スポーツでは、しなやかな動きや怪我防止のために股関節の柔軟性は重要視されます。
バレエやヨガなどの柔らかさを必要とするものはもちろん、空手や野球、相撲など腰を使うものもそうです。運動部所属だった人でストレッチをしなかったという人はいないのではないでしょうか。
しかし一生懸命ストレッチをしても、なかなか柔らかくならないというお悩みもあるかと思います。ストレッチで治ればよいですが、場合によってはどんなに頑張ってもストレッチで治らない可能性もあります。股関節が硬くなってしまう原因と柔軟性を手に入れるための解消法をご紹介します。
股関節を柔らかくして開脚が大きく可能になると姿勢も改善されます。美しい姿勢を手に入れていきましょう。
なぜ股関節が硬くなるのか?
股関節が柔らかいということは股関節の稼働領域が広いという意味です。稼働領域を狭めている原因が筋肉であればストレッチで改善します。しかし一生懸命ストレッチをしてもなかなか柔らかくならない場合もあります。原因をよく理解しておきましょう。
筋肉が硬い
股関節に関係する筋肉は複数あり、そのどれか一つでも硬いと股関節が硬くなります。
例えば、股関節の前後の開脚が苦手な人は、股関節を曲げる筋肉のインナーマッスルの力が弱いか、ふくらはぎ、太腿の裏、お尻、背中の筋肉が緩みにくい場合も股関節が硬くなります。
股関節の左右の開脚が苦手な人は、太腿を外旋させる筋肉の収縮力が低い、内旋させる筋肉が緩みにくい、あるいはその両方が問題になっているかも知れません。詳しい筋肉の名前を挙げると、お尻の横の筋肉の中臀筋と、太腿の内側についている内転筋という筋肉です。
筋膜が硬くなっている
骨や筋肉などとすべてつながっている筋膜が硬くなっていることで痛みを発生させるのでそれ以上体を開いたり、伸ばすことができなくなります。筋膜は全身で筋肉や骨とひとつながりにつながっていて、関連痛として内蔵や筋肉が痛くなると、全く他の部分が痛むことの原因にもなっています。
特に運動不足などが引き起こっている場合に硬くなってしまう傾向があります。筋膜が常に動かされないと他の部分の筋膜まで同時に硬くなってしまいます。
肩こりなどの症状が手のひらの筋膜の凝りから来ていたり、腰や足から来ていることもあります。そのように、筋膜が硬くなってしまっていると柔軟性を失い、体が硬くなってしまいます。
これを解消する有効な方法としては筋膜リリースという方法が有効になります。
ボディービルダー系の筋トレとストレッチを混合している
運動してるのに柔らかくならない・・・という場合は、アウターマッスルを美しく見せるための、いわゆるムキムキになって純粋に力が強くなる筋肉トレーニングとストレッチを混合して誤解しているのかも知れません。
スポーツ選手にも身体が硬い人もいますね。必要な動きだけに磨きをかけていると柔らかくなる必要がない部分がでてくる場合もあるでしょう。この場合、稼働領域が大きい必要のない関節を支える筋肉は硬くなっていきます。ボディービルダーの人がアウターマッスルを鍛えても身体は柔らかくなるとは限りません。
筋肉を硬く鍛える運動をし過ぎて、収縮をよくする運動を怠った場合、力もあるし運動はできるけど身体が硬い、という状況になってしまいます。身体の柔軟性はアスリートの生命線ですので筋トレばかりではなく、ストレッチも大事にしましょう。
ただし、静的ストレッチと動的ストレッチがあり、静的ストレッチは運動機能が低下するという研究もあるのでアスリートの方は注意が必要です。ただし身体の柔軟性が欠けている場合は、静的ストレッチは有効です。試合前に静的ストレッチは厳禁といわれています。
