橋本病は妊娠しくいの?症状や対処方法について

「自己免疫疾患」に分類され、甲状腺の機能が低下する「橋本病」は、20歳代後半から40代の女性に多い病気です。成人女性の7~8人に1人が橋本病の素質を持っていると言われます。

甲状腺ホルモンは、妊娠の成立や維持、子供の成長や発達に大事な役割を果たすホルモンですが、橋本病と診断された場合、妊娠や出産においてはどのような影響があるのでしょうか。橋本病と、妊娠・出産との関連を調べてみました。

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橋本病は甲状腺の病気

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橋本病とは、甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気で、慢性甲状腺炎とも呼ばれる「自己免疫疾患」のひとつです。そもそも甲状腺とは、どのような臓器なのでしょうか?

甲状腺とは

甲状腺は、のどぼとけのやや下にある臓器で、蝶が羽根を広げたような形をしています。正常な甲状腺は軟らかく、さわってもどこにあるか分かりませんが、異常が起こると腫れて、ふれて分かるようになります。

甲状腺は、植物中のヨードを材料にして、T3(トリヨードサイロニン)とT4(サイロキシン)という2種類の甲状腺ホルモンをつくり、分泌しています。甲状腺ホルモンには全身の代謝を高める働きがあり、ヒトが生きていく上で不可欠なホルモンです。

  • 「細胞の新陳代謝を盛んにする」
  • 「交感神経を刺激する」
  • 「成長や発達を促進する」

働きをしますが、甲状腺ホルモンが活発すぎても、不活発でも、健康に影響が現われます。偏らないように、脳から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、血液中の甲状腺ホルモンの変動をキャッチしながら、甲状腺ホルモンの量が一定に保たれるように調節しています。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を甲状腺機能亢進症といい、代表的な病気がパセドウ病です。1840年に病気を報告したドイツの医師にちなんで名づけられました。

バセドウ病は、ヒトの免疫で重要な役割を果たしているリンパ球が、自分の甲状腺を異物と思い込み、甲状腺を刺激する物質(TSHレセプター抗体)をつくって甲状腺ホルモンを過剰に分泌させてしまう「自己免疫疾患」です。特徴的な症状は、「甲状腺ホルモンの過剰分泌」「甲状腺が腫れる(甲状腺腫)」「眼球の突出」の3つです。

バセドウ病は20代から30代の女性に多く、甲状腺ホルモンが全身の新陳代謝を過剰に活発化させるために、動悸・息切れ、指先・手足や体のふるえ、暑がり、多汗、疲れやすい、食欲があるのにやせる、落ち着かない、早口、皮膚のかゆみ、月経不順などの症状が現われます。

バセドウ病については、バセドウ病の初期症状とは?チェックする方法を紹介!の記事を読んでおきましょう。

甲状腺機能低下症(橋本病)

バセドウ病と反対に、甲状腺の働きが鈍くなるのが甲状腺機能低下症で、代表的なものが橋本病です。甲状腺に慢性の炎症が起こり、「慢性甲状腺炎」とも言います。

九州帝国大学の外科医だった橋本策博士が、1912年に世界で初めて報告したことから病名がつけられました。この炎症は、バセドウ病と同様に、白血球の中のリンパ球が甲状腺を攻撃して炎症を起こす自己免疫疾患のひとつで、「自己免疫性甲状腺炎」とも言われます。

甲状腺が腫れるのはバセドウ病と同じですが、甲状腺ホルモンが不足して代謝が落ちることにより、

  • 脈拍数が減る
  • 体温が低くなる
  • 皮膚がかさかさになる
  • 寒がり
  • 声がしわがれる
  • 疲れやすい
  • 体重の増加
  • 物忘れ
  • 無気力
  • 眠気
  • むくみ
  • ゆっくりした話し方になる
  • 月経不順

といった症状が現われます。

甲状腺が腫れていても、甲状腺ホルモンが正常に分泌されていれば気がつかない場合があります。甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンがあきらかに低下している「甲状腺機能低下症」と、不足する手前の状態である「潜在性甲状腺機能低下症」の2つに分類されます。

亜急性甲状腺炎

代表的な2つの病気のほかに、甲状腺疾患には「亜急性甲状腺炎」「腫瘍性疾患」などもあります。甲状腺の病気のほとんどは甲状腺が腫れても痛みがありませんが、亜急性甲状腺炎は腫れとともに痛みがあります。

ウイルスが原因と言われており、ほかの人に感染することはありません。炎症が起こって甲状腺の組織が破壊され、甲状腺ホルモンが流れ出して血中の濃度が高くなり、バセドウ病のように動悸や息切れ、発汗、倦怠感などが現われます。自然に治癒する場合がほとんどですが、痛みが強いときは抗炎症薬を投与します。

腫瘍性疾患

甲状腺の腫れでは、甲状腺全体が腫れる「びまん性甲状腺腫」と、部分的にしこりのようになって腫れる「結節性甲状腺腫」があります。

甲状腺の腫瘍は女性に多く、しこりがあるだけでほかに症状がないのが特徴です。甲状腺腫は良性と悪性、腫瘍によく似ている「過形成」という状態に分類されます。左右の甲状腺にさまざまな大きさのしこりができる「過形成」の多くは良性ですが、悪性腫瘍の場合もあります。

