「足の裏が真っ平」「土踏まずがない」こういった状態のことを「扁平足」といいます。運動能力が落ちたり、疲れやすくなるといったデメリットがあります。
扁平足は「生まれつきだから治せない」と思っていませんか。実は治し方があります。
足の裏の構造
そもそもなぜ、「土踏まず」がくっきりある足の裏が優れていて、「扁平足」はネガティブにとらえられるのでしょうか。それを知るには、土踏まずの機能を知る必要があります。
舟状骨の落下
足首の関節からつま先までの足の骨の構造は、とても複雑です。片足だけで約30個もの骨が組み合わさっています。土踏まずを作っているのは、その骨のひとつ「舟状骨(しょうじょうこつ)」です。この骨は、かかとの骨と指の骨の間に位置しています。
「くっきり土踏まず」の状態は、人が立っているときに、舟状骨が地面に接地しない状態です。「扁平足」は、この舟状骨が落下してしまい、地面に接触している状態です。
優れたアーチ型
土踏まずが優れている理由は2つあります。1つは「アーチ型」であることです。2つめは「足の裏にある」ことです。アーチ型とは、お椀をひっくり返したような形をいいます。
アーチ型で有名なモノといえば、眼鏡橋です。川幅が広く、水の流れが急でも、眼鏡橋なら耐えられます。アーチ型は、外部からの圧力を逃がし、圧力を均等に分ける性質があるからです。
「直線」のモノは割れやすいですし、「鋭角」のモノは1点に力が集中してしまいます。しかし「アーチ型」は、衝撃が集中せず、衝撃を分散できる構造といえるのです。「アーチ型」だと「少し潰れる」ことで、衝撃を吸収できるメリットもあります。
体重の2.6倍
普通に歩いているとき、人の膝には体重の2.6倍の衝撃がかかっています。これは、足の裏が地面に着いたときに、体重が乗るだけでなく、それと同時に地面から反発を受けるからです。ですので「足」にはさまざまな「衝撃吸収」の工夫が凝らされています。
足のすべての関節にある軟骨も衝撃吸収の役割を担っています。筋肉の「支え」も衝撃対策に役立っています。そして足の裏のアーチ型は、「少し潰れて」衝撃を和らげる効果があるのです。
扁平足のデメリット
軽度の扁平足は、日常生活においてそれほど大きなデメリットは生じません。しかしスポーツをする上では、大きなマイナス要素となります。また疲れやすくなることも知られています。そのメカニズムをみてみましょう。
バランスが悪くなる
「人が立っている姿」というのは、わずか「2枚」の「足の裏」の上に乗っている状態です。その上、バランスを大きく崩す2本の棒、つまり「手」があるのです。「人が立っている姿」は微妙なバランスの上に成り立っているのです。
ところが土踏まずがないと、微妙なコントロールができなくなります。それでスポーツで致命的となる「体幹のブレ」が生じやすくなってしまうのです。
ふくらはぎの負担
土踏まずは地面からの衝撃を吸収する機能があるので、扁平足の人は、地面からの衝撃をふくらはぎより上で受けなければならなくなります。ふくらはぎより上の足全体の負担が大きくなります。
膝への負担
扁平足の人は、膝が内側にねじれやすくなる傾向にあります。多くのスポーツは、足の踏ん張りによって成り立っているので、足の形が悪くなることは運動能力を著しく低下させます。
足センサーの低下
足の裏の感覚センサーの働きも、上手に運動する上では重要です。土踏まずがある人は、土踏まずの「潰れ」具合によって、地面からの衝撃を感知でき、その情報によって脳が筋肉の動きを調整できます。しかし扁平足の人は「感覚センサー」が鈍いので、スポーツをする上では不利になります。
外反母趾
足の親指が小指の方に鋭角に曲がった状態のことを、外反母趾といいます。土踏まずがくっきりある人は、体重が足の裏の外側、つまり小指の側面に乗るので、足の裏の内側、つまり親指の側面には乗りません。親指に余計な力が加わりません。
しかし扁平足の人は、足の裏の内側に体重が乗るので、親指に圧力がかかり曲がってしまうのです。外反母趾が悪化すると、痛みとともに歩行を困難にします。この状態で動いたりスポーツをしたりすると、疲れやすくなります。