加齢
歳をとりすぎると血管も筋肉も硬くなり、関節の軟骨のクッションもすり減ってしまうことがあります。加齢によって筋肉の収縮や力が弱まるのは確かですが、かといって子どもなら誰でも体が柔らかい、というわけでもありません。子どもでも硬い人は硬いです。病気でない限りはストレッチで改善できます。
ただし高齢の方は他の病気も併発しやすいです。ストレッチをして激痛を感じるようなことがあれば無理をしてはいけません。痛くない範囲でゆっくり動かして伸ばしましょう。
骨
身体の柔軟性は生まれつきとも言われますが、いくら筋肉をストレッチしても体が柔らかくならない場合は骨が関係しているかも知れません。
股関節が脱臼してたりしたら痛くてそれどころではありませんが、股関節亜脱臼という大腿骨頭という球状の部分が正常でないが、脱臼するほどではない程度にずれているという脱臼もあります。股関節亜脱臼の場合、股関節が硬くなりますし、腰の痛みも伴います。股関節の老化が早まり、軟骨がすり減ります。また大腿骨頭がはまる部分の深さは人によって異なります。
病気ほどでなくても重心がずれ、骨盤が歪んでいて骨格のバランスが悪くても股関節は硬くなるようです。姿勢を整えて骨盤の歪みを修正しましょう。
その他、痛み、病気、神経の異常
まれなケースだとは思いますが、脳卒中などの脳や神経の障害が原因で一部の筋肉が麻痺したり弛緩したり、意図せずに動作することで開けない可能性もあります。
その他、筋肉の伸びに対する痛みではなく、骨や皮膚、筋肉、血管、神経の異常そのほかの外傷、打撲によって痛くて開けない場合もあるでしょうから、思い当たることがあれば医師の診察を受けて無理にストレッチしないようにしましょう。
股関節ストレッチをするときのコツ
筋肉の拡縮の良さや筋力の問題であればストレッチで改善します。ストレッチにも静的ストレッチと動的ストレッチがあり、場合によっては運動に必要な瞬発力を下げてしまうのでアスリートの方は注意しましょう。
ボディービルドだけではなくストレッチが大切な理由
身体を柔らかくしたい場合は筋肉を鍛えるだけではなく、伸び縮みを良くする運動をする必要があります。ボディービルダーのように筋肉を硬く鍛える運動は、何度も素早く動かして筋繊維を傷つけて太くします。一方、伸び縮みをよくする運動は筋肉を様々な方向に伸ばして柔軟性を上げます。
筋肉は伸ばすように努めると伸び、使わないでいると縮んだままになります。こういった場合なら、ストレッチで柔らかくできます。なおストレッチをさぼると、柔軟性は元に戻ってしまいますので継続は大事です。時間がない人も、お腹に力を込めて姿勢をよくするだけでも少しは鍛えられますよ。
股関節が硬いと何が悪いのか知る
・怪我の防止
筋肉の柔軟性がないと捻挫や肉離れを起こしやすく、怪我をしやすくなります。アスリートの人は言わずもがなですが、普段運動しない人も特に筋肉の柔軟性が衰えているので注意が必要です。
股関節の筋肉は歩行に必要な筋肉です。柔軟性が下がって歩き辛くなってしまって歳をとるとお尻や腿の筋肉が特に衰えやすくなります。脚が支えられなくなって転倒のリスクが上がったり、軟骨が削れて痛みを感じてしまったりします。
・リンパ、血行の活動促進
他には股関節にはリンパが集中しているため、股関節の筋力が衰えると足のむくみや冷え性なども引き起こします。代謝も悪くなりダイエットにも良くありません。
ストレッチは若いアスリートからダイエット中の人、美容に興味がある人、お年寄りまで有用な運動です。筋肉の柔軟性も保て、血行も促進されて一石二鳥ですのでおすすめです。
動的(ダイナミック)ストレッチとは?
