで、甲状腺機能低下症を起こすことがあります
コンプ、ヒジキ、ワカメやそのほかの海藻などは、身体にとって重要なミネラルで、甲状腺ホルモンの材料となるものです。しかし甲状腺機能に異常のある人が、ヨードの量を摂りすぎると甲状腺機能低下症になってしまいます。
アブラナ科の野菜も注意
余り神経質に考える必要はありませんが、アブラナ科の野菜、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、芽キャベツ、かぶなどの野菜の摂りすぎに注意が必要です。
甲状腺ホルモンの分泌を妨げる「ゴイトロゲン」と言う物質が、アブラナ科の野菜には含まれています。ですから治療で服用している「甲状腺ホルモン薬」の働きを阻害する可能性があります。これは普通に食べるくらいなら問題はありませんが、あくまでも毎日過剰摂取した場合は注意が必要です。
甲状腺機能低下症の主な病気
甲状腺機能低下症の病気には、どのような物があるか、主な病気を見てみました。
橋本病(自己免疫甲状腺炎・慢性甲状腺炎)
橋本病とは自己免疫甲状腺炎、あるいは慢性甲状腺炎と呼ばれ、慢性的な甲状腺の自己免疫性の疾患によるもので、本来外部から細菌や異物が侵入すると、免疫がこれをやっつけるのですが、橋本病は自分の細胞を異物と間違えて、免疫が自己の細胞を、やっつけて炎症をおこす、自己免疫疾患です。甲状腺機能低下症が発症すると、甲状腺ホルモンの投与は、一生涯続けなければなりません。
甲状腺機能低下症の中で、最も多い甲状腺炎で、橋本甲状腺炎の人の50%の人は、最初に甲状腺機能低下症の症状が見られ、ゆっくりと甲状腺が破壊されて機能低下を起こしていきます。
橋本病の症状で最近解ってきたことですが、ヒスタミン過剰によって起こる場合もあるそうです。特にSIBO(サイボ・小腸内細菌過剰繁殖)や遺伝子異常を起こして体内の、ヒスタミンが過剰になっています。
原発性甲状腺機能低下症の多くは、橋本病からくるものが多く、自分の甲状腺を本来細菌などをやっつける免疫が、間違って攻撃する自己免疫疾患です。抗サイログロプリン抗体、抗TPO抗体の測定をして、陽性になれば橋本病です。甲状腺ホルモンの値が正常範囲であれば、炎症を起こしていても、問題はありません。
詳しくは、橋本病は妊娠しくいの?症状や対処方法についてを読んでください。
亜急性甲状腺炎
甲状腺機能低下症の中でも、亜急性甲状腺炎と無痛性リンパ球性甲状腺炎は、甲状腺が破壊されていないので一時的で、一過性の甲状腺機能低下の症状を起こします。
粘液水腫
甲状腺機能低下症の中でも重篤な、症状をもたらす粘液水腫があります。
その中で粘液水腫昏睡は、外傷、手術、感染症、寒さなどの身体的ストレスを受けた場合、脳の機能を抑える鎮静薬などの薬剤がきっかけで、甲状腺機能低下症のひとが起こす症状のはっきり出ている、粘膜水腫です。
詳しくは、粘液水腫とは?症状・原因・治療法を知ろう!似ている病気はなに?を参考にしてください!
クレチン病
小児に見られる先天性のものは、クレチン病と呼ばれ、生まれつき甲状腺ホルモンが不足する病気です。甲状腺の機能の働きが生まれつき弱いために起こり、先天性甲状腺機能低下症のことを、別名クレチン症と言われています。
詳しくは、クレチン症ってどんな病気?症状や原因を知ろう!新生児と乳幼児期での症例を知ろう!を読んでおきましょう。
偽性副甲状腺機能低下症
この病気は甲状腺機能低下症とは異なり、ホルモンの異常によるものではありません。
この偽性副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモンの細胞の伝達のメカニズムが異常をきたし、副甲状腺ホルモンが骨や腎臓で作用が十分できないため、血液のカルシウム濃度が低下して、それによって様々な症状を引き起こす病気です。原因は遺伝によるものが多いようです。
甲状腺機能低下症の症状
甲状腺機能低下症になると、どのような症状が出るのでしょうか?
