股関節の筋肉について!働きや骨盤との関係、健康を維持する方法を紹介!

人の身体にはいくつもの関節が存在します。股関節もそのひとつです。

股関節はとても丈夫な関節ですがひとたび痛めるとその完治にはとても時間がかかります。なぜなのでしょう?しかも痛みが引かず最悪の場合手術なんてことにもなりかねません。

股関節にはどういう機能があり、我々人間の生活にどうかかわっているのでしょうか?その仕組みを知っていればなんらかの変化が起きる前に予防することも可能です。

本稿ではこの股関節を中心に周囲にある筋肉との関係についてに理解を深め股関節がもつ可能性を引き出して日常を楽に送れるためのヒントをお伝えします。

股関節とは?その役割を知る

股関節柔軟性

骨と骨が連結する部分を関節といいます。ほとんどの関節は凸凹の形状により関節面がピタリとはまるようになっており、滅多なことでズレることはありません。

人間には265個の関節が存在し特に手足にその6割が集中しています。手足は他の部分に比べより複雑な動きができるのですがその秘密が関節の数が多いことにあったというわけです。

関節の種類

人間が身体を自由に動かせるのはこの関節のおかげなのです。一般的に関節といえば動くものと決まっていますが、実は動かない関節もあります。例えば頭蓋骨(とうがいこつ)はいくつかの関節が連なってできている縫い合わせ部分があり、このように動かない関節を「不動関節(ふどうかんせつ)」といいます。

一方動く関節は「可動関節(かどうかんせつ)」と呼ばれ主なもので6種存在します。滑走関節・顆状関節・蝶番関節・鞍関節・車軸関節・球関節です。球関節は肩の関節のことです。また球関節と同種ですが関節形状がわずかに違う臼蓋関節(きゅうがいかんせつ)があり、股関節はその関節に属します。

さらに繊維軟骨結合(せんいなんこつけつごう)によってわずかに動く半関節(はんかんせつ)という種類もあります。代表的なのが骨盤の恥骨結合(ちこつけつごう)です。

股関節の形状特性

全部で6種ある可動関節の中でも股関節はその形状から「臼(きゅう)関節」と呼ばれています。餅つきにつかう“あの臼(うす)”の形に似ていてこれが関節窩(かんせつか)という受け皿の役割です。そこに半球状の骨の頭とかく骨頭(こっとう:大腿骨の先端)が2/3以上、受け皿である関節窩に包まれるようにピタリとはまり込んでいるのが股関節です。

また靭帯・関節包・関節唇等の軟部組織(なんぶそしき)によって内・外部から強力に連結されており荷重下での安定性を維持しています。

股関節とよく似ているのが肩関節で、こちらはその形状から球状関節(きゅうじょうかんせつ)と呼ばれています。股関節と比べより可動性(動き)があります。肩と股関節を比べてみるとどちらがグルグルまわせるかは一目瞭然です。

両関節とも機能・働きとしては「多軸関節」と呼ばれ多方向に動きます。しかし股関節は関節の受け皿である関節窩(臼のくぼみ)が肩に比べてとても深く骨頭がしっかりと入り込んでいるため、動きの自由度は狭まります。肩関節は外れやすい(脱臼)ですが、股関節が滅多な事では外れないのはそういった関節の形状特性があるからです。

股関節のバイオメカニクス

機能としてみれば股関節はからだ、特に上半身を支える荷重関節(かじゅうかんせつ)と呼ばれています。他に膝関節・足関節が体重をしっかりと受ける関節です。

立っている時、股関節には常に体重がかかっています。

例えば体重50kgのAさんが右足だけで立っているとしましょう。このときAさんの右股関節にかかる力は体重と同じ50kgでしょうか?