扁平足の原因
扁平足の原因は、舟状骨という足の裏の骨が落下することですが、ではなぜ、骨が落ちてしまうのでしょうか。それは、舟状骨を「下から押し上げている力」と「上から引き上げている力」が衰えてしまうからです。
「押し上げ」の衰え
舟状骨を下から押し上げているのは、「長母趾屈筋(ちょうぼしくっきん)」と「長趾屈筋(ちょうしくっきん)」という2つの筋肉です。長母趾屈筋は親指を曲げるときに使います。長趾屈筋は、親指以外の4本の指を曲げるときに使います。
「引き上げ」の衰え
舟状骨を上から引き上げているのは、「前脛骨筋(ぜんけいこっきん)」と「後脛骨筋(こうけいこっきん)」の2つの筋肉です。前脛骨筋は、足の脛(すね)から走っている筋肉で、つま先を上に曲げるときに使います。後脛骨筋は、つま先を下に曲げるときに使います。
長母趾屈筋と長趾屈筋と前脛骨筋と後脛骨筋の4つの筋肉があるお蔭で、足首より先の「足」は縦横無尽に動かすことができるのです。それと同時に、この4つの筋肉がしっかり仕事をしていると、土踏まずが形成されるのです。
つまり、扁平足の人は、この4つの筋肉に問題が生じているといえるのです。
扁平足の治し方
では、扁平足の治し方について紹介します。
4つの筋肉を鍛える
土踏まずを作る4つの筋肉を鍛えることで、扁平足が解消できます。長母趾屈筋と長趾屈筋と前脛骨筋と後脛骨筋はそれぞれ、「親指を動かす」「4本の指を動かす」「つま先を上げる」「つま先を下げる」という仕事をしています。
そこで「足じゃんけん」が良いトレーニングになります。足の指を手の指と見立てて、「グー」は「5本の指を丸める」、「チョキ」は「親指と人差し指の間隔を開きつつ、残りの3本の指をまるめる」、「パー」は「5本の指の間隔を思いっ切り開く」の形を作ります。
このとき、足首がぐにゃぐにゃ動くので、足首の運動にもなります。
つま先でモノを拾う
素足になって、床に落としたビー玉をつかみ、拾い上げてみましょう。ビー玉が簡単に拾えるようになったら、難易度を上げるために、洋服の小さなボタンやパチンコ玉を拾い上げてみましょう。
インソール
扁平足を改善する靴のインソールが販売されています。見た目は普通のインソールですが、土踏まずの部分だけ、ぽっこり盛り上がっています。扁平足が悪化して、外反母趾が発症している人は「足じゃんけん」や「ビー玉拾い」が困難になるので、インソールから始めるのがよいかもしれません。
整体院にかかる
「扁平足を治す」とうたっている整体院や整骨院は多く存在します。そういったところでは、扁平足を矯正するテーピングをしてくれたりします。
医者にかかるケース
扁平足は通常は自宅でのリハビリや、整体院など医療機関以外での施術で改善することが多いのですが、整形外科医にかかった方がよいケースもあります。
足首や膝の異常
扁平足の人が過度な運動を続けると、足首や膝に余計な負担がかかります。足首や膝に痛みが走った場合は、医者にかかることをおすすめします。
アキレス腱炎
扁平足の人は、かかとに負担がかかることが多いので、かかとにあるアキレス腱が炎症を起こす場合があります。この部位に痛みが走ったら、我慢せず早めに治療に取り掛かりましょう。
装具
整形外科医にかかるメリットは、専用の装具を処方してもらえることです。「あなたの足」にきちんとフィットするよう、ほぼオーダーメードで作ってもらえます。装具は、土踏まずが吸収しきれない衝撃から足を守ってくれるので、本来の機能の回復が期待できるのです。
まとめ
足が疲れたり、足に痛みが走ったときに、「扁平足が原因かも?」と思う人は少ないと思います。しかし「自分は扁平足だ」と自認している人は、足に異変が生じたら、例えそれが軽症であっても、医者にかかってみてもいいかもしれません。
扁平足との因果関係が分かると、動き方を工夫でき、症状の軽減につながるかもしれません。
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