甲状腺機能低下症の症状の概要
甲状腺ホルモンは重要なホルモンで、全身の代謝機能を維持するものです。この甲状腺ホルモンが低下することで、様々な体全体に異常をきたすことになります。
甲状腺機能低下症になると、症状は漠然として徐々に進行し、甲状腺ホルモンが減ることで、身体機能の速度が低下します。
萎縮甲状腺炎という病気は、普通甲状腺は腫れていますが、甲状腺の腫れが全くなく、高度の甲状腺機能低下症になることがあります。
甲状腺機能低下症の症状
症状には次のようなものがあります。
高齢者
- うつ病と間違えられるほど、高齢者は錯乱する
- 物忘れや認知症やアルツハイマー病などに間違えられやすい症状を示す
体の外見的な変化
- 瞼と顔が浮腫んで腫れる。
- 手足が浮腫む。
- 手がうずいて痛む手根幹症候群になる人もいる。
- 手のひらと足の裏がわずかに黄色味を帯びるカロチン血症になる人もいる。
- 眉の外側の3分の1次第に抜けてくるのが特徴です。
- 髪の毛が薄く粗くパサつきます。
- 白髪が増える。髪全体が抜けて薄くなり、人によっては脱毛で、カツラが必要になることもあります。
- 乾燥して皮膚のきめが粗くなり、うろこ状に厚くなります。
- 余り食欲がないのに体重増加がおこり、便秘になる。
身体の内部的な変化
- 昼夜問わず眠気が襲ってきて強くなって、全身に倦怠感が強くなります。
- 脈拍は遅くなります。
- 活動性が鈍くなって動作がゆっくりとなります。疲労を感じやすくなります。
- 記憶力計算力の低下が見られる様になります。
- 体温が低くなり、夏でも汗をかかなくなります。
- 声が低温化ししわがれるのも特徴です。
- 無月経や月経過多の月経障害が起こります。
- ろれつが回らないでしゃべり方がゆっくりになります。
甲状腺機能低下症のその他の症状
その他にめまいやけいれん、筋肉痛や関節痛、筋力低下や貧血などが起こります。また循環器系の症状として、徐脈や狭心症や心不全などの症状も起こることがあります。
粘液水腫の様な、顔や手足が浮腫みやすくなる理由は、皮下にムコ多糖類が溜まるため、押してもへこまない浮腫みが起こります。アキレス腱をハンマーで叩く反射機能をみると、戻るときに非常にゆっくりと戻ります。また元気がなくなり、寒がりになります。
成長期の子供が甲状腺機能低下症になると、身長がそれまで順調に伸びていたのに、伸びが悪くなります。乳幼児期の子供の場合は、知能の発達が遅れ、脳の成長に影響を及ぼします。
甲状腺機能低下症の検査
甲状腺機能低下症の診断は、甲状腺機能低下症かもしれないと気が付くと、血液検査をして調べます。採血して甲状腺ホルモン遊離チロキシン:フリーサイロキシンFT4と、フリートリヨードサイロニン(FT3)の数値を測定します。これらの数値が基準値より低ければ、甲状腺機能低下症を疑い、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が基準値より高ければ、甲状腺機能低下していることですので診断を下します。
甲状腺刺激ホルモンは脳の、下垂体から分泌されるホルモンで、血液中の甲状腺ホルモンの濃度が低くなったとき、甲状腺を刺激して、甲状腺ホルモンの分泌を促す働きをします。
甲状腺機能低下症の治療
甲状腺機能低下症の治療は簡単です。いかなる原因でも甲状腺ホルモンを投与します。現在の治療薬はチラージンSの錠剤で治療します。甲状腺ホルモンの薬の内服は、寝る前に服用するようにしています。
正常域に甲状腺ホルモンと、甲状腺刺激ホルモンが入れば、その量を長期に服用し、薬による副作用の心配はありません。
治療法
甲状腺機能低下症の治療方法は、ホルモン補充療法で、数種類の経口薬のホルモン剤のどれかを用いて、甲状腺ホルモンを補充します。
治療開始して甲状腺ホルモン製剤を毎日1日1回飲み続け、定期的にホルモン分泌量をチェックして、薬の量を微調整して、生涯飲み続けていきます。ホルモン補充に望ましい治療薬は、合成甲状腺ホルモンT4です。
治療は少量から始めます。甲状腺ホルモンを少量投与して、だんだんと割合を増やしていきます。それは1回分が多すぎると、副作用が起こり重篤な疾患を引き起こすことがあるからです。高齢者の場合は特に副作用のリスクが高いです。ホルモン剤を少しずつ増やすのは、血液中のTSHの濃度が、正常値に戻るまで補充します。妊娠中は用量を増やします。
甲状腺機能低下症の予防
甲状腺機能低下症の予防にはどのような物があるでしょうか?
日本食
日本の和食の食生活は、多くのヨードが含まれる食事が多いです。その中でも海藻類のワカメ・ノリ・ヒジキ・昆布を大量にとると、ヨード摂取過剰となります。そのため甲状腺機能低下を引き起こす場合がありますので、控えめにすることが大切です。
だし汁などにも注意が必要となり、海藻中心のサプリメントの服用は中止することです。また喫煙は甲状腺ホルモンの分泌に、悪影響がありますので、禁煙が予防になります。煙草に含まれる化学物質が、甲状腺ホルモンの代謝を妨げたり、甲状腺の働きを低下させます。
ビタミン
甲状腺機能低下症の人ができるだけ摂取する食べ物として、ビタミンが挙げられます。ビタミンCは抗酸化作用が強く、甲状腺機能低下症の人に見られる老化の改善につながり、またビタミンB群はエネルギー代謝と深く関係があり、甲状腺ホルモンの機能低下の働きによる、エネルギー代謝を補ってくれます。
適度な運動
適度な軽い運動を毎日の生活に取り入れ、運動不足を解消することが大切です。運動の習慣は成長ホルモンを促したり、ストレス解消などにもなって、甲状腺異常の原因の一因のストレスを解消することは、甲状腺機能低下症を予防することになります。
まとめ
如何でしたでしょうか?甲状腺機能低下症について、少しは知識が広まりましたでしょうか?甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが十分に作られなくて、異常をきたす病気の様です。
ホルモンのバランスが崩れると、身体全身の症状となり、放置すると死に至ることもあります。しかし適正な治療を行えば、とても簡単に治療も行えますので、なにも怖い病気ではありません。甲状腺機能低下症にならないための予防と、もしなってしまったら、病院に行って適正な治療を行うようにすることが大切です。
関連記事として、
・甲状腺肥大の原因はなに?考えられる病気と症状や、甲状腺の役割を知ろう!
・甲状腺腫とは?症状・原因・治療法を知ろう!種類や、甲状腺に起こる病気も紹介!
これらを読んでおきましょう。