実は正解はその4倍にあたる200kgです。

ではなぜ体重50kgのAさんが片脚で立つと実に4倍もの重さがAさんの右股関節にかかってしまうのでしょう。

股関節は正確にいえば身体の中心から少し離れた位置にあります。従って片脚立ちをすると身体の真ん中である重心と股関節に距離があるため、そのままでは骨盤から上の上半身が左側に倒れてしまいます。これを防いでくれているのがお尻の筋肉である中臀筋です。

てこの原理

我々人間の身体は日常動作で「てこの原理」を何度もつかって身体のバランスを保っているわけです。右脚立ちのこのケースであれば支点が真ん中にある「第一のてこ」を使っていることになります。右の中臀筋がしっかり働くことで支点である股関節を介し、骨盤から上は左側に倒れず、まっすぐな状態のままを維持できるのです。

「やじろべえ」がバランスをとれるのと同じ原理と考えれば理解しやすいかもしれません。

右股関節が支点(中心)で、①重心線~股関節:②股関節~中臀筋までの距離が3:1になります。そして①のほうには体重の50kg分がかかっていれば②のほうは150kg分の重さがあればちょうどバランスがとれます。①50kgX3=②150kgX1

つまり(右)中臀筋は体重(50kg)の3倍の力で骨盤を引っ張らなくてはバランスを保てないことになり、トータルで200kgの重さを股関節で支えるということになるわけです。

片脚で立っているだけでこんなに重さが加わるわけですから、歩いたり走ったりすればどれほどの衝撃になるのでしょうか。如何に股関節の機能と周りの筋肉の能力が重要かがわかります。

股関節の動き

人の身体を観る場合、立体的(3次元的)にみるとその動きがしっかりと理解できます。前(後)方向・左(右)方向・上(下)方向からみることが観察に役立ちます。

股関節の主な動きは次の3つです。

1)屈曲・伸展(横から観る)

脚を前後に振り出す動作、腿上げ動作、歩く・走るなどの推進運動によく使われる動作です。

2)内転・外転(前から観る)

脚を身体の真横に開く動作と内に閉じる動作です。片足立ちで浮いている脚を横に開いていくのが外転で内側に閉じていく(戻していく)のが内転です。

3)内旋・外旋(真上から観る)

現実的ではないかもしれませんが、股関節を真上から観て大腿骨が時計回りに動くことを内旋といい、つま先が内側を向きます。一方大腿骨が時計と反対回りに動くことを外旋といい、つま先が外側を向きます。

股関節周囲筋群の役割

股関節 筋肉

股関節の動きを観ていくと周囲にある筋肉との結びつきがより鮮明に理解できます。関節を介して筋肉に力が伝わり伸縮することで結果として身体全体を動かすことができるのです。

股関節屈曲(腿を上げる)

太腿の筋肉である大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の中でも大腿直筋(だいたいちょっきん)がその役割を担います。なぜなら大腿四頭筋の中で大腿直筋だけが膝・股関節をまたぐ二関節筋であり骨盤の下部にその先端が付着しているからです。

屈曲時、主に働く筋肉(主動筋)はこの大腿直筋と腸骨筋・大腰筋です。さらに腸骨筋・縫工筋・大腿筋膜腸筋が曲げる時の補助となります。

大腰筋の股関節屈曲参加は限定された範囲ですが、もししっかりと使えれば非常に有効な筋肉です。というのも大腰筋は「抗重力筋」であり、体重をかけている状態(立っている時)で身体を支えるという役目があるからです。大腰筋は筋肉が伸びながら働くという特性を持っていて『踏ん張る』力を発揮できる唯一の筋肉なのです。

股関節伸展(脚を後方に伸ばす)

股関節伸展は脚を後方に推し出す際の動作です。主動筋(主に使われる筋)はハムストリングという筋肉です。内側から順に半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋(長頭)・大腿二頭筋(短頭)と並んでいます。

このうち大腿二頭筋(短頭)を除く他の3つは二関節筋として膝・股関節を跨いで骨盤裏側の下部に付着します。因みに長頭とか短頭というのは筋肉が長いか短いか、二つの関節をまたいで付いているかどうかの違いです。

また臀筋群では特に大臀筋というお尻を形成する筋肉が伸展動作に関わっています。

歩く・走る際はこの股関節を後方に推し出す伸展動作が非常に重要で速さや前に進む勢いである推進力を決定する要素といっても過言ではありません。

股関節外転(脚を外側に開く)