甲状腺の部位のしこりに気づいたら、早めに受診し、良性か悪性かを診断することが重要です。

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橋本病と妊娠・出産

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男性がかかることもありますが、甲状腺疾患は女性に多い病気です。なぜ女性に多いのかはよく分かっていません。甲状腺疾患は、不妊や流早産、妊娠高血圧症候群などのリスクになるため、妊娠・出産を希望する人は、甲状腺の機能を正常にコントロールする必要があります。

甲状腺疾患の検査と治療

・検査

バセドウ病や橋本病の検査は、甲状腺ホルモンの量や特殊な抗体の存在を調べる血液検査と、甲状腺の形や大きさを調べる超音波検査が中心になります。

・治療

バセドウ病、橋本病の治療は、薬物療法が中心です。血液検査をもとに、バセドウ病は甲状腺ホルモンを抑制する薬を、橋本病は甲状腺ホルモンを促進する薬を使用して、血液中の甲状腺ホルモン量を調整します。ただし、いずれも慢性化しやすい自己免疫疾患であるため、投薬が長期にわたる場合があります。

薬物療法だけで症状が改善されない場合は、放射線療法(アイソトープ治療)や手術療法が行われます。医師とよく相談したうえで治療方針を立てる必要があります。

甲状腺疾患と妊娠・出産

妊娠・出産を希望する場合は、妊娠前から甲状腺機能を正常に保つことが重要です。全身の細胞に作用して代謝を高める甲状腺ホルモンは、妊娠・出産の成立に大切な役割を果たしています。

甲状腺が通常のように働くのであれば、通常の人と同じように出産・妊娠をすることが可能です。しかし、甲状腺機能亢進症、あるいは低下症の患者で内服治療中の人は、医師に相談する必要があります。妊娠によって甲状腺の機能が変動し、薬の種類や量の変更を行うことがあります。

バセドウ病と妊娠

パセドウ病の治療薬には、メルカゾールとチウラジール(プロパジール)があります。

2種類のうち、よく効いて、軽症の肝機能障害などの副作用が少ないメルカゾールを妊娠初期(12週まで)に飲み続けていた妊婦さんの方に、先天異常の発生頻度が高い傾向が見られたため、妊娠初期にメルカゾールを飲むことをできるだけ避けたほうがいいとの見解が、最近出されています(日本甲状腺学会、2011年11月30日)。

この見解から考えても、甲状腺疾患で内服治療中の人は、妊娠をなるべく計画的にして、医師と相談しながら、甲状腺機能の治療と妊娠・出産を行う必要があります。妊娠が起きると、TSHと似た作用をするhCGというホルモンが妊娠12週頃まで増加して、妊娠初期は甲状腺機能亢進症の状態になります。

バセドウ病では、妊娠初期に症状がやや重くなり、中期から後期は女性ホルモンの影響で軽快します。産後に女性ホルモンが低下すると、症状がまた悪くなります。薬の内服が必要になりますが、少量のメルカゾールやチウラジールであれば授乳をすることもできます。

・甲状腺クリーゼとは

甲状腺疾患を放置してしまうと、合併症が起きる恐れがあります。

甲状腺機能亢進症が急激に悪化する症状を「甲状腺クリーゼ」といい、体が強いストレスを受けたときなどに起こり、妊娠・出産では母子の命に関わることもある怖い症状です。甲状腺クリーゼになると、高熱、激しい頻脈、下痢、多汗、意識の朦朧などが起こります。ただし、クリーゼを発症するのは、バセドウ病を放置したままだったり、内服治療が不安定な場合です。

橋本病と妊娠

妊娠をすることで、甲状腺ホルモンが必要な量は約1・5倍に増えます。そのため、甲状腺機能低下症の人が妊娠を希望する場合、甲状腺の機能を高める、チラーヂンSという甲状腺ホルモン薬を服用します。妊娠が分かった場合に投薬を開始したり、服用していた量を増やすことがあります。

橋本病でも、先に挙げたhCGの影響で、妊娠初期は症状がやや重くなり、中期から後期は改善し、分娩後にまた悪くなる傾向があります。しかし、甲状腺ホルモンの濃度を薬で保ち、甲状腺の機能が安定していれば、健康な人と同様に妊娠、出産、授乳ができます。チラーヂンSは、甲状腺でつくられているホルモンと同じ成分なので、胎児に影響はありません。むしろ薬を飲まず、甲状腺の機能が低下したままで出産する方が危険です。

橋本病が心配な人は、妊娠前から甲状腺機能をチェック(FT4やTSH値を測定)し、妊娠したら、医師と相談しながら甲状腺の働きをコントロールして、妊娠と出産を進める必要があります。産後も甲状腺の状態を把握して、お母さんの健康を保ちましょう。

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まとめ

糖尿病、喘息、子宮筋腫など、持病がある人の妊娠・出産は気をつけなくてはなりません。甲状腺疾患の場合も同じです。

甲状腺の機能が正常にコントロールされていれば、健康な人と同じに妊娠・出産ができます。日本では、新生児の先天性甲状腺機能低下症の検査が1979年から実施されており、もしも症状が発見されても、早期に治療できます。

甲状腺に不安がある人は体調を管理して、必要以上に恐れることなく、妊娠と出産にのぞむことが大切です。

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