便秘という症状について、どういうイメージをお持ちでしょうか?ただ単に、便が出ないだけで重い病気ではないというイメージをお持ちの人が多いのではないでしょうか。
しかしながら、便秘の症状が続くと腸内環境が悪化して、腹痛などの症状だけでなく、発がん促進物質が発生したり、近年の研究では免疫力の低下が判明するなど、便秘は重い病気を引き起こす原因になりかねないのです。
ですから、便秘は早い段階で解消しておくことに越したことはありません。とはいえ、なるべくなら薬剤には頼りたくないという思いをお持ちの方も少なくありません。
そこで今回は、便秘の予防につながる食べ物や軽度な便秘の解消に効く食べ物を、ご紹介したいと思いますので、参考にしていただければ幸いです。
便秘の基礎知識
まずは、便秘に効く食べ物をご紹介する前に、便秘についての基礎知識を確認しておきましょう。
というのも、一口に便秘と言っても、便秘にはいくつかの種類があり、食べ物によって改善できるタイプの便秘もあれば、そうでないタイプの便秘もあるからです。
便秘の定義
便秘は、体内で生じた排泄物である便が大腸の中に溜まり、何らかの原因によって正常な体外への排泄・排便が為されない状態・症状のことを言います。
排泄や排便の状況には個人差が生じるため、仮に毎日排便している場合でも、残便感が強く残る状態ならば便秘と診断されることもあるとされています。
便秘による悪影響
便秘の症状が長く続くと、腸内環境が悪化してしまいます。つまり、腸内に存在する善玉菌の割合が減少して、悪玉菌の割合が増えてしまうのです。
その結果として、腹痛・腹部の膨満感・お腹の張り・残便感などの症状が現れます。また、腸内環境の悪化から、増えすぎると体に悪影響を与える活性酸素が発生したり、発ガン促進物質も発生することがあります。
さらには、腸内環境の悪化が免疫系の弱体化とも関係していることが、近年の研究で判明しています。
便秘の種類
便秘は、大きく分けて器質性便秘と機能性便秘の2種類に分類されます。そして、器質性便秘については、食べ物による改善が見込めないタイプの便秘です。
器質性便秘
器質性便秘は、排便に関わる臓器や器官(胃・小腸・大腸・肛門など)に病気・疾患があることによって生じる便秘のことです。
例えば、大腸ガン・腹膜炎・腸閉塞・腸捻転・潰瘍性大腸炎・子宮筋腫などの病気によって便秘の症状が現れます。
器質性便秘は原因となる胃腸や大腸などの病気を治療をしなければ、便秘症状の改善は見込めません。当然ですが、器質性便秘は食べ物によって改善もできませんので、病院を受診して医師の指示に従って治療するしかありません。
機能性便秘
機能性便秘は、乱れた生活習慣や欧米的な食生活などが原因となり、一時的に排便に関わる臓器や器官などが機能低下してしまうことで生じる便秘のことです。
一般的な会話で「便秘」という言葉を使う場合は、ほとんどが機能性便秘のことを指します。また、原因からも分かるように、食べ物によって改善が図れる便秘は、機能性便秘に分類される便秘です。
ちなみに、機能性便秘は、さらに弛緩性便秘・痙攣性便秘・直腸性便秘の3種類に分類されます。
食物繊維を含む食品
このように便秘には、いくつかの種類が存在します。つまり、食べ物によって改善できない器質性便秘もあれば、食べ物によって改善できる機能性便秘もあるのです。
そこで、食べ物によって症状を改善できる機能性便秘に対して、症状改善効果が期待できる食物・食品・食材をご紹介したいと思います。
まずは、誰もが便秘の解消法として思い浮かべる栄養成分が食物繊維だと思いますので、食物繊維を多く含む食品・食材をご紹介します。
食物繊維の種類
便秘の解消に効く食べ物で代表的なものは、食物繊維を含む食品です。ただし、食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類あり、それぞれの働きは異なります。
どちらか一方を摂取するのではなく、両者をバランス良く摂取することが重要です。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は、水に溶けない性質を有する食物繊維のことで、野菜・穀物・豆類などに多く含まれています。
不溶性食物繊維は、胃腸で栄養素が吸収されると食物残渣(残りかす)となりますが、腸内で水分を吸収することで膨張します。このように不溶性食物繊維は、膨張すると体積が大きくなり腸管を内側から刺激するので、腸管の蠕動運動(ぜん動運動)が促されます。そして、蠕動運動が生じると、食物残渣が便の元として大腸・直腸に送り出されます。
ただし、便秘の症状が既に重い場合、大腸や直腸には排便されていない便が詰まっていて、その便は硬さを増しています。ですから、さらに不溶性食物繊維を含む食物を摂取すると、便の元が増えて余計に便秘を悪化させる可能性がありますので注意が必要です。
水溶性食物繊維(水溶食物繊維)
水溶性食物繊維は、水に溶ける性質を有する食物繊維のことで、果物・海藻などに多く含まれています。