外転は片脚立ちで脚を真横に開く動作です。一方その状態で骨盤から先の上半身が逆側に倒れないようにするための動作といえます。先ほどの「やじろべえ」を思い出すとわかりやすいでしょう。この時からだを支えている側の中臀筋が主に使われます。

実は歩くときに毎回この外転動作が起こっています。歩く時は片脚立脚期(かたあしりっきゃくき)という、片脚のみで身体を支える場面(逆脚は後方から前に降り出されて地面についていません)が必ずあります。

中臀筋は骨盤後面から股関節付近の大腿骨に付いている筋肉で、この筋肉が弱くなると上半身が歩くときに支えている脚側とは逆側に傾く「トレンデンブルグ」兆候を示します。他に小殿筋、大腿筋膜腸筋等が外転動作に関与します。

股関節内転

内転動作に関わる筋肉は内転筋群という総称で呼ばれています。長/短内転筋、薄筋・大内転筋の4種です。

内転筋群は両脚を閉じるだけでなく、股関節を内側に時計と反対周りに回す内旋動作にも関与します。

股関節外旋

実際に観るのは困難かもしれませんが股関節をその真上からみて大腿骨が時計と反対にまわることを外旋といいます。外旋するとつま先が外側を向きます。

深層にある深部外旋六筋と呼ばれる筋肉が主にこの動作に関与します。梨状筋・内(外)閉鎖筋・上(下)双子筋・大腿方形筋です。

股関節内旋

これも真上から股関節を観て大腿骨が時計回りにまわることを内旋といいます。内旋になればつま先が内側を向きます。

実は股関節内旋に特化した筋肉は存在しません。外旋のときに働く深部外旋六筋のような横方向で繋がり引っ張る筋肉がないのです。股関節の内旋は主動筋ではなく補助筋と言われる筋肉達が活躍します。小殿筋・中殿筋前部線維、大腿筋膜張筋、長内転筋、短内転筋、恥骨筋、内側ハムストリングスが股関節内旋に関与します。

骨盤との深い関係

股関節 骨盤

股関節を構成するのは大腿骨の端にある骨頭と骨盤の受け皿である寛骨臼(かんこつきゅう)です。つまり隣り合う骨の凸凹同士が連結し合っているので切っても切れない関係にあるというわけです。股関節は骨盤とどういう関係があるのでしょうか。

骨盤の役割と機能

骨盤は上半身と下半身を繋ぐ中継地としての役割を有しています。また仙骨と左右の腸骨で構成され上半身の土台としても機能しています。

骨盤の関節は連結を含むと前後に合わせて3カ所あります。前面は恥骨結合といい繊維軟骨の結合である条件のもとである程度開閉(伸び縮み)します。出産する際に頭が大きい赤ちゃんが産道を通るとき、この恥骨結合が伸びることで産道が広がります。

後面にある仙腸関節はほとんど動かない「不動関節」に属します。仙骨と腸骨を繋ぐ関節で運動による衝撃を吸収する役割があります。恥骨結合が全面、後面では後仙腸靭帯・仙棘靭帯・腸腰靭帯で結ばれるので骨盤は外力に対し大変強固な構造をしています。

体重を支える股関節・膝関節・足関節、さらに仙腸関節を荷重関節といいます。その作用は親指の根本にある鞍(くら)関節と類似し前下方への剪断力、すなわちズレる力を防止する働きがあります。

仙腸関節は非常に強くほとんど動かない関節ですが、数ミリ程度動く余裕はあります。まったく動かなくなった状態では地面からの衝撃・吸収機能が働かず仙腸関節面にいびつな圧力が加わりそれが痛みや違和感となって現れることがあります。

上からみた骨盤

骨盤を上から観ることはほとんどないと思いますが、よく観察してみると真ん中に骨以外の筋肉・靭帯結合があります。そこはほぼほぼまるい輪っかの形状をしていて。

前面は繊維軟骨で連結している恥骨結合、後面にいくほど骨と靭帯による結合で厚みを増しており、外から力を入れた程度ではビクともしないことが容易に想像できるでしょう。

骨盤は歪まない!?

