最近になって、割と聞きなれないウイルスや細菌が増え、さらに病気も名前が変わったり、呼び方も複雑で細かくなったりして、なかなか判断がしにくいとか見分けがつかないということが多くなってきました。
そんな中でやはりこのエンテロウイルスD68も耳慣れないもので、症例も少ないということもあり、どのようなウイルスなのか本当に見当がつきません。
追って、細かく説明しますが、ウイルスは基本的に怖い存在であり、知らないでいると大変なことになることもあります。
単なる風邪と思っていたら、入院することに、という入院例数が急に増えています。そしてこのウイルスによる病気は重くなると、深刻な問題になります。
その上このウイルスはポリオや髄膜炎の元となるというと多少驚くかもしれません。ポリオというと、身体の一部に麻痺症状を引き起こしてしまうという、恐ろしい病気です。いわゆる小児麻痺です。そのポリオはこのエンテロウイルスD68の仲間というのですから、注意しなくてはいけません。
さて今回は、エンテロウイルスD68についてお伝えいたします。
この記事の目次
エンテロウイルスD68と似たウイルスの種類
主に子供がかかる風邪やインフルエンザに似た症状を引き起こしたりする他、ウイルスの種類もたくさんあり、その中の代表的なのがエンテロウイルスD68とエンテロウイルス71のウイルスです。
エンテロウイルスD68
このエンテロウイルスD68は風邪の症状を引き起こすライノウイルスと似ています。症状もほぼ同様な感じであるために、検査をしてどのウイルスが検出されるかの確認が必要です。何年か前に重症呼吸器疾患で入院した感染者が急増した感染例もありました。
また、別な特徴としてこのウイルス感染すると、麻痺を引き起こし後遺症として残ってしまうということも確認されています。
エンテロウイルスD71
主に手足口病を引き起こすと言われています。手足口病はコクサッキーというウイルスでも感染しますが、このエンテロウイルスD71のほうが重症化します。
エンテロウイルスは今のところ特効薬はありません。つまり、ワクチンなどはなくて対処療法でしか対応できないということです。
コクサッキーA・コクサッキーB
両方とも髄膜炎という病気を引き起こします。
髄膜炎は脳にウイルスが入り、炎症を起こしてしまうことで、頭痛、発熱などの症状の他、対応が悪いと死亡するケースもあります。
ポリオ
主に急性灰白髄炎という病気を引き起こす菌です。
灰白髄炎とは、最悪下肢の麻痺などが起こる病気であり、発熱、頭痛、嘔吐、筋肉痛、倦怠感などを訴える病気です。
エンテロウイルスD68の感染経路
一般的な感染経路の他に、糞口経路があります。やはり一番の感染経路は飛沫感染です。
糞口
子供の排便の中にウィルスが排出されています。ですから、間違って触ったりした場合には、きれいに手を洗いましょう
ある程度の子供なら、排便に関わらないですが、赤ちゃんとかになると、オムツの交換などで付着するケースが多くなります。この際に感染するケースが非常に多いのです。特に治ったと思われたあとが一番危険です。実際には治ったと思われるその後の数日間も、菌が排出され続けているからです。
もっともきれいに手は洗うとも思いますが、しぶとくウイルスだけが手に残っていることがあるので注意を要します。
経口
これは文字通り口からの感染です。ウイルスが含まれている飲料水を飲んだり、食べ物を口にするなど、粘膜で吸収し感染してしまうことです。
また、ペットボトルを他人と共有することで感染することもあります。
飛沫感染
感染者の咳、くしゃみなどでウイルスが飛んで感染することです。一般的にはその際にうがいや手洗いなどにより、ウイルスを排出することができれば感染しません。ですが、ウイルスは粘膜に取り付いてから、だいたい15分~20分ほどで吸収されてしまいます。
その粘膜に付いたウイルスを完全に排除するには、その時間内に行われければいけません。そのためには、15分ごとに唾を飲み込むのがいいといわれています。ただ、そこまでは実際に気が回らないと思います。