水溶性食物繊維は、腸内の水分に溶けることによりゲル化して保水性を有するので、腸管による水分吸収を阻害して便が硬くなるのを防ぎます。ですから水溶性食物繊維は、便をやわらかくして、排便しやすくする作用を持っているのです。
食物繊維を多く含む食品
食物繊維の多い食材として代表的なものを、ご紹介します。上手く食事に取り入れて、摂取しましょう。
海藻類
ワカメ・ヒジキ・昆布(コンブ)などの海藻類は、水溶性食物繊維含有量が豊富なことで知られていますが、不溶性食物繊維もそれ以上に含まれています。
また、海藻のテングサ(天草)から作られる寒天も食物繊維豊富で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方を含み、しかもカロリーが低いのでダイエットにも効果があると注目されています。
豆類
いんげん豆・小豆・えんどう豆・大豆などの豆類は、不溶性食物繊維が豊富に含まれます。大豆製品の納豆やきな粉も、同様に不溶性食物繊維たっぷりの食品です。
穀物(穀類)
穀物と言っても精製された白米や小麦粉、小麦粉由来のパン・うどんには、それほど食物繊維は含まれていません。
穀物の中で食物繊維が多く含まれるのは、ライ麦・大麦・オーツ麦などを加工した食品です。具体的には、ライ麦パンやシリアル(オートミール・グラノーラなど)です。これらは、不溶性と水溶性のバランスに優れています。
野菜類・根菜類
野菜や根菜の中で、食物繊維が多いのは、モロヘイヤ・ゴボウ・切り干し大根です。モロヘイヤとゴボウは不溶性と水溶性のバランスが良く、切り干し大根は不溶性食物繊維が多くなっています。
果物
果物で食物繊維が豊富な食材は、アボカド・干し柿・干しいちじく・干しプルーンが代表的です。干し柿は不溶性が多いのですが、それ以外のものは不溶性と水溶性がバランス良く含まれています。
乳酸菌を含む食品
機能性便秘の改善には、腸内環境を良くすることが必要です。そして、腸内環境を整える働きをするのが、腸内細菌の中でも善玉菌と呼ばれる腸内菌です。
そこで、整腸作用のある善玉菌を増やす食品・食材について、ご紹介したいと思います。
腸内細菌について
腸内では様々な細菌が活動しており、その腸内細菌は善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種類に分類されます。善玉菌は健康に良い働きをし、悪玉菌は逆に健康を損なう働きをします。
日和見菌は、善玉菌と悪玉菌の優勢なほうになびくので、善玉菌が多くなると善玉菌に加勢する働きを見せますが、悪玉菌が多くなると逆の働きをしてしまいます。
ですから、便秘の改善には善玉菌を増やす必要があるのですね。
善玉菌(乳酸菌)
善玉菌の代表的な存在が、乳酸菌です。乳酸菌は、糖類を分解して乳酸を作り出す細菌の総称で、動物由来の動物性乳酸菌、植物由来の植物性乳酸菌、人の腸内細菌由来の人由来乳酸菌の3種類が存在します。
動物性乳酸菌
動物性乳酸菌は、主にヨーグルトやチーズなどの発酵食品(醗酵食品)の製造に用いられます。ビフィズス菌を含むヨーグルトを朝食などで食べている方も多いと思います。
ビフィズス菌は糖類を分解して乳酸を作るので乳酸菌の一種ですが、酸素がある環境では生きられない性質を持っていて、酸素がある環境で生息できる一般的な乳酸菌とは区別されます。とはいえ、ビフィズス菌も乳酸菌も善玉菌であることには、変わりありません。
乳糖不耐症
動物性乳酸菌の摂取について、留意しておかなければならないのが乳糖不耐症の存在です。乳糖不耐症は、乳製品に含まれる乳糖の消化酵素(分解酵素・ラクターゼ)の分泌が減少する状態のことで、結果として乳製品を消化できずに下痢などの症状が現れます。
ですから、ヨーグルトやチーズなどを食べて便の硬さが緩み便通が良くなったと感じたとしても、それが乳酸菌の働きではなく、乳糖不耐症によるものかもしれないということです。
乳糖不耐症は、哺乳類全般に見られるもので、授乳期を過ぎると乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性が低下します。成人の日本人では約8割に乳糖不耐症が見られ、欧米人でも地域の差はありますが乳糖不耐症が多く見られます。したがって、乳糖不耐症は、一概に病気とも言えません。牛乳を飲んで、お腹が下る方は乳糖不耐症の可能性が高いと言えるでしょう。
詳しくは、乳糖不耐症とは?症状・原因・検査方法・治療方法を紹介!母乳やミルクを飲めなくなる病気なの?を参考にしてください。
植物性乳酸菌
植物性乳酸菌は、主に味噌・醤油・漬け物・キムチなどの発酵食品の製造に用いられます。植物性乳酸菌の最大の特徴は、塩分濃度や糖分濃度が高い過酷な環境でも生育できる強さを持っている点にあります。
ですから、動物性乳酸菌よりも植物性乳酸菌のほうが、生きたまま腸まで届きやすいとされています。
人由来乳酸菌
人由来乳酸菌は、人の腸内細菌(善玉菌・乳酸菌)を分離抽出して培養したもので、主に健康食品・栄養機能食品として乳酸菌サプリメントとして販売されています。