ある意味都市伝説のように捉えられています。腰が痛いとき治療院等へ行くと『骨盤が歪んでいます』との指摘を受けることがあります。

しかし前述した関節面同士のピタリと圧着した噛み合せ状態と強固な靭帯結合があるため相当な外力が骨盤にかかったとしても歪むなんてことはありえません。

もし歪むという言葉を使うとすればそれは上からみた骨盤の真ん中のほぼ○の形をした輪っかが、例えば楕円になるということですが、それはあり得ません。

仮に歪む程の圧力(外からの力)がかかった場合、骨盤はバラバラに折れるようにできているのです。歪む程の力では骨盤の形を維持することができず骨が粉々になるので歪みようがないのです。

なぜ“歪む”という表現を使うのか?

“歪む”という言葉を使うその筋の専門家は便宜上使っている場合が多いのです。つまり専門家が患者に説明する際、とても都合の良い言葉ということです。

本来骨盤は「傾く・捻れる・高さが違う」などといった【状態の変化】を現す言葉を使用すべきですが、これらの言葉はいちいち説明をしなければ患者は中々理解してくれません。でも「歪んでる」という言葉を使えば一発で「あっ、悪い状態なんだな!」ということを理解できるのです。歪むという表現は専門家にとってはある意味【マジックワード】といっても過言ではないでしょう。

股関節に関連する痛み・不具合

股関節 痛み

股関節は体重をしっかりと受ける荷重関節の役割を持っています。それはつまり体重分、あるいは体重以上の負荷が股関節に加わることを意味しそれだけ負担がかかるということです。

痛みや不具合は関節そのものの形状的変化によっておこる場合がほとんどですが、他に骨盤にある仙腸関節に起因する場合、坐骨神経痛等、股関節周囲筋群の硬化に起因する場合等があります。

中でも変形性股関節症(OA)は中高年の女性が圧倒的に罹患しやすい関節変性の病気です。その原因のほとんどは臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)です。股関節の一方、大腿骨骨頭の”受け皿”である臼蓋の形が生まれつき浅かったり、悪かったりして関節内の軟骨に摩擦が生じやすくなり摩耗してしまうのです。その結果股関節そのものが変形し、腫れ・痛み・熱・機能低下を伴う炎症が起きます。

加齢や体重増加、運動不足などによって引き起こされます。股関節周りに違和感や鈍い痛み、動きが悪くなった等の症状があれば変形性股関節症の初期段階かもしれません。早めにお近くの医療施設でチェックすることをお薦めします。

股関節の健康を保つ

股関節 ストレッチ

過度に負荷のかかりやすい股関節ですがその機能を維持するためには活動的な日常動作はもちろん、適度な運動もかかせません。

様々なトレーニング法や機器がある中で最も簡単に日常的に続けられるのが股関節の適度な可動域を維持すること、さらに筋肉を適度に動かすことです。ストレッチングはその典型であり、座位で開脚して伸ばしていく等、簡単な内転筋群のストレッチ等は最適です。

またストレッチポール等の器具を使って股関節全体の動きを改善することも関節症予防の点から必要かもしれません。

その他に家事等は意外に身体を動かさざるを得ず股関節等の荷重関節にとってはとても有効な運動手段ですし、日常的に歩くことを心がけるだけでも股関節や周囲筋群の機能は改善されるはずです。

まとめ

股関節 ランニング

骨盤と大腿骨から構成される股関節は「立つ・歩く・走る」といった動作は元より、からだを「支える」という日常生活や運動にとても重要な役割を果しています。周囲にある筋肉が衰えれば身体を動かすことが億劫になり股関節にかかる“適度な”負荷を得られずにやがて関節の機能は徐々に衰えていきます。

常に心と身体に“適度”な負荷をかけていることが健康を保つ秘訣なのです。股関節の機能やその特性を理解すれば歩くことも走ることも、そして日常生活でも股関節と会話を楽しみよい関係を保つことが可能でしょう。

健康で有意義な人生、QOLを高めるための一助としてください。

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