関節を動かしながら筋肉を伸ばしたり縮めたりを繰り返し、徐々に可動域を広げていく方法です。試合前のウォーミングアップに効果的な運動です。
もも上げやスクワットなどが動的ストレッチですが、ラジオ体操などもこれに含まれます。勢いをつけすぎると筋を傷つけてしまう可能性があります。体を温めるように少しずつ広げていきます。
静的(スタティック)ストレッチとは?
特定の筋肉を限界まで伸ばしたまま10~秒程度静止して筋肉を伸ばす運動です。スポーツ界隈ではストレッチが運動機能を下げるという話もありますが、ここでいうストレッチとは、静的ストレッチのことを指します。
静的ストレッチは確かに瞬発力は下げてしまいますが、身体を鍛えていない一般の人がただ身体を柔らかくしたいときには有効です。アスリートの方もしばらく柔軟性に欠ける場合は、静的ストレッチは有効だといわれています。
なお、動的ストレッチであれば競技前でも推奨されています。また動的ストレッチを行って体が温まったあとに静的ストレッチを行ったほうが、怪我を起こしにくいです。
どんな筋肉を伸ばしているのかイメージする
伸ばしている部分がどこかを意識すると、例えば「腰を曲げようとしているのに背骨で曲げてしまっている」「股関節を曲げようとしているのに膝で曲げてしまう」といったようなミスを避けることができます。股関節に関係する筋肉を紹介します。
股関節に関係する筋肉は22本で大きく分けて簡単に言えば内もも、お尻、ももの付け根です。
- 腸腰筋(腸骨筋、大腰筋 、小腰筋 の三本からなる腰の筋肉です。腰も曲げますが、股関節も曲げます。)
- 内転筋群(恥骨筋、短内転筋、長内転筋、薄筋からなる内腿の筋肉です。普段前後に伸ばさないと開脚をするときに痛くなりやすい部分です。)
- 外転筋群(中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋からなる外腿の筋肉です。外に逃げる力を抑えて重心を安定させます。)
- 大殿(臀)筋(お尻の大きい筋肉です。歩行に使います。ランジで伸ばしましょう。)
- 深層外旋筋(梨状筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、からなる股関節の複雑なインナーマッスルです。股関節を回したり衝撃を吸収したりします。)
- 大腿四頭筋(大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋からなる脚の手前の筋肉です。)
- ハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋からなる脚の後ろ側の筋肉です。)
どこを伸ばしているのか意識しながらストレッチしましょう。
筋膜リリース
筋膜リリースは筋膜をツボ押しのように刺激を加えて流れにそってリリース(開放してあげることで)関節の可動域の拡大やリンパの流れの向上、筋肉トレーニング効果の上昇、姿勢の矯正などの効果を得ることが出来ます。
専門家を付けての調整が最も有効ですが、グリッドフォームローラーという道具を使ってセルフで行うことも出来ます。詳しいやり方については画像などでも紹介している「筋膜リリース」で検索して出て来るサイトを参考にしてみてください。
注意点として、妊娠中の人や、骨粗しょう症の人、糖尿病患者、高血圧である、静脈瘤が発生しているなどの場合には行わない方がいいでしょう。
体幹なども鍛えられるのでおすすめです。激しい運動ではなくエクササイズやストレッチのような運動不足の人が始めるのに最適な方法ですので是非行ってみてください。
股関節の動的(ダイナミック)ストレッチの種類
テンポよく行うことがポイントです。体が温まるまで無理に急激に動かすことなく少しずつ身体を柔らかくしましょう。
・もも上げ
片脚づつもを上げ膝を直角に曲げて、それを左右交互に繰り返します。
・もも上げスキップ
もも上げをスキップしながら行います。
・ケツキック
片脚を後ろに曲げ、かかとでお尻をキックする動作を両足交互に行います。
・脚ふり
片脚を前後左右に振ります。このとき膝は曲げてはいけません。膝を上げるのではなく、股関節出足を上げるように意識することがポイントです。倒れそうになったら片手を壁によりかけてもよいです。
- 股関節回し
- 両脚を開いて立ちます。
- 片脚を浮かせて膝を曲げた状態で内側から外側に向かって股関節を回します。
- こんどは逆に同じ体制で外から内側に向かって股関節を回します。もう片方の脚も同じ調子で運動してください。
・ランジ
- 片脚を一歩前に出して腰を落とします。
- 出した脚を元に戻します。(もう片方の脚も同じ調子で運動してください。)
・ランジヒネリ
- ランジのポーズをとります
- 両手を伸ばし、胸の高さで合掌します。
- 腰を落としながら上体を出した足側にひねります。
- 出した脚を元に戻します。もう片方の脚とヒネリも同じ調子で運動してください。
・ジャンプスクワット
脚を広めに開き、膝を外側に向けてスクワットし、上体を戻すときにジャンプします。
・ディープスクワット
- 脚を広めに開き、膝を外側に向けて腰を床ギリギリまで落とします。
- つま先を両手でつかみます。背骨はまっすぐに腰だけ曲げるのがポイントです。
- つま先をつかんだままお尻を上げ、腰を伸ばします。
股関節の静的(スタティック)ストレッチの種類
無理のない範囲で、ちょっと痛いかなーと思うタイミングで体勢をキープします。怪我をしないためには、動的ストレッチを行ったあとに静的ストレッチをするほうが良いです。
運動でウオーミングアップするだけではなく、温度として身体を温めるのも効果的です。
・前屈(ハムストリングスを伸ばします。)
- 床に座った状態で片方の脚を前に伸ばし、片脚を内側に曲げて脚につけます。
- 前屈します。背骨を曲げずに腰から身体を倒すのがポイントです。
- 痛いところで止めて20秒ほどキープします。
・股関節、内転筋のストレッチ
- 胡坐のような感じで膝を曲げて座った状態で両脚の裏をつけます。
- できる限り股間に脚を近づけます。
- 両膝を地面につくように押し、痛いところで20秒ほどキープします。
(できればこのまま背中を伸ばしたまま前に倒れるとよりハムストリングスも伸びます。)
・開脚前屈(股関節、内転筋、ハムストリングスを伸ばします。)
- 床に座った状態で可能な限り足を広げて、可能な限り上体を前に倒します。
- 可能な限り前に倒れ、痛いところで20秒ほどキープします。
・広背筋のねじり
- 床に座った状態で背筋を伸ばします。
- 両手を上げて、片方の手首を掴みます。
- 掴んだ手首とは反対側に身体を倒し、痛いところで20秒ほどキープします。
・大腿四頭筋のストレッチ
- 横向きで寝て膝を曲げて少し前に出します。
- 上側にある脚を持って後ろに引っ張りお尻に近づけます。
- 痛いところで20秒ほどキープします。
・大殿(臀)筋のストレッチ
- 床に座って片脚を前に伸ばします。もう片方の脚をその上に乗せ膝を立てます。
- 上に乗せた足の逆方向に力をいれながら自分の身体の方に押し付けます。
・腹斜筋ストレッチ
- 仰向けになって両手を広げて床つけます。
- 膝を曲げて横に倒します。この時、背中や手が浮かないようにしましょう。
- なるべく片脚を奥へもっていき、痛いところで20秒ほどキープします。
まとめ
股関節の柔軟性を高めると動きがしなやかになり技術の幅が増えるほか、怪我の防止、血行や代謝の促進を促します。
とはいえ、病気やケガ、生まれつきの骨盤の違いによってストレッチで改善できる範囲は人によって異なります。状況や場面に合わせて無理はせず気持ちがいい範囲でストレッチしましょう。
ストレッチポールなどの道具を使用してストレッチをしてもいいでしょう。しっかり体を動かして筋膜を腸腰筋などの伸ばしていきましょう。
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