芽胞菌とは?種類や症状を知ろう!死滅させる方法を知って予防しよう!

細菌は感染症や食中毒を引き起こす危険性があります。「細菌をつけない・細菌を増やさない・細菌をやっつける」という三原則を守って、感染症や食中毒を防ぐようにしています。

「細菌は熱に弱いから、加熱処理すれば大丈夫」というのが、常識ですよね。ところが、加熱しようと、薬品で消毒しようと、生き残る細菌があるのです。芽胞菌です。

芽胞菌は、「有芽胞菌」「芽胞形成菌」と言います。細菌にとって死滅するような過酷な条件(高温・乾燥・栄養の悪化)下においても、芽胞を形成して休眠状態になって生き延びるのです。芽胞とは、「非常に高い耐久性を持つ細胞構造」なのです。

芽胞菌と呼ばれる細菌は、過酷な条件下では芽胞を形成して休眠し、好条件になると発芽して、細菌本体に戻り繁殖します。シチューやカレーなど、よく煮込んである料理で食中毒が起きるのは、芽胞菌のせいです。

芽胞菌という細菌、芽胞菌による感染症や食中毒、芽胞菌を死滅させる方法について、お伝えしますね。

芽胞菌とは?

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細菌の中には、劣悪な環境に置かれたり、細菌に対して毒性を持つ化合物と接触したりすると、「芽胞」を形成して休眠状態になるものがあります。芽胞を形成できる細菌を「芽胞菌」と言います。

[芽胞とは?]

芽胞(spore)とは、ある種の細菌が持つ「耐久性の非常に高い細胞構造」のことです。芽胞は、胞子膜と皮層と芯部から成り立っています。芯部は、DNA・リボソール・酵素・低分子化合物などを含有しています。

以前は、細菌の胞子(spore)とか内生胞子(endospore)とか呼ばれていましたが、真菌(カビやキノコなど)やシダ植物の胞子と紛らわしいので、芽胞と言うようになりました。真菌やシダ植物の胞子は、繁殖するための生殖細胞です。

芽胞を形成できる細菌は、高温または非常な低温、劣悪な栄養状態、乾燥などという、細菌にとっては過酷な環境に置かれたり、消毒剤など細菌に対して毒性のある化合物と接触したりすると、細胞内に芽胞を形成します。細菌は遺伝子を複製して、それを芽胞の中に配置します。

環境がさらに悪化したり、化合物の毒性が増したりすると、たいていの細菌は死滅します。ところが、芽胞は極めて耐久性が強いので、芽胞菌は生き続けることができます。つまり、芽胞は、煮沸・冷凍・乾燥・アルコール消毒などにも耐えて生き残ることができるのです。芽胞はX線にも耐えられるほど強いのです。

ただし、芽胞では、細菌は繁殖することはできませんし、代謝も限られます。いわば休眠状態になります。そのため、芽胞を「耐久型」とか「休眠型」とか呼ぶこともあります。芽胞を形成すると、十数年間も休眠状態で生存し続けることができます。

生き残った芽胞は、細菌の生存に適した環境になると、発芽します。細菌細胞が再び代謝を行い、繁殖を始めます。通常の状態に戻った芽胞菌を「増殖型」「栄養型」と呼びます。

[芽胞菌の種類]

芽胞を形成できる細菌は限られています。どの細菌も芽胞を形成できるわけではありません。

芽胞菌は大きく2種類に分けられます。

➀バシラス(バチルス)属

好気性または通性嫌気性菌と言われる有芽胞グラム陽性桿菌です。好気性菌は酸素のあるところで活性化して繁殖します。通性嫌気性菌は、酸素のあるところでは酸素呼吸をし、酸素がないところでは、発酵するなどして代謝を切り替えて生きることができます。

炭疽菌・卒倒病菌・枯草菌(こそうきん)・セレウス菌・納豆菌が、バシラス属の芽胞菌です。

②クロストリジウム属

嫌気性菌と言われる有芽胞グラム陽性桿菌で、酸素のあるところでは繁殖できません。

破傷風菌・ボツリヌス菌・ウェルシュ菌が、クロストリジウム属の芽胞菌です。

芽胞菌と人間との関わり

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芽胞菌は、人間と深い関わりがあります。

納豆菌のように有益な芽胞菌もありますが、芽胞菌の多くが、感染症や食中毒を引き起こす原因となるので、注意が必要です。

[人間の役に立つ芽胞菌]

➀納豆菌

納豆菌は納豆を製造するために必要な芽胞菌です。枯草菌の1種です。納豆菌は日本産の稲を乾燥させた藁についています。他の細菌は乾燥すると死滅しますが、納豆菌は芽胞を形成して生き残ります。昔は、製造過程で藁を煮沸していました。芽胞は熱に強いので、熱湯で煮立てても、他の細菌が死滅するだけで、納豆菌は生き残ります。

納豆菌は、整腸作用があり、ビタミンKを生成します。血栓溶解酵素のナットウキナーゼを生成することが、最近注目されていますが、経口摂取(食べる)による効果は、まだ確認されていません。

②卒倒病菌

卒倒病菌は蚕(かいこ)の病原体として、日本で発見された芽胞菌です。養蚕農家の塵芥や土壌だけでなく、土壌・淡水・海中の堆積物・植物の表面などに常在します。

自然環境に安全な生物農薬、微生物殺虫剤として世界中で利用されています。ただ、卒倒菌は、農薬・殺虫剤に利用されているので、農産物に付着することが多く、豆腐などの農産物加工食品が汚染される心配があります。

[感染症を引き起こす芽胞菌]

感染すると恐ろしい芽胞菌は炭疽菌と破傷風菌です。

➀炭疽菌

炭疽菌は炭疽症の病原体です。土壌の中に菌体または芽胞として生存しています。土壌を通して羊など動物の毛に存在することもあります。世界中に普遍的に存在する、自然環境の常在菌です。

炭疽菌という細菌名は、病変部が炭のように黒いカサブタに覆われることに由来します。

ふつうの細菌なら死滅してしまう劣悪な条件下では、芽胞を形成して生き延びます。その毒性と耐久性から、第二次世界大戦後、各国で「生物兵器」として研究されています。生物爆弾の実験では、炭疽菌は、爆弾投下後四十年以上も生存することが確認されました。

炭疽症は、羊や山羊などの家畜からヒトまで感染する人獣共通感染症です。ヒトの場合、皮膚の傷口から感染することが多く、皮膚炭疽症を起こします。致死率は10~20%です。空気とともに炭疽菌を吸い込むと、肺炭疽症を発症します。致死率は90~95%です。炭疽菌に汚染された(炭疽症で死んだ)動物の肉を食べると、腸炭疽症を発症します。致死率は20~50%です。

②破傷風菌

破傷風菌は破傷風の病原体です。世界中の土壌や汚泥の中に芽胞の形で存在しています。

破傷風菌は、破傷風毒素という神経毒素をはじめ毒素を産生します。皮膚の傷口から感染します。破傷風の芽胞は傷口から人体内に侵入して、そこで活性化して繁殖し、神経毒素を産生します。神経毒素は剛直性痙攣(けいれん)を引き起こし、開口障害・嚥下困難、続いて呼吸困難が生じ、最悪の場合は窒息死します。致死率は30%と言われます。

詳しくは、破傷風の症状とは?原因や治療法、予防方法について紹介!を参考にしてください。

③枯草菌

枯草菌は、世界中の土壌や空気中に存在しています。ヒトに対する影響は少ないと思われていましたが、菌血症・心内膜炎・呼吸器感染症・眼感染症・食中毒を引き起こすことがあります。

[食中毒]

食中毒とは、食品に細菌やウィルス、細菌が産生する毒素、砒素(ひそ)などの化学物質、毒キノコやフグ毒などの自然毒が混入し、その食品を摂取することにより、腹痛・下痢・嘔吐などが起きることです。

芽胞菌の中には、食中毒を引き起こすものがあります。加熱処理しても、芽胞は耐性が強いので、細菌が死ぬことはありません。「食品は火を通せば安心」という常識が通用しません。

➀ウェルシュ菌

ウェルシュ菌は、嫌気性のグラム陽性桿菌です。ウェルシュ菌は、世界中の土壌・河川・下水・海に広く存在しています。

ウェルシュ菌は腸内に常在しますが、ビフィズス菌のような有益な腸内細菌ではありません。臭いオナラの原因にもなる悪玉腸内常在菌です。

ウェルシュ菌は12種類の毒素を産生しますが、その毒素によってウェルシュ菌はA,B,C,D,Eの5種類に分けられます。食中毒に深く関わるのは、ウェルシュA型菌が産生するエンテロトキシンです。

ウェルシュ菌は食品に混入して摂取されると、腸管内で繁殖します。繁殖しながら、芽胞を形成し、同時にエンテロトキシンなどの毒素を産生します。腸管内で産生される毒素によって、食中毒が起こります。

詳しくは、ウェルシュ菌とは?症状・特徴・治療法・予防法を紹介!を読んでおきましょう。

(ウェルシュ菌による食中毒)

ウェルシュ菌の食中毒は、カレーやシチュー、スープ、煮物などで起こります。1度に多人数の食中毒が起こりやすいので、「給食病」と呼ばれます。

カレーやシチュー、煮物では、煮立てることで酸素がなくなり、好気性の細菌(酸素がないと繁殖できない細菌)は死滅します。また、たいていの細菌は熱に弱いので、高温で長時間煮込むと死滅します。でも、ウェルシュ菌は芽胞を形成できるので、高温の煮込みに耐えて生き延びます。しかも嫌気性(酸素がないところで繁殖する)ですから、煮立てて酸素がなくなるのは大歓迎です。

煮込んで仕上がったカレーや煮物などの熱が冷めて、43~46℃程度になると、ウェルシュ菌の芽胞が活性化して、増殖を始めます。他の細菌が死滅していますから、ウェルシュ菌の1人天下です。カレーやシチュー、煮物などは、冷蔵庫に入れて保存することも多いのですが、粗熱が取れてから冷蔵庫に入れますから、その間にウェルシュ菌が増殖します。ウェルシュ菌が最も活性化するのは37℃程度ですが、それ以下の低温になると、芽胞を形成しますから、ダメージを受けることはありません。ヒトの体内に入って快適な温度になると、増殖しながら毒素を産生するのです。つまり、どれほどよく煮込んでも、冷蔵庫に保存していても、ウェルシュ菌による中毒を防げないのです。

(ウェルシュ菌の食中毒症状)

ウェルシュ菌の食中毒症状は、主に腹痛と下痢で、腸管内で産生されるエンテロトキシンという毒素が原因です。ウェルシュ菌が混在する食品(料理など)を摂取すると、約12時間後(6~18時間後)にお腹が張ったような感じ(膨満感)になります。続いて、腹痛と下痢が起こります。水のような便が出ます。重症になると、粘液性の血便(粘血便)が十数回も起こります。しかし、たいていは、粘血便は出ませんし、発熱や嘔吐も起きません。ほとんどの場合、2~3日で回復します。

(ウェルシュ菌の食中毒の治療法)

ウェルシュ菌の食中毒は比較的軽症ですから、自宅に安静にしていれば、2~3日で治ります。市販の下痢止めは服用しない方がいいようです。お腹の中の悪い物は、全て排出する方がいいのです。ただし、脱水症状にならないように、水分補給を十分に行います。下痢をすると、水分とともにナトリウムやカリウムなどの電解質が失われますし、糖分も不足しがちです。ただの水よりも、市販の経口補水飲料を飲むことをオススメします。

粘血便が出たりして重症な場合、高齢者や幼児が発症した場合は、すぐにお医者さんに診てもらうことが大事です。高齢者や幼児は衰弱が激しく、重症化しやすいのです。

②ボツリヌス菌

ボツリヌス菌は、嫌気性のグラム陽性大桿菌です。世界中の土壌や海・川・湖沼の泥砂の中に芽胞の状態で存在します。ボツリヌス菌はA,B,C,D,E,F型に分類されます。日本とヨーロッパでは、ボツリヌス菌E型による食中毒が多く、アメリカではボツリヌス菌A型の食中毒が多いようです。

ボツリヌス菌の産生する毒素は神経毒で、最強と言われます。青酸カリを経口投与した場合、1gで5人分の致死量となりますが、ボツリヌス菌は1gで100万人の致死量となります。

ボツリヌス菌の食中毒は、食品中で増殖したボツリヌス菌が産生する毒素によって引き起こされます。ウェルシュ菌は、腸管内で増殖して産生した毒素が中毒症状を引き起こしますが、ボツリヌス菌は、毒素を含有する食品を摂取することにより、中毒症状が生じます。

まれに、傷口からボツリヌス菌が侵入して感染症を起こすことがあります。詳しくは、ボツリヌス菌に注意!感染して起きる症状や特徴を紹介!食中毒が起きる原因は?を読んでおきましょう。

(ボツリヌス菌による食中毒)

ボツリヌス菌による食中毒は、缶詰・ビン詰・容器包装詰食品(レトルトパウチ食品)・保存食品などを摂取して起こることが多いといいます。缶詰やビン詰などは、酸素がない状態になっていますから、たいていの細菌は死滅しますが、嫌気性ボツリヌス菌には快適な環境です。加熱しても芽胞を形成しますから、他の細菌が死滅しても生き残ります。適温に下がると、缶やビン、保存容器で増殖して毒素を産生します。

缶詰やビン詰、容器包装詰食品を製造する場合は、120℃で4分間、あるいは100℃で6時間加熱して、ボツリヌス菌を死滅させます。加熱処理が十分でないと、ボツリヌス菌は芽胞を形成して生き延びます。ですから、自家製の缶詰・ビン詰で、ボツリヌス症が起きることが多いのです。

缶詰・ビン詰・容器包装詰が膨らんでいたり、開けた時に異臭がしたりする場合は、決して食べないでください。

(ボツリヌス菌の食中毒症状)

ボツリヌス菌を含有する食品を摂取すると、8時間〜36時間後に、中毒症状を発症します。ボツリヌス菌の毒素は神経毒ですから、神経症状が現れます。吐き気や嘔吐が起こり、手足に麻痺が生じます。眼筋麻痺による複視(物が二重に見える)、発声が困難になる構音障害、排尿障害、発汗障害、喉がやたらに渇くなどの症状が出ます。

重症になると、呼吸筋が麻痺して死に至ることがあります。発熱や意識障害は、ほとんどありません。致死率が高くて、30%~70%です。

(ボツリヌス菌の食中毒の治療法)

ボツリヌス中毒症の治療は、発症して24時間以内に、ウマ血清という抗毒素を投与します。24時間以内に投与すると効果が大きいと言いますが、24時間経ってから投与しても効くことがあります。

ボツリヌス菌中毒の疑いがあれば、直ぐに医者に行くことをオススメします。

(乳児ボツリヌス症)

1歳未満の乳児に発症します。原因はハチミツが多く、1歳未満の乳児にはハチミツを与えないように指導されています。

ボツリヌス菌の芽胞が混入した食品を摂取すると、乳児の場合は腸内で活性化して増殖します。数日間便秘が続き、全身の筋力が低下する麻痺症状が出ます。哺乳力や泣き声が弱くなり、全身の筋肉が弛緩します。

ただちに医者の診療を受けてください。

③セレウス菌

セレウス菌は通性嫌気性のグラム陽性桿菌ですから、酸素のあるところでもないところでも、増殖します。世界中の土壌や汚水の中に、広く分布しています。

ヒトの10%程度の腸内に常在します。10~45℃で活性化して増殖し、1~59℃芽胞を形成します。100℃で3分間加熱されても死滅しません。ただ、4℃以下で冷蔵すれば、セレウス菌の繁殖を防ぐことができます。

エタノール系消毒剤にも耐性があります。セレウス菌の産生する毒素は、下痢毒と嘔吐毒の2種類があります。

(セレウス菌による下痢型食中毒)

セレウス菌を含有する食品を摂取すると、腸内で繁殖して下痢毒を産生します。摂取してから8時間から16時間後に発症し、下痢が24時間程続きます。

乳製品(プリンなど)や肉類、野菜の煮物、スープなどが原因となります。下痢毒本体は強い酸に弱く、60℃の加熱で不活性化できます。

(セレウス菌による嘔吐型食中毒)

セレウス菌は芽胞を形成して加熱調理されても生き延びます。調理後、常温で食品を保存すると、セレウス菌が活性化して増殖し、嘔吐毒を産生します。この嘔吐毒を含有する食品を摂取すると、急性胃腸炎が発症します。

嘔吐毒を含有する食品を摂取すると、早いと30分、たいてい1~5時間後に激しい嘔吐が起きます。8~10時間程度続きます。ほとんどの場合、発熱しません。

ごはん、ピラフ、チャーハン、カレーライス、パスタなどが原因となります。嘔吐毒本体は熱に強く、120℃で15分間加熱されても不活性化しません。消化酵素や酸・アルカリにも耐性があります。調理した食品を4℃以下で保存すれば、セレウス菌は繁殖できず、嘔吐毒の産生を防ぐことができます。

嘔吐型も下痢型も、自宅で安静にしていれば、回復します。脱水症状に注意してください。ただし、嘔吐や下痢が激しく、重症化する場合は、医者に行くことをオススメします。

芽胞菌の滅菌と予防

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[芽胞菌の滅菌法]

芽胞菌を不活性化する、あるいは死滅させる方法には、次のようなものがあります。

➀加熱

芽胞は加熱に対する耐性が強いので、熱で滅菌する場合は、「オートクレーブ処理」または「乾熱処理」を行います。

オートクレーブ処理とは、圧力鍋のように内部の圧力を高くできる容器や装置を使い、飽和水蒸気で芽胞を死滅させることです。2気圧の飽和水蒸気中で121℃以上で15分間以上加熱すれば、どの細菌の芽胞も完全に死滅します。「高圧蒸気滅菌法」とも呼ばれます。

乾熱処理とは、180℃で30分以上、または160℃で1時間以上加熱することです。

②ガス滅菌

酸化エチレンガスや過酸化水素ガスプラズマを使用する滅菌法です。酸化エチレンガスによる滅菌には4時間ほどかかり、残留ガスの処理にも長時間かかります。病院など医療現場では、過酸化水素ガスプラズマを利用します。

③濾過(ろか)滅菌

メンブランフィルターという細菌よりも小さな孔の濾過膜を使用した装置で、細菌を除去します。医薬品の製造で使用されます。

④間欠滅菌

芽胞菌は、増殖できる適温になると、芽胞が発芽して、高温で死滅する細菌本体に戻ります。その性質を利用して、滅菌する方法です。加熱調理した食品を、常温で一晩放置して、再び煮沸します。さらにもう一晩、常温で放置した後、煮沸します。

⑤消毒薬

芽胞は化学物質にも耐性があります。アルコール類は効きません。次亜塩素酸ナトリウムが少し効きます。

グルタラールというアルデヒド系の消毒薬に長時間接触させると、どの芽胞菌も死滅します。

ただし、グルタラールは接触すると化学熱傷が生じます。グルタラールの蒸気を吸い込むと、呼吸器系や眼の粘膜を傷めます。

[芽胞菌の予防]

芽胞菌による食中毒を予防するには、3大原則の「つけない・増やさない・やっつける」しかありません。

まず食材をしっかりと水洗いして、付着している芽胞菌を除去することです。

加熱調理した食品は、長時間常温で放置すると、芽胞が発芽して、細菌が繁殖し始めますから、調理後、すぐに食べるようにします。保存する場合は、10℃以下で冷蔵し、芽胞菌の繁殖を防ぎます。

「やっつける」のは、芽胞菌の滅菌には特殊な装置が必要なので、家庭では難しいですね。でも、芽胞菌は芽胞の状態では増殖できません。発芽して細菌本体に戻ると、繁殖できますが、熱などで死滅します。この性質を利用した「間欠滅菌」が家庭には最適です。野菜の煮物を何回も煮直したり、カレーやシチューをくり返し煮込んだりすると、いいですね。

まとめ 芽胞菌には十分な注意が必要です

芽胞菌には常識が通用しません。たいていの細菌は加熱処理やアルコールなどの消毒剤で滅菌できますが、芽胞菌は芽胞という極めて強い組織を形成して、熱にも消毒薬にも耐えて、生き延びることができます。

芽胞菌が、私達の身近な問題となるのは、食中毒を発生させるためです。芽胞菌は毒素を産生して中毒症状を起こさせます。芽胞が腸内に入ってから増殖して毒素を産生する場合と、食品中で増殖して毒素を産生してから体内に摂取される場合とあります。

食中毒の3大対策は、「つけない・増やさない・やっつける」です。芽胞を「やっつける」のは、特殊な装置がないと滅菌できないので、ちょっと難しいですね。食材をよく水洗いして芽胞菌を「つけない」ようにすることはできます。加熱調理したものは、10℃以下で保存して、芽胞菌の繁殖を防ぎます。芽胞は冷凍保存にも耐えますから、解凍すると発芽して増殖し始めます。「冷凍すれば大丈夫」ということはありません。

食中毒を発症した場合、ボツリヌス症以外ならば、自宅で安静にしていれば回復します。市販の下痢止めなどは服用しない方が賢明です。ただし、高齢者・幼児・重症の場合は、できるだけ早く病院で受診することをオススメします。ボツリヌス症は致死率も高いので、ただちに病院へ行ってくださいね。

また、芽胞菌は破傷風や炭疽症を引き起こします。山野で怪我をした時は、軽く見ないでください。少しでも疑わしい症状があれば、病院へ行くことをオススメします。土壌の中には、芽胞菌が休眠していることを忘れないでくださいね。

  

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