また15分おきに水などを摂取するということを行うとかかりにくくなります。確かに15分ごとに水分を流しこむのは面倒くさいのですが、そうしないと予防方法であるうがいも意味がありません。
尚、このウイルスは飲みこむことでは感染しないということが分かっています。つまり胃に入っても、強い胃液でウイルスは死滅するということです。またこの方法はなにもこの感染症に限らず、インフルエンザなどにも有効です。
接触感染
身体の一部が接触したり、ウイルスを持っている人が触った物などを別の人がさわることにより、間接的にウイルスが付着することです。はっきりいって、感染者が触ったのもなどは、たくさんあるので、その部分を触らないということは不可能です。
ですから、帰宅したら必ずしっかりと手洗いをすることで、避けることしかないでしょう。
エンテロウイルスD68の症状
ほとんど風邪と同じ症状を引き起こしますので、これが果たしてエンテロウイルスD68の感染なのかは一見ではわかりません。
発熱
若干高めの38℃から39℃の熱がでます。
これは体質によるものも関係しており、あまり熱が出ない人もあれば、いきなり高熱でうなされることもあります。
咳
これも風邪と同様に個人差はありますが、若干の咳がでます。ただ注意しなければいけないのは、気管支喘息のように呼吸発作を起こし、かなり激しい喘息症状が出る場合もあります。
また、急性弛緩性脊髄炎といい、脊髄に原因ウイルスの菌が入ってしまい咳もさらにひどくなり、発熱などの症状もひどくなるものがあります。このように呼吸器系ウイルスなどが特に気管支に影響を与えることは注意を要すべきと思います。「
その上さらに気道感染症や呼吸器感染症という病気もあり、これは、ウイルスにより、主に気道や肺が侵されて、発熱、咳などの症状がひどくなることで、この場合はすぐにでも入院となります。
もともと呼吸器疾患を持っている人には人工呼吸管理例もあるほどに症状が重くなり、喘息の発作などの呼吸器症状が出ることため経過を見守る必要があります。
筋肉痛
熱が出た時に筋肉痛が起きます。ただこの場合は大人の人が主です。子供は筋肉痛になることはあまりありません。
筋肉痛が起きても対処法は特になく、熱が下がるのを待つだけで寝ていることが一番賢明です。
嘔吐・吐き気
風邪に似た症状で吐き気を催すケースがあります。
エンテロウイルスD68ではあまりこの症状は出ない方が多く、コクサッキーやポリオでは、この症状が出やすくなります。
エンテロウイルスD68が引き起こす病気
このウイルスは非常に恐ろしい病気を引き起こします。おそらく衛生的な部分での感染率も高くなっている理由です。特に途上国などトイレ事情が良くない、水などの浄水設備が整っていないところは感染率が高くなりがちです。
ポリオ
急性灰白髄炎を引き起こします。この急性灰白髄炎はウイルスが体内に進入し粘膜で増殖、やがてそのウイルスが脊髄中枢神経を侵し、発熱、頭痛、倦怠感など典型的症状を引き起こします。その後も進行状態になると弛緩性麻痺といって、昔は小児麻痺と呼ばれていた症状へと悪化していきます。この小児症例は小児患者が年々増加傾向にあるとの報告からも伺えます。
この症状は歩けなくなる、足が成長と伴わず細くなってしまうなど、かなり深刻な状態になります。多くはその過程において、治療のお金がない、きちんとした医者がいないなどの理由で治療が遅れて重症化してしまいます。最悪の場合は歩けなくなるなどの症状も出て入院が必要となることがあります。
髄膜炎
特に免疫力が落ちている場合にかかりやすいのですが、脳や脊髄を取り巻いていて保護している部分を髄膜と呼び、この回りにあるのが髄液といいます。ここにウイルスなどの菌が入り込んで炎症を引き起こす病気です。
今回のようなウイルスが原因の髄膜炎、無菌性髄膜炎またはウイルス性髄膜炎といい、後遺症も比較的少なく済むという特徴があり、入院症例でも予後がいいケースが多いです。
今現在も特効薬のようなものは存在せず、どの医師も治療には四苦八苦していて、結局のところは対処療法が主に行われます。
詳しくは、髄膜炎に大人がかかるとどんな症状?治療方法は?を読んでおきましょう。
ヘルペス脳炎
非常のおそろしい病気であり、脳そのものが炎症を起こしてしまうということです。初期の症状は脳炎ではほぼ同じで、発熱、意識障害、痙攣、項部の硬直、頭痛です。
項部の硬直とは、頭の後方部が痛くなることで、特に首も同様に痛みを覚えるようですと、かなり危険であり重傷の状態となります。
日本脳炎
以前から蚊に刺されるとその蚊が媒介となり日本脳炎にかかるということで、割と子供頃から予防接種を受けることになっています。ただこの予防接種には副作用があるといわれ、敬遠する人も多くなりました。
主な副作用としてはアレルギーであったり、痙攣、運動障害など肉体的なもの、あるいは皮膚に斑点が出来てしまうという血液全般に影響がでるものです。
詳しくは、日本脳炎の予防接種について!副作用や注意点はなに?症状や治療方法も知っておこう!を参考にしてください。
インフルエンザ脳炎
主の幼児がかかる傾向にあり、後遺症を残します。重症化すると死に至ることもあり、症状としては意識障害や異常行動が目に付きます。
心筋炎
心筋とは心臓を動かす筋肉のことで、これも他の炎と付く病名と一緒であり、ウイルスなどの感染により心筋が炎症を起こしてしまうことです。症状は多岐にわたり、風邪の症状を引き起こすこともある他、心不全や不整脈、気管支喘息発作を引き起こします。
こちらの病気も他と同様、かなり危険がものでやはり重症化すると死の危険もあります。詳しくは、心筋炎とは?原因や症状、治療方法を詳しく知ろう!を読んでおきましょう。
流行性胸膜炎(ボルンホルム病)
筋肉が感染して炎症を起こし、主に胸と腹部に痛みを発症します。痛みの他、深呼吸をすると痛みが増し、咳も出てきます。悪化すると呼吸器を取り付けての対処も考えられます。
これは稀なケースではありますが、当人にとってはかなりの深刻に状態となります。速やかな処置が望まれます。
急性出血結膜炎
ウイルス性の結膜炎であり、人に感染する特性を持っています。これに罹患した場合は子供は出席停止となります。目の中の上と下のまぶたの裏側がウイルスの影響により充血します。それこそ昔、アポロが月へ行った年に大流行したので、別名アポロ病とまで言われています。
これは接触感染しやすい性質をもっていて、タオルなど触ったものなどから感染します。突然の痛みと供に、異物感や目やにが大量に出ます。また、涙が溢れるように出るケースもあったり、目の黒目の部分が濁る傾向にあります。
手足口病
これも子供がかかるケースが多い病気で、文字通り手や足、口の中にぶつぶつができる病気です。ウイルス性のものであり、やはり感染性は非常に強く、熱が出ます。口の中のぶつぶつが成長し水ぶくれになることもあり、そのぶつぶつが痛い場合があります。
特に特効薬があるわけでもなく、数日の間におさまります。熱等が出た場合は通常の対処法である頭を冷やすなどの対処をします。入浴はしばらくは避けます。
詳しくは、手足口病が大人に発症した時の症状とは?感染経路や治療法について!を参考にしてください。
ヘルパンギーナ
ほとんどは幼児がかかる病気であり、大体が夏の時期に流行ることから夏風邪とも呼ばれ、これもウイルスによる感染病です。
熱が出ることが多いのと、のどや口の中が痛みます。これは口内炎ができていることが多いのですが、やはり特効薬などはなく、通常の対処法しかありません。
口の中があまりに痛いようだと、思うように食べ物も取れず辛い症状となります。脱水症状を起こさないように水分は充分に取るようにします。
詳しくは、ヘルパンギーナに大人が発症したときの症状は?対策も紹介!を読んでおきましょう。
急性胃腸炎
感染性胃腸炎で、季節に関係なく起こります。症状としては痛みの他、下痢や嘔吐感があります。ノロウイルスやロタウイルスと勘違いをしそうですが、こちらの症状は割と早く治まりますが、念のために医師の診断を受けることはすべきです。
症状が重い場合は、点滴を受ける対処をするケースもあります。
麻痺
脳神経機能の異常を来たす場合は、筋肉が弱体化し麻痺を起こすケースもあります。これを急性弛緩性麻痺というのですが、対処法においては改善の余地もあります。脳に異常があった反対側の身体が麻痺を起こし、動きが思うように出来なくなります。
脳の右側に異変があった場合、左の身体に麻痺が起こるのを左弛緩性麻痺、脳の左側に異変が起きて、右の身体に麻痺が起こるのを右弛緩性麻痺といいます。
このような弛緩性麻痺患者は、リハビリなどで治療を行いますが、ほとんどがそのまま後遺症として残るケースとなります。
ウイルス性の病気はウイルスが増殖すると急激に症状が重くなることもあります。そういう意味では初期の段階ではあまり勝手な判断や軽く考えることはせずに、医師の診断を仰ぐことが適切です。
エンテロウイルスD68の治療法
ワクチンのような治療薬はなく、安静にする他は特に治療方法もないので、対処療法での対応しかないというのが現状です。
対処療法
熱が出た場合は、安静するということの他、食事も極力控えるようにするほかありません。特に脱水症状を引き起こさないような対処は必要です。
特効薬がない以上は、現状の症状に対する沈静化を待つしかありません。
エンテロウイルスD68の予防法
まだまだ解明されていないウイルスですが、重大な病気を引き起こす可能性が強いので、予防は万全に行いたいものです。
手洗い
これは感染予防という意味では、基本中の基本と言えます。ただし、洗い方に注意を要します。爪の間、指と指の間は特に念入りに洗います。また時間があれば、手首の部分にも注目する必要があります。手首は、ほとんどの人が洗いません、が意外に今回の菌だけでなく、他にも付着しやすくそこから体内に移りやすいので、注意をしなければいけません。
この辺りは、感染症を引き起こすウイルスなどから避ける意味でも、インフルエンザなどと同じです。手は一番感染する率の高いところです。
うがい
うがいはあまり役立たないことが最近になってわかってきました。先にも書きましたが、ウイルスが粘膜から吸収される時間というのはほんの15分から20分なのです。その間に流し切れないと吸収されてしまい、感染してしまいます。
確かに外出から帰った後にはうがいをすることで、直近で付着した菌は取り除けますが、それ以前に付着した菌は排出できません。しないよりはした方がいいのですが、万全でないことは認識しておくべきです。
この場合は、うがいというより20分おきに水を飲むということで解消できます。ある高名な医者は、患者と接する時もマスクをしない代わりに、20分おきに水を飲むことで予防しているそうです。これでしたら、予防法としてもできると思います。
病人との接触
これも極力避けるのが予防法です。ただ最近はこの辺のマナーもなっていない人も多く、手で覆いをせずに平気でくしゃみや咳をする人が増えました。
危うきには近寄らずということで対処するしかないようです。
赤ちゃんのおむつ
糞口感染ということで、赤ちゃんのおむつの替えをするときに付着することもあります。必ず手を洗うということで解消できます。
次亜塩素酸消毒
ウイルスの感染を防ぐには消毒も必要です。ほんの少量でも影響するノロウイルスにも有効なので、積極的に使いたいものです。特にトイレ等の手洗いの際に、最後の吹き付けることは、かなり有効な手段となります。
それぞれのウイルスによって濃度の違いでも消毒率が違ってきますので、その濃さに注意を払う必要はあります。
まとめ
今回は、エンテロウイルスD68についての記事でした。
ウイルス性の感染症は改めて種類が多いのと、また重症化すると恐ろしいということがわかります。ウイルスは今後もウイルスの研究をしている国立感染症研究所では、どんどん進んでおり、またその予防対策、感染症予防や対処法の対策等をも研究しています。
普段から気をつけることはもちろんのこと、感染する恐れのある病気は予防もしっかりすることが大事なことだなと改めて思います。
ただ、予防だけで防げるものでもありません。現代の人たちは免疫力も落ちつつあります。この免疫力は普段の生活習慣が大事です。
免疫力が落ちないようにすることも合わせて行う取り組みをするようにしていきたいものです。
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