人由来乳酸菌は、動物性乳酸菌や植物性乳酸菌と比べても人との相性が良く定着しやすい特徴を有していて、植物性乳酸菌にも劣らないほど腸まで生きて届きやすいとされています。
乳酸菌の増殖を助ける食品
乳酸菌は、糖類を分解することで活動するためのエネルギーを獲得し、その過程で乳酸を大量に生み出します。ですから、乳酸菌の増殖を助けるには、糖類の存在が不可欠です。
しかしながら、人が日常的に口にする糖類のほとんどはブドウ糖・ショ糖・麦芽糖で、これらは小腸で消化・吸収されて主に人の活動エネルギーとなります。ですから、ブドウ糖・ショ糖・麦芽糖などは大腸まで到達することが難しく、乳酸菌の増殖を助けられません。
そこで摂取したいのが、オリゴ糖です。オリゴ糖は、一般的に難消化性の性質があり人間の消化酵素では分解されず、胃酸にも強いので大腸まで届きやすい糖類なのです。ですから、オリゴ糖は乳酸菌増殖の土台となるのです。
乳酸菌とオリゴ糖を合わせて摂取することで、優れた整腸効果が発揮され腸内環境改善につながります。
ちなみにオリゴ糖を摂取するには、精製されたオリゴ糖製品の他に、りんご・バナナ・はちみつなどにオリゴ糖が多く含まれています。
その他の便秘に効く食べ物
このように食物繊維を含む食品や乳酸菌を含む食品は、便秘の症状改善の効果が期待できます。これらの他に、便秘の症状改善効果が期待できる食品・食材がありますので、ご紹介したいと思います。
水分補給
便秘は、前述のように体内で生じた排泄物である便が大腸の中に溜まる状態ことですが、正確に言うと肛門直前の大腸の最後の部分である直腸に便が溜まります。
便が排便されずに直腸に溜まると、便が徐々に硬くなっていきます。これは、直腸や結腸(大腸の大部分を構成する部分)に水分を吸収する機能があるからです。
直腸や結腸の水分吸収機能により、通常ならば便が丁度良い硬さに調節されます。しかしながら、排便されずに便が溜まり続ける状態だと、一方的に水分が吸収されていきますので便が硬さを増していってしまうのです。
ですから、こまめに水分を補給することも、便秘改善に欠かせない方法の一つなのです。
適度な油分も必要
油は脂質に含まれるものとして、高カロリーで肥満につながるものとして良いイメージが無いかもしれません。
しかしながら、便秘に対しては潤滑油のような働きをして、便の滑りを良くすることで排便を助けてくれるのです。
ですから、適度な油分を摂取することも、便秘に効くと言えるでしょう。
特におすすめなのが、オリーブオイルです。オリーブオイルに含まれるオレイン酸は消化・吸収されにくいので、大腸まで届きやすく潤滑油としての働きをしやすいのです。
便秘に悪影響な食べ物
ここまでご紹介したような便秘に効く食べ物がある一方で、当然ながら便秘に悪影響を与える食べ物も存在します。
そこで、便秘を悪化させてしまう可能性のある食品・食材を、ご紹介したいと思います。
肉類
腸内環境を悪化させる悪玉菌を増殖させるのが、動物性タンパク質を多く含む肉類です。しかしながら、肉類に含まれるタンパク質は、人の筋肉を形作るのにも必須の栄養素でもあります。
ですから、食生活が肉類にあまりにも偏りすぎないように、その他の食材とバランス良く摂取するように心掛けていれば問題ないでしょう。あくまでも、理想とされる腸内細菌のバランスが取れた状態、いわゆる腸内フローラ・腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を崩すような偏食をしなければ、気にする必要はありません。
タンニンを含む食品
タンニンという物質は、便を硬くする働きがあるとされていて、いわゆる下痢止め・止瀉薬などの医薬品にも利用されています。
タンニンは口に入れると、とても強い渋みを感じ、渋柿・お茶・紅茶・ワインなどに多く含まれています。
ですから、これらの食品を食べ過ぎたり、飲みすぎると便が硬くなってしまう可能性があります。
冷たい食べ物
夏場などに冷たい食べ物を食べたり、飲んだりすると清涼感を感じますが、内臓を冷やしてしまい血行を悪くする可能性があります。血行が悪くなれば、内臓の働きも低下しますので、便秘につながる可能性があるのです。
ですから、冷たい食べ物の摂取については、気を付けたほうが良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?便秘に効く食べ物について、ご理解いただけたでしょうか?
便秘を放置していると、様々な重い病気を引き起こす原因になりかねませんから、早期に便秘を解消しておきたいものです。
便秘の解消方法として即効性を求めるならば、やはり薬剤を使用することになるでしょう。しかしながら、それほど重い便秘でなければ、薬剤に頼らずに食生活を見直すことで便秘を改善していくことも可